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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『エルドレインの森』展望デザイン提出文書 その1

Mark Rosewater
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2023年8月28日

 

 展望デザインの終了時に、展望デザイン・チームのリードは、そのセットの展望デザインを解説して大きな目標やテーマやメカニズムや構造について論じる、展望デザイン提出文書と呼ばれる文書を作る。数年前から私はその文書の公開を始めており、非常に好評なので公開を続けてきた。これまでに公開したものは以下の通り。

 通常、私が公開する展望デザイン提出文書は私が書いたものだが、『エルドレインの森』のリード展望デザイナーのクリス・ムーニーは公開を許可してくれた。私の展望デザイン提出文書の記事同様、公開しているもののほとんどは実際の文書である。解説や文脈を添える私の注釈は、文章の下の枠の中に記している。この文書は非常に長いので、記事は2本に分けることにした。

『Netball』展望デザイン提出

先行デザインおよび展望デザイン・チーム
  • クリス・ムーニー/Chris Mooney(リード)
  • マーク・ローズウォーター/Mark Rosewater
  • エリック・ラウアー/Erik Lauer
  • ダグ・ベイヤー/Doug Beyer
  • ジェンナ・ヘランド/Jenna Helland(クリエイティブ・リード)
  • アニー・サードレリス/Annie Sardrelis
  • ダン・ムッサー/Dan Musser

 クリス・ムーニーが本流のセット度展望デザインのリードを務めるのは初めてである。可能であれば、初めてのデザイナーにはすでに構造が組み込まれている、再訪次元で始めさせることにしている。まず、私は、クリスの素晴らしい初のデザイン・リードを祝いたいと思う。これらの人物の紹介は、このセットのプレビュー記事の1本目を参照のこと。

テーマ

 初代『エルドレインの王権』について振り返ると、カードの多くはアーサー王伝説をもとにしていた。童話の影響はまちがいなく存在したが、それはプレイヤーが記憶しているより少なかったのだ。マジックでアーサー王伝説をもとにした素材は『アルファ版』から存在していたので、童話部分は注目を集めていた。再訪に当たって、我々は童話に焦点を寄せることにしたのだ。アーサー王伝説の影響は存在しているが、そこに焦点はあまりない。

 もう1つ我々が『エルドレインの王権』から得た重要な教訓は、古典的な童話をそのまま語るよりもマジック流のひねりを加えたほうがユーザーが好むということだった。例えば、(《亜麻色の侵入者》で)ゴルディロックスが熊狩りになっているのは『エルドレインの王権』でも人気のカードになった。

 『Netball』はエルドレインを舞台にした2つ目のセットである。今回は、童話にスポットライトを当てている。『Netball』は、具体化した小説で、よく知られたキャラクターや瞬間がページを飛び出して戦場に登場するのだ。このセットの構造や新しいメカニズムは、魔法や古典的な物語の芳醇さ、そしてマジックが作りうる最高の特長に基づいてデザインされたものである。

 

『Netball』の本質は、童話を混ぜ合わせること

 童話(やアーサー王伝説)の人物、物品、場所、出来事のまぜあわせは、『エルドレインの王権』のデザインの中核部分だった。我々は『エルドレインの森』をさらにそれに寄せたいと考え、それが役割のデザインに繋がったのだ。

 童話をもとにした様々な現代の作品(「イントゥ・ザ・ウッズ」、「シュレック」、「ワンス・アポン・ア・タイム」、「ファブル」など)と似たようなものである。よく知られている人物、場所、品物、出来事を取り上げ、組み合わせ、ひねりを加え、新しいものに進化させるのだ。『Netball』のゲームは、そのテーブルで新しい物語を描いていると感じさせることが目的である。「今回は、お姫様はゴブリンで、騎士は魔女で、ドラゴンはクリーチャー化した食物・トークンに倒された。」

 

文脈

 『灯争大戦』と『機械兵団の進軍』の両方の後に訪れた場所がエルドレインだったということは、セットを作っているときによく話題になった。

 セットごとに雰囲気をどう変えるかについては充分検討していて、重厚なセットの後は、快適で慣れ親しんだ場所に戻るのがいいのだ。

 なお、この部分で、人物名を検閲しなければならなかった。私が言えることは、その人物は諸君が知っている人物だということだけである。このような舞台裏の文書を公開するには、将来に関することを何も明かさないことが必要なのだ。

 『Netball』は、パララクスの物語シリーズの最後のクライマックス・セットである『Marathon』の後に発売される。初代『エルドレインの王権』同様、『Netball』は激しいフィナーレの後の軽い口直しを意図したものである。エルドレインはこの役割に適しているが、我々が選んだテーマはもちろん新奇さに寄せたものになっている。(これほど大量に「姫」という単語を使うマジックのセットはなかったに違いない!)

