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グランプリ・名古屋2018

戦略記事

準決勝チーム・ドラフト:細川 侑也の「ディミーア・ピック/ボロス・カット」

Moriyasu Genki
プレイヤー紹介

 グランプリ・名古屋2018。1日目8回戦、2日目6回戦のシールドを終えて、トップ4に残る4チームが決定した。

 ツイートでも告知されたように、老練・強豪率いるチームが多数残った結果となった。そのうちの1チーム「魔王ゆうやん」は、チーム名に冠された「魔王」を異名に持つ殿堂プレイヤー・三原 槙仁を擁している。優勝をおさめた2度の世界選手権のうち、片方は団体戦の部門でありチーム戦にも長けている。

 彼が今回メンバーに選んだのは、「シミチン」こと清水 直樹。二度のプロツアー・サンデー(トップ8)の経歴を持ち、最近でも「The Last Sun2016」で優勝し健在ぶりをアピールしている。

 そして三原、清水がともに戦うメンバーとして選んだのは、細川 侑也。チーム名の「ゆうやん」は彼の呼び名だ。細川はどちらかというとスタンダードやモダンで知られている競技プレイヤーだ。スタンダードやモダンにおいて彼自身のデッキを構築・調整し、度々デッキテク記事でも紹介されている。

 デッキ・ビルダーとして評価されている細川だが、今回の『ラヴニカのギルド』チーム・シールドはしっかりと練習を積んだという自信と自負をもって、今グランプリに参加しているようだ。実際、2日を通しての戦績は「12勝2敗」として、スイスラウンド3位の記録を残している。

 そしてここからはフォーマットも、そして戦い方も変わってくる。決勝トーナメントに残った4チームは、2チーム6人で行われるチーム・ドラフトを行うことになるのだ。自らのデッキの質を高めつつ、相手の妨害もはさんでピックしていくチーム・ドラフト。

 細川の目には、このフォーマットはどう映っているのだろうか。

sf2_draft_hosokawa1.jpg
1パック目ピック内容

 初手、《レーデヴの勇者》。

 セレズニア(緑白)を組む上で非常に優秀なトークン・メーカーを初手に選んだ。レアの《陰惨な生類》もゴルガリ(緑黒)を使う上ではボムと呼ばれる動きをするが、細川はセレズニアを見据えた。

 しかし次手となる1-2ではデッキの軸を組めるような緑・白のカードが含まれていない。代わりにディミーア(青黒)の《家門のギルド魔道士》が流れてきている。《正義の一撃》という白いカード自体もあるにはあるが、カード自体の強さという点で細川は《家門のギルド魔道士》を選択した。

 このディミーアへの渡りは、それ以降の流れを見れば成功と言えるだろう。「諜報」を最適に運用するための《闇刃の工作員》から、地上を硬く止める《賽銭ガニ》、《闇刃の工作員》のアタックを通すための《壁過の達人》と、着々とディミーアの完成度を挙げてゆく。

 そして1-9ではチーム・ドラフトらしいピックがされている。デッキに入りうる《眩惑の光》ではなく、《宇宙粒子波》をピックしている。明確に相手チームを妨害する意図を持つカットだ。

 特にここまで《空騎士の軍団兵》を含むボロス(赤白)のカードを下家に多く流していることから、最後のフィニッシュ・ブローとなりえる《宇宙粒子波》を食い止めておく判断をつけていた。それは自らのためではなく、下家と当たるであろう三原のためのカットだ。

 細川は1-10からは自らのデッキに優先度高く入るカードはないと判断し、ボロスのカードを積極的にカットしていた。だが、あまりカットを繰り返せば、今度は自分がカード不足に悩まされることになってしまう。

 運命を占う2パック目を開封する。

2パック目ピック内容

 パックから見えたのはセレズニアのボム・レア、《確証 // 確立》。

 細川の視点では自らが青黒、下家が赤白に類する色ということで、上家が緑をやっている可能性は多分に感じていた。だがそれは同時に上上家にあたる味方の三原が緑をやっている可能性も示している。対抗の選択肢となる《クロールの群れ》もデッキに合っている、優秀なフィニッシュ・カードのため、《確証 // 確立》をカットするか、《クロールの群れ》をピックするか。細川は何度も交互にカードを見比べながら、どちらにするかを悩んでいた。

