MAGIC STORY

神河:輝ける世界

EPISODE 05

神河史譚:梓の幾多の旅

Emily Teng
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2022年1月14日

 

 (あずさ)は樹海の僧団に属する旅の修行僧であった。彼女は常に放浪癖に取りつかれていたが、神の乱の後にその放浪はそれまで以上に目的を持ったものとなった。旅の中、彼女は神の乱に影響を受けた者たちの生活や物語と、定命と精霊の領域が互いに影響し合う変化についての記録を始めた。生涯を通じて梓は何十冊もの日誌を記し、それは神の乱の後の神河の記録を保存するための重要な文書となった。

梓の幾多の旅》 アート:Lindsey Look

 だが旅をするごとに、次元そのものの性質の変化に伴い、過去が無言で忘れ去られることへの危機感を梓は抱くようになっていった。物語や歴史の記憶を保存し、未来の世代へと生かし続けるため、暦記(れき)とともに彼女は歴演衆(れきえんしゅう)を創設した。

 霜剣山(そうけんざん)地帯、天戸(てんど)の峰へと向かったところで梓の消息は途絶えている。何世紀もの間、彼女の運命は知られていなかった。だが最近、歴演衆の現在の長である五木(いつき)が神の許しを得て樹海に入り、見捨てられた森の社に隠されていた梓の最後の日誌を発見した。日誌は一部が残るのみだった。その最後にはこれまでに見たこともない、「氷と霜、木々はよじれた螺旋で伸び、雪の中を奇妙な獣が泳ぐ」という地が記述されていた。梓が発見したのは神河の未踏の地か、それとも全く異なる場所か、それは多くの憶測をもたらした。彼女はいかにしてか精霊の領域へと入り込み、定命の知覚を通すことなく自らそれを垣間見たのだと信じる者すらいる。梓が最後に訪れたと思われる、この伝説的な地を発見しようという試みは成功していない。

 この重要な発見を記念し、歴演衆は梓の最後の日誌に記されていた詳細な場面と物語を描いた着物の製作を依頼した。その物語の幾つかは、既知の出来事へと新しくかつそれまでに知られていなかった視点をもたらした。神の乱にて破壊された水面院(みなもいん)、その首席司書であるあざみについての記述もそれである。この着物は創設者の偉業を示すものとして歴演衆本部の入り口に飾られ、訪問者を歓迎している。

(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

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