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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

デザインファイル:『オデッセイ』その1

Mark Rosewater
authorpic_markrosewater.jpg

2025年9月22日

 

 一年前、私は「デザインファイル」という新シリーズを始めた。このシリーズでは、デザインの最終段階で渡されたカードを取り上げ、それに関する私自身のコメントを紹介している。

 これまでに以下の2セットを紹介した。

デザインファイル:『テンペスト』(その1その2その3)(リンク先は英語)

デザインファイル:『ウルザズ・デスティニー』(その1その2その3

 今回は、私がデザインを主導したスタンダード対応セットとしては3セット目にあたる『オデッセイ』について語ろうと思う。最初の章では『オデッセイ』に実際に収録されたカードを扱う。その後の章では収録されなかったカードを紹介するが、その中の何枚かは後に別の形で印刷されることとなった。

 カードの紹介に入る前に、当時のマジックのデザインについてひと言述べておきたい。『オデッセイ』ブロックは、私が「マジック・デザインの第2の時代」と呼んでいる時期の2つ目のブロックである(時代についての詳細はこの記事を参照)。この時代から、ブロックにメカニズム的なテーマが設定され始めた頃である。『オデッセイ』の直前にあった『インベイジョン』ブロックは多色カードがテーマであった。『オデッセイ』は墓地がテーマであった。このセットが作られたのは、現在の「先行デザイン」「展望デザイン」「セット・デザイン」「プレイ・デザイン」といった体制が整う以前の、デザインとデベロップの二分制で作業していた時代である。


 

CG08_XR
ドルイドの抒情詩人
{G}
クリーチャー ― ドルイド
1/1
{G}, {T}, [カード名]を生け贄に捧げる:エンチャント1つを対象とし、それを破壊する。

UU15_XR
説得
{3}{U}{U}
エンチャント(クリーチャー)
あなたはエンチャントされているクリーチャーをコントロールする。

CW20_XR
考え直し
{4}{W}
インスタント
攻撃クリーチャー1体を対象とし、それを追放する。カードを1枚引く。

 この3枚のカードは、デザイン・ファイルに記載されたバージョンと印刷バージョンがまったく同一である。ルール・テキストが同じなのはもちろん、マナ・コストも同じであり《ドルイドの抒情詩人》はパワーとタフネスも同じでカード名すら変更されなかった。これは「ユニバースビヨンド」セットを除けば滅多にないことである。もっとも、これには舞台裏の理由がある。

 『オデッセイ』制作当時、クリエイティブ・チームは現在よりもかなり規模が小さかった。『オデッセイ』のデザインが始まる直前に、クリエイティブ・チームの最後の2人がウィザーズを去ったのだ。当時の主任デザイナーであったビル・ローズ/Bill Roseが、私に『オデッセイ』の物語とカードのクリエイティブ要素(名前やフレイバーテキスト)をリードするよう依頼してきた。私は『ウェザーライト・サーガ』初期の頃にクリエイティブ・テキストに深く関わっており、『Unglued』では(セットただ一人のデザイナーとして)クリエイティブとデザインの両方を担当していた。そうした経緯もあり、私は『オデッセイ』のクリエイティブ・テキスト開発をリードすることになったため、カード名はデザイン段階で先に確定していることが多かったのである。


 

CW02_XR
〈安全なるモンク〉
{3}{W}
クリーチャー ― クレリック
1/4
あなたがコントロールする他のクリーチャーは+0/+1の修正を受ける。

RA12_XR
〈月の指輪〉
{4}
アーティファクト
あなたのライブラリーの一番上のカード1枚をあなたの墓地に置く:これにより公開したカードのマナ・コストの色マナ・シンボル1つにつき、あなたのマナ・プールにその色のマナ1点を加える。

RL02_XR
〈アーティファクトの隠れ家〉
土地
{C}
{t}:あなたのマナ・プールに、無色のマナ1点を加える。
{1}, {T}:対象の土地1つをアンタップする。

RB12_XR
〈冥府の教示者〉
{2}{B}{B}
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは自分のライブラリーからカードを1枚探し、それを自分の手札に加える。その後、そのプレイヤーは自分のライブラリーを切り直す。

RG02_XR
〈肉食竜の群れ〉
{3}{G}{G}
クリーチャー ― ビースト
4/4
トランプル
[カード名]は、あなたの墓地にカードが存在しないかぎり、+4/+4の修正を受ける。

