EVENT COVERAGE

チャンピオンズカップファイナル サイクル1

観戦記事

準決勝:京極 匡将(大阪) vs. 村栄 龍司(兵庫) ~もうひとつの決勝戦~

小山 和志
京極 匡将(写真左) vs.村栄 龍司(写真右)

 スイスラウンドが終了した時点で上位18名に名前を連ねたプレイヤーたちは、このイベントにおけるひとつの大目標「プロツアー出場権獲得」を達成したことになる。

 だが、トップ8に進んだプレイヤーにはもうひとつの大きな目標がある。

 世界選手権

 年に一度、限られたトップオブトップのプレイヤーのみが参加できる一大イベント。

 そして、このチャンプオンズカップファイナル サイクル1で世界選手権出場権を得られるのは、2人。つまり、この準決勝で勝利した者のみが、世界選手権へ参加を許されることになるのだ。

 この戦いにかかるものは重い。


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 村栄龍司はコロナ禍以前からプロツアーに複数回参加経験のある強豪プレイヤーとして名を馳せていたが、一躍世界のトップに躍り出たのは2020年。世界中の強豪たちが参加したプレイヤーズツアー・オンライン2で優勝を果たしたのだ。また、本イベントの主催者であるBIG MAGICのスタッフとして運営にも関わり、まさにプレミア・イベントの顔と言っても差支えのない存在だ。今、念願の世界選手権出場へあと1試合のところまでたどり着いた。

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 対する京極匡将は村栄ほどの実績を残してきたプレイヤーではない。しかし、かつてのThe Finalsに比肩しうる、プロプレイヤーも多く参加する大イベントThe Last Sun 2020で優勝を果たしており、その実力は折り紙付きだ。そして、彼が普段マジックをプレイする「カードショップ黄鶏屋」の仲間たちが、大一番を迎えんとする京極を見守るべく、フィーチャーマッチエリアに集合している。

 ふたりはもうひとつの決勝戦ともいえる大一番に向けて、ひとしきり談笑を交わし、互いのデッキリストの確認に入った。

 負ければひとつ、勝てばふたつ。

 世界選手権をかけた最後の戦いが始まった。

ゲーム1

 スイスラウンド上位の村栄が先手ながら1マリガン。これを受けて京極は悩む。大事な大事な初戦のオープニングハンド。アドバンテージを生かし先勝を狙うか、より良い手札を狙ってマリガンを合わせるか……結果京極はキープを宣言する。

 ともに《ロークスワイン城》からスタートするが、マリガン後の村栄は痛恨の土地2枚ストップ。それを尻目に京極は《墓地の侵入者》で口火を切る。

 村栄は《税血の収穫者》こそ展開するが、土地は2枚で止まったまま。京極は《砕骨の巨人》の出来事《踏みつけ》でこれ除去、逆に《税血の収穫者》を展開し、村栄が土地を引き込む前に一気に追い込みたい。

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 簡単に土俵を割る訳にはいかない村栄は《税血の収穫者》を《踏みつけ》で処理するが、《墓地の侵入者》が止まらない。さらに、順調に土地を伸ばす京極は《鏡割りの寓話》。

 ここに至っても3枚目の土地を引けない村栄は《パワー・ワード・キル》で《墓地の侵入者》を除去するが、京極はさらに《砕骨の巨人》を戦場に降り立たせ、村栄はなすすべなく「はい」と頷き盤面を片付けたのだった。」

京極 1-0 村栄

 不運な形で第1ゲームを落とした村栄。しかし、淡々とサイドボーディングを行う。初戦を落としたにもかかわらず、感情の揺れは一切見られない。

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これが、歴戦の強者のメンタルなのか。村栄は第2ゲームでの巻き返しを狙う。

ゲーム2

 今度は京極がマリガン。初動は村栄の《勢団の銀行破り》。返す京極は《税血の収穫者》。

 村栄は《思考囲い》で京極の手札を暴く。その内容は

 というもの。村栄はここから《墓地の侵入者》を落とすが、京極は残る2枚目の《墓地の侵入者》を展開し、ダメージレースで先行。

 村栄は《勢団の銀行破り》でのドローを挟みつつ《黙示録、シェオルドレッド》。京極は《戦慄掘り》でこれを除去し、さらに《勢団の銀行破り》を追加。このターン攻撃に向かいたいところだったが、村栄は除去に対応して《黙示録、シェオルドレッド》で《勢団の銀行破り》に「搭乗」しており、この丁寧なプレイがライフの損失を防ぐ。

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 村栄は《コラガンの命令》で《勢団の銀行破り》を除去し、京極の《思考囲い》を捨てさせるが、ガードががら空きのまま返す攻撃を受け、ライフは半分の10まで落ち込んでしまう。

 しかし、村栄の巻き返しはさすがだった。まずは《領事の旗艦、スカイソブリン》により《税血の収穫者》を除去すると、続くターンに2枚目の《黙示録、シェオルドレッド》!

