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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『ブルームバロウ』展望デザイン提出文書 その1

Mark Rosewater
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2024年7月22日

 

 展望デザインが終了しセット・デザインへ移行する際に、展望デザイン・チームのリーダーは「展望デザイン提出文書」と呼ばれるものを作成している。そこにはそのセットの大きな目標、テーマ、メカニズム、構造について書かれており、展望デザイン・チームが行った仕事のアイデアをセット・デザイン・チームに渡すものになっている。数年前から、私はその文書の公開を始めており、非常に好評なので公開を続けることにしている。これまでに公開したものは以下の通り。

 他の展望デザイン提出文書の記事同様、これからお見せする内容のほとんどは実際の文書である。解説や文脈を添える私の注釈は、文章の下の枠の中に記している。この文書も非常に長いので、記事は複数回に分けることにした。普段公開している文書は私が書いたものだが、『ブルームバロウ』では私は展望デザインのリードを担当しなかった。今回の展望デザインを率い、この提出文書を書き上げたのは、ダグ・ベイヤー/Doug Beyerである。

『Rugby』展望デザイン提出文書

 私の展望デザイン提出文書を毎回読んでいる諸君は、この書き出しが私の場合と少々異なることに気づくだろう。ダグは私が書いた文書を参考にしつつ、適宜変更を加えている。例えば私はいつもデザイン・チームと世界構築チームのメンバーから書き出すが、ダグは簡潔な概要から始めた。これは展望デザイン・リードの色が少し出ただけで、文書の内容は同じである。

 『Rugby』は、勇敢な擬人化動物とそれらを脅かす捕食者の動物が暮らす、可愛らしく牧歌的なファンタジー世界の感覚を捉えるセットである。明るく魅力的なこの舞台は、悪役に焦点を当てた『Quilting』とホラー次元の『Swimming』の間に据えられ、年間の発売予定に軽快さをもたらすだろう。またこのセットは新たなスタンダードの始まりを告げ、マジックとの関わりが薄いプレイヤーの新規獲得および再獲得の機会となるだろう。

 

チームメンバー

 いつものように、展望デザイン提出文書には初期段階で展望デザインと世界構築に携わった者が列挙されている。チームメンバーは少々変動することもあるのだが、『ブルームバロウ』ではそれが起こらず、今回のチームはほぼ固定されていた。展望デザイン中に加わったダン・マッサーを除けば、先行デザイン・チームがそのまま展望デザイン・チームになったのだ。

展望デザイン・チーム

  • ダグ・ベイヤー/Doug Beyer(展望デザイン リード)
  • マーク・ローズウォーター/Mark Rosewater
  • ジェレミー・ガイスト/Jeremy Geist(次席者)
  • ダン・マッサー/Dan Musser
  • ダニエル・スー/Daniel Xu

世界構築チーム

  • エミリー・テン/Emily Teng(展望世界構築 リード)
  • ザック・ステラ/Zack Stella(リード・アート・ディレクター)
  • ニール・ラプラント・ヨンソン/Neale LaPlante Johnson

『Rugby』の目標

1.動物の楽しさに焦点を当てる。

 あらゆるセットにおいて、我々はそのセットが起こす共鳴の核心を理解したいと考えている。そのセットでやることの中で、顧客と深く結びつくものは何か? 『ブルームバロウ』では、共鳴の核心を把握した上でデザインに取りかかった――それが動物である。このセットは、ペット、動物園、野生動物などあらゆるものが動物と関連している。動物は非常に馴染み深いテーマであるため、我々は大胆な手に挑戦し、「大包括/mega-batch」と呼ぶものを作成した。詳しくはそれについて触れている後段にて語ろう。

 このジャンルでは、動物によってすべての物語が紡がれる。私たちはこのセットを、他のどのセットよりも現実世界の動物の要素を推し出したものにしたいと考えている。私たちは、多種多様な動物とそれらの生活様式にこれまで以上に焦点を当てられる機会を伺ってきた。『Rugby』に収録されるクリーチャーは、ヒーローも悪役もすべて動物である。マジック用語として「動物/animal」も新たに作成した。このセットは、動物のセットなのである。

 

