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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

継承されるタイプ その1

Mark Rosewater
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2025年6月2日

 

 最も人気のある『マジック』のテーマの一つが、開発部が「タイプ的」と呼ぶものである。タイプ的効果とは、メカニズムがクリーチャー・タイプを参照する効果のことだ。今回の記事から3回に分けて、『マジック』を年単位で振り返っていく。最も影響をもたらしたタイプ的デザインを年ごとに私が選び、それを一緒に見ていくのは楽しいに違いない。選択には3つのルールを設けることにした。1つ目は、カードはタイプ的テーマを持っていること。2つ目は、その年に初登場したカードであること。3つ目に、ブースター製品からランダムに出現するカードであること。最後に注意として、カードの選出はすべて私の独断で行われている。別のカードを選ぶべきだった、という意見があれば是非送ってくれ。それでは見ていこう。


1993年

セット:『アルファ版』『ベータ版』、『アラビアン・ナイト』
私のチョイス:《アトランティスの王》(アルファ版)

 

 『アルファ版』は1993年8月に発売された。『マジック』の始祖であり、タイプ的メカニズムは6枚のカードが持っていた。これらは、2つのカテゴリに分類することができる。1つ目は「ロード」と呼ばれる、特定のクリーチャー・タイプを強化するクリーチャーだ。『アルファ版』のロードは《ゴブリンの王》、《アトランティスの王》、《ゾンビ使い》の3枚だ。前者2枚は特定のタイプのクリーチャーに+1/+1修正を与える、タイプ的効果を代表的する効果を持っている。『マジック』の初期のカード達は、自分がコントロールするクリーチャーだけでなく、対戦相手がコントロールする同じタイプのクリーチャーも強化していた。これら3枚は、色に対応した土地渡り能力も同時に与えていた。例えば《ゴブリンの王》はすべてのゴブリンに山渡りを与える。《ゾンビ使い》は+1/+1ではなく、起動型能力を他のゾンビに与えていた。

 面白いことに、『アルファ版』ではこれらのクリーチャー・タイプのカードはまだほとんど存在していなかった。印刷当時、このセットに存在していたのはマーフォークが1枚、ゾンビが1枚、ゴブリンが2枚だけだった。《ゴブリンの王》と《アトランティスの王》は名前に対応するクリーチャー・タイプを持っていたが、《ゾンビ使い》は持っておらず、単なるロードであった。最終的にはオラクル更新で3枚ともクリーチャー・タイプ「ロード」を持つようになった。その後、それぞれ対応するタイプのクリーチャー・タイプと、自分自身を強化しないよう明記した新しいルール・テキストを与えられた。『アルファ版』では、これらのクリーチャーの枚数はとても少なかった。何故なら、当時のデッキ構築のルールは今日とはかけ離れていたからだ。デッキには同じ名前のカードを4枚を超えて入れることができたのだ。マーフォークのタイプ的デッキを組む場合は、《真珠三叉矛の人魚》密矛と《アトランティスの王》を好きなだけデッキに入れればよかった。

 壁に関連するカードも存在していた。『アルファ版』には壁クリーチャーが10枚あり、タフネスは高いがパワーは低い(ほとんどが0)クリーチャー達だった。これら攻撃できなかったが、これは現在で言う防衛能力ではなく、壁クリーチャー・タイプのルールの一部として存在していた。壁のタイプ的カードは、壁が攻撃できるようにする《動く壁》、壁を破壊する《ドワーフ爆破作業班》と《トンネル》の2枚だった。また、クリーチャーが壁であるかどうかをメカニズムで参照するカードが7枚あった。《コカトリス》、《不可視》、《巨大戦車》、《ケルドの大将軍》、《Nettling Imp》、《セイレーンの呼び声》、《茂みのバジリスク》の7枚だ。これらはタイプ的効果によって特定のクリーチャー・タイプと相互作用するが、タイプ的効果が必ずしも強化するわけではないことを表している。

 『アラビアン・ナイト』には3枚のタイプ的カードが存在しており、効果は様々だった。1枚はジンかイフリートを破壊できるカード であり、もう1枚は象かマンモスを再生するカード 、3枚目は壁をタップするカード だった。

 私が《アトランティスの王》を選んだのは、『アルファ版』で登場した3枚のロードの中で最もプレイされたカードであり、今現在でもほとんどのマーフォーク・デッキで採用されているカードであるためだ。タイプ的テーマは楽しいものであり、プレイヤーが求めているものであることを、このカードが証明してくれた。

1994年

セット:『アンティキティー』、『レジェンド』、『ザ・ダーク』、『フォールン・エンパイア』
私のチョイス:《Fungal Bloom》(フォールン・エンパイア)

 

 1994年では『アルファ版』のロードのための新しいゴブリン、マーフォーク、ゾンビが登場した。『アンティキティー』ではクリーチャー化する土地である《ミシュラの工廠》が登場した。この土地は組立作業員になる土地であると同時に、他の組立作業員を強化する能力を持っていた。

 『レジェンド』ではコボルドのタイプ的テーマが登場した。これは規模が小さいものであったが、+2/+2修正を与える初のロードである《カー砦の首領、ロフガフフ》も収録されていた。他にも、壁と相互作用する単色インスタントのサイクルも存在していた。

 『ザ・ダーク』にはゴブリンのタイプ的テーマが存在しており、ゴブリンを強化するカードが5枚存在していた(うち1枚はオークも対象にする)。これにはクリーチャーではないカードも含まれている。他に、ゴブリン対策のタイプ的カードも存在していた。

