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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ グランプリ・神戸2015特集!
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ グランプリ・神戸2015特集!
こんにちは。晴れる屋の津村です。
先週末に、今年最後の国内グランプリである「グランプリ・神戸2015」が終了しました。2015年の大型イベントも終了し、スタンダードも一段落といったところですが、今週は現環境の総決算と言えるグランプリの結果を振り返ってみたいと思います。事前の予想では「アブザン・アグロ」一色になるのではないかと危惧されていた大会ですが、果たして結果のほどやいかに。
それでは、まずはトップ8に残ったデッキをご覧ください。
「グランプリ・神戸2015」トップ8デッキ
- 優勝・「アタルカ・レッド」
- 準優勝・「エスパー・戦士」
- 3位・「エスパー・ドラゴン」
- 4位・「エスパー・メンター」
- 5位・「アブザン・アグロ」
- 6位・「青緑エルドラージ・ランプ」
- 7位・「エスパー・トークン」
- 8位・「エスパー・ドラゴン」
「グランプリ・神戸2015」の主役となったのは、色とりどりの「エスパー」デッキでした。「グランプリ・神戸2015」の前週に開催された「グランプリ・ブリュッセル2015」を制した「エスパー・ドラゴン」を筆頭に、「エスパー・トークン」や新顔の「エスパー・メンター」など豊かな顔ぶれが並びます。
注目されていた「アブザン・アグロ」は、トップ8にわずか1名。2日目進出率では、全体の40%以上(アブザン・アグロのみでも35%)と圧倒的な数字をたたき出したものの、多くのプレイヤーが「アブザン・アグロ」用のサイドボードカードを増やしたり、デッキの構成で有利を付けたりと、研究が進んできたことが敗因でしょうか。かくいう僕も「アブザン・アグロ」を使用し、6勝3敗で初日落ちと振るいませんでした。
今週は「グランプリ・神戸2015」を彩った、各種「エスパー」デッキを中心にお届けいたします。まずは前評判の高かった「エスパー・ドラゴン」から。
「エスパー・ドラゴン」
1 《平地》 5 《島》 1 《沼》 3 《大草原の川》 3 《窪み渓谷》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 1 《血染めのぬかるみ》 3 《乱脈な気孔》 1 《精霊龍の安息地》 -土地(26)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《龍王オジュタイ》 2 《龍王シルムガル》 -クリーチャー(10)- |
2 《強迫》 4 《シルムガルの嘲笑》 3 《絹包み》 3 《忌呪の発動》 1 《苦い真理》 1 《破滅の道》 1 《風への散乱》 2 《完全なる終わり》 2 《命運の核心》 4 《時を越えた探索》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -呪文(24)- |
2 《アラシンの僧侶》 1 《黄金牙、タシグル》 2 《強迫》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《自傷疵》 1 《絹包み》 1 《正義のうねり》 1 《究極の価格》 3 《僧院の導師》 -サイドボード(15)- |
この度の入賞で、通算27回目のトップ8入りを記録した中村(修平)さん。彼が持ち込んだのは、比較的オーソドックスなリストの「エスパー・ドラゴン」でした。「グランプリ・ブリュッセル2015」を制したリスト(前回の記事参照)と比べると、大きな変化が加わったのは除去の選択です。
「エスパー・ドラゴン」は、《忌呪の発動》を多用する関係で《搭載歩行機械》を苦手とするデッキのひとつです。《絹包み》は《搭載歩行機械》を最も効率よく対処できるカードであり、他にも《ヴリンの神童、ジェイス》や《竜使いののけ者》を《オジュタイの命令》の恐怖に怯えることなく対処することができます。
《絹包み》の天敵である《ドロモカの命令》が流行っていることは懸念材料ですが、コントロールデッキなら時間を稼ぐだけでも十分な働きと言えますし、1枚目の《絹包み》で《搭載歩行機械》を追放してしまえば、《ドロモカの命令》を無効化することも可能です。