2.マジック史上最も可愛らしいセットにする。

 このセットの雰囲気についても、我々は最初から理解していた。マジックの世界には少々過酷な場所もあるが、『ブルームバロウ』はそうではない。このセットの魅力は、友好的な雰囲気にあるのだ。無論、対立や脅威はあるものの、このセットの全体的な感覚は特に明るい方になっている。このセットの大部分は、我々が着想を得た擬人化動物ジャンルをもとにしているのだ。

 擬人化動物ジャンルには、気取らない絵本のような魅力がある。その世界には渓谷があり、素朴な生活があり、隣人関係があり、ときおりオオカミやカミツキガメを撃退する挑戦がある。動物の主人公は人間より体がずっと小さく、彼らが直面する困難は彼らにとってはおおごとでも、私たちの目には面白く映るだろう。私たちは、このジャンルが持つ可愛らしく牧歌的な感覚を可能な限り盛り込める機会を伺ってきたのだ。

 

3.過去の挑戦から学び、タイプ的なプレイ体験を生み出す。

 まず、開発部内で「タイプ的/typal」という言葉が使われ始めたのはこのセットからだった。タイプ的テーマは、開発部最大の挑戦だった。顧客には非常に人気が高いテーマなのだが、リミテッドが既定路線にならないように組み上げるのは極めて難しいのだ。『ブルームバロウ』の展望デザイン・チームはこの点に多くの時間を注ぎ、問題を解決するべく「同朋/fellowship」と呼ばれるメカニズムを生み出した。同朋が印刷に至らなかったことは明らかだが、この文書では同朋についてかなりの分量を割いて伝えている。その項目にて、我々が同朋で解決しようとした問題を詳しく語ろう。

 『Rugby』のゲームプレイの中核となるのが、例えばクリーチャー・タイプが重視されるなどのタイプ的なプレイ体験である。クリーチャー・タイプに焦点を当てたプレイ体験はフレイバーやテーマ性に富み、プレイヤーへの訴求力もある。ただしタイプ的なプレイ体験を適切に実行するのは、特にリミテッドにおいて難問となり得る。私たちは、さまざまな動物にスポットを当てつつシールドやドラフトで楽しいタイプ的プレイ体験を楽しめる優れたツールを見つけ出した。このセットが成功を収めるなら、そこから得られる教訓が将来のタイプ的セットで活かされるだろう。

 

4.動物テーマのデッキを構築できるようにする

 「NOPQイヤー」とは、『エルドレインの森』(『Netball』)、『イクサラン:失われし洞窟』(『Offroading』)、『カルロフ邸殺人事件』(『Polo』)、『サンダー・ジャンクションの無法者』(『Quilting』)の1年間のことである。リミテッドが「既定路線」になってしまう問題がある一方で、タイプ的構築はまた別の問題を抱えている――カードの量である。『ブルームバロウ』は、動物のクリーチャー・タイプがすべてのセットだった。だがカードが多くないものもあったため、それらの「種」を撒く必要があった。開発部はそれらを先がけて仕込める場所を探し、スタンダードで共存できるようにしたのである。幸いにも、直近のマジックの1年で訪れる4つの世界が異なる場所であったため、必要とされる動物のクリーチャー・タイプの多くを収めることができた。もう1つの解決策が、「動物」の大包括である。後段にて、この文書でも触れられる。

 タイプ的セットは偏狭的であり、同じセット内のカードとのみ機能するということも多々ある。私たちは、以下の2つの方法によって、競技志向の構築もカジュアルの構築もできる舞台を整えようと試みた。1つは、昨年の「NOPQイヤー」1年間にわたって種を撒き、スタンダードのプレイヤーが『Rugby』の動物デッキを構築するためのきっかけを用意したこと。2つ目は、あらゆるマジックのセットから50を超えるクリーチャー・タイプへ恩恵を与える、「動物」の大包括を作成したことである。

 

動物の分類

 アニマルフォークと捕食者のアイデアは、主に我々が着想を得た擬人化動物ジャンルから思いついた。この世界ではハツカネズミが人間の代わり(つまり基本となるクリーチャー・タイプ)となり、すべてがその基準に合わせられている(例えば熊は2/2より大きくなるなど)。この基準化の考えが、このセットや世界を構築する鍵となった。