UG03_XR
〈木の精霊〉
{X}{G}
クリーチャー ― エレメンタル
0/0
[カード名]は、それの上に+1/+1カウンターがX個置かれた状態で場に出る。

CW18_XR
〈幸福〉
{1}{W}
インスタント
対象のプレイヤー1人は4点のライフを得て、その後、墓地にある名前が[カード名]のカード1枚につき追加で4点のライフを得る。

 

CB18_XR
〈ヨーグモスへの賛歌〉
{1}{B}
ソーサリー
対象のプレイヤー1人は自分の手札を公開し、土地でないカード1枚を捨てる。その後、墓地にある[カード名]1枚につき、自分の手札から土地でないカードを追加で1枚捨てる。

RR04_XR
〈地雷の設置者〉
{3}{R}
クリーチャー ― ドワーフ
1/1
{1}{R}, {T}:対象の土地1つに鉱山カウンター1個を置く。
鉱山カウンターが置かれている土地1つがタップされるたび、その土地を破壊する。
[カード名]が場を離れたとき、すべての鉱山カウンターを取り除く。

UB09_XR
〈ネクラトグ〉
{1}{B}{B}
クリーチャー ― エイトグ
1/2
あなたの墓地のクリーチャー・カード1枚を追放する:[カード名]はターン終了時まで+2/+2の修正を受ける。

RB10_XR
〈死のリッチ〉
{B}{B}{B}{B}
エンチャント
あなたがライフを1点失う場合、代わりにあなたの墓地のカード1枚を追放する。
あなたがライフを1点得る場合、代わりにカードを1枚引く。
あなたの墓地にカードがない場合、あなたはゲームに敗北する。
[カード名]が場を離れた場合、あなたはゲームに敗北する。

RG09_XR
〈リス飼い〉
{5}{G}
クリーチャー ― ドルイド
1/1
あなたのアップキープの開始時、緑の1/1のリス・クリーチャー・トークン1体を場に出す。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、すべてのリスは+2/+2の修正を受ける。

UG14_XR
〈復活の接触〉
{G}
ソーサリー
あなたの墓地にあるクリーチャー・カードを好きな枚数選び、それらをあなたのライブラリーに加えて切り直す。

RB16_XR
〈占骨術〉
{X}{B}{B}
ソーサリー
あなたの墓地にあるカードを最大X枚まで追放する。これにより取り除いたカード1枚につき、カードを1枚引く。

 

UW11_XR
〈霊魂の絆〉
{2}{W}
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。このターンにそのクリーチャーが与えたダメージに等しい点数のライフを得る。
カードを1枚引く。

UG11_XR
〈伝承の獣〉
{1}{G}{G}
エンチャント
{G}{G}:[カード名]はターン終了時まで緑の4/3のクリーチャーになる。

CG20_XR
〈森の誇り〉
{1}{G}
インスタント
回収{2}{G}{G}(このカードがあなたの墓地にある場合、あなたはこれをあなたの手札にあるかのようにプレイしてもよい。そうしたなら、これのマナ・コストは{2}{G}{G}であり、呪文の効果の一部として、これを追放する。)
クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+2/+2の修正を受け、トランプルを得る。

RB11_XR
〈冥府の契約〉
{1}{B}
インスタント
あなたのライブラリーの一番上のカードを公開する。あなたはそのカードをあなたの手札に加えてもよい。そうしない場合、次のカードを公開する。あなたがカードを手札に加えるか、カードが重複するまで、この手順を繰り返す。あなたがカードを手札に加えた場合、これにより公開された他のすべてのカードをあなたの墓地に置く。重複したカードを公開した場合、これにより公開されたすべてのカードを追放する。

CG02_XR
〈樹上のレインジャー〉
{2}{G}
Creature — Ape
クリーチャー ― 類人猿
2/2
[カード名]は飛行を持つクリーチャーにしかブロックされない。

RG11_XR
〈自然の返答〉
{4}{G}
エンチャント
緑のクリーチャーが1体場から墓地に置かれるたび、そのクリーチャーのコントローラーは自分のライブラリーからそのクリーチャー・カードと同じカードを1枚探し、それを場に出してもよい。その後、そのプレイヤーは自分のライブラリーを切り直す。