また、このリストには長期戦の備えとして《苦い真理》と《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》が採用されているのが特徴的です。
《苦い真理》はここ最近で評価を上げてきたカードで、追加の《時を越えた探索》のような役割が期待できます。長期戦で放たれる《苦い真理》のインパクトは、《宝船の巡航》や《時を越えた探索》のそれに近いものがあるので、今後も長期戦を得意とするデッキが多いのであればさらに露出も増えるでしょう。
《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》も中長期戦に強いカードですが、こちらはクリーチャー除去とフィニッシャーの役割も兼ねています。ミラーマッチでは《忌呪の発動》があるために、「呪禁」を持った《龍王オジュタイ》すらも容易に対処されてしまいますが、「プレインズウォーカー」は対処法がより限定的なので、一度着地に成功さえすれば大きくリードすることができます。
上記2種類のカードのデメリットとしてライフの損失が挙げられますが、そこは《忌呪の発動》と《乱脈な気孔》がしっかりとカバーしてくれます。《忌呪の発動》や《真面目な訪問者、ソリン》など、デッキの方向性により手段は異なりますが、このように何かしらのライフ回復手段と併用できると理想的です。
1 《平地》 4 《島》 2 《沼》 2 《大草原の川》 4 《窪み渓谷》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 1 《血染めのぬかるみ》 4 《乱脈な気孔》 1 《精霊龍の安息地》 -土地(27)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《龍王オジュタイ》 2 《漂う死、シルムガル》 -クリーチャー(10)- |
4 《シルムガルの嘲笑》 2 《意思の激突》 2 《究極の価格》 4 《忌呪の発動》 3 《風への散乱》 2 《苦い真理》 3 《完全なる終わり》 3 《時を越えた探索》 -呪文(23)- |
3 《アラシンの僧侶》 3 《強迫》 2 《払拭》 2 《正義のうねり》 1 《絹包み》 1 《究極の価格》 1 《悪性の疫病》 2 《命運の核心》 -サイドボード(15)- |
もうひとつトップ8に残った「エスパー・ドラゴン」は、メインデッキからカウンター呪文を9枚も搭載した意欲作。序盤は1対1するカードで耐え凌ぎ、そこから《龍王オジュタイ》、《苦い真理》、《時を越えた探索》といったカードに繋げてゲームを掌握します。序盤から対戦相手の脅威をしっかりと対処していくことを念頭においているためか、この手のデッキの必須パーツとされていた《命運の核心》は採用されていません。
《命運の核心》はミラーマッチで弱く、他のマッチアップでも《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》に対して無力であったり、隙が大きいことから採用を見送られたのではないかと思います。全体除去を採用していないため、《搭載歩行機械》や《軍族童の突発》への耐性が気になるところですが、このリストは《漂う死、シルムガル》がその役割を担います。
最近では《龍王シルムガル》が定着していたこのスロット。《龍王シルムガル》は生き残れば勝ち、そうでなければ負け、というハイリスク・ハイリターンなカードで、一方の《漂う死、シルムガル》は実に堅実なブロッカー兼アタッカーとして機能してくれます。どちらにも長所と短所があるものの、メインデッキに《強迫》を採用しないこのような形を検討するのであれば、《漂う死、シルムガル》を優先する十分な理由になると思います。
「グランプリ・ブリュッセル2015」に引き続き、その力を存分に見せつけてくれた「エスパー・ドラゴン」でしたが、今大会で最も大きな注目を集めたのはこのデッキでしょう。
「エスパー・メンター」
2 《平地》 1 《島》 2 《沼》 2 《大草原の川》 1 《窪み渓谷》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 1 《進化する未開地》 4 《コイロスの洞窟》 4 《乱脈な気孔》 -土地(25)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《道の探求者》 4 《僧院の導師》 2 《龍王オジュタイ》 -クリーチャー(14)- |