 『Rugby』の世界における主な対立は、クリーチャーを主に分ける2つのカテゴリーの間に起こる。「アニマルフォーク」と「捕食者」の2つである。アニマルフォークは小さな擬人化動物であり、言葉を話し、仕事をし、服を着ている。捕食者は知性を持たない獣であり、アニマルフォークを捕食しようとしている。捕食者たちはオオカミやクマのような地球の動物と同様の存在であり、小さなアニマルフォークたちにとってそれらは恐るべき怪物となる。

 

10種類の主要なアニマルフォーク

 私のブログにはよく、トップダウン・デザインとボトムアップ・デザインの考え方についての質問が寄せられる。『ブルームバロウ』の構造は、10通りの2色の組み合わせから始まった。それらは動物とテーマ的に結びついているものの、核となるのはメカニズム的にうまく機能させられるよう2色の組み合わせ同士をつなぐことにあった。これは非常にボトムアップ的な構造である。このセットは動物に関する共鳴を起こすことを中心に据えており、我々はそれを捉えるべくさまざまなフレイバー要素に取り組んだ。その結果、非常にフレイバーに富んだ製品に仕上がったと思う。この10種類の動物を選んだ理由については最初のプレビュー記事で詳しく語ったため、ここで繰り返すのは控えておこう。私たちが提出した10種類がそのまま印刷まで至ったということは特筆しておきたい。展望デザインでは、他にもいくつか試した。特に大きく変更されたのは、黒赤がイタチだったことと赤緑がアナグマだったことだ。

 『Rugby』の舞台となる次元には多種多様なアニマルフォークが暮らしているが、このセットでは10種類の主要な動物のタイプに焦点を当て、2色の組み合わせに対応させる。

  • 白青:鳥
  • 青黒:ネズミ
  • 黒赤:トカゲ
  • 赤緑:アライグマ
  • 緑白:兎
  • 白黒:コウモリ
  • 青赤:カワウソ
  • 黒緑:リス
  • 赤白:ハツカネズミ
  • 緑青:カエル

 これら10種類の動物のタイプはこのセットにおいて特に重要なものであり、リミテッド・アーキタイプの背景にもなる。

 

 どのセットでも必要なわけではないが、特定のフレイバーを捉えられるようにパワーとタフネスの値を設定するセットもある。今回はアニマルフォークと捕食者の関係を指針とし、捕食者よりもアニマルフォークの方が多いため、クリーチャーのサイズは平均的なセットよりもやや小さくなっている。

 アニマルフォークのスタッツについて。アニマルフォークのサイズは、それぞれの動物に設定されているラインを維持しようと努めた。ハツカネズミは通常0/1~2/2、カワウソが2/2か3/3、そして4/4のアライグマが最大となる。アニマルフォークが怪物的になりすぎないように、また捕食者が圧倒的になりすぎないように、4/4や4/5以上のスタッツを持つアニマルフォークの数は最小限に留めた。

 

カメオ出演のアニマルフォーク

 このセットで強調したいことの1つは、タイプ的テーマである。つまり動物のクリーチャー・タイプそれぞれに一定の開封比を確保する必要があるのだが、世界構築チームは我々が求める感覚を捉えるクリーチャーも必要とした。スカンクのアーキタイプは必要なかったが、このセットにスカンクがいないとなると、このジャンルの感覚を捉える力が弱まることになるのだ。

 多種多様な擬人化動物が暮らす世界の感覚を呼び起こすため、このセットには「カメオ出演」の動物もいる。カメオ出演の動物は、10種類の主要タイプ以外のアニマルフォーク(サラマンダーやスカンク、ハリネズミ、モグラ、アナグマ、イタチ、ビーバーなど)を表現したトップダウン・カードである。カメオ出演の動物はこのセットに楽しい質感をもたらし、この世界の感覚をまとめてくれる。

 

 この問いかけに対する回答の1つが、開封比であった。コモンのクリーチャーは10種類の動物のアーキタイプのものでなければならないが、アンコモン以上にはカメオ出演の動物を採用できる。

 カメオ出演の動物の重要性とは? カメオ出演の動物がこのセットに必須というわけではないが、ファイルに入っていることが非常に心強い。カメオ出演の動物は、世界構築において他にも可愛いらしい動物たちのアートを世に出す方法をもたらし、このジャンルの多様性を呼び起こす。