UB15_XR
〈闇の小道〉
{3}{B}
ソーサリー
あなたの墓地のクリーチャー・カード1枚を対象とし、それを場に出す。

 これらのカードは、印刷されたバージョンにかなり近いものである。名前やクリーチャー・タイプといったクリエイティブ要素がいくつか変更され、テンプレートも多少手直しされたが、大部分においては、印刷されたカードは我々が引き渡したデザインに似通っている。当時はデザイン期間が丸1年あった時代であることを思い出してほしい。したがって、この引き渡しは、現代の展望デザインからの引き渡しに比べると、完成度がかなり進んだ段階にあった。また、これらのカードの多くが黒と緑であることも興味深い点である。そして、デザイン段階では「フラッシュバック」の名称が「回収/salvage」であったことも確認できる。


 

UG10_XR
〈吠える獣〉
{4}{G}{G}
クリーチャー ― ビースト
3/4
{G}, カードを1枚捨てる:[カード名]はターン終了時までトランプルを得る。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、[カード名]は+2/+2の修正を受け、呪文や能力の対象にならない。

CW07_XR
〈祝福された癒し手〉
{2}{W}
クリーチャー ― クレリック
1/1
{T}:このターン、対象のクリーチャー1体かプレイヤー1人に与えられる次のダメージを2点軽減する。
スレッショルド — あなたの墓地にカードが10枚以上ある場合、代わりに次のダメージを4点軽減する。

UA03_XR
〈構築物ジャガーノート〉
{4}
アーティファクト・クリーチャー
2/3
[カード名]は、壁にブロックされない。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、[カード名]は+3/+0の修正を受け、毎ターン可能ならば攻撃する。

CG15_XR
〈エルフの熊人間〉
{1}{G}
クリーチャー ― エルフ
1/1
{T}:あなたのマナ・プールに{G}を1点加える。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、[カード名]は+3/+3の修正を受ける。

 これら4枚は、スレッショルドを持つデザインのカードであり、印刷されたカードとその点については一致している。ただし、大きな違いがひとつある。この引継ぎ当時、スレッショルドは墓地に10枚のカードがあることを参照していたのである。おもしろいことに、リチャードが最初に閾値メカニズムを提案したときには、確か7枚を基準にしていたはずだ。しかしデザイン段階で数をいじったのだろう。そして最終的にはデベロップが7枚に戻すことになった。一時期は小さい閾値(4枚)と大きい閾値(7枚)の二種類を試したこともあったが、2つの閾値を同時に管理するのは難しすぎると分かった。

 では、ここからはもう少し変化のあったカードを見ていこう。


 

RW17_XR
〈贈与のバザール〉
{1}{W}{W}
エンチャント
呪文がプレイされるたび、その呪文のコントローラーの各対戦相手は、墓地にあるその呪文と同じ名前のカード1枚につき5点のライフを得る。

RB17_XR
〈戦慄のバザール〉
{1}{B}{B}
エンチャント
呪文がプレイされるたび、その呪文のコントローラーは墓地にあるその呪文と同じ名前のカード1枚につき、手札からカードを1枚捨てる。

RG17_XR
〈ファンガスのバザール〉
{1}{G}{G}
エンチャント
呪文がプレイされるたび、その呪文のコントローラーは墓地にあるその呪文と同じ名前のカード1枚につき土地を1つ生け贄に捧げる。

RR17_XR
〈痛みのバザール〉
{1}{R}{R}
エンチャント
呪文がプレイされるたび、[カード名]は墓地にあるその呪文と同じ名前のカード1枚につき、その呪文のコントローラーに3点のダメージを与える。

RU17_XR
〈霊気のバザール〉
{1}{U}{U}
エンチャント
各呪文をプレイするコストは、墓地にあるその呪文と同じ名前のカード1枚につき、任意の色1色のマナ2点が追加される。

 まずは祭殿サイクル(元々は「バザール/Bazaar」サイクルと呼ばれていた)から始めよう。基本的なアイデアはデザインから印刷まで引き継がれている。これらは、不特定色のマナ1マナと特定の色マナ2マナを必要とするエンチャントである。これらのカードは、プレイヤーが呪文を唱えるたびに誘発する能力を持ち、その呪文がいずれかの墓地にあるカードと一致するなら効果を発揮する。ここで重要なのは、この能力はエンチャントのコントローラーだけでなくすべてのプレイヤーが呪文を唱えた場合に誘発し、参照する墓地もすべての墓地であるという点である。当時はまだ初期の『マジック』文化であり、効果が全員に及ぶのが標準的であった。

