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グランプリ・京都2018
デッキテク:モダン in グランプリ・京都2018
Text by Moriyasu Genki
グランプリ・京都2018は3人チーム構築戦での開催だ。
その中でもモダンで活躍する珍しいデッキタイプを2つ、トップメタのデッキを1つ追った。
ゲームの途中、それぞれ使用者に話を聞いた。
最初の1つは、ハイスピードなモダンにおいて最遅とも思えるような戦法を選んだデッキタイプだ。
岩崎 瞬の「青単フルパーミッション」
相手の動きを妨害し続けて自らがゲーム展開を主導するコントロール・デッキのうち、パーミッション(意:許可する。)デッキは純粋にカウンター呪文を主体として相手の呪文そのものを制し続けるデッキタイプだ。
「通りますか?」と呪文を唱える側が許可を求めるようになることから、その名前がついている。
18 《島》 4 《幽霊街》 1 《アカデミーの廃墟》 1 《廃墟の地》 -土地(24)- 1 《霊異種》 1 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(2)- |
4 《祖先の幻視》 4 《選択》 4 《呪文嵌め》 4 《マナ漏出》 4 《差し戻し》 2 《疑念の影》 1 《検閲》 1 《霊魂放逐》 3 《ヴィダルケンの枷》 1 《四肢切断》 4 《謎めいた命令》 1 《撹乱する群れ》 1 《思考を築く者、ジェイス》 -呪文(34)- |
4 《ワームとぐろエンジン》 4 《儀礼的拒否》 3 《海賊の魔除け》 4 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード(15)- |
デッキコンセプト
カウンター19枚はいっているので、2ターン目以降全部カウンターします!
勝ち筋はクリーチャーをパクる(コントロールを奪う)《ヴィダルケンの枷》か、《霊異種》です。
《アカデミーの廃墟》があるのでライブラリーアウト負けもありません。
あと、「分からん殺し」の部分でもあるんですが、《ワームとぐろエンジン》をサイドインして勝ちます。
メインの構成的に《流刑への道》が抜かれて、強く使えます。
あと、《ワームとぐろエンジン》も《アカデミーの廃墟》でぐるぐると戻ります。
デッキを選んだ理由
スタン、モダン、レガシー全部をやっているのですが、今回のチームは赤青コントロール使い同士で集まっているんです。
なので(赤青コントロールデッキの)「ブルー・ムーン」でも良かったんですが、グランプリ・神戸2016は、今回のデッキで参加したかったんですが、できなくて。使ってあげたかった、というところですね。
カウンターの内訳・理由
モダンは環境が幅広いんですが、このデッキはカウンターを握るという同じことを繰り返すデッキなんです。
2ターン目に必ずカウンターを握るためには《差し戻し》、《マナ漏出》の8枚じゃ足りず、10枚欲しいんですが、《霊魂放逐》だけでも《検閲》だけでもたくさん積むと2枚目以降はやっぱり弱いので、散らしています。
《精神を刻む者、ジェイス》不採用の理由
今回のデッキでは《思考を築く者、ジェイス》の方が強いので、そちらを採用しています。
デッキ選択として二択だった「ブルー・ムーン」は《精神を刻む者、ジェイス》で強くなったんですが、結局「トロン」や「ジャンド」に勝てず、メタゲーム的に弱いな、というところでした。
デッキの有利・不利
(3回戦終了時点)この時点までで「バーン」、「ジャンド」、「ジャンド」という当たりでした。
「ジャンド」に1回負けてるんですが、ミスプレイで負けてたみたいで。後から仲間から指摘されました。
基本的には「ジャンド」には勝てるようには組んでます。
コンボ要素のあるデッキと「ジャンド」などは得意です。
「バーン」、「5色人間」や「マーフォーク」など軽量のビートダウンは早すぎて間に合わないですね。