 『Netball』は、【検閲済】を次の物語シリーズでの主要な敵役として確立する助けになる可能性があるが、これを書いている時点ではまだ確定してはいない。

 

新メカニズム

役割

 役割は、『Netball』の新メカニズムの目玉である。役割・トークンは、多くの童話に登場する、古典的で典型的な様々なキャラクターを表すオーラ・トークンである。役割は、混ぜ合わせた童話という中心的なテーマを実現するために選ばれたオールスターである。それによって、ほとんどフレイバーだけに基づいた楽しい状況をいとも簡単に作り出すことができるのだ。

 展望デザインは、少し多く作りすぎるぐらいのほうが一番いい傾向にある。それによって、セットデザインが何を使うかの自由度が高くなるのだ。展望デザインは、役割をどのようにカード・デザインに組み込むことができるかを考えていたので、様々なことを試した。つまり、我々は必要以上の分量で役割を提出していることがわかっていたのだ。

 役割の魅力の多くはそのフレーバーから来ていて、つまりリミテッドや構築でどのようにメカニズム的にゲームプレイに影響するかには柔軟性があるということになる。我々はリミテッド環境での需要と一般的な人物の類型に基づいて現在の役割一式を選んだが、魅力的なフレイバーを失うことなくそれらを変更する余地は充分にある。最終的なセットでは、役割の種類は減るか、あるいは高いレアリティで特定のものだけを採用することになるだろう。

 

 オーラはマジックで奇妙な歴史を辿っている。市場調査によると、経験の浅いプレイヤーはオーラを楽しんでいる。非常にフレイバーに富んでいる。しかし、オーラはカード・ディスアドバンテージを内包している(オーラがついている自軍のクリーチャーが破壊されると、カード2枚を失うことになる)。そのため、経験豊富なプレイヤーにオーラを使ってもらうのは大変なことなのだ。クリスが興奮したのはそこである。役割によってオーラのカード・ディスアドバンテージがなくなるので、個別のカード・デザインとメカニズム的なテーマの両方において、通常はできないことができるようになる。セットを作る時点で、マジックで通常できないことが可能になるのは、新鮮な新しいデザイン空間を開くことになるので素晴らしいことなのだ。

 カード・デザインの観点から、我々は役割による、通常は不可能な楽しいオーラのゲームプレイのための空間の開かれかたに興奮していた。プレイヤーはオーラが好きだが、オーラには内包された欠点があり、セットに大量に入れることは難しい。役割によって、リミテッドの平均的なデッキでの1枚分としては弱すぎる大量のオーラが存在する環境を作ることができる。これにより、通常は不利(クリーチャー1体に大量のオーラをつけるなど)だったり不可能(「エンチャントを生け贄に捧げる」デッキなど)だったりする戦略の可能性が開けるのだ。

 

 再訪するときは、前回のセットでうまくいっていた点を再現したいが、その次元の本質を扱う新しいメカニズム的空間も掘り下げたいものだ。それが、このセットで役割が鍵となる理由である。テーマ的には一貫していて、メカニズム的には斬新。それが再訪における最高の場所なのだ。

 デザイナーとして、役割を見て、このメカニズムが何を提供する道具になるのかという点で『ゼンディカーの夜明け』のパーティを思い出した。どちらのメカニズムも、それぞれの舞台のテーマと結びついた信じられないほど濃いフレイバーを持っているが、同時に、このセットがそれまでのものと差別化するために活用できる、まったく異なるメカニズム的方向性を表している。役割を活用することで、プレイヤーがこの次元から連想する範囲を外れることなく、初代『エルドレインの王権』とはメカニズム的に異なるものを作ることができるのだ。

 

現時点の役割

 以下は、現在ファイルに存在する役割についての私の考えをざっとまとめたものである。

 これは我々が作った最初の役割である。姫や王子は童話の主人公であることが多いので、エンチャントしたクリーチャーを何らかの形で保護したいということは最初からわかっていた。これは後に王族になった。

 最も多用的で面白い役割である。まだ最高と言えるメカニズム的定義はできていないが、この役割なしでこのメカニズムは存在しなかっただろう。人々は何かを姫にするのが大好きで、それを軸にしてカードをデザインできる素材は大量に存在する(特に、過去のセットで使わなかったものがある)。