 白の祭殿は印刷版もライフを得させるが、印刷されたバージョンでは獲得できるライフの量が大幅に下げられた。デザイン時には1枚につき5点だったのが、印刷時には1点になったのである。プレイテストの結果、呪文を唱えるだけで時に15点ものライフを得られるのは過剰であることが分かった。青の祭殿も印刷時に弱体化されたが、効果自体は変わっていない。墓地にある同名カード1枚につき呪文のコストを増やす点は同じだが、1枚につき{2}ではなく{1}だけ増える形に修正された。これは、このサイクルが主にカジュアル向けに作られていたためである。

 黒の祭殿はテンプレートが変更されたものの、基本的には同じカードである。赤の祭殿はダメージが3点から2点に減らされた。緑の祭殿は最大の変更を受けた。当初は土地破壊を行っていたが、これは非常につまらないものであった。そこで印刷版では1/1の緑のリス・トークンを生成するようになった。なぜリスなのか? 当時、私はセットのクリーチャー・タイプを担当しており、新しいクリーチャー・タイプを試してみるのも良いと考えたのだ。そこで緑は従来のエルフではなく、昆虫やリスを生み出すようにした。ちなみに、この判断を下した時点で、次のセットが強いタイプ的テーマを持つことは知らなかった。当然のことながら、それはいくつかの問題を引き起こすこととなった。

 振り返ってみると、このサイクルのデザインには大きな欠陥があった(そしてこれらを最初にデザインしたのは私である)。白と緑は同じカードを複数枚使うと利益が得られる一方で、青・黒・赤はそれを罰するようになっていたのだ。本来であればサイクル全体が同じ方向に寄せられるべきだった。つまり、全てが「利益」か、全てが「罰する」か、いずれかにすべきだったのである。両方の方向性を同時に含めてしまったことで、「同じカードを複数枚採用すべきか否か」という点でプレイヤーに奇妙なメッセージを送ってしまった。おそらくサイクルの意図は、プレイヤーにデッキをより多様化させることを促すことだったはずであり、その意味では「同じカードを複数枚を使うことを罰する」方向で統一するのが正しい選択だったと考えている。


 

RW08_XR
〈オーラのスピリット〉
{2}{W}
クリーチャー ― スピリット
*/*
飛行
攻撃しても[カード名]はタップしない。
[カード名]のパワーとタフネスはそれぞれ、あなたの墓地にあるエンチャント・カードの枚数に等しい。

RU07_XR
〈はためく幻影〉
{3}{U}
クリーチャー ― イリュージョン
*/*
飛行
[カード名]のパワーとタフネスはそれぞれ、あなたの墓地にあるインスタント・カードの枚数に等しい。

RB04_XR
〈骨の精霊〉
{1}{B}{B}
クリーチャー ― エレメンタル
*/*
[カード名]のパワーとタフネスはそれぞれ、対戦相手の墓地にあるクリーチャー・カードの枚数に等しい。

RG04_XR
〈古代の精霊〉
{3}{G}{G}
クリーチャー ― エレメンタル
*/*
[カード名]のパワーとタフネスはそれぞれ、すべてのプレイヤーの墓地にあるクリーチャー・カードの枚数に等しい。
{1}{G}, あなたの墓地にあるクリーチャーを1体追放する:[カード名]はターン終了時まで+2/+2の修整を受ける。

 奇妙に聞こえるかもしれないが、これらはもともとサイクルとして始まったわけではない。『オデッセイ』は墓地を中心としたセットだったため、我々は墓地をさまざまな形で参照する個別のカードをデザインしていた。白と青のクリーチャーは自分の墓地だけを参照し、黒のクリーチャーは対戦相手の墓地を参照し、緑のクリーチャーはすべての墓地を参照する。白と青のクリーチャーはキーワード能力を持っており、白は2つ、青は1つ持っている。一方で黒と緑のクリーチャーにはキーワード能力がない。さらに緑のクリーチャーは、他にはない起動型能力を持っていた。白と青はマナ・コストに1つの色シンボルしか持たず、黒と緑は色シンボルを2つ持っていた。このサイクルは正直なところ、かなり雑然としたものだった。