先ほどは運よく「バーン」に勝てましたが、基本的には不利ですね。
続唱をもつ《血編み髪のエルフ》への対応
「ジャンド」では元々キツかった《高原の狩りの達人》が入ってた枠なので、よりつらくなってたりはしないですね。(笑)
《呪文嵌め》を強く使うデッキなので、(続唱が2マナ呪文をめくればそれを止められるので)《血編み髪のエルフ》の方がクリーチャーとしても対処しやすくはありますかね。
《精神を刻む者、ジェイス》へのヘイトでミシュラランドの枚数と「トロン」が増えたんですが、そのために《幽霊街》と《廃墟の地》を合わせて5枚採用しています。
《疑念の影》でフェッチランドも止めるので、良いですね。
土地を縛ると、マナを要求するカウンターの有効期限も延びるんです。
「青単フルパーミッション」。
「通りますか?」と聞かれたら「通りません」と断り続けてきている岩崎。
これからの対戦相手が彼から「通行許可証」を発行してもらうのは骨が折れそうだ。
続く2つ目のデッキタイプは、パーミッションとは対照的に最速の初動を目指した「ストンピィ」だ。
超高速で相手にプレッシャーをかけるべく、モダンで1ターン目に安定して3マナを出すためにはどうするべきかを模索したプレイヤーがいた。
針生 大地の「赤単ストンピィ」
10 《山》 4 《宝石の洞窟》 4 《ラムナプの遺跡》 2 《屍肉あさりの地》 -土地(20)- 4 《ゴブリンの熟練扇動者》 4 《猿人の指導霊》 2 《風雲船長ラネリー》 2 《月の大魔術師》 2 《熱烈の神ハゾレト》 2 《ラッカ・マー》 2 《栄光をもたらすもの》 4 《絡み森の大長》 -クリーチャー(22)- |
4 《捨て身の儀式》 4 《発熱の儀式》 4 《血染めの月》 2 《虚空の杯》 4 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(18)- |
2 《月の大魔術師》 1 《熱烈の神ハゾレト》 4 《破壊放題》 2 《大祖始の遺産》 2 《神々の憤怒》 2 《粉砕の嵐》 2 《虚空の杯》 -サイドボード(15)- |
デッキコンセプト
モダンはやはり月(《血染めの月》、《月の大魔術師》)が刺さるデッキが多いところから始まりました。
1ターン目にマナ加速して3マナを出して、月を貼るのが最大の特徴です。
《風雲船長ラネリー》や《ゴブリンの熟練扇動者》といった3マナの強いカードを出すことに続きます。
いずれも「4ターン・クロック」ということを意識して採用しています。
遅いと対処されますから、素早く倒せるようにしています。
《ラッカ・マー》は出た次ターンからトークンを出して2点、3点、6点、9点で20点というクロックですね。
マナ加速の内訳・理由
《宝石の洞窟》はいろいろ計算しました。
その結果、「お互いが7枚キープをした上で後手のときにある」と、後手1ターン目が始まったときにはハンド(手札)の枚数的には「お互いが1マリガン。相手は後手スタート、こちらの先手2ターン目」と一緒になるんです。
特に《絡み森の大長》といっしょに初手にあると、両方をゲーム開始時に公開して、《絡み森の大長》の{G}を生む能力が「予約」される。
そのあとに《宝石の洞窟》が戦場に出て《絡み森の大長》を追放する。なので、1ターン目に3マナが普通に出る......これはハンド的にも盤面的にも「先手2ターン目の《猿人の指導霊》を切った状態」と同じ状況になるんですよね。
その他のカードの内訳
メインは「ジャンド」が増えて《稲妻》が増えているので《月の大魔術師》が2枚、《血染めの月》が4枚ですね。
《虚空の杯》はメイン2、サイド2と分けています。
以前は速攻を付与する《ハンウィアーの要塞》なども使用していたんですが、最近はそもそも殴れない盤面になることので《反逆の先導者、チャンドラ》を再採用したり、ラムナプ(《ラムナプの遺跡》)を採用したりと、残り数点を削る手段を増やしています。
デッキ選択の理由
レガシーでももともと「ストンピィ」を使用していました。
