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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ラクドス・サクリファイス:金床絡みのテクニック(スタンダード)
今回も「第29回マジック世界選手権」にて使用されたスタンダードのデッキを紹介しよう。王道、本命デッキの一つであった「ドメイン・ランプ」、新カードで静かに強化されて復活を狙っていた「ラクドス(黒赤)リアニメイト」と続いて、今回は……スタンダード・プレイヤーの中でもよりマニアな層からの支持を集め続けていたアーキタイプ、「ラクドス・サクリファイス」を取り上げさせていただこう。
サクリファイスとは生け贄のこと。マジックでは最も古い用語の一つであり、残酷な響きではあるのだが、マジックにおいてはどの色でも割と平然と行われる日常風景である。日本のプレイヤーは「生け贄に捧げる」というアクションを“サクる”と表現することも。サクッて何点とかサクッて何枚ドローとか伝えやすいし、サクッとお手軽感もある響きも心地よい。
この生け贄を頻繁に行う色は黒、次いで赤。残忍な黒魔術、死も恐れぬ無謀な狂信者、そういったこの2色らしさを表現するのに生け贄はピッタリ。近年は各セットごとに黒赤の2色に、クリーチャーやその他のパーマネントを生け贄にすることで何か代わりの恩恵を受けるという役割が与えられている。生け贄を行うカードと、そのための生け贄要員……失っても痛くもかゆくもないちっぽけなトークンや、死亡すると何か誘発するクリーチャーなど……そういったものが毎度登場するので、それらを組み合わせてデッキを構築すると、非常にテーマ性の高いものが完成する。そういったデッキはプレイしていてとても楽しく、また噛み合えば大変に強力なものとなる。
第29回目の世界選手権には、このサクリファイスデッキで参加したプレイヤーが2名。そのリストは全く同じものであり、彼らが調整してきたオリジナルと呼べる逸品だ。最新の「ラクドス・サクリファイス」、その全容をご覧あれ!
4 《山》 1 《沼》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 1 《マイコシンスの庭》 4 《硫黄泉》 4 《憑依された峰》 2 《ミレックス》 4 《黒割れの崖》 -土地(22)- 3 《擬態する歓楽者、ゴドリック》 2 《剃刀鞭の人体改造機》 2 《処刑者の族長、ヴラーン》 2 《食事を終わらせるもの、ジンジャー卿》 4 《税血の収穫者》 4 《ヴォルダーレンの美食家》 -クリーチャー(17)- |
3 《熊野と渇苛斬の対峙》 3 《滅殺の眼差し》 3 《塔の点火》 4 《ウラブラスクの溶鉱炉》 4 《鬼流の金床》 4 《実験統合機》 -呪文(21)- |
1 《ヴェールのリリアナ》 2 《敵対するもの、オブ・ニクシリス》 1 《執念の徳目》 1 《真実の抽出》 3 《強迫》 1 《石術の連射》 2 《吸血鬼の復讐》 2 《喉首狙い》 1 《アガサの魂の大釜》 1 《石の脳》 -サイドボード(15)- |
このリストはサクリファイスと分類されているが、その生け贄の中心はアーティファクトだ。「ラクドス金床」と呼んだ方がデッキの全容を把握しやすいかも。《鬼流の金床》!神河の鍛冶が用いる名品だ。この金床にアーティファクトを捧げて叩けば、対戦相手のライフを1点奪うことができる。そしてこの金床は継続して毎ターン生け贄を用意できるように、自身でトークンを生成する。アーティファクトが戦場を離れれば1/1の構築物が作られる。複数枚並べれば1枚の生け贄から2体以上の構築物が得られる。
アーティファクトをサクッてトークンの壁を作り、対戦相手の攻撃を受け止めたら戦闘ダメージが与えられる前にこれをさらにサクッて1点いただき……こういうじりじりと詰めていく、粘りのゲームこそ金床デッキの信条。チクチク、コツコツと確実に、気が付けば不利な状況から逆転……そんなデッキが好きだったら、金床を使わない手はないぞ。
生け贄に捧げる構築物は、金床が動き出すといくらでも得られる。でもそのスタートのための鉄くずは何かしら必要。これは《ヴォルダーレンの美食家》《税血の収穫者》らがもたらす血、生け贄に捧げるとむしろ得する《実験統合機》、墓地から戦場に戻せる《剃刀鞭の人体改造機》、《ミレックス》の供給するダニ……と、サクるものに困ることはない親切設計。
また、サクるための手段も金床以外に用意されている。《滅殺の眼差し》と《塔の点火》、いずれも1マナのクリーチャーorプレインズウォーカー除去だ。特に注目は《塔の点火》、これでダメージを与えて除去したパーマネントは追放できるので、流行りの《苔森の戦慄騎士》《しつこい負け犬》への対策として優秀。協約コストで生け贄を添えれば、ダメージ増加&占術でドローの質も高まる。金床を引いていない時はこれらで《実験統合機》をサクッて探しに行くなど、盤面をコントロールしながら勝利のキーパーツを手繰り寄せよう。
サクリファイスデッキの武器の一つとして《ウラブラスクの溶鉱炉》も忘れちゃいけない。このアーティファクトは毎ターン速攻とトランプルを持ったホラーを供給……ターン終了時にいなくなる使い捨ての攻撃役ではあるが、着実にサイズを上げて脅威へと成長していく。これ単体でも強いのだが、サクリファイス・シナジー(相互作用)を絡めればより強力に。《処刑者の族長、ヴラーン》!各ターンの最初のクリーチャーの死亡に、2点のライフを吸い取る強烈な付加価値をもたらす。溶鉱炉のホラーがブロックされて死亡する、あるいはターン終了時に生け贄になり、ヴラーンでちゅるッとライフをいただく。各カードの線は細くとも、シナジーにより対戦相手を追い詰めていく。これぞサクリファイス。金床の生成する構築物をサクッてヴラーンで吸う、という動きも鉄板だ。
そんなサクリファイス・シナジーにより打点を挙げるカード、新戦力としてもたらされたのは……まずは《食事を終わらせるもの、ジンジャー卿》!これはわかりやすい。アーティファクトを生け贄に捧げて、ジンジャー卿のサイズを上げて占術も行ってと、2マナという軽さではありえないようなサイズとドローサポートとなってくれる可能性を秘めている。
そしてもう1枚、《擬態する歓楽者、ゴドリック》!血を生成する吸血鬼や、アーティファクトを出して金床でサクるというような動きが簡単に祝祭を達成させてくれる。4/4飛行、マナが余りがちなこのデッキではパワーを上昇させる能力も無駄を解消してくれる。これら『エルドレインの森』から加わった高い打撃力で、「ラクドス・サクリファイス」は力でねじ伏せる勝ちパターンもしっかりと確立したのだ。
フィーチャーでも他のデッキと異なる趣で目立っていた「ラクドス・サクリファイス」。細かいカード選択でデッキの毛色も変わる、本当に良いデッキなので興味が湧いたプレイヤーは一度手に取ってみてほしい。そして君なりのリストで、各種トーナメントで活躍して……僕らのようなマニアに真似させてほしいね!さあ、今日も元気にサクリファイス!
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