MAGIC STORY

神河:輝ける世界

EPISODE 10

神河史譚:天空に到る母聖樹

Emily Teng
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2022年1月21日

 

 母聖樹(ぼせいじゅ)都和市(とわし)の中心に立っている。神河最古の木であり、この都市内に残された樹海の唯一の名残である。

天空に到る母聖樹》 アート:Zezhou Chen

 当世として知られる時代が始まると、都和市は人口増加に対応するため急速に拡大した。ムーンフォーク、鼠人、人間、悪忌(あっき)までもが共に生活し、かつての時代には考えられないような様子で混じり合った。都市が拡大するにつれ、それは樹海を侵食し始めた。木は新たな建築のために切り倒され、森の神の多くはいつしか追いやられた。神は怒り狂って抵抗し、森の奥深くから現れて新たに建造された建物を破壊し、建築家たちに呪いをかけた。

 やがて当時の皇は、神の攻撃とそれに続く都和市の建築家たちの報復は、定命と神の平和的な関係を今一度台無しにすると考えて仲裁に入った。彼は合意を取りなした。都市はこれ以上の森への拡大を止める。一方の神は都市を攻撃せず、都市計画の邪魔もしない。既に建造を始めた土地の開発は続けても良いが、ひとつの例外がある。母聖樹を切り倒してはいけない。それは建造と戦いの間に、街の内に取り込まれていた。更に、樹海は神の許しがない限り、あらゆる定命を締め出していた。

 外への拡大を止められ、都和市は上方への成長を余儀なくされた。高層建築が街に満ち、母聖樹はすぐに空の支配権を失った。

 だがその時、長く沈黙を続けていたその古木が再び成長を始めた。それは途方もない大きさと高さに成長し、取り囲む最も高い建築をも追い越した。建築家たちはその高さに対抗しようとしたが、新たな「最も高い建築物」が建つごとに、母聖樹は更に成長した。そのメッセージは明白だった。今ここにこの都市は立っているかもしれないが、最初にあったのは森。それを忘れるなと。今日、母聖樹は都和市最大の構造物であり、広げた枝は都和市の大半へとほぼ絶えない影を投げかけている。

(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

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