 

 カメオ出演の動物は1枚のカードだけで輝かせなければならないため、我々はそれらを可能な限りトップダウン的に仕上げられるよう特に注力した。また、高度なドラフト・プレイヤーのために選択肢を増やすアンコモンを中心にしたデザインにすることが、テーマ的に最も理にかなうことに我々は気づいた。

 別軸の戦略としてのカメオ出演。カメオ出演の動物はこの世界の多様性を表現するためのものがほとんどであるが、ドラフト・プレイヤーやデッキビルダーにとってクールな別軸の挑戦ももたらす。私たちはアンコモンで、カメオ出演の動物の作成に取り組んだ。それらは10種類の主要な動物アーキタイプと直接的には噛み合わないテキストが軸になっており、このセットの戦略に多様性をもたらす。

 

捕食者の動物

 『ブルームバロウ』をやろうと決めたときに我々が特に心躍ったのが、動物たちのスタッツや視点の対比であった(最初のプレビュー記事でも語ったように、少なくとも最初のバージョンの時点ではそうだった)。

 捕食者は、この世界においてアニマルフォークが対峙する脅威である。大蛇や巨大なカミツキガメ、破壊的な大鹿、恐るべきフクロウなど、小さな動物たちを昔から捕食してきた動物だ。この世界ではアニマルフォークが主観的なキャラクターとなるため、捕食者たちはそれと比較して強大な存在となる。あなたが小さなネズミなら、クマはそびえ立つ怪物のように映るだろう!

 

 このセットの捕食者はすべて、パワーもタフネスも4以上である。パワーとタフネスが可変のものもいるが、最終的に基本のパワーやタフネスが7以上のものは作られなかった。

 捕食者のスタッツについて。捕食者は巨大でアニマルフォークにとっての脅威であると感じさせるため、少なくとも4/4以上となり、7/7や10/10といった強大なスタッツも許容される。

 

 セット・デザインの段階で、クリエイティブ・チームが「災厄の獣」のコンセプトを考えついた。災厄の獣は季節の変化をもたらすエレメンタルの力の顕現であり、生ける気象現象である。このフレイバーを捉えるために、捕食者は1体を除いてすべて(その1体には後段にて触れる)、エレメンタルのクリーチャー・タイプを持つことになった。

 捕食者はすべて動物である。捕食者は壮大で怪物的な存在を感じさせるが、それでも通常の動物のクリーチャー・タイプである。猫や熊、狼、大鹿などのタイプを持つ。

 

 「RSTU」は次のマジックの1年間を示す。『ブルームバロウ』(『Rugby』)、『ダスクモーン:戦慄の館』(『Swimming』)、『Tennis』(デス・レースがテーマのセット)、『Ultimate』(タルキールを再訪するセット)のことである。これは、我々にはさまざまな理由で先のことを考えなければならないときがある、ということを示す好例である。ちょうどこのセットのメカニズムを支えるために直近の1年間で動物のクリーチャー・タイプの種撒きをしたように、このセットではより大きなストーリーの流れを組み立てるためにストーリー上のポイントを撒いておく必要があったのだ。

 1体のドラゴン。ストーリー・リードのロイ・グラハム/Roy Grahamより、「RSTU」のストーリーのためにファイルにドラゴンを1枚入れるよう希望があった。このドラゴンの出自は、タルキール次元における制御不能の龍の大嵐である(『UXX』ではタルキールに再訪する)。ドラゴンは動物扱いではないが、クリエイティブ面では『Rugby』の世界を訪れたものはすべて動物になる。そのことを表現するため、「クリーチャー – 鳥・ドラゴン」の赤のカードとしてファイルに入れている。

 

虫と魚

 この世界のアニマルフォークたちが何を食べているのかについては、早い段階で思いついていた。捕食者が知性を持たないように、食物となるものも通常の生き物であることが理にかなっていた。魚・トークンは、「贈呈」メカニズムの大きな要素にもなっている。

 この世界における昆虫や蜘蛛、魚は、強大な捕食者ではないものの知性なき生き物である。ファイルには釣りや青の1/1の魚・トークンに関するものがあり、アニマルフォークたちが食物として魚を食べていることがうかがえる。

 

クリーチャーに関するメカニズム:動物、同朋、新生、二人組、捕食者

「動物」の大包括

 さあ、「動物」の大包括について語るときがきた。「包括/batch」が初めて行われたのは、『ドミナリア』の「歴史的」だった。それは大いに人気を博し、利便性も高かったため(例えば「パーティー」や「改善」、「無法者」などがある)、私は包括を次のレベルへ進めることに興味を持った。通常の包括は2~5つの項目をまとめている。それ以上に大きな包括を実現できないだろうか?

