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戦略記事

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 『異界月』発売前 環境の振り返り

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 『異界月』発売前 環境の振り返り

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 こんにちは!晴れる屋の津村です。

 「ワールド・マジック・カップ2016・大阪予選」、そして「グランプリ・台北2016」&「グランプリ・ピッツバーグ2016」と、怒濤の大型イベントラッシュが終了しました。これで現環境のスタンダードの大型イベントは一通り終了しましたが、早くも『異界月』のカード情報が出始めたことで、新環境に心躍らせているプレイヤーも多いのではないでしょうか?

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 個人的な注目カードは、なんと言っても帰ってきた《引き裂かれし永劫、エムラクール》さんこと《約束された終末、エムラクール》です!

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 『イニストラード』の世界を破滅へ導いたことで、背景ストーリーでも大きな話題を集めているこのカードは、スタンダードに与える影響力もかなりのものだとされています。

 《約束された終末、エムラクール》以外にも、マジック史上初の「合体」カードの登場などなど、毎日のプレビューが楽しみでなりません! 特に単体でも強力無比な《折れた刃、ギセラ》は、文句なしの注目株となりそうです。

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 世間は『異界月』の話題で持ち切りですが、今週は現環境の総決算として、「グランプリ・台北2016」・「グランプリ・ピッツバーグ2016」のデッキリストを中心に、この環境を振り返ってみたいと思います。環境末期とは言え、主流のデッキにもいくつかの変化があったようなので、その辺りもお伝えできればと思います。

 まずはグランプリ2勝目を挙げた市川 ユウキさんの「バント・カンパニー」からご覧ください。

「バント・カンパニー」

市川 ユウキ - 「バント・カンパニー」
グランプリ・台北2016 優勝 / スタンダード (2016年6月25~26日)[MO]
4 《
3 《平地
1 《
1 《荒地
3 《梢の眺望
4 《大草原の川
4 《ヤヴィマヤの沿岸
2 《伐採地の滝
4 《進化する未開地
-土地(26)-

4 《薄暮見の徴募兵
4 《ヴリンの神童、ジェイス
4 《森の代言者
4 《反射魔道士
4 《不屈の追跡者
3 《変位エルドラージ
2 《巨森の予見者、ニッサ
-クリーチャー(25)-
4 《ドロモカの命令
4 《集合した中隊
1 《オジュタイの命令
-呪文(9)-
4 《ラムホルトの平和主義者
1 《巨森の予見者、ニッサ
3 《否認
2 《石の宣告
2 《オジュタイの命令
3 《悲劇的な傲慢
-サイドボード(15)-

 最後の最後で、再び大きな成功を手にした「バント・カンパニー」。思い返せばこの環境は、「バント・カンパニー」に始まり「バント・カンパニー」に終わったと言っても過言ではなかったように思います。

 『イニストラードを覆う影』がリリースされる前は「フェッチランド」の退場により絶滅すると目されていたアーキタイプですが、ジム・デイヴィス/Jim Davisの見事な優勝(参考:4月14日の本記事)によってその懸念は一蹴されました。その後は「白緑トークン」や「黒緑サクリファイス」に押し出される形で一時期は数を減らしたものの、《変位エルドラージ》の採用やメタゲームの変化に伴い再び勢力図を塗り替えることに成功しています。

 以前からお伝えしているように、「バント・カンパニー」の最大の魅力は長期戦に強いことです。クリーチャーの質が軒並み高く、なおかつ《ヴリンの神童、ジェイス》、《薄暮見の徴募兵》、《不屈の追跡者》、《変位エルドラージ》と時間が経てば経つほど真価を発揮するクリーチャーばかりなので、長期戦でこのデッキの右に出るものはいません。

 また、サイドボードまで含めて非常に高い対応力を誇るデッキなので、苦手なデッキが少ないこともまた、「バント・カンパニー」の魅力のひとつと言えるでしょう。

 環境初期にもこの対応力は大きな武器になると予想されますし、《反射魔道士》や《不屈の追跡者》のように3マナ以下の強力なクリーチャーが登場する度にデッキパワーが大きく向上するデッキでもあるので、『異界月』登場後も今と変わらぬ、またはそれ以上のパフォーマンスが期待できるアーキタイプです。

「白緑トークン」

Steve Rubin - 「白緑トークン」
グランプリ・ピッツバーグ2016 3位 / スタンダード (2016年6月25~26日)[MO]
10 《
8 《平地
4 《梢の眺望
4 《要塞化した村
-土地(26)-

