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プロツアー『破滅の刻』
地域別プロに聞いてみた!プロツアー『破滅の刻』に向けてのコンディション調整法は!?
By Masashi Koyama
今シーズン最後のプレミア・イベントとなるプロツアー『破滅の刻』。
普段のプロツアーはアメリカかヨーロッパで行われることが多く、日本のプレイヤーも観戦者も、時差に悩まされ「アウェー」を感じながらのイベントだ。
......が、今回の開催場所は「ホーム」である京都だ。むしろ海外勢が時差や異文化に慣れながらの調整をしてきたはずだ。
そこで、本記事では「知的スポーツ」と言われるマジックの、戦略部分以外の心身のコンディション調整について、各地域のプレイヤーにショートインタビューを行った。
日本――山本 賢太郎の場合
日本を代表するトップ・プロの山本。今回のプロツアーが「日本勢にとってアドバンテージ」だと考えている。
「普段のプロツアーは(プロツアー前週の)アジア圏のグランプリなんかからすぐにフライトだから、ただキツいですね。海外の連戦なんかだとコンディションを整える余裕や術はないですね」
日本という、アメリカからもヨーロッパからも離れた地は、どこへ行くにも長時間のフライトが不可避だ。それを避けることのできる今回のプロツアー『破滅の刻』は千載一遇の機会だ。
山本は「2時間で来れるプロツアーなんて他にないですよ。かなり楽です」と強調する。他のメンバーの仕事の都合などで海外勢と違い現地での合宿を行っていない日本勢にとってまさに「ホーム」と言える。ゆえに、このプロツアーに向けてはそのアドバンテージを活かすべく一日中練習に勤しんでいるようだ。果たして、このアドバンテージを活かし、日本勢の躍進なるか?
「グランプリもプロツアーも同じ真剣勝負」
と語る山本。普段の環境で、平常心でプロツアーへ挑む。
北米――ウィリアム・ジェンセン/William Jensen(アメリカ)の場合
グランプリ・京都2017を制したジェンセン。
日本との時差はゆうに10時間以上あり、また気候や食文化も慣れないものだろう。プロツアーに向けて、心身の調子をどう整えてきたのだろうか。
「今回の日本や、ヨーロッパのようなタイムゾーンが(アメリカと)異なる地域の場合、プロツアーの2週間前には現地に到着して適応するようにしている。これくらいの時間があればしっかり睡眠をとれば、疲れはすぐ取れる。『一般的に長旅が辛いか』と言われれば、もちろん答えはイエスだ」
長距離移動が必須となるプロツアーの場合、2週間前に現地入りすることで時差の調整を行っているジェンセン。その他にも万全の状態でトーナメントに挑むため、普段から心身を整えていると言う。
「今回は特に朝早く、遅くとも朝7時には起きるようにして、川岸(おそらく鴨川)をランニングしてから朝食を摂るようにしてみた。普段からエクササイズやトレーニングをしてコンディションを整えていて、あとは健康な食事、野菜をたくさん食べるように努めているよ」
フィジカル面では万全を期してきたというジェンセン。遠く離れた異国の地でも「日本は過ごしやすいからストレスはあまり感じなかったよ」と涼しい顔だ。
最後に、メンタル面はどのように整えてきたのか聞いてみたところ、
「特に変えることはないよ。どんなトーナメントであっても、ベストを尽くしてできることをするだけだ」
とのこと。グランプリで王者に輝いたあとも浮かれずいつも通り過ごしてきたと言う。
これは殿堂プレイヤーならではの余裕というやつなのか。ともあれ、2週連続の躍進に期待しよう。
南米――パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vita Damo Da Rosa(ブラジル) の場合
地球の裏、ブラジルから遠路はるばる来日したパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ。フライト途中でのアメリカ滞在時間を含め、42時間(!?)かけて来たと言う。