4 《強迫》 2 《蔑み》 2 《勇敢な姿勢》 1 《絹包み》 1 《究極の価格》 2 《破滅の道》 2 《残忍な切断》 2 《宝船の巡航》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《真面目な訪問者、ソリン》 -呪文(21)- |
2 《白蘭の騎士》 2 《層雲の踊り手》 1 《払拭》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《自傷疵》 2 《正義のうねり》 1 《見えざるものの熟達》 1 《絹包み》 1 《究極の価格》 1 《次元の激高》 -サイドボード(15)- |
《僧院の導師》を軸に構築された「エスパー・メンター」。詳細は異なるようですが、この度見事にトップ4を射止めた高尾君だけでなく、市川 ユウキさん、やまけん(山本 賢太郎)さんや行弘(賢)君など、名立たる強豪プレイヤーもこのアーキタイプを選択しています。このデッキは先ほどの「エスパー・ドラゴン」と同じカラーリングとは思えないほどに前のめりなデッキで、《ヴリンの神童、ジェイス》・《僧院の導師》・《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で積極的に仕掛けていく構成になっています。
上記2種類のカードは、どちらも1枚でゲームを決めうるだけの力を持っていますが、スタンダードではほとんど使用されることのなかった《僧院の導師》の活躍に驚いた方も多いのではないでしょうか。《僧院の導師》はこれまではなかなかフィットするデッキが見つからなかったこと、さらには「アタルカ・レッド」や「ダーク・ジェスカイ」が大量の軽量火力を積んでいることが懸念材料でした。
しかしながら、ここにきて「ダーク・ジェスカイ」が大幅に数を減らし、大本命とされる「アブザン・アグロ」に効果的なカードということでようやく活躍の機会を得たようです。「アブザン・アグロ」は《ヴリンの神童、ジェイス》に触れない展開が多いことからも分かるように、《アブザンの魔除け》で追放できない序盤の脅威に対して手を焼く傾向にあります。これほどまでに軽いクリーチャーだと、《ドロモカの命令》の「格闘」モードが使用できる前に登場することも多いですし、一度アンタップさえできれば、除去を駆使して戦場を「モンク・トークン」で埋め尽くすことができます。
もとよりカードパワーに定評のあった《僧院の導師》。《ヴリンの神童、ジェイス》と《僧院の導師》を連打すれば、どちらかが生き残って有利に試合を運べることも多いですし、《強迫》があれば有無を言わさぬゲーム展開も演出可能です。
このデッキの爆発力は「アブザン・アグロ」に勝るとも劣らないものですし、今後新たなる攻撃的なデッキとしてスタンダードに定着していくのではないでしょうか。《引き裂く流弾》はこのデッキにとって致命的なので、もしも《強迫》だけで足りないようであれば、《黄金牙、タシグル》なんかを採用してもいいと思います。
「エスパー・戦士」
4 《平地》 3 《沼》 1 《大草原の川》 1 《窪み渓谷》 4 《溢れかえる岸辺》 1 《吹きさらしの荒野》 4 《汚染された三角州》 4 《コイロスの洞窟》 2 《乱脈な気孔》 -土地(24)- 4 《血に染まりし勇者》 4 《マルドゥの悲哀狩り》 2 《アクロスの英雄、キテオン》 4 《血顎の憤怒鬼》 4 《刃の隊長》 4 《マルドゥの急襲指揮者》 2 《不毛の地の絞殺者》 -クリーチャー(24)- |
4 《絹包み》 3 《勇敢な姿勢》 3 《停滞の罠》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(12)- |
1 《不毛の地の絞殺者》 3 《軽蔑的な一撃》 2 《見えざるものの熟達》 2 《荒野の確保》 2 《精神背信》 2 《究極の価格》 1 《否認》 1 《勇敢な姿勢》 1 《停滞の罠》 -サイドボード(15)- |
トップ8で最も異彩を放っていたのがこの「エスパー・戦士」。3色なので分類上は「エスパー」としていますが、青い要素はサイドボードのカウンター呪文のみの「白黒ビートダウン」です。