 

若き英雄

 役割が5色すべてにふさわしいようにする必要があることは最初から意識していた。役割が、童話の類型を再現したトップダウンのデザインであることも我々には重要だった。赤以外の各色は、すぐに思いついた。

 これは楽しくて一般的な素材である。赤で簡単に使える数少ない役割の1つで、現在の実装方法が小型クリーチャーに適していることで役割の使い方の多様性を高めていることは喜ばしいと思っている。

 

ビースト

 私たちはまた、様々なサイズのクリーチャーにつけられる役割があるようにすることにも気を配った。

 役割ごとに異なるゲームプレイにつながることは好ましいと判断した。ビーストは我々の初期の役割の1つで、トランプルはずっと持っていた。トランプルと何を持たせるのかには多くの反復工程が必要だった。これは後に怪物になった。

 緑の主力となる役割である。誰のお気に入りでもないが、仕事はこなす。これが採用された場合、セットにトランプルが多くなりすぎるという懸念はあるが、トランプルによって(緑に多い)大型クリーチャーにこれをつけたときに有用になるのは好ましい。

 

ひねくれ者

 我々はこの「ひねくれ者/Wicked」という単語が気に入っていて、印刷されたバージョンに採用された3つの名前のうち1つになった。敵役らしい役割をいくつか試し、最終的にそれらを1つにまとめたのだ。ひねくれ者は、単純でありながらフレイバー的に妥当だと感じられるようにするのが最も難しかった役割の1つである。

 この素材はおそらく採用されるだろうが、この実装は新しいものであり、試されていない。これはもともと2つの役割(魔女と継母)だったが、似ていたので統合された。

 

カエル

 対戦相手のクリーチャーにつける役割を作るべきかどうかについてはかなりの議論があった。最終的に、対戦相手のクリーチャーをカエルにするというフレイバーが勝ち残ったのだと思う。これは後に呪われし者になった。

 これは唯一残った不利益になる役割である。もともとは懐疑的だったが、これには多くの魅力的なデザインができたので、残せるかもしれない。この素材は強烈である。

 

動き出すもの

 動き出すものは、役割の限界を試した例である。クリーチャー以外につけられるとしたらどうだろうか。オーラは他のクリーチャー・タイプにもつけられる。これがボツになったのは、セットデザインが役割の種類を減らしたかったからであり、これがデザインに充分な幅をもたらさなかったからだろう。

 現時点で、奇妙なことをする(アーティファクトについてクリーチャー化する)唯一の役割である。おそらく現在のデザインは、他の役割のいくつかよりも少しばかり魅力に欠けていると思うが、これは、役割というものができることや、このルール的技術のクリエイティブな使い方によってどれだけのデザインができるかを示す例という一面がある。

 

騎士

 このカードに関する重要な議論は、すべての役割が童話由来である必要があるかどうかだった。確かに、童話の中には騎士が登場するものもあるが、このセットのアーサー王物語の側面のほうが強い。最終的に、セットデザインは役割は童話の類型に集中すべきだと決定した。

 芳醇な素材で、赤には有用だが、現時点ではうまくできていない。また、現時点ではそれほどの騎士タイプ的なものは存在していない。

 

フェアリー

 これは、後ろ向きに働く役割だと思う。飛行をつけるオーラは有用だと考え、どの童話の類型が一番筋が通るか考えたのだ。このセットにはフェアリーのタイプ的テーマがあるので、表面上、何かをフェアリーにするのはクールに思えた。しかしそのためにはフェアリーでないクリーチャーをプレイする必要がある。役割は、直接クリーチャー・タイプに重ならないときに一番うまく働くということがわかった。これは少しばかり境界線を曖昧にしすぎており、役割自身の独特な雰囲気を持つのを妨げていたのだ。

 童話というならフェアリーは必要だ。様々なプレイパターンを推奨する役割を作りたかったが、「飛行」があると1体のクリーチャーに集めたくなってし合うものなので、この役割は使うのが難しかった。フェアリーのタイプ的効果があるセットでフェアリーのクリーチャー・タイプを与えるこの役割は興味深いだろうと考えたが、フェアリー・デッキではフェアリーでないクリーチャーをフェアリーにするカードよりもフェアリー・クリーチャー・カードを入れるので、これがそうすることはあまり見なかった。

 