 ここの判断が今回のドラフト中、最も悩んだところだと後に語っていた。そして《クロールの群れ》を選択した。果たして緑をしているのは、上家か三原か。

 2-2からは美しく流れるようなディミーア・ピックが続いた。6人ドラフトとして1周回ったことを意味する7手目では、唯一の青黒カードであった《概念の雨》が戻ってきたことで、他に青・黒のコンビネーションをピックしているプレイヤーがいなそうだという情報も合わせて細川に伝えられた。加えて、2-14,15と赤白のカードが続けて流れてきたことで下家のボロスもほとんど確定だ。

 細川は青黒の完成度をさらに高めるため、3パック目を開封した。

sf2_draft_hosokawa2.jpg
3パック目ピック内容

 ディミーア・ピックを続けた細川を祝うように、ディミーア・レアが登場した。同時にトップ・コモンの《光を遮るもの》も登場しているが、《支配魔法》の流れをくむ青黒の分割カードの汎用性の高さには替え難いものであった。

 3-2もボロスへのヘイトを示すカットだ。特に《真火の隊長》は対緑性能に優れた能力をもち、三原が緑をしていた場合に間違いなくネックとなる1枚だ。三原が緑でなくともボロスの完成度を高める1枚であることは間違いないため、このカットに迷いはなかったようだ。

 3パック目でも細川は安定してディミーア・ピックとボロス・カットを続け、1-2からのピック方針を最後まで守り通した形でドラフトを終えることとなった。


ピックを終えて

 普段の8人ドラフトであれば、ドラフトが終われば即座に参加者たちはデッキ構築にはいるが、今回はチーム・ドラフトということで相談の時間が長めに設けられていた。チーム・シールドのものとあまり変わらない40分ほどが構築時間として割り当てられており、チーム間で綿密な相談をする猶予となった。

 通常のドラフトと異なる点は、チームということの他に、当たる相手が事前に知らされているという点もある。細川の相手は三原と清水の間の席についていた対面のヨシウラだ。

三原「あそこはしっかり黒をやってるよ」

清水「《草むした墓》、見た? 見てないなら、1-2っていう巡目で相手取ってるよ」

 仲間、相手、仲間、相手……と交互になるため、それぞれのピックを正しく思い返せば相手のピックをある程度は推測できる。ピックが推測できるということは、デッキの完成形も見えてくる。細川の相手はおおむね、同型の青黒か緑黒青になるだろうという結論に至っていた。

 それが分かれば、メインデッキの採用カードもある程度尖らせることが可能になってくるし、必要になってくる。《悪賢い隠蔽》のようなコントロール・ミラーで強いカードを入れた形を完成させた。

細川 侑也 (A席)
グランプリ・名古屋2018 準決勝2 / 『ラヴニカのギルド』チームブースタードラフト (2018年10月14日)[MO] [ARENA]
8 《
8 《
1 《ディミーアのギルド門

-土地(17)-

1 《家門のギルド魔道士
1 《夜帷のスプライト
1 《霧の壁
1 《囁く情報屋
2 《闇刃の工作員
1 《ディミーアの密告者
1 《跳び蛙
1 《疫病造り師
1 《隠された影
1 《詩神のドレイク
1 《賽銭ガニ
1 《クロールの群れ

-クリーチャー(13)-
1 《眩惑の光
1 《死の重み
1 《思考消去
2 《概念の雨
1 《記憶の裏切り
2 《巧みな叩き伏せ
1 《悪賢い隠蔽
1 《詭謀 // 奇策

-呪文(10)-
2 《松明の急使
1 《癒し手の鷹
1 《最大速度
1 《奨励
1 《背骨のワンド
1 《霊廟の秘密
1 《壁過の達人
1 《切断された糸
1 《恐れなき矛槍兵
1 《イゼットのロケット
1 《レーデヴの勇者
1 《用心深いオカピ
2 《宇宙粒子波
1 《蝋燭の夜警
1 《重力殴打
1 《スマーラの森整形師
1 《真火の隊長

-サイドボード(19)-

細川「ディミーア家の人間だからね。やっちゃうんだよね」

 笑いながらピックを振り返るが、むしろディミーア・ピックの側面以上にボロス・カットの側面で、細川の「ドラフトに対する認識」の強さが表現されているようだった。

 自らが勝つだけではなく、チームで2勝を取るためのピックを考え続けた結果として、ディミーアが完成していた。

細川「ここまできたら優勝したすぎるでしょ」

 目の前の準決勝も、さらに次の決勝も勝ち抜く意欲でもってゲームに挑もうとしていた。

top4_hosokawa_mihara_shimizu.jpg
「魔王ゆうやん」(写真左から)細川、三原、清水
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RESULTS

対戦結果 順位
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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