このデッキの基本戦略は、大量の1マナ域から手数で相手を圧倒するのみ。一直線のビートダウンなので特筆することもありませんが、見た目以上に対処が難しいのがこのデッキの売りです。
《血顎の憤怒鬼》は除去を絡めることで、自軍のクリーチャーをほぼアンブロッカブルにできる強力なクリーチャーであり、このデッキと対峙する場合に最も注意したいカードです。《僧院の導師》と同様の理由で、「アブザン・アグロ」が対処しづらい類のカードですし、「アブザン・アグロ」を含む、ダメージレースをするマッチアップ全般で重宝します。
Magic Onlineでは《アラシンの先頭に立つ者》の入ったバージョンをよく見かけますが、不採用となった理由は「アタルカ・レッド」系のデッキを意識した結果でしょうか。このデッキの使用者であるジョー・ソー/Joe Sohさんは、このデッキを使用した理由を「プレイしていて楽しいから」と答えていますし、古典的なビートダウンデッキがお好きな方はぜひお試しください。
「エスパー・トークン」
4 《平地》 3 《沼》 2 《大草原の川》 1 《窪み渓谷》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 3 《コイロスの洞窟》 4 《乱脈な気孔》 1 《磨かれたやせ地》 -土地(26)- 4 《搭載歩行機械》 4 《白蘭の騎士》 3 《風番いのロック》 -クリーチャー(11)- |
4 《絹包み》 3 《荒野の確保》 1 《究極の価格》 2 《苦い真理》 1 《破滅の道》 2 《完全なる終わり》 3 《残忍な切断》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 2 《真面目な訪問者、ソリン》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -呪文(23)- |
3 《アラシンの僧侶》 1 《龍王シルムガル》 3 《強迫》 2 《払拭》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 1 《究極の価格》 1 《衰滅》 1 《対立の終結》 -サイドボード(15)- |
「エスパー」デッキの最後を飾るのは、これまでなかなか紹介する機会のなかった「エスパー・トークン」です。「Magic Online Championship Series」準優勝、「グランプリ・インディアナポリス2015」準優勝など、着実に成果を残しています。
基本的には除去とプレインズウォーカーを駆使したボードコントロールデッキで、対戦相手の攻撃を止めたら《荒野の確保》や《風番いのロック》で攻勢に転じます。
もともとは「ダーク・ジェスカイ」に強いデッキとされていたため、「ダーク・ジェスカイ」の減少に伴い、デッキの優位性を多少損なってしまった感は否めませんが、まだまだ一線級のデッキであることに変わりはありません。コントロールや「エルドラージ・ランプ」を苦手とするデッキなので、前者には《苦い真理》や《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》の増量で、後者には《無限の抹消》やカウンター呪文で対応するといいと思います。
「アタルカ・レッド」
8 《山》 1 《森》 2 《燃えがらの林間地》 4 《樹木茂る山麓》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《吹きさらしの荒野》 -土地(21)- 4 《僧院の速槍》 3 《鐘突きのズルゴ》 2 《稲妻の狂戦士》 4 《ケラル砦の修道院長》 -クリーチャー(13)- |
4 《タイタンの力》 3 《乱撃斬》 2 《焦熱の衝動》 4 《アタルカの命令》 4 《ドラゴンの餌》 3 《ティムールの激闘》 3 《軍族童の突発》 3 《強大化》 -呪文(26)- |
2 《カラデシュの火、チャンドラ》 4 《引き裂く流弾》 1 《焦熱の衝動》 4 《焙り焼き》 2 《反逆の行動》 1 《軍族童の突発》 1 《前哨地の包囲》 -サイドボード(15)- |
だいぶ紹介が遅くなってしまいましたが、この度優勝を掴み取ったのは、諸藤さんが操る「アタルカ・レッド」でした。既存のリストからこれと言った変化はありませんでしたが、ミラーマッチを含む多くのマッチで活躍する《軍族童の突発》が増量され、サイドボードには4枚目も用意されています。