「ブラジルにいる時はできるだけ夜遅くまで起きるようにしてたくらいだよ。こっちに着いてからは朝4時に起きて、次の日は5時に起きて、次の日は7時......『よしOK!』って感じかな」
ジェンセンと同じく、プロツアー現地には10日前には到着するとのことで、基本は着いてから少しずつ時差を調整する方向性だと言う。
ジェンセンと異なるのは基本的にフィジカル面にはそこまで力を入れていないところだ。南米という土地柄、どうしても大イベントには長時間の移動と時差は避けられないため、到着後は体を休めることを重視しているようだ。
「普段は......基本的にホテルにいるだけだね。トレーニングなんかはしてないよ。身体面で一番の問題はやはりタイムゾーンだから、その調整が重要だね。普段何もない時は正午過ぎに起きることが多いから、イベント前は(午前)11時に起きて、次の日は10時に起きて、その次の日は9時に起きて『こんなもんか』ってね」
9時では間に合っていないような気がするが、ともあれガツンと1回で時差を調整するのではなく、徐々に体を慣らしていくというダモ・ダ・ロサ。
「日本はご飯も美味しいし、そこまでストレスは感じないよ」
とのことで、メンタルも問題は無さそうだ。
ヨーロッパ――ラファエル・レヴィ/Raphael Levy(フランス)の場合
ジェンセンと同じく古豪のレヴィ。ヨーロッパ組の彼もまた時差が一番の天敵だと語り、グランプリ・京都2017の1週間前から日本に滞在しタイムゾーンを調節してきた。
「早起きして、5〜10kmほどジョギングしてから一日がスタートだ。朝から晩まで椅子に座りっぱなしというのは健康的ではないからね。ジョギングが終わったらひたすらにチームで調整だ。プロたちは(プロツアー前は)手の内をひけらかさないから、記事を読むことはしない。チームで練習し、オンラインで確認。この繰り返しだ」
ジェンセンと同じく、身体面もケアしながら調整するレヴィ。
「日本滞在は楽しみにしていたから、妻も連れてきたくらいだよ。食べ物に関しては時々食べられないものがあるけれど、大体のものは大丈夫だからそこまでストレスはないかな。人々は親切だし、過ごしやすい。気候に関しては暑いけど、夏だから仕方がない。フランスだって暑いのだし」
若干の食の戸惑いはあれど、ストレスを感じるほどではないというレヴィ。フライトの後こそ疲れを取るため休息するものの、早起きもジョギングも普段からの日課ということで、練習以外の時間は習慣通りの生活を送ることを心がけていると言う。
彼ほどのベテランになると、特別なことをするよりもいつも通り過ごすことが何よりのコンディショニングなのかもしれない。
アジア――ケルヴィン・チュウ/Kelvin Chew(シンガポール)
最後に話を聞いたのは、日本と同じアジアのプレイヤー、ケルヴィン・チュウだ。
「ヨーロッパやアメリカでのプロツアーだと現地に着くのが数日前になってしまうので、早寝早起きをなるべく心がける、ということくらいしかできません。日本でのプロツアーはラッキーです。時差は1時間しかないし、フライトも数時間で済みますから」
チュウはアジアでのプロツアーを心から喜んでいた。だが、やはり長旅と大きな時差はいかんともしがたい。
「普段から何かトレーニングをしているわけではありません。プロツアー前は集中して練習しますから、今回はありがたいですね」
アジア勢は日本のグランプリに参加することも多く、環境への適応は比較的容易だったという。
すでに来期プラチナ・レベルを確定しているチュウ。「いつもより楽」なプロツアーの結果に期待したい。
やはり日本でのプロツアーということで、地の利は日本勢やアジア勢にありそうだ。とはいえ、海外の強豪チームはしっかり体調を慣らすためかなり事前に来日しており、当日に時差が影響していることはなさそうではある。
フィジカルのトレーニングなど細かな調整という部分は「人によりけり」という身も蓋もない結果になってしまいそうではあるが、そう言った習慣を含め「なるべくいつも通り」過ごすことがキーポイントになりそうだ。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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