 これを前に、京極は長考に入る。結果、何とか残り少ないライフを削るべく《目玉の暴君の住処》で攻撃に向かうが《致命的な一押し》でこれを失ってしまい、《黙示録、シェオルドレッド》が天秤を村栄側に傾け始める。

 そして、ついに《黙示録、シェオルドレッド》が攻撃に向かう。村栄もまた《目玉の暴君の住処》をコントロールしており、《領事の旗艦、スカイソブリン》ないし《勢団の銀行破り》に搭乗することもできる。

 京極の《ヴェールのリリアナ》の[-2]能力に対しても《目玉の暴君の住処》起動で《黙示録、シェオルドレッド》を守り、《税血の収穫者》を追加し《領事の旗艦、スカイソブリン》《黙示録、シェオルドレッド》とともに圧倒的な力で一気に京極を追い詰める。

 《黙示録、シェオルドレッド》により12までライフが回復した村栄。京極がここから巻き返すことは難しく、先にサイドボードに手を伸ばすことになった。

京極 1-1 村栄

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 世界選手権を目前にして、ゲームをタイに戻されてしまった京極もまた、1ゲーム目直後の村栄と同様淡々とサイドボードを入れ替える。

 京極もまた、この激戦を勝ち上がってきた強者。世界選手権への権利を目前にしながらの足踏みにも動揺を見せず、運命の第3ゲームへと歩みを進める。

ゲーム3

 ともに7枚キープ。

 初動は京極の《勢団の銀行破り》。村栄は《税血の収穫者》と先ほどとは逆の展開。京極が《税血の収穫者》は《致命的な一押し》で除去と順調に動く一方、村栄は血・トークンでドローを進め、《血の墓所》タップインというややぎこちない動きの序盤戦。

 そして、京極は《思考囲い》を村栄に穿つ。

 という手札から《致命的な一押し》を抜き去り、《税血の収穫者》から《勢団の銀行破り》に搭乗し攻撃と順調に動いていく。

 返す村栄もまた《思考囲い》。

 いうパワーカードが並ぶ京極の手札からから《死の飢えのタイタン、クロクサ》を無効化する《墓地の侵入者》を抜くと、《戦慄掘り》で《税血の収穫者》を除去。いったん《勢団の銀行破り》以外を更地にするが、返す京極は《鏡割りの寓話》!

回転

 村栄は《死の飢えのタイタン、クロクサ》で京極の《思考囲い》を捨てさせるが、盤面に影響を与えることができない。

 京極は《砕骨の巨人》をプレイすると、《勢団の銀行破り》とトークンで6点を叩き込み、村栄のライフは残りわずか8となる。

 村栄は盤面上の脅威である《砕骨の巨人》を《戦慄掘り》で除去し、遅ればせながら《鏡割りの寓話》をプレイするが、ライフは6の危険水域まで減少してしまっており、トークンは《勢団の銀行破り》へのチャンプブロッカーとして差し出さざるを得ない。

 そして、京極がこの熱戦に幕を引くべく召喚した怪物を見て、村栄は苦笑することになる。

 強大な力を持つ《黙示録、シェオルドレッド》が、この大一番の終末を告げた。

京極 2-1 村栄

 熱戦を制した京極のもとに、見守っていた仲間たちが駆け寄り声をかける。

「おめでとう!」

「世界の京極だよ!」

「アリーナでアイコン実装されたら絶対使うよ!」(ここ数年、世界選手権の期間中には出場者たちの写真を使用したアイコンが選択可能となる)

 「実感が湧かないよ」と苦笑する京極だが、あなたは間違いなく選ばれしプレイヤーだけが世界選手権の資格を手にしたのだ。

 その祝福は誰よりも最初に声をかけた、対戦相手の村栄の言葉がふさわしい。

村栄「世界選手権出場、おめでとうございます」

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