 『フォールン・エンパイア』はクリーチャー・タイプをベースとした陣営セットだったため、タイプ的メカニズムに大きく影響を与えた。すべての陣営がタイプ的メカニズムを持っていたわけではないが、それぞれの陣営に共通の構造を与えていた。

 私が選ぶ1994年のタイプ的カードは《Fungal Bloom》だ。『フォールン・エンパイア』のカードである。このセットには緑単色の陣営が2つあり、そのうちの1つであるサリッド は1/1の苗木クリーチャー・トークンを生成するファンガス・クリーチャーに焦点を当てていた。《Fungal Bloom》は苗木トークンの生成速度を速めさせる。この効果はタイプ的メカニズムの応用性を示し、クリーチャー・タイプを主軸にしたデッキ構築の可能性を押し広げた。

1995年

セット:『アイスエイジ』、『ホームランド』
私のチョイス:《Pestilence Rats》(アイスエイジ)

 

 1995年に発売された新セットは僅か2セットのみだった。また、そのうちの1つにはタイプ的効果はほとんど収録されていなかった。『アイスエイジ』にはオーロクス、カリブー 、ネズミ、壁に関連するカードが数枚存在した。ホームランドは、タイプ的効果における1995年の救世主であった。鳥(当時はファルコン )、ドワーフ、フェアリー、ミノタウルス、吸血鬼といったタイプ的効果を持つカードが収録された。また、タイプ的メカニズムを持つアーティファクトが初登場した。当時、タイプ的効果を持つカードは、プレイヤーがカジュアルに楽しむためのものだと捉えられていた。

 1995年のカードは『アイスエイジ』から選んだ。《疫病ネズミ》は『アルファ版』の頃から人気カードだったが、印刷された当時から自身しか参照しないカードだった。4枚制限のルールによって《疫病ネズミ》デッキが消滅したため、『アイスエイジ』のデザイナーは代わりとなるデッキが構築できるようにしようと考えた。デザイン初期段階では、《Pestilence Rats》は《疫病ネズミ》の単なる再販に過ぎなかった。4枚制限を回避するため、《Pestilence Rats》は戦場にあるすべてのネズミを数えられるようにした。タイプ的テーマを他のカードに影響を与えるのではなく自身に影響を与える方向性で使う、つまり他のネズミを強化するのではなく他のネズミによって自身が強化されるというアイデアは、タイプ的テーマの新しい落とし込み方法であり、その後の数多くのデザインに影響を与えた。

1996年

セット:『アライアンス』、『ミラージュ』
私のチョイス:《鉤爪のジィーリィーラン》(ミラージュ)

 

 2つの新規カードを収録したセットが、1996年にはあった。『アライアンス』では、クレリックかウィザードに与えられるダメージを軽減する、タイプ的カードが1枚あった 。『ミラージュ』には、ドラゴン、グリフィン、ペガサスにタイプ的効果が導入された。1996年の最も影響があったタイプ的カードとして、私は《鉤爪のジィーリィーラン》をチョイスした。このカードは、ライブラリーからクリーチャーを探すという、新しい種類のタイプ的効果を生み出したからだ。

 このカードの場合は、デッキからドラゴンを探し、戦場に出し、それをターン終了時に追放する。我々がタイプ的カードとして作ったクリーチャーは、ほとんどが戦場を埋めるのに役立つ低マナ域のクリーチャーだった。ドラゴンは通常巨大であり、マナ・コストも大きい傾向にあるため、タイプ的カードを作成するのに課題として立ち塞がった。《鉤爪のジィーリィーラン》からは『マジック』のデザイナーが、タイプ的効果で参照できるクリーチャー・タイプを増やそうと努力していたことが見受けられる。

1997年

セット:『ビジョンズ』、『ウェザーライト』、『ポータル』、『テンペスト』
私のチョイス:《筋肉スリヴァー》(テンペスト)

 

 『ビジョンズ』ではジン、イフリート、騎士、ゴブリン、グリフィン、プリズム と相互作用するタイプ的カードが登場した。他にも生け贄に捧げることで他のキマイラを強化するアーティファクト・クリーチャーのキマイラ・サイクルなど、興味深いものがあった。

 しかし、1997年におけるタイプ的の最大の革新的発明は『テンペスト』だろう。そう、スリヴァーだ。テンペストのデザイナーの一人であるマイク。エリオット/Mike Elliottは、《疫病ネズミ》の人気ぶりに着目し、このカードの能力を同じタイプの他のクリーチャーに付与する新しいクリーチャー・タイプをデザインした。あくまで能力を与えるのであり、必ずしもパワー/タフネスに関連する効果とはかぎらないため、幅広くクリーチャーをデザインすることができた。

 スリヴァーは、カジュアル・プレイから競技プレイへと進出した初めてのタイプ的テーマであり、これはタイプ的デザインにとって非常に重要なステップとなった。開発部は、タイプ的テーマがプレイヤーに非常に人気があることを実感した。この時の経験は数年後、私がタイプ的テーマをブロックのテーマとして提案したときも参考になった。

 1997年のタイプ的カードのトップは《筋肉スリヴァー》だ。スリヴァーを単体で見ると、このスリヴァーが最強だからだ。緑デッキでスリヴァーの採用が《筋肉スリヴァー》だけであることがよくあった。しかし《筋肉スリヴァー》は、自身と他の《筋肉スリヴァー》に効果を及