 包括でまとめる項目を5つまでに留めていたのは、あまり多くなりすぎると包括の内容が覚えにくくなるからである。ではその内容が直観的にわかるような用語を使うというのはどうだろう? それが「動物」の発想の源だった。プレイヤーは動物がどういうものなのか理解しているため、「動物かどうか」を問うだけなら簡単に思えた。

 『Rugby』はタイプ的セットであり、クリーチャー・タイプが焦点となる。擬人化動物ジャンルの牧歌的な絵本の感覚に合うよう、『Rugby』に登場するクリーチャー・タイプは地球上に生息する現実世界の動物のものとなっている。そこで私たちは、現実世界の動物を表現したクリーチャー・タイプすべてを1つの用語「動物」でまとめることに利便性と魅力を見出した。

 

 動物として扱われるものの一覧は、以下のページを参照のこと。

 黒塗りの部分は我々の社内データベースへのリンクである。そこには、我々展望デザイン・チームが「動物」の包括に含めると決めたものが一覧になっている。リンク先のページ内のテキストを以下に示そう。


 「動物」は、クリーチャー・タイプの大包括である。そこには地球上に実在する、あるいは実在した人類以外の動物を表現したあらゆるクリーチャー・タイプが含まれる。

「動物」に含まれるクリーチャー・タイプ(『Rugby』で初登場のものを含む)

 アンテロープ、類人猿、オーロクス、アナグマ、コウモリ、熊、鳥、猪、ラクダ、カリブー、猫、カニ、クロコダイル、恐竜、犬、象、大鹿、イタチ、魚、キツネ、カエル、ヤギ、ハムスター、カバ、馬、ハイエナ、昆虫、ジャッカル、クラゲ、ヒル、トカゲ、モグラ、マングース、猿、ハツカネズミ、オウムガイ、タコ、カワウソ、雄牛、カキ、センザンコウ、兎、アライグマ、ネズミ、サイ、黒貂、サラマンダー、蠍、海蛇、サメ、羊、スカンク、ナメクジ、蛇、蜘蛛、スポンジ、イカ、リス、ヒトデ、三葉虫、海亀、鯨、狼、クズリ、ウォンバット、蟲

銀枠/ドングリの動物

 ビーバー、カメレオン、雌牛、鹿、ロバ、カンガルー、ロブスター、ペンギン、豚

「動物」に含まれないクリーチャー・タイプ
  • 現実世界の動物とはまったく異なる架空のクリーチャー

 霊基体、天使、執政官、エイトグ、アバター、アズラ、バジリスク、ビーブル、ビホルダー、ちらつき蛾、運び手、ブラッシュワグ、コカトリス、サイクロプス、ダウスィー、亜神、悪魔、小悪魔、ジン、ドラゴン、ドレイク、ドレッドノート、ドライアド、ドワーフ、イフリート、エルドラージ、エレメンタル、エルフ、フェアリー、フラクタル、ガーゴイル、巨人、ノール、ノーム、ゴブリン、ゴーレム、ゴルゴン、墓生まれ、グレムリン、グリフィン、ハーフリング、ハーピー、ヘリオン、ホムンクルス、ハイドラ、イリュージョン、インプ、インカーネーション、墨獣、カヴー、キスキン、コボルド、コー、クラーケン、ラミア、リバイアサン、ルアゴイフ、リシド、マーフォーク、メタスラン、マイア、ネフィリム、ナイトメア、夜魔、ノッグル、ニンフ、オーガ、ウーズ、オーグ、アウフ、ペガサス、ペンタバイト、フェルダグリフ、フェニックス、ファイレクシアン、苗木、サテュロス、末裔、霊気装置、シェイド、多相の戦士、セイレーン、スケルトン、スリス、スリヴァー、サルタリー、落とし子、スペクター、スフィンクス、スパイク、スピリット、サラカー、生存者、テトラバイト、サラカス、スラル、ティーフリング、ツリーフォーク、トリスケラバイト、トロール、吸血鬼、ヴィダルケン、ボルバー、奇魔、レイス、ワーム、イエティ、ゾンビ、ずべら