4 《森の代言者
2 《棲み家の防御者
3 《大天使アヴァシン
4 《搭載歩行機械
-クリーチャー(13)-
4 《ニッサの誓い
4 《ドロモカの命令
2 《進化の飛躍
1 《石の宣告
2 《悲劇的な傲慢
4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン
-呪文(21)-
3 《ラムホルトの平和主義者
1 《棲み家の防御者
2 《巨森の予見者、ニッサ
2 《狩猟の統率者、スーラク
2 《保護者、リンヴァーラ
2 《石の宣告
2 《隔離の場
1 《次元の激高
-サイドボード(15)-

 プロツアー『イニストラードを覆う影』で優勝を収めてからというもの、数々の大会で栄冠を飾り環境を牽引し続けた「白緑トークン」。メインボードに《悲劇的な傲慢》を採用したり、《炎呼び、チャンドラ》を採用したりと、いくつかの進化を遂げてきたデッキですが、ここにきて《ウェストヴェイルの修道院》を採用しない新たな試みが登場しています。

 「白緑トークン」の強さの秘訣に、高い安定性と対策の難しさが挙げられますが、《ウェストヴェイルの修道院》の不採用はこれまで以上に安定性を重視したアプローチです。2色のデッキで《ニッサの誓い》が4枚入っていると聞くと、一見マナトラブルとは無縁のデッキに思われるかもしれませんが、{W}{W}と{G}{G}が共存するデッキなので実際には予想以上にマナトラブルに直面することが多いです。

 ジェリー・トンプソン/Gerry Thompsonの提唱した「《ウェストヴェイルの修道院》を入れない」この手法は、マナベースの妥協を一切許さない斬新かつ繊細な試みです。これまでに数々の好成績を残してきただけに、誰もメスを入れようとしなかったマナベースではありますが、スティーブ・ルービン/Steve Rubinさんもこの戦略に賛同していることからも、マナベースにすら改善の余地があったことが分かります。

 「白緑トークン」が次期環境においても一線級のデッキであることに疑いの余地はありませんが、細かなカード選択のみならず、マナベースの研究も今後の必須科目となりそうです。

「バント人間カンパニー」

Pascal Maynard - 「バント人間カンパニー」
グランプリ・ピッツバーグ2016 準優勝 / スタンダード (2016年6月25~26日)[MO]
5 《平地
3 《
1 《
1 《荒地
2 《梢の眺望
4 《要塞化した村
1 《大草原の川
4 《ヤヴィマヤの沿岸
4 《進化する未開地
-土地(25)-

3 《スレイベンの検査官
4 《ラムホルトの平和主義者
4 《サリアの副官
3 《薄暮見の徴募兵
1 《白蘭の騎士
4 《反射魔道士
4 《不屈の追跡者
3 《変位エルドラージ
1 《大天使アヴァシン
-クリーチャー(27)-
4 《ドロモカの命令
4 《集合した中隊
-呪文(8)-
2 《棲み家の防御者
1 《巨森の予見者、ニッサ
1 《死者を冒涜するもの
1 《大天使アヴァシン
3 《否認
2 《石の宣告
1 《オジュタイの命令
1 《悲劇的な傲慢
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン
-サイドボード(15)-

 環境終盤に登場し、瞬く間にTier1の仲間入りを果たした「バント人間カンパニー」。同カラーリングの「バント・カンパニー」と比べると、終盤戦の粘り強さでこそ劣るものの、序盤から中盤にかけての爆発力は《サリアの副官》擁する「バント人間カンパニー」に軍配が上がります。

 前回の記事では《変位エルドラージ》が採用されるようになったという変化をお伝えしましたが、最近では《大天使アヴァシン》が起用されたリストも増えてきました。

 《大天使アヴァシン》の長所は抜群の奇襲性です。対岸の《浄化の天使、アヴァシン》や《炎呼び、チャンドラ》から自軍を守る能力はこのデッキが欲していたものそのものですし、航空戦力はミラーマッチや「白緑トークン」などに効果的です。

 従来のリストには入っていなかったからこそ予想されづらいですし、もとより《集合した中隊》の入ったデッキなので、《大天使アヴァシン》を構えていても違和感がないのも加点対象です。

 このデッキの製作者であるなべ君 (渡辺 雄也) も、メインデッキから《大天使アヴァシン》を2枚採用して「グランプリ・台北2016」で11位に入賞(参考:9~32位デッキリスト)していますし、《大天使アヴァシン》の有無も含め、今後の伸びしろにまだまだ期待ができるデッキだと思います。

「白単人間」

有田 賢人 - 「白単人間」
ワールド・マジック・カップ2016 大阪予選 優勝 / スタンダード (2016年6月18日)[MO]
14 《平地
4 《戦場の鍛冶場
-土地(18)-