サイドボードには《引き裂く流弾》、《焙り焼き》がともに4枚と、しっかりと「エスパー」と「アブザン・アグロ」を意識していたことが分かります。
また、「エスパー・ドラゴン」などのコントロールデッキは、このデッキに対しては重い《完全なる終わり》をサイドアウトしたいため、《前哨地の包囲》は非常に有効なプランだったと思います。今後も「エスパー・ドラゴン」が同様の活躍を見せるのであれば、増量を検討してもいいでしょう。
今大会では、「アタルカ・レッド」へのマークが特に緩くなっているようには感じられませんでしたが、それでも勝ち切ってしまうあたり、昨今の「赤単」系のデッキの地力の高さを感じます。「アタルカ・レッド」は今後も間違いなく上位に存在し続けるデッキなので、可能な限り対策を怠りたくないですね。
「青緑エルドラージ・ランプ」
8 《森》 3 《島》 1 《大草原の川》 3 《吹きさらしの荒野》 4 《伐採地の滝》 4 《見捨てられた神々の神殿》 -土地(23)- 4 《葉光らせ》 4 《爪鳴らしの神秘家》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 4 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー(14)- |
3 《ニッサの巡礼》 4 《爆発的植生》 4 《ニッサの復興》 4 《水の帳の分離》 2 《時を越えた探索》 2 《深海の主、キオーラ》 4 《精霊龍、ウギン》 -呪文(23)- |
4 《ジャディの横枝》 2 《破滅の伝導者》 1 《虚空の選別者》 3 《払拭》 4 《カル・シスマの風》 1 《ウギンの聖域》 -サイドボード(15)- |
今では一般的なスタンダードのデッキとして定着した「エルドラージ・ランプ」。前回のリストから《ジャディの横枝》と《搭載歩行機械》が不採用となり、代わりに《葉光らせ》と《爪鳴らしの神秘家》を搭載することで、安定性と爆発力を高めています。
そして、今回結果を残した形は、2色目に赤ではなく青を選んだタイプでした。《深海の主、キオーラ》によるマナ加速や、《時を越えた探索》での手札補充なども青ならではの魅力ですが、青を選ぶ最大の動機は《水の帳の分離》でしょう。
《水の帳の分離》は「覚醒」モードでフィニッシャーの役割を担うのみならず、《精霊龍、ウギン》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をいち早くキャストするのにも貢献します。特に《精霊龍、ウギン》が1ターン早まれば、対戦相手の計算を大きく狂わせることができますし、ゲームの勝敗に直結しかねない重要な仕事を果たすことも。フィニッシャーとしての役割に関しては、とりわけサイドボード後に《無限の抹消》で《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を追放された際に重宝します。
また、サイドボードに潜む《破滅の伝導者》にも要注目です。《破滅の伝導者》はミラーマッチの行方を左右する《虚空の選別者》をサーチ可能で、ミラーマッチではクリーチャーが軽くなる能力も無視できません。対処法が限られていることもあり、ミラーマッチ対策は《虚空の選別者》とのセットが一般的になっているようです。
「アブザン・アグロ」
2 《平地》 2 《森》 2 《梢の眺望》 1 《窪み渓谷》 1 《燻る湿地》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《樹木茂る山麓》 4 《乱脈な気孔》 2 《ラノワールの荒原》 -土地(26)- 4 《始まりの木の管理人》 3 《棲み家の防御者》 3 《搭載歩行機械》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《包囲サイ》 2 《風番いのロック》 -クリーチャー(20)- |
3 《ドロモカの命令》 1 《究極の価格》 4 《アブザンの魔除け》 2 《残忍な切断》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(14)- |
1 《黄金牙、タシグル》 2 《強迫》 3 《自傷疵》 3 《絹包み》 3 《精神背信》 1 《究極の価格》 1 《無限の抹消》 1 《苦い真理》 -サイドボード(15)- |