このデッキは元々は動画で配信されていたデッキに惚れて、ということで半年ほど使っています。
(ドミトリー・)ブタコフが「モダンで弱者は月やチャリスを使うべき(参考記事:トーナメントにおけるデッキ選択について -強者か、弱者か- より)」と話していたんですが、実際に月に助けられるマッチは多いです。
1ターン目に3マナを出すことを前提にしているため、時々さらなるマナが捻出されることもある。
「1ターン目《反逆の先導者、チャンドラ》」も先のゲームで炸裂していた「赤単ストンピィ」。
高速展開に慣れてきたモダン・プレイヤーたちもこの圧倒的な爆発力を目の当たりにすれば、衝撃を受けるだろう。
そして最後の紹介となるのは、1日目を個人成績全勝で終えている藤村 和晃。
今回、「プロ+スペシャリスト」というチームを組んでいるゴールドレベル・プロは、「5色人間」というトップメタのデッキを選択した。
2日目の途中、あらためてこの「5色人間」というデッキを選んだ理由、デッキの動きなどを解説してもらった。
藤村 和晃の「5色人間」
1 《平地》 4 《地平線の梢》 2 《金属海の沿岸》 4 《魂の洞窟》 4 《手付かずの領土》 4 《古代の聖塔》 -土地(19)- 4 《教区の勇者》 4 《貴族の教主》 4 《帆凧の掠め盗り》 4 《翻弄する魔道士》 4 《幻影の像》 4 《サリアの副官》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 4 《カマキリの乗り手》 4 《反射魔道士》 1 《ミラディンの十字軍》 -クリーチャー(37)- |
4 《霊気の薬瓶》
-呪文(4)- |
3 《戦争の報い、禍汰奇》 2 《オーリオックのチャンピオン》 2 《凶兆艦隊の向こう見ず》 2 《イゼットの静電術師》 2 《罪の収集者》 2 《ザスリッドの屍術師》 2 《四肢切断》 -サイドボード(15)- |
「5色人間」選択の理由
単純にベストデッキだと思って選んでます。現時点でもそう思ってますね。
デッキパワーが高いです。
「5色人間」自体は前回のプロツアーのときから多く、最大勢力だったんですけど、当時は(天敵の)「ジェスカイ」がいたんですよね。
ただ今回は《血編み髪のエルフ》の解禁で「ジャンド」が増えたんですよね。
「ジャンド」自体はモダンで強くて、逆に《精神を刻む者、ジェイス》というカードを強く使う受け身なデッキは今のモダンではそんなに強くないんです。そうやって順番にメタゲームを想定していった結果でもあります。
加えて、今回のようなチーム戦ではモダンはいわゆるモダン・プレイヤーが自信のデッキを持ち込む、「ジャンド」は少ない、という判断もしました。これが個人戦なら普段スタンダード・プレイヤーは安定志向で「ジャンド」が多いとも思いました。
選択の多いデッキ
慣れてくれば、こういうときはこういうパターン、というようなテンプレートで対応はできてくるんですが、選択肢は多いデッキですね。《翻弄する魔道士》は難しいですね。
一言でいうと、当たらないんですよね。
(「ホロウワン」を使う中島 主税と当たった)ビデオフィーチャー・マッチでも、相手も上手かったんですが、かわされて。2/2バニラが2体みたいな盤面になりました。
さっき当たった「ストーム」には基本的には《ぶどう弾》の指定から入ったりするんですが、《血清の幻視》の占術を「上・上」で残したりしていたので、《ゴブリンの電術師》があるとそのままコンボ始まって負けるなってそこを指定したんですが、結果的にはここの指定が《稲妻》だったら勝ててましたね。
もちろん普段は《帆凧の掠め盗り》があれば、ゲームプランは立てられるんですが。
あと能力の誘発の多さは凄いです。なにかしらが戦場に出るたびに誘発してそれを対処するので、実際のターン経過はそんなになくても時間がかかりますね。Magic Onlineだと誘発忘れとかは絶対にないシステムなんですけど。(笑)
回す上でのテンプレート