 デベロップはこれがサイクルであることに気づき、全てを並べ直した。元はさまざまなコストを持っていたが、すべてのクリーチャーをその色は2マナに統一した。そしてそれぞれのパワーとタフネスを「墓地にある特定のカード・タイプの枚数」に等しくなるようにした。白のクリーチャーは警戒を維持した(当時はまだキーワード化されていなかった)が飛行を失い、参照対象はエンチャントのままとなった。青のクリーチャーは飛行を持ち、インスタントを参照するという点で変更がなく、唯一の違いはマナ・コストが{3}{U}から{3}{U}{U}へ大幅に引き上げられた点であった。これは、我々が想定していたよりも遥かに強力なカードだったからである。

 黒のクリーチャーは引き続きクリーチャーを参照し、再生能力を獲得した。赤は新たに加わった色で、速攻を持ち、ソーサリーを参照することで青のカードとサイクル内の対応を取った。緑のクリーチャーは参照対象がクリーチャーから土地へと変更された。アーティファクトにする案もあったが、緑は土地に強く関わる色なので土地が選ばれたのである。また少し軽くなり、トランプルを得た。

 最後の変更は、私がしばらくの間ずっと迷っていたものであった。このセットのリード・デベロッパーであるランディ・ビューラー/Randy Buehlerは、これらのクリーチャーをルアゴイフにしたいと考えていた。サイクルの着想源がルアゴイフだったからだ。私は「ルアゴイフ/Lhurgoyf」が発音しづらい単語であることを知っていたため、それを復活させるべきかどうか迷っていた。しかし結局、熱心なプレイヤーにとって十分にエキサイティングな要素になるだろうと判断し、全てのクリーチャーをルアゴイフにすることにした。そしてその名前を「~食うもの/~vore」という語尾で統一した。これはラテン語の「〜を食べる」を意味する接尾辞であり、例えば「肉を食うもの/carnivore」は「肉を食べる存在」という意味になる。


 

CL01_XR
〈ツンドラの堆肥〉
土地
{W}{U}
{1}, {T}:あなたのマナ・プールに{W}と{U}のマナを1点ずつ加える。
[カード名]を生け贄に捧げる:あなたのマナ・プールに{W}か{U}のマナを1点加える。カードを1枚引く。

CL02_XR
〈地底湖の堆肥〉
土地
{U}{B}
{1}, {T}:あなたのマナ・プールに{U}と{B}のマナを1点ずつ加える。
[カード名]を生け贄に捧げる:あなたのマナ・プールに{U}か{B}のマナを1点加える。カードを1枚引く。

CL03_XR
〈悪地の堆肥〉
土地
{B}{R}
{1}, {T}:あなたのマナ・プールに{B}と{R}のマナを1点ずつ加える。
[カード名]を生け贄に捧げる:あなたのマナ・プールに{B}か{R}のマナを1点加える。カードを1枚引く。

CL04_XR
〈タイガの堆肥〉
土地
{R}{G}
{1}, {T}:あなたのマナ・プールに{R}と{G}のマナを1点ずつ加える。
[カード名]を生け贄に捧げる:あなたのマナ・プールに{R}か{G}のマナを1点加える。カードを1枚引く。

CL05_XR
〈サバンナの堆肥〉
土地
{G}{W}
{1}, {T}:あなたのマナ・プールに{G}と{W}のマナを1点ずつ加える。
[カード名]を生け贄に捧げる:あなたのマナ・プールに{G}か{W}のマナを1点加える。カードを1枚引く。

 次は土地サイクルである。このサイクルのデザイン版は、印刷バージョンとほぼ同じだったが、ひとつ大きな違いがあった。それは、この土地を生け贄に捧げることで、2色のうちいずれかのマナを加え、さらにカードを1枚引くことができた点である。我々は、スレッショルドをできる限り支援するために、この能力を盛り込んでいた。当時のデザイン・ファイルには、生け贄を組み込んだカードがより多く存在していたのである。しかし最終的には、この能力を持った土地は強すぎることが分かり、またセットにこれ以上の生け贄要素は必要ないと判断された。そのため、開発段階でこの能力は削除された。