ウィザードと森の番人

 これらの2つの役割は、さらなる掘り下げを提供していた。どちらも、エンチャントしたクリーチャーにタップ能力を与える。それらのプレイ感はよかったが、他の役割の多くに比べて強すぎる傾向にあった。(先週述べた通り、セットデザインは役割のパワーレベルを均等にしようと判断した。)ウィザードは魔術師になったが、メカニズム的にはまったく違うデザインになった。ここでも、役割が直接クリーチャー・タイプにならないようにしていることに注意。

 この2つの役割は、一連の役割にさらなる質感を加える(そしてよくある素材を満たす)ために作られた。タップ能力なので、スタッツ強化や回避能力を与える役割とは異なる種類のクリーチャーにつけるものであった。さらに、それぞれ異なるパワー・カーブを持っていて、ランプは序盤に有利で、占術は後半に有利だった。今現在、このどちらも良い働きをしており、B層の素材につけられているが、取り除かれてもそれほど残念だとは思わないだろう。

 

実装

 役割の中核的アイデアは、他の方法でも実装できる。我々が議論したことのまとめは以下の通り。

 役割の最初の実装はオーラ・トークンだったが、それが役割を扱う正しい方法ではないのではないかという懸念はあった。大量のトークン・カードが必要、あるいは記憶上の問題がある。役割を実装する方法について精査したが、オーラ・トークンの魅力やセット内シナジーを考え、我々はオーラ・トークンから大きく離れることはなかった。『Lacrosee』は、油カウンターを濃く使う『ファイレクシア:完全なる統一』のコードネームである。

 役割の現在の(オーラ・トークンとしての)実装を採用したのにはいくつかの理由がある。どちらもほとんどのマジックのプレイヤーにとって馴染みがある概念なので、この実装が一番プレイヤーにとってメカニズム的に把握しやすいだろうと感じた。そもそもこのメカニズムは盤面の複雑さが非常に高いので、我々は「理解上の複雑さが低い」ことを非常に高く評価した。

 オーラ・トークンという実装であれば、(エンチャントやオーラやトークンを扱うなどの)他の方法でこのメカニズムに踏み込むこともできる。

 我々はオーラでなくカウンターを使うというアイデアについて議論した。カウンターは戦場で独立したパーマネントではないので、盤面の複雑さはいくらか低くなるが、その違いは、カウンターは相互作用が少ない、オーラに比べてカウンターにその名前から直接明白ではない大量のルール的意味を持たせるのは奇妙だ、といった不利益を埋めるほどではないと感じた。また、『Lacrosse』が1年以内にあるので、カウンターのテーマを濃く扱うことには慎重になっている。

 

 セットデザインが他の選択肢を掘り下げる必要がある場合のために、我々が試した様々なことを解説するのは展望デザイン提出文書において重要である。セットを作るという困難の中で多くのメカニズムには問題があるもので、他の掘り下げる方向性について知っていることは重要なのだ。肩書というアイデアは、我々の奇妙な実装の1つだった。

 『Anvil』は「指輪があなたを誘惑する。」が存在する『指輪物語:中つ国の伝承』のコードネームである。我々は後に、そのメカニズムを紋章にした。(通例、我々は「ユニバースビヨンド」セットはかなり前倒しで手掛けている。)我々は、1つの物品を追跡するメカニズムと、戦場で同時に複数存在することが多い役割との間には大きな違いがあることに気づいた。

 我々は、役割を単純にクリーチャーが持つ肩書にすることも議論した。これは、『Anvil』での指輪所持者のメカニズムの裏にあるルール技術と似たものである。これは非常に斬新だったが、相互作用はほぼ部可能だった。また、この方法で多くの役割を作った場合、プレイヤーはそれぞれの意味を覚えるために注釈カードが必要で、そうなると本質的にオーラの手法と同じなのに把握が難しく相互作用性が低いだけになる。

 

 最大の弱点は、推しすぎた最大の長所である、と言える。役割は非常に魅力的でフレイバーに富んでいるが、それはつまり簡単には混ぜ合わせられないということになる。それぞれのカードは特定の1つの役割を作る必要があり、そのため実際のカードを必要とする講義/履修型のゲームプレイという実装には問題があった。我々はブースターで2枚の特定のカードを隣り合わせにする実装を何度も検討したが、今のところ、印刷枚数の多い本流のセットでは特に、簡単にできることではない。(『バトルボンド』は、印刷業者1つで印刷できる程度の枚数だった。)