実際に回す上では、「1マナのカードがなければマリガン」などは徹底した方が良いですね。
バイアル(《霊気の薬瓶》)のカウンター数も、メインはマナ・コストは2で固まってるので「2」で置くことが多いんですけど、サイドカードは3マナのカードと入れ替えることが多いので、メインとサイドで細かく調整が必要ですね。
理由としては《スレイベンの守護者、サリア》と《翻弄する魔道士》が単体では質が高くなく、線が細いんですよ。
サイド後は相手は詰める限りの除去を詰めてくるので、線が細いままだと息切れしてしまうんですよ。
なのでサイド後、バイアルは「3」まで置きます。
1マナが多いときの挙動
逆に1マナが多いときの動きは、9割、いや8割が《霊気の薬瓶》スタートですね。《教区の勇者》と《貴族の教主》が1割ずつです。
おおむねバイアルなんですけど、速度が欲しいときは《教区の勇者》からというときもあります。
クリーチャーランド(クリーチャー・呪文にのみ使用できるマナを生み出す土地)のみのキープだと《貴族の教主》から2ターン目《教区の勇者》、《霊気の薬瓶》のような動きになることもあります。
4マナの非採用
あと勝ってるリストでは4マナ、具体的には《ピア・ナラーとキラン・ナラー》を採用しているものも多いんですけど、ミラーマッチとかで強いのも分かるんですけど、それだとデッキの長所を消してるのかなと思いますね。
抜けてるのが《幻影の像》やサリアなんですけど、これらが複数あると弱いのも分かるんですけど、このデッキを使うんなら、そういう後ろに寄せる選択肢を取るべきではないのかなと思って、4マナは非採用にしています。
基本的にはメインゲームでは同じように動くべきで、各カードの採用枚数が4、4、4、4という形になるようにしています。
最後の1枚だけ悩んだんですけど、どれも大きくは変わらないというところで家にあった《ミラディンの十字軍》を入れました。
練習では活躍してなかったんですけど、今グランプリで「タイタン・シフト」相手に4キルしたり活躍しました。
サイドイン・アウト
基本的にはメインの《反射魔道士》とサイドの《ザスリッドの屍術師》、《罪の収集者》はやることが真逆なので入れ替えという形ですね。4対2+2で丸っきり入れ替えることが多いです。
除去もクリーチャーも多いようなデッキには《反射魔道士》と《ザスリッドの屍術師》を残すというような形もありますが、基本的にはどれも役割がハッキリしているカードなので、「こういう相手に入れるんだろうなあ」と思った相手に入れるのが、正解だと思ってます。
デッキの有利・不利
除去デッキには基本的に不利ですね。
ただ現状の除去デッキである「ジャンド」はライフ回復手段が《漁る軟泥》くらいしかないんですよね。
これは《四肢切断》とかでも対処できて、「ジェスカイ」の《稲妻のらせん》よりは楽ですね。
あとジャンドカラーの全体除去は《仕組まれた爆薬》と《神々の憤怒》なんですが、キツいんですけど、これは乗り越えられることもありますね。
青白系のラス系(《至高の評決》、《神の怒り》)の方が厳しいですね。
その他の、いわゆるコンボデッキなどにはヘイトベア部分などで有利です。
藤村がベストデッキと太鼓判を押す「5色人間」。
デッキパワーもさることながら、チーム原根/藤村/斉藤に見る「プロ」と「スペシャリスト」の記事でも触れられているように、メタゲームの推移をしっかりと見つめ、判断・選択している。
愛するデッキタイプを持ち込んで結果を残し続ける者。
自らを「弱者」と例えながらも、最速を選んで自分の得意な場に相手を引きずりこむ者。
強さに惹かれてデッキを手にし、それを磨き上げた者。
三者三様ながら、どれもがハッキリと「勝つ」という目的をまっすぐに見据えたデッキの紹介となった。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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