 

UL01_XR
〈白のオアシス〉
土地
{W}
{T}:あなたのマナ・プールに{W}のマナを1点加え、[カード名]はあなたに1点のダメージを与える。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、[カード名]は「{2}{W}, {T}, [カード名]を生け贄に捧げる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。このターン、それに与えられる次のダメージ5点を軽減する。」を持つ。

UL02_XR
〈青のオアシス〉
土地
{U}
{T}:あなたのマナ・プールに{U}のマナを1点加え、[カード名]はあなたに1点のダメージを与える。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、[カード名]は「{2}{U}, {T}, カード名を生け贄に捧げる:対象のプレイヤーはカードを3枚引き、その後手札からカードを3枚捨てる。」を持つ。

UL03_XR
〈黒のオアシス〉
土地
{B}
{T}:あなたのマナ・プールに{B}のマナを1点加え、[カード名]はあなたに1点のダメージを与える。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、[カード名]は「{2}{B}, [カード名]を生け贄に捧げる:あなたの墓地にあるカード1枚を対象とし、それを追放する。」を持つ。

UL04_XR
〈赤のオアシス〉
土地
{R}
{T}:あなたのマナ・プールに{R}のマナを1点加え、[カード名]はあなたに1点のダメージを与える。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、[カード名]は「{2}{R}, [カード名]を生け贄に捧げる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。[カード名]はそれにダメージを2点与える。」を持つ。

UL05_XR
〈緑のオアシス〉
土地
{G}
{T}:あなたのマナ・プールに{G}のマナを1点加え、[カード名]はあなたに1点のダメージを与える。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、[カード名]は「{2}{G}, [カード名]を生け贄に捧げる:クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+3/+3の修正を受ける。」を持つ。

 「オアシス」サイクルの基本的なコンセプトはそのまま残った。これらの土地は特定の色のマナを生み出せるが、そのたびにあなたにダメージを与える。また、その色のマナを支払って起動できる生け贄能力を持っており、その能力はスレッショルドを満たしているときに有効になる。

 最終バージョンでは、これらの土地は物語における闘技場要素と結びつけられた。このサイクルの各土地は、それぞれ闘技が行われうる場所を表している。デザイン初期には、ダメージを与えない形も試したが、強すぎることが分かった。逆にタップ状態で戦場に出す案も試したが、今度は弱すぎた。結果として、ダメージを与える現在のバージョンが選ばれた。

 《遊牧の民の競技場》は当初ダメージ軽減効果を持っていたが、デベロップがライフ回復の方がほぼ同じ働きをし、より汎用的で有用であると判断したため、ライフ回復効果へと変更された。《セファリッドの円形競技場》はデザイン時の能力を維持したが、起動コストは{2}{U}から{U}に引き下げられた。これらの土地はすでに多くの条件を必要としていたため、デベロップはそれを強化したいと考えたのである。このサイクルは競技プレイ向けにデザインされていた。

 《陰謀団のピット》は墓地からカードを追放する効果から、クリーチャーに-2/-2修整を与える効果へと変更された。墓地追放の効果はデベロップのプレイテストにおいて状況に依存しすぎる効果と分かったため、クリーチャー除去に役立つ形に修正されたのである。《蛮族のリング》と《ケンタウルスの庭園》は《セファリッドの円形競技場》と同様にデザイン時の能力を維持したが、起動コストがそれぞれ{2}{R}と{2}{G}から{R}と{G}に引き下げられた。そして、すでに述べた通り、スレッショルドは10枚から7枚に変更された。


 

UW02_XR
〈説得する僧侶〉
{3}{W}
クリーチャー ― クレリック
1/1
プロテクション(クリーチャー)
[カード名]が場に出たとき、あなたの墓地のカード2枚をあなたのライブラリーの一番下に置いてもよい。

 プロテクションは『アルファ版』で導入されたが、マジック初期の頃は特定の色に対してのみ使われていた。私は『ウルザズ・レガシー』で《ヤヴィマヤの接ぎ穂》をデザインし、プロテクション(アーティファクト)を与えた。これは当時、通常の色プロテクションではカバーされていなかった領域にプロテクションを付与しようとした試みであった。というのも、初期のアーティファクトはすべて無色だったからである。『インベイジョン』では《海辺の略奪者》が登場し、プロテクション(カヴー)を持っていた。『オデッセイ』の《敬愛される司祭》はプロテクション(クリーチャー)を持ち、これが色以外のものに対するプロテクションの3枚目の事例となった。