  • 部分的に現実世界の動物である架空のクリーチャー

 カマリッド、ケンタウルス、セファリッド、キマイラ、ヒポグリフ、ホマリッド、麒麟、ラマスー、マンティコア、マスティコア、ミノタウルス、ムーンフォーク、ナーガ、ユニコーン、ヴィーアシーノ、狼男

  • 役割や職業

 アドバイザー、同盟者、射手、軍団、工匠、暗殺者、組立作業員、バーバリアン、バード、狂戦士、キャリアー、市民、クレリック、臆病者、脱走者、ドルイド、エルダー、旗手、神、ハッグ、騎士、傭兵、ミニオン、モンガー、モンク、神秘家、忍者、貴族、ノーマッド、農民、操縦士、海賊、法務官、昇華者、レインジャー、レベル、装具工、ならず者、侍、スカウト、農奴、シャーマン、兵士、スペルシェイパー、邪術師、戦士、ウィザード

  • 現実世界にあるが動物でないもの

 構築物、ドローン、ファンガス、細菌、巨大戦車、オーブ、ピンチャー、植物、プリズム、反射、砂漠の民、カカシ、彫像、裂片、飛行機械、壁

  • 現実世界の動物と関連性はあるが、特定の動物ではないもの

 ビースト、卵、眼、ホラー、人間、ミュータント、邪魔者、触手


 我々は多くの質問に答えなければならなかった。主なものは以下の通り。

人間は動物ですか?

 答えは「No」だ。動物デッキが人間で埋め尽くされるのは、違うと感じるだろう。

ユニコーンは動物ですか?

 架空の動物は水を濁すと我々は考えたため、「動物」は地球上に生息する、あるいは生息していたものと定義した。核となるアイデアは、一般的な人に「◯◯は動物ですか?」と尋ねたときに「Yes」と返ってくるものである。

恐竜は動物ですか?

 絶滅はしたものの現実の地球の動物であったため、答えは「Yes」だ。現在も地球に生息しているかどうかは、「動物」として分類する鍵ではない。

ビーストは動物ですか?

 我々は、「動物」に含めるのは実際の動物のクリーチャー・タイプに限り、動物が収まるグループは含めないことに決めた。

 展望デザイン・チームは、いくつかの質問に対して再評価することに前向きだったが、一覧は決定版を提出したかった。ルール・マネージャーから、確定版のリストがなければルール上で機能させられないと言われていたのだ。

 █████████████████████

 

 「動物」の包括を用いる例を以下に示す。

〈社交的な二人組〉(コモン)

{2}{W}
クリーチャー ― ハツカネズミ・兎
3/2
[カード名]と少なくとも1体の他の動物が攻撃するたび、ターン終了時まで、[カード名]は+1/+1の修整を受ける。

 「同朋/Fellowship」は、この文書の後半に出てくるメカニズムである。詳しくはその時に語ろう。

〈動物の知性〉(レア)

{2}{U}
エンチャント
[カード名]が戦場に出たとき、あなたが選んだ動物のタイプをあなたの同朋に加える。同朋のクリーチャーが戦場に出ることにより能力が誘発するなら、その能力は追加でもう1回誘発する。

 

 動物のタイプ的テーマが抱える特に大きな問題の1つは、我々が期待したほど後方互換性がないことである。アーキタイプとなっている10種類の動物で『ブルームバロウ』以前から100枚以上のカードがあるのはわずか2種類(鳥とトカゲ)だった。40枚以上ならそこへ2種類(カエルとネズミ)が加わり、10枚以上ならさらに3種類(コウモリ、兎、リス)が加わる(兎はちょうど10枚だ)。そして残る2種類の動物(カワウソとアライグマ)は、10枚未満であった。我々が「動物」の大包括に期待したのは、さまざまな動物を同じデッキでプレイできるようにこのセットをまとめる助けになることだった。また、それは多くの古いカードがカード・プールの広いフォーマットに姿を現すきっかけにもなり得ると思った。そして最後に、それは好意的に受け止められると我々は感じた。構築フォーマットで「動物デッキ」を実現できるアイデアを、我々は気に入ったのだ。

