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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

第98回:たった一工夫でデッキは変わる!? ローグデッキ特集

読み物

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

2012.04.19

第98回:たった一工夫でデッキは変わる!? ローグデッキ特集


 こんにちはー。

アヴァシンの帰還

 毎日少しずつ公開されるカードが増えている『アヴァシンの帰還』のカードギャラリーでは、現在では50枚を超えるカードをご覧いただくことができます。

 そんな50枚を超えるカードの中でも、僕は《月の賢者タミヨウ》と《狂気堕ち》に注目しているのですが、みなさんはどのカードに注目していますか?

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 《月の賢者タミヨウ》は、昔の《神の怒り》と《氷の干渉器》の組み合わせよろしく、《審判の日》と併用すれば戦場をコントロールしやすいでしょうし、《霜のタイタン》と一緒に使えば土地破壊風味のめずらしいデッキが作れそうです。他にも《未練ある魂》を駆使して大量ドローを狙えたりと、実に様々な使い方が考えられます。

 もう一方の《狂気堕ち》も《煙突》によく似た非常に面白いカードで、「生け贄に捧げる」のではなく「追放する」なので、「不死」クリーチャーに強いのも頼もしいですね。《月の賢者タミヨウ》と組み合わせれば、相手のリソースをズタズタにするデッキが作れるかもしれません。

 『アヴァシンの帰還』がリリースされるのは5月4日とのことですが、今から発売が楽しみでなりませんね。


 さて、本題のスタンダードの話に移りますと、この時期にプレイヤーが取る行動は概ね二通りあると思います。

 ひとつめは既存のデッキを極める、またはまだ使ったことのない既存のデッキを試しておくというもので、もうひとつは今のうちから新しいデッキ構想を練ったり、今まで試せなかったデッキやテクニックを実際に使ってみるというものです。
 僕はどちらかと言うと後者で、Magic Online(以下MO)でもそのようなプレイヤーが多いと感じています。今週は「What's Happening?」から、そんなみなさんの力作をお届けしたいと思います。

 トップを飾るのは一風変わった「ゾンビ」デッキから。


「黒緑青ゾンビwith《出産の殻》」

murilomalta (4-0)
Standard Daily #3681620 on 04/10/2012[MO] [ARENA]
12 《
4 《闇滑りの岸
4 《水没した地下墓地
4 《森林の墓地

-土地(24)-

4 《煙霧吐き
4 《墓所這い
4 《戦墓のグール
3 《幻影の像
3 《スカースダグの高僧
1 《危険なマイア
1 《組み直しの骸骨
4 《ゲラルフの伝書使
1 《粗石の魔道士
2 《ファイレクシアの変形者
1 《皮裂き
1 《ファイレクシアの抹消者

-クリーチャー(29)-
1 《虚無の呪文爆弾
1 《シルヴォクの生命杖
1 《迫撃鞘
4 《出産の殻

-呪文(7)-
2 《危険なマイア
1 《納墓の総督
1 《ファイレクシアの抹消者
3 《蔑み
3 《悲劇的な過ち
1 《虚無の呪文爆弾
3 《漸増爆弾
1 《魔女封じの宝珠

-サイドボード(15)-

 《墓所這い》や《ゲラルフの伝書使》の入った一見普通の「黒青ゾンビ」デッキに、それらと相性の良い《出産の殻》を入れたのがこちらのリスト。ちょうどKJが書いていたことを実際に形にしたようなデッキに仕上がっています。

 《墓所這い》→《組み直しの骸骨》→《ゲラルフの伝書使》→《ファイレクシアの変形者》の流れは圧巻の一言で、そこに《スカースダグの高僧》が加われば、毎ターンおまけでデーモン・トークンまで付いてきます。

 他に目を惹くのは《粗石の魔道士》を利用したシルバーバレット戦略でしょうか。《瞬唱の魔道士》や《未練ある魂》を筆頭に、《絡み根の霊》や《ゲラルフの伝書使》など、一般的なビートダウンデッキ相手にすら《虚無の呪文爆弾》は腐ることはありませんし、《シルヴォクの生命杖》は対ビートダウンデッキ戦で非常に頼りになります。