 《敬愛される司祭》の2つ目の能力は、デザイン段階で「再補充/restock」と呼んでいたものだった。セットが墓地をテーマにしていたため、墓地と関わるさまざまな方法を模索していたのである。緑と白には、自分の墓地にある特定のカードをライブラリーの一番下に置く能力を与えた。これにより、サーチ手段で再利用できたり、シャッフル手段があれば再び引ける可能性があった。デザイン段階で引き渡したファイルには21枚に再補充効果が含まれていた(白に8枚、緑に11枚、アーティファクトに1枚、土地に1枚)。しかしデベロップの段階でそれらはすべて削除された。私が渡したファイルはやや詰め込みすぎだったので、何かを削らざるを得ず、その一つが再補充だったのである。


 

RW15_XR
〈精神の浄化〉
{3}{W}{W}
ソーサリー
すべてのクリーチャーを破壊する。それらは再生できない。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上ある場合、2/2の飛行を持つ[名前]・クリーチャー・トークン1体を場に出す。

 このカードの基本的なアイデアは変わらなかった。スレッショルドに達していれば盤面に戦力を残せる、レアの白いクリーチャー破壊呪文である。変更点は2つあった。1つは、2/2の飛行クリーチャーを1体生成する代わりに、1/1の飛行クリーチャーを2体生成するようになったこと。もう1つは、マナ・コストが1マナ増えたことである。では、なぜトークンが変更されたのだろうか。私の最初の推測は、デベロップがセット内の他のトークンに揃えるために行ったのではないかということだ。デザイン後期には、すべてのトークンを確認して統一可能なものがないかを調整し、プレイヤーが必要とするトークンの種類を減らす作業を行う。しかし、このセットにおいて白が使うトークンは他になかった。

 時には、トークンの種類を減らすためだけに変更することもあるが、『オデッセイ』には白のトークンが他に存在しない。セットに含まれる唯一の2/2トークンはゾンビであり、それは飛行を持たない。私の推測では、これはフレイバー上の理由で変更されたのだろう。当時は、《死後の生命》、《魂のフィールド》、《魂の行進》といったカードが存在し、クリーチャーが墓地に置かれると1/1の飛行を持つスピリット・トークンを生成するデザインが複数見られた。したがって、《カーターの怒り》もそれらに合わせようとしたのだと思われる。


 

CU20_XR
入念な研究
{2}{U}
インスタント
対象のプレイヤー1人はカードを2枚引き、その後手札からカードを2枚捨てる。
カードを1枚引く。

 これは小さいながらも興味深い変更であった。元のカードは、印刷されたカードとほぼ同じだったが、キャントリップになっていた。キャントリップとは、基本的な効果に加えて「カードを1枚引く」という追加効果を持つ呪文のことを指す。通常、カードをキャントリップにすると、そのコストに2マナを追加するのが通例である。このカードがデザイン・ファイルに加えられたのは、プレイヤーがスレッショルドに到達できるよう墓地を肥やす手段を与えるためであり、青らしい手札入れ替えが面白いツールになると考えられたからであった。

 私の推測では、このカードが当初キャントリップであったのは、元の効果だけではやや弱すぎるのではないか、という懸念があったためだろう。だがデベロップがこのカードを実際に使ってみたところ、キャントリップがなくても十分に機能することが判明した。むしろ1マナに引き下げることで墓地を肥やす速度が上がり、結果として強力になったのである。このカードはその後、多くのトーナメントで使われることとなった。


墓地セットを掘り下げて

 今日はここまでとしよう。『オデッセイ』を振り返るこの回を楽しんでもらえたなら幸いである。来週のその2もぜひご覧いただきたい。いつもの通り、この記事、あるいは『オデッセイ』や今回取り上げた個々のカードについての感想やフィードバックをメールやソーシャル・メディア(XTumblrInstagramBlueskyTikTok)を通じて(英語で)送ってもらえると幸いだ。

 来週はデザインファイル:『オデッセイ』その2をお届けする。

 その日まで、あなたが墓地を活用するのを楽しめますように。


(Tr. Ryuki Matsushita)

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