 「動物」の役割。『Rugby』のクリーチャーはすべて動物であるが、このセットにおける「動物」の包括には2つの役割がある。1つは、魅力を加えること。テキスト欄に「動物」と書いてあるのを読むのは楽しいことだ。私たちは、「クリーチャー」の代わりに「動物」と表記しても機能がそこまで損なわれない部分にその用語を置いた。もう1つは、このセットの外へ目を向ける機会となるデザインをもたらすこと。これによりプレイヤーが、新たな目線でコレクションを見直すことになるだろう。「動物重視」のテーマは、プレイヤーがキッチンテーブルでも競技の舞台でも動物に注目したデッキを組めるようになるクールなツールになり得るだろう。

 

 「クリーチャー」の代わりに「動物」を用いる場合については、多くの実験を重ねた。その実験を通してわかったのは、リミテッド向けのカードはそれで良いが、構築向けのカードについては動物テーマが核となるものでなければ問題を抱えることだった。

 「動物を対象とする」ではなく「クリーチャーを対象とする」と書く場合について。私たちははじめ、テキスト欄に「動物」を多用していた。『Rugby』のリミテッドでは「動物」が「クリーチャー」と同義であり、また可愛らしかったためだ。しかしそれでは、よりカード・プールの広いフォーマットにおいて多くのカード(特に除去呪文)が役に立たないものになると私たちは考えた。

 

 我々は「動物」の大包括がファイルに残り、セット・デザインが動物テーマの構築デッキを組めるようにより高いレアリティのカードをデザインしてくれることを願った。それから、統率者デッキの少なくとも1つは動物テーマのものになると見込んでいた。

 では「動物」の大包括に何が起こったのか? 最大の痛手は、要求されるものが大きかったことだった。マジックというゲームの今後の人生において、動物の一覧を維持管理することが求められるのである。今後新しいクリーチャー・タイプが導入されるたびに、我々はそれが動物かどうか特定しなければならなくなる。つまり、今後のすべてのセットにおいて仕事が増えることになる。その仕事は、これまでは通常やらないことだった。マジックのセットはいつも新しいメカニズム的要素をもたらすが、それらは一度定義されれば、ルール上でそのまま存在し続ける。「動物」の大包括は、継続的な管理を必要とするのである。

 もう1つの大きな痛手は、その包括に含むべきか含まないべきかで多くの議論が巻き起こったことだった。確かに95%は直観的だが、残りの5%はそうとは言い難い。細菌は本当に生き物ではないのか? マジックではserpent(海蛇)は海の怪物として表現されているが、爬虫類としてのserpentは地球の動物である。これは含めないのか? 一覧に含まれている動物の中には、ビーストのようにより大きなグループでまとめられているものもあるじゃないか。明らかに地球の動物なのに「動物」の大包括に含まれていないのは、混乱を呼ぶのではないか? という風に。

 そして最後に、それにどれほどの魅力があるのかが話し合われた。私は無限の魅力を感じ、それは顧客の一部にも伝わると考えたが、そうは感じない開発部仲間も多くいた。

 以上の要因から、セット・デザイン・チームは「動物」の大包括を取り除くことに決めたのだった。

 構築における「動物」。提出ファイルには「動物」の包括に焦点を当てたデザインがいくつかあるが、その多くは「同朋」とも結びついており、「動物」のポテンシャルを完全に引き出せてはいない。私たちとしては、同朋に関わらない動物中心の構築の方に可能性を感じている。以下がその例である。

〈動物の底力〉

{1}{W}
エンチャント
あなたがコントロールしている動物は+1/+1の修整を受ける。

 


 本日はこれで以上だ。いつもの通り、この記事や「動物」の大包括、その他本日触れた『ブルームバロウ』の要素に関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(X(旧Twitter)TumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、その2でお会いしよう。

 その日まで、あなたに語りかけてくる動物が見つかりますように。


 (Tr. Tetsuya Yabuki)

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