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グランプリ・広州2016
デッキテク:細川侑也の「スケープギフト/Scapegift」
By Masashi Koyama
「今回のデッキ自信作なんだよね!」
そう筆者に声をかけてきたのは、カードショップ遊々亭所属の細川侑也だ。
細川は今年マジック殿堂顕彰者に選出された渡辺雄也と同世代のプレイヤーで、ライターとしても活動している。
最近はアジア圏のグランプリにも同じくカードショップ遊々亭の高尾翔太(グランプリ・静岡2014準優勝などグランプリ・トップ8入賞3回)と共に積極的に遠征しており、「アジアグランプリの常連」と言えるトーナメントプレイヤーだ。
細川はフォーマット問わず構築フォーマットに精通しており、そんな彼が自ら「自信がある」というデッキを紹介してくれるというのだから、私たち取材班としてはこれほどありがたい話はない。
そんな細川が今回作り上げてきたデッキはサイドボードが非常に独特な「スケープギフト/Scapegift」だ。
3 《森》 2 《島》 1 《山》 1 《平地》 2 《繁殖池》 4 《踏み鳴らされる地》 4 《蒸気孔》 1 《寺院の庭》 4 《霧深い雨林》 1 《燃えがらの林間地》 2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》 1 《樹木茂る山麓》 -土地(26)- 4 《桜族の長老》 1 《瞬唱の魔道士》 1 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》 -クリーチャー(6)- |
3 《仕組まれた爆薬》 4 《差し戻し》 2 《遥か見》 2 《イゼットの魔除け》 2 《俗世の相談》 4 《明日への探索》 2 《神々の憤怒》 3 《風景の変容》 1 《未開の狩り》 1 《神の怒り》 4 《白日の下に》 -呪文(28)- |
1 《魅力的な執政官》 1 《エメリアの盾、イオナ》 2 《払拭》 2 《安らかなる眠り》 4 《けちな贈り物》 1 《塵への崩壊》 1 《貪欲な罠》 1 《粉砕の嵐》 1 《堀葬の儀式》 1 《捕獲 // 放流》 -サイドボード(15)- |
細川「元々は(ワールド・マジック・カップ2016東京予選を優勝した)竹下徹さんのデッキリストがスタートだね。今のモダン環境は土地コンボに対する対策が薄くて、《大爆発の魔道士》は下火だし、《血染めの月》も少ないし」
もともとコンボデッキが好きだという細川は、環境を緻密に分析し調整を重ね、この「《風景の変容》」デッキを組み上げた。
細川「そこから、今は環境的に《謎めいた命令》が弱いから抜いたんだよね」
《謎めいた命令》が弱いとはどういうことだろう? マナ・コストこそ重いものの、カウンターにドロー、時間稼ぎにバウンスと何でもできるこのカードはオールマイティなカードだと思われるのだが。
細川「環境のスピードというのが大事で、今はリソース勝負にならないんだよ。バーンしかりSCZ(「Super Crazy Zoo」。自ら積極的にライフを削り巨大な《死の影》などで勝負を決めるビートダウンデッキ)しかり、お互いに相手を削りあうことが多いから。《謎めいた命令》はそこに介入できる余地が無いんだよね」
環境的には4〜5ターンでの勝負が決まることが多く、《謎めいた命令》では間に合わないという結論に達したようだ。
この決断だけでも十分に勇気のいることだと思うが、それ以上にサイドボードは挑戦的な15枚となっていた。
――このサイドボードすごいね!? どうやってたどり着いたの?
細川「思いつきましたね(笑)。このデッキがサイドボード後に対策されるとすれば、クリーチャー除去を抜いて《否認》などを入れられたり、土地を攻められるパターンかなと思って。それに基本的に土地が7枚揃ったところで動くデッキだと思われているから、相手の虚を突くことができるんだよね」
最近は見る機会が減った《けちな贈り物》《堀葬の儀式》コンボは現在でも奇襲効果抜群のようだ。
さらに基本的には土地を7枚以上並べて《風景の変容》からの《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》しか勝利手段がないデッキであるため、そこに至らない段階では対戦相手は何も警戒せずにオール・インしてくることが多いという。
また、《遥か見》など土地を伸ばすカードのおかげで、4ターン目に《エメリアの盾、イオナ》や《魅力的な執政官》が降臨することも珍しくないとのことだ。
これだけでも非常に興味深いサイドボードであるのだが、細川はさらにサプライズを用意していた。
――このカードは何?
細川「このカード知らないでしょ(笑)?主に使うのは《放流》の方で、ジャンドの《ヴェールのリリアナ》に対処できるカードが欲しかったんだよね。忠誠度が5個溜まったところで破壊できるから。」
分割カードは両方の呪文の特性を併せ持つため、《白日の下に》で《放流》をライブラリーから唱えることができる。
手札に複数枚《白日の下に》がダブつくリスクを軽減できるというメリットもあり、《捕獲 // 放流》は《風景の変容》デッキのサイドボードに定着していく可能性はありそうだ。
メインデッキはもちろん、サイドボードにサプライズが仕込まれた「スケープギフト/Scapegift」。
コンボデッキを主に選択し調整している細川が綿密に作り上げただけあって、その完成度は折り紙つきだ。
アーキタイプとしても最初に述べた通りワールド・マジック・カップ予選を堂々勝ち抜いており、これからトーナメントシーンで目にする機会が増えることだろう。
そして、同じくデッキの取材に応じてくれた石井泰介と細川両名が共通して言っていたのが「自分独自のデッキを作り上げるのは楽しい」ということだ。
オリジナリティのあるデッキを作成するのはカードプールが広いモダンでは生半可なことではないが、同時にやりがいのある環境でもあるだけに、ぜひ皆さんも自身で「愛機」と呼べるデッキを作ってみてほしい。
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