 また、サイドボード(あるいはメインデッキ)から実際のオーラ・カードを持ってくる、講義/履修型のメカニズムを使うことも検討した。このアイデアを実現するのは難しいと思われる。上述のどの方法でも、起こっていることをプレイヤーが(特に、充分な注釈文で)理解できれば、注釈カード、トークン、カウンター、オブジェクトなどは必要ない。講義/履修型の手法では、該当するオーラ・カードが必要で、これは不可能なことである。講義/履修とは異なり、役割ではフレイバーにあったものにするために毎回非常に特定された役割が必要となる。(そしてフレイバーはこのメカニズムの魅力上重要な部分である。)これらすべてのアイデアの中で、これは一番時間をかけなかったアイデアの1つだと思われるので、この空間における解決策の可能性を見落としている可能性がある。

 

 メカニズムを作る上で、多くの変更可能点がある。ルール内で作用しなければならない。成立するテンプレートが必要である。デジタルで作用しなければならない。組織化プレイにおいて成立しなければならない。何を入れるかを考えるに際して、これら全てを検討しなければならないのだ。

 トークンという方向性を決めたところで、我々は様々な実装上の課題を掘り下げた。ルール・マネージャーのジェス・ダンクス/Jess Dunksや複数のデジタル担当者と話し合った。この手法は、その全員にとって良いものだと思われた。ジェスは、注釈文の省略記法を使用して、各役割について詳細にカードで定義するのを省略するという我々の手法に比較的好感を持ち、デジタルは「(食物や宝物のような)新しい『定義済み』トークンごとに余分な作業が発生するので、一度にたくさんのトークンをゲームに追加することは、エンジニアリングの観点からは問題ないが作業が集中する可能性がある」以外の問題はなかった。

 

 他の部署と遣り取りをする必要があるだけでなく、論点になっているメカニズムを物理的に作るために何をする必要があるのかを時間を欠けて考える必要がある。各セットに、製品設計者がいる。通常、彼らにアイデアを提案し、それがそのセットの予算内かどうか、アイデアが実現可能かどうかを判断してもらうことになる。その前者が難しいことはほとんどないが、後者は問題になることが多い。クリスは役割カウンターについて究極の解決策の近くにいたことがわかるだろう。展望デザインが、枠やシンボルの選択肢を掘り下げ始めるためにグラフィックデザインに相談するほど自信のあるメカニズムを見つけるのは珍しいことではない。

 紙の分配に関して、解決策は我々の製品設計者であるサム・ジアン/Sam Jiangと話し合った。我々は、2枚のトークンを各ブースターに入れて役割・トークンを多くするなど様々な可能性について話し合った。複数の役割を一度に扱える、パンチアウトやちぎって使うカードを入れる可能性について話し合った。プレイヤーが回転させてどの役割が割り当てられているかを示せる、向きごとに異なる役割が書かれた注釈カードについて話し合った。

 

 メカニズムを入れたいかどうかを考えるとき、それをどう実装するのが最適かも考える。諸君が新しいメカニズムを目にしたとき、それは一通り試され、大抵の場合は我々が最適な方法を見つけ出したものである。しかし、必ずしもそれは作り始めた時点から明らかであるというわけではない。役割はフレイバー依存なので、我々はフレイバーにふさわしいものは何かという問いから始めた。最終的に、よくあるように、良いゲームプレイと単純さが勝ったのだ。ある時点で、可能な限りプレイ感が良いように最適化することを選ぶ必要があり、役割の場合、それは単純に他と同じようなオーラにすることだったのだ。効果が重複していることで、通常はそれらを分散させたくなるものだが、そうならないときもある。何にせよ、楽しんでくれたまえ。

 メカニズム的詳細については、早期に、役割のフレイバーに基づくいくつもの制限について議論した。1体のクリーチャーが複数の役割を持てるかどうか。1体のクリーチャーが同じ役割を複数個持てるかどうか。プレイヤーが、同じ役割を持つ複数のクリーチャーを持てるかどうか。究極的に、プレイヤーがこのメカニズムについて学ぶのが簡単になるよう、我々は最も単純な方法をとることにし、役割に追加のルールや制限をつけないことにした。「すべての役割を1体のクリーチャーに集める」ゲームプレイのパターンは、カードのレベルで解決できると考えている。(また、それは多くのプレイヤーが楽しさを見つけるゲームプレイを提供するので、それが少しだけ存在することは問題ないと考えている。)

 

また次回

 今日はここまで。 いつもの通り、この文書、私のコメント、『エルドレインの森』自身についての諸君の考えを聞かせて欲しい。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『エルドレインの森』の展望デザイン提出文書のその2でお会いしよう。

 その日まで、あなたが自分にふさわしい役割を見つけられますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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