事前の予想で、大本命と目されていた「アブザン・アグロ」。冒頭でも述べたように、2日目に占める割合は3分の1以上(参考)と他を大きく引き離して1位となっていますが、それだけにトップ8に1名という結果は少し寂しくも見えてしまいます。
ただし、このリストを使用された高平さんは、予選ラウンドを14勝0敗1分と圧倒的なスコアで駆け抜けていますし、「エスパー・ドラゴン」や「アタルカ・レッド」と同様に、今後もスタンダードを牽引するデッキであり続けるでしょう。このリストはメインデッキは基本に忠実な構成ですが、サイドボードにはミラーマッチ過多を見越した3枚の《自傷疵》や、「エルドラージ・ランプ」と「4色《先祖の結集》コンボ」デッキに劇的な《無限の抹消》、そしてコントロール全般に効果的な《苦い真理》が目を引きます。
《苦い真理》に関しては、今回の連載でも何度も登場しているように、黒くて3色以上のデッキであればどんなデッキでも使う可能性があると思います。非常に使い勝手の良いカードですので、まだ使用されたことのない方はぜひお試しください。
「今週の一押し~《龍王オジュタイ》・アブザン~」
2 《森》 1 《平地》 1 《沼》 1 《梢の眺望》 1 《大草原の川》 1 《燻る湿地》 1 《窪み渓谷》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《溢れかえる岸辺》 2 《汚染された三角州》 4 《樹木茂る山麓》 2 《ラノワールの荒原》 1 《乱脈な気孔》 -土地(25)- 4 《始まりの木の管理人》 4 《爪鳴らしの神秘家》 2 《棲み家の防御者》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《包囲サイ》 3 《放浪する森林》 2 《龍王オジュタイ》 1 《龍王シルムガル》 1 《黄金牙、タシグル》 -クリーチャー(25)- |
3 《頑固な否認》 2 《ドロモカの命令》 3 《アブザンの魔除け》 2 《残忍な切断》 -呪文(10)- |
1 《棲み家の防御者》 1 《黄金牙、タシグル》 1 《頑固な否認》 4 《自傷疵》 4 《絹包み》 2 《精神背信》 2 《影響力の行使》 -サイドボード(15)- |
過去には市川さんのテストパートナーとして、ゲスト解説を務めたこともある杉山さん(プロツアー『マジック2015』3日目)。いつも独創的なデッキを持ち込むことでも知られていますが、今回の作品は「アブザン・ブルー」に《龍王オジュタイ》の入った力作でした。
徐々に環境に《風番いのロック》が弱い相手が増えてきたと思いますが、まさかその枠を《龍王オジュタイ》に入れ替えるとは思いもしませんでした。《先頭に立つもの、アナフェンザ》が《龍王オジュタイ》や《龍王シルムガル》に、せっせと+1/+1カウンターを乗せている光景はどこかシュール......。
《頑固な否認》や《残忍な切断》など予測しづらい呪文が多いため、「ダーク・ジェスカイ」ほどではないにしろ、このデッキも戦いにくいものだと思います。もしかすると「アブザン・アグロ」にも変化が必要な時期が迫っているかもしれないので、「アブザン・ブルー」やその亜種を試そうとお考えの方は、ぜひ杉山さんのリストをお試しいただければと思います。
終わりに
今週のスタンダード・アナライズは以上です。「エスパー・メンター」、「エスパー・戦士」に「青緑エルドラージ・ランプ」と、スタンダードの可能性を感じさせてくれる結果となりましたね。僕は「アブザン・アグロ」を使って「グランプリ・ブリュッセル2015」・「グランプリ・神戸2015」と連続で初日落ちしてしまいましたが、反省できるところはしっかりと反省して、来月の「ワールド・マジック・カップ2015」をがんばりたいと思います。
「ワールド・マジック・カップ2015」のフォーマットは、「チーム・シールド」と「チーム・スタンダード」です。「チーム・スタンダード」はチーム内で同じカードが4枚までしか使えないということで、5種類のフェッチランドをどう振り分けるかが勝負の分かれ目となりそうです。
こんなマニアックなフォーマットを極めている方はまずいらっしゃらないかと思いますが、もし、万が一いらっしゃいましたらご連絡ください(笑)
それでは、また次回の連載でお会いしましょう。
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