4 《ドラゴンを狩る者
4 《探検隊の特使
4 《スレイベンの検査官
4 《町のゴシップ屋
3 《アクロスの英雄、キテオン
2 《勇者の選定師
4 《白蘭の騎士
4 《サリアの副官
2 《領事補佐官
-クリーチャー(31)-
3 《グリフの加護
4 《石の宣告
4 《永遠の見守り
-呪文(11)-
2 《族樹の精霊、アナフェンザ
4 《無謀な奇襲隊
4 《鋭い突端
1 《グリフの加護
1 《絹包み
2 《停滞の罠
1 《奇妙な幕間
-サイドボード(15)-
 

 新環境はビートダウンが強い。そういった意味で、『異界月』加入直後に最も注目すべきはこの「白単人間」なのかもしれません。

 懸念されていた全体除去呪文耐性に関しては、《鋭い突端》+《無謀な奇襲隊》コンビが定着したことで大幅に改善されており、以前よりも隙のないデッキになりました。

 『異界月』で軽い「人間・クリーチャー」が出るかどうかにも左右されそうですが、現状のままでも十分に新環境直後のエースとなりそうなデッキです。

「今週の一押し~スゥルタイ・ミッドレンジ~」

Aleksa Telarov - 「スゥルタイ・ミッドレンジ」
グランプリ・ピッツバーグ2016 8位 / スタンダード (2016年6月25~26日)[MO]
5 《
5 《
1 《
4 《ラノワールの荒原
4 《風切る泥沼
2 《ヤヴィマヤの沿岸
1 《伐採地の滝
4 《進化する未開地
-土地(26)-

4 《森の代言者
2 《棲み家の防御者
4 《不屈の追跡者
3 《巨森の予見者、ニッサ
2 《ゲトの裏切り者、カリタス
2 《ギトラグの怪物
2 《龍王シルムガル
-クリーチャー(19)-
3 《ニッサの誓い
4 《究極の価格
2 《闇の掌握
3 《破滅の道
3 《衰滅
-呪文(15)-
2 《棲み家の防御者
4 《死霧の猛禽
3 《強迫
2 《死の重み
2 《悪性の疫病
1 《破滅の道
1 《衰滅
-サイドボード(15)-

 こちらはじわじわと勢力を伸ばしてきた「スゥルタイ・ミッドレンジ」。《森の代言者》、《不屈の追跡者》、《巨森の予見者、ニッサ》と緑のお馴染みのホットラインに、黒の優秀なクリーチャーと除去を加えたデッキです。

 実は僕もこんな感じのデッキで「グランプリ・東京2016」に参加していたのですが、当時のリストは何に勝ちたいのかよく分からない中途半端なリストだったと思います。

津村 健志 - 「スゥルタイ・ミッドレンジ」
スタンダード (2016年5月)[MO]
3 《
4 《
1 《
1 《荒地
4 《ラノワールの荒原
4 《風切る泥沼
4 《ヤヴィマヤの沿岸
1 《伐採地の滝
3 《進化する未開地
1 《荒廃した湿原
-土地(26)-

4 《死天狗茸の栽培者
4 《森の代言者
3 《薄暮見の徴募兵
4 《不屈の追跡者
2 《巨森の予見者、ニッサ
4 《難題の予見者
1 《ゲトの裏切り者、カリタス
1 《ギトラグの怪物
2 《龍王シルムガル
-クリーチャー(25)-
3 《ニッサの誓い
4 《究極の価格
1 《破滅の道
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス
-呪文(9)-
2 《静寂を担うもの
2 《ゲトの裏切り者、カリタス
2 《強迫
2 《精神背信
1 《翼切り
1 《帰化
1 《歪める嘆き
1 《悪性の疫病
3 《衰滅
-サイドボード(15)-

 もともと《不屈の追跡者》と《巨森の予見者、ニッサ》が大量に入っている構造上、コントロール系のデッキには強いので、もっとクリーチャーデッキに勝ちやすい工夫をすべきでした。

 Aleksa Telarovさんのリストには《衰滅》がメインからたっぷり3枚取られていますし、旧式のリストよりもバランスの良い形になっています。「白緑トークン」以上に色マナが厳しいデッキなので、《ニッサの誓い》は増量してもいいかもしれませんが、少し珍しいミッドレンジ・デッキをお探しの方にぜひともお勧めしたいデッキです。

おわりに

 いつもよりデッキの数が少なくなってしまいましたが、今週はこの辺りで筆を置かせていただきたいと思います。

 今週紹介したデッキの多くは環境初期から末期までずっと一線級の活躍を続けていたものばかりですが、プロツアー『イニストラードを覆う影』で登場した「黒緑サクリファイス」、「黒緑《過ぎ去った季節》」や「赤緑ゴーグル・ランプ」なども大いに現環境を盛り上げてくれましたね。

 この時期はどうしても新セットに注目が集まりがちですが、今しか遊べないこの環境を満喫してみるのもまた一興! これまでに使ってみたかったけど機会に恵まれなかったデッキなど、ぜひ使用してみてください。

 それでは、また次回の連載でお会いしましょう!

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