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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

Goodbye My Deck! 赤黒編(スタンダード)

岩SHOW

 えっと……もう今週末『ラヴニカのギルド』発売!? そんなバカな……『イクサラン』からもう1年も経ったなんて信じられない。世界選手権2017からももうすぐ1年経つってわけで……ちょっと、いつからトレイリアの時間事故に巻き込まれたんだよって感じだ。

 世界選手権と言えば、2018年度のそれも終わったね。ラス・ベガスというド派手な街で、優勝したのはスタンダードの中でも最強の名をほしいままにする「赤黒アグロ」だ。

 先週お届けした、『ラヴニカのギルド』発売に伴うローテーションが各デッキにどのような影響を与えるのか・また去り行くデッキに別れを告げる「Goodbye My Deck!」シリーズでは、あえてこのデッキを取り上げなかった。それはなぜかというと、最後の一花を咲かせる世界選手権があったからだ。

 日本選手権でもスタンダードのゲームを何試合か見て確信したのだが、上手いプレイヤーの使う赤黒は手が付けられない。どれだけ対策デッキを持ち込んでもブン回った時の爆発力の前にはなすすべなくやられることも多々。何より赤黒側が持ち込むトーナメントに合わせて微調整を施すことで、ありとあらゆるデッキを相手に勝負ができる。これらの理由から、世界選手権優勝はこのデッキに違いないなと。

 それでは、世界の頂点に輝いたそのリストを見てみよう!

Javier Dominguez - 「赤黒アグロ」
世界選手権2018 優勝 / スタンダード (2018年9月21~23日)[MO] [ARENA]
14 《
1 《
4 《泥濘の峡谷
4 《竜髑髏の山頂
2 《霊気拠点

-土地(25)-

4 《ボーマットの急使
4 《屑鉄場のたかり屋
2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ
4 《ゴブリンの鎖回し
2 《ピア・ナラー
2 《熱烈の神ハゾレト
2 《再燃するフェニックス
2 《栄光をもたらすもの

-クリーチャー(22)-
2 《マグマのしぶき
3 《削剥
2 《大災厄
1 《木端 // 微塵
2 《キランの真意号
2 《反逆の先導者、チャンドラ
1 《ウルザの後継、カーン

-呪文(13)-
1 《ピア・ナラー
1 《包囲攻撃の司令官
3 《チャンドラの敗北
2 《強迫
1 《マグマのしぶき
1 《魔術遠眼鏡
2 《大災厄
1 《最古再誕
2 《ウルザの後継、カーン
1 《反逆の先導者、チャンドラ

-サイドボード(15)-

 赤黒にもいろいろなタイプがある。軽いところと《熱烈の神ハゾレト》で速攻で倒しきるタイプ、それらを採用せずに受けのカードをやや増やした中速タイプ、除去満載でもはやアグロではなくコントロールデッキとなったもの……世界の頂点に立ったリストは、速攻と中速を合わせた「全部乗せ」とでも言おうか、どちらの動きもできる貪欲なデッキになっている。

 《ボーマットの急使》からスタートを切り、《屑鉄場のたかり屋》《ゴブリンの鎖回し》《再燃するフェニックス》《栄光をもたらすもの》とマナ・カーブに沿ってクリーチャーを展開しているだけで相手のライフを0にできる、アグレッシブなクリーチャー陣。これぞ赤黒の強み!

 ボーマットはドロー、たかり屋は再利用、鎖回しは除去……と、攻めるカードがただ殴るだけでなく他の仕事も果たすのが素晴らしく、そういった能力に恵まれた連中が揃った赤が『カラデシュ』期の天下を取ったのはもはや当然と言えよう。

 そして赤と黒が誇る除去の数々。このリストでは前のめりで押し切る姿勢を保ちながら、《マグマのしぶき》をメインから採用することで対同型・後手の場合でも相手のクリーチャーを受けてから切り返すプランを両立させている。

 最強であるからこそ、同型相手に勝つ一工夫。それが大事だということを改めて学ぶことができたね。


森山 真秀 - 「赤黒ミッドレンジ」
日本選手権2018 優勝 / スタンダード (2018年9月8〜9日)[MO] [ARENA]
10 《
2 《
4 《泥濘の峡谷
4 《竜髑髏の山頂
4 《燃え殻の痩せ地
2 《霊気拠点

-土地(26)-

4 《屑鉄場のたかり屋
4 《ゴブリンの鎖回し
2 《ピア・ナラー
4 《再燃するフェニックス
2 《栄光をもたらすもの

-クリーチャー(16)-
3 《マグマのしぶき
3 《削剥
4 《ヴラスカの侮辱
3 《キランの真意号
3 《反逆の先導者、チャンドラ
2 《ウルザの後継、カーン

-呪文(18)-
4 《強迫
3 《チャンドラの敗北
2 《アルゲールの断血
1 《削剥
1 《大災厄
1 《最古再誕
2 《木端 // 微塵
1 《ウルザの後継、カーン

-サイドボード(15)-

 『カラデシュ』期を代表するパワーカードと言えば《反逆の先導者、チャンドラ》は外せない1枚。赤黒もこのカードを使えるのが強みで、彼女がもたらすアドバンテージで決着を付ける場面はスタンダードのお約束な光景だった。

 日本選手権を制したこのリストは、チャンドラと《ウルザの後継、カーン》の2大プレインズウォーカーでカードを補充しながら戦う中速型の赤黒だ。《ボーマットの急使》などの1マナクリーチャーは入っておらず、《屑鉄場のたかり屋》の餌も少ないので1度でも戻せればOKぐらいの感覚。メインから3枚も取られた《マグマのしぶき》で序盤のクリーチャーを捌き、プレインズウォーカー&《再燃するフェニックス》の強烈な4マナ域連打で主導権を握る。

 相手のこれらのカードにも対応するべく、メインから4枚も《ヴラスカの侮辱》が採用されているのも特徴だ。

 さて、これら赤黒のデッキが『ラヴニカのギルド』発売に伴うローテーションで失うカードはどのぐらいのものか? ローテ落ちするカードを抜いたリストはこんな感じ。

 少ないッッ! いかに『カラデシュ』&『アモンケット』ブロックの赤いカード、特にクリーチャー陣が強かったのかよくわかる。軽いクリーチャー、全部いなくなっちゃうよ。

 また《木端 // 微塵》《大災厄》、あと本日紹介したリストでは採用されていないが強力な《無許可の分解》などなど、優秀な呪文もごっそり退場。これでは従来のような赤黒デッキを構築することはできない。『ラヴニカのギルド』で取り上げられているギルドではないので、新カードも0枚なのが痛いところだ。

 しばらくは赤と黒は他の色と手を組んで戦うことになるのではないだろうか。2色土地の枚数も減ってしまうのもそれに拍車を掛けそう。ただ、赤黒のギルド・ラクドスを取り上げる予定の『ラヴニカの献身』が登場すれば、またスタンダードの大横綱として君臨するかもしれない。それまでの間、しばしの休息をとってくれ! お疲れ、赤黒!

 ……とまあ赤黒の終焉を予想して書いているのだが、最近のマジックは新カードを見ただけでは本当にどうなるかわからないのも魅力の1つ。こんだけ書いといて、新しい形の赤黒が次期環境でバリバリ活躍! なんてことになるかもしれない。予想は覆されてナンボだ、むしろ覆してくれィ!

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