 基本的な構造は「黒青ゾンビ」そのものなので、《出産の殻》を引かない場合でも善戦できるのがこのリストの長所でしょう。それとは少し矛盾してしまうのですが、《幻影の像》や《ゲラルフの伝書使》を再利用できる《ヘイヴングルの死者》は採用してもいいかもしれませんね。

 「ゾンビ」デッキは好きなんだけどそろそろ飽きてきちゃった、という方や、今までとは違った「《出産の殻》」デッキを使ってみたいという方にお勧めのデッキです。

 それといつも新セットが出る前に言っていることですが、「《出産の殻》」デッキは、既存のデッキの中で最も新セットの恩恵を受けられるデッキのひとつです。新しく登場する全てのクリーチャーは「《出産の殻》」デッキに入る可能性があると言えますし、実際に闇の隆盛で「不死」クリーチャーが登場したことにより、このアーキタイプは大きく成長を果たしました。

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 今公開されているカードだけを見ても、《修復の天使》や《士気溢れる徴集兵》なんかは《出産の殻》にぴったりだと思いますし、《ソンバーワルドの賢者》を入れて爆発力を追求するのもまた一興です。今回の『アヴァシンの帰還』は「《出産の殻》」デッキにどのような変化をもたらしてくれるのか、このデッキの更なる飛躍に期待大です。


 murilomaltaさんのデッキは、「黒青ゾンビ」に《出産の殻》を加えたものでしたが、このように既存のデッキに一工夫して結果を残しているリストは他にもいくつか見受けられました。お次は「白黒トークン(参考:第93回)」から派生したデッキを見ていきましょう。


「白青黒トークン」

Jun.I (4-0)
Standard Daily #3718976 on 04/14/2012[MO] [ARENA]
4 《平地
1 《
1 《
2 《闇滑りの岸
3 《進化する未開地
4 《氷河の城砦
3 《孤立した礼拝堂
4 《金属海の沿岸
2 《大天使の霊堂

-土地(24)-

3 《聖トラフトの霊
2 《刃砦の英雄

-クリーチャー(5)-
3 《蒸気の絡みつき
4 《忠実な軍勢の祭殿
4 《清浄の名誉
4 《無形の美徳
3 《マナ漏出
4 《未練ある魂
3 《機を見た援軍
2 《忘却の輪
2 《イニストラードの君主、ソリン
2 《エルズペス・ティレル

-呪文(31)-
2 《審判の日
3 《神への捧げ物
2 《刃砦の英雄
1 《マナ漏出
2 《否認
3 《天啓の光
1 《蒸気の絡みつき
1 《

-サイドボード(15)-

 現環境の王者である「青白Delver」デッキの主力を担う《聖トラフトの霊》を、「白黒トークン」に加えたのがこのリスト。《聖トラフトの霊》以外にも、《蒸気の絡みつき》や《マナ漏出》を採用していますし、どちらかと言うと「白青タッチ黒トークン」と呼んだ方が適切かもしれません。

 青を入れることで、一般的な「白黒トークン」よりも相手に干渉する手段が増えていますし、《マナ漏出》はトークンをまとめて対処してくる全体除去を弾ける優れもの。《聖トラフトの霊》も、その高い打撃力のおかげで全体除去を誘い出すことが可能ですし、メインから《忠実な軍勢の祭殿》まで採用したこのリストは、全体除去をかなり意識した構成と言えます。

 多色化すればカード選択の幅が広がるものの、マナベースに悩みを抱えてしまうのが世の常ですが、Jun.Iさんは《進化する未開地》を上手く活用して、サイドボードに《天啓の光》と《》を入れています。これは《清浄の名誉》と《無形の美徳》の枚数が勝敗に直結する対「白黒トークン」において非常に有効なプランで、この戦略を取っていれば対「白黒トークン」戦で負けてしまうことはほとんどなくなるでしょう。

 青を足しただけでも十分な意欲作に見えますが、マナベースの弱体化を短所のままにておくのではなく、それをプラスに変えようとするところも素晴らしいですね。


「白赤黒トークン」

mattyd (3-1)
Standard Daily #3718976 on 04/14/2012[MO] [ARENA]
10 《平地
4 《
4 《断崖の避難所
2 《孤立した礼拝堂
4 《黒割れの崖

-土地(24)-

4 《宿命の旅人
4 《教区の勇者
3 《地獄乗り

-クリーチャー(11)-
3 《信仰無き物あさり
4 《無形の美徳
3 《清浄の名誉
3 《町民の結集
4 《未練ある魂
3 《深夜の出没
3 《忘却の輪
2 《農民の結集

-呪文(25)-
2 《はらわた撃ち
2 《虚無の呪文爆弾
2 《存在の破棄
4 《天界の粛清
1 《石のような静寂
1 《忘却の輪
2 《機を見た援軍
1 《農民の結集

-サイドボード(15)-

 もうひとつの「白黒トークン」は、「イニストラード・ブロック構築」で猛威を振るっていた形に近いものです。3色目に赤を加えることで、《地獄乗り》や《農民の結集》といった攻撃的なカードの採用が可能になり、さらに《信仰無き物あさり》のおかげで安定性も向上しています。

 《地獄乗り》と《農民の結集》の破壊力は生半可なものではないので、対戦相手が隙を見せようものなら一瞬で葬り去ることができるでしょう。

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 残念ながらこのデッキには入りそうにありませんが、『アヴァシンの帰還』には《処刑者の要塞》という強力な土地が登場しています。《ミラディンの十字軍》や《刃砦の英雄》に使うだけですごいことになるので、今後は赤白の隆盛にも要注目です。

 そして土地カードでは《僻地の灯台》もまた強力な効果を秘めており、「グリクシス(青黒赤)コントロール」や「青赤コントロール」での活躍が期待されます。


「青赤コントロール」

MonsterFromLost (28th Place)
Standard PTQ #3718816 on 04/15/2012[MO] [ARENA]
8 《
8 《
4 《硫黄の滝
1 《内陸の湾港
4 《銅線の地溝

-土地(25)-

1 《幻影の像
1 《瞬唱の魔道士
3 《業火のタイタン

-クリーチャー(5)-
3 《清純のタリスマン
2 《霊炎
2 《信仰無き物あさり
4 《マナ漏出
4 《熟慮
4 《捨て身の狂乱
3 《鞭打ち炎
1 《古えの遺恨
3 《金屑の嵐
1 《赤の太陽の頂点
1 《青の太陽の頂点
2 《解放された者、カーン

-呪文(30)-
2 《幻影の像
2 《聖別されたスフィンクス
2 《古えの遺恨
1 《漸増爆弾
2 《雲散霧消
1 《赤の太陽の頂点
1 《青の太陽の頂点
2 《殴打頭蓋
2 《槌のコス

-サイドボード(15)-

 「青赤」と言えば、近頃では黒や白の入った3色のコントロールが一般的ですが、このリストは3色目を《古えの遺恨》のフラッシュバックだけに抑えた、ほぼ純正2色と言って差し支えないリストです。

/

 3色のリストだと、マナベースの問題もあって《僻地の灯台》を何枚採用すべきか難しいところですが、このような2色に近いリストなら問題なく3~4枚運用できるでしょう。《僻地の灯台》は土地とは思えない強力な能力を秘めているので、《信仰無き物あさり》あたりを削って単純に土地を増量してみてもいいかもしれません。

 《僻地の灯台》さえ引けば手札の無駄カードを全てドローに変えられるため、除去を大量に積んでおいて対ビートダウンに備え、対コントロールではそれらを捨ててドローに変えるといった具合に、デッキ構築やプレイングにも大きな影響を与える可能性がありそうですね。


「今週の一押し」

kogamo 「黒単コントロール」[MO] [ARENA]
21 《
4 《幽霊街

-土地(25)-

2 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(2)-
4 《清純のタリスマン
4 《悲劇的な過ち
4 《ゲスの評決
4 《漸増爆弾
1 《ドルイドの物入れ
4 《死の支配の呪い
4 《黒の太陽の頂点
1 《殴打頭蓋
4 《ヴェールのリリアナ
1 《ソリン・マルコフ
2 《解放された者、カーン

-呪文(33)-
4 《ファイレクシアの十字軍
2 《ワームとぐろエンジン
1 《虐殺のワーム
2 《墓掘りの檻
1 《外科的摘出
4 《困窮
1 《血統の切断

-サイドボード(15)-

 「今週の一押し」はめずらしく自作のデッキです。今週のメイントピックにしようと思っていたのですが、今後の期待も込めて「一押し」に回すことにしました。

 《漸増爆弾》《死の支配の呪い》《黒の太陽の頂点》《ヴェールのリリアナ》を大量に積んだコントロールデッキが作れないかな、と思いスタートしたデッキだったのですが、このデッキをナック(中村 修平)さんやMO界のスーパースター_Batutinha_さんに見せたところ、二人とも言葉を失ってしまう残念な反応でした。

 そんな世間の冷たい目にも負けずにがんばっていたのですが、先週紹介した「《滞留者ヴェンセール》コントロール」デッキと似たような感じで、対ビートダウンには勝てるものの、対「青白Delver」やその他のコントロールデッキに不安を抱える結果になりました。

 もう少し時間があれば、もうちょっと上手く組めたかもしれませんが、限られた時間の中ではまとめることができませんでした。一応対ビートダウンや「白黒トークン」にはほとんど負けなかったので、昔ながらの「黒単コントロール」が使ってみたい方は手にとってみてください。

 このリストはあと一歩感が拭えませんでしたが、これと方向性が似ていて、より完成度の高いものを見つけたので、最後にそれを紹介してお別れしたいと思います。


「ジャンドコントロール No Titans」

Epattaro (4-0)
Standard Daily #3719076 on 04/17/2012[MO] [ARENA]
3 《
2 《
2 《
4 《黒割れの崖
3 《竜髑髏の山頂
2 《森林の墓地
4 《銅線の地溝
4 《進化する未開地

-土地(24)-

4 《高原の狩りの達人
2 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(6)-
4 《信仰無き物あさり
3 《虚無の呪文爆弾
4 《不屈の自然
4 《鞭打ち炎
2 《古えの遺恨
2 《飢えへの貢ぎ物
4 《死の支配の呪い
1 《赤の太陽の頂点
4 《ヴェールのリリアナ
2 《情け知らずのガラク

-呪文(30)-
3 《最後のトロール、スラーン
1 《ワームとぐろエンジン
1 《虚無の呪文爆弾
1 《古えの遺恨
2 《電弧の痕跡
2 《帰化
2 《漸増爆弾
1 《飢えへの貢ぎ物
2 《原初の狩人、ガラク

-サイドボード(15)-

 僕がやりたかったことを、より高いレベルで行えるのがこちらの「ジャンドコントロール」。《不屈の自然》→《高原の狩りの達人》or《情け知らずのガラク》のような軽快な動きができたり、全体除去が《黒の太陽の頂点》から《鞭打ち炎》になったことで、全体的にデッキが軽くなって動きやすくなっています。
 それ以外にも《虚無の呪文爆弾》や《古えの遺恨》といったユーティリティカードをもメインから搭載していますし、ありとあらゆる面で完敗です。

 このリストを見つけた時は、嬉しいやら悔しいやら複雑な心境でしたが、やはり独創的なデッキはリストを見ているだけで楽しいですね。

 冒頭でも述べたように、この時期はひとつのデッキを極めるのもいいと思いますが、もしも新しいデッキを求めているのなら、今がそれを生みだす絶好の機会かもしれませんよ!

 それでは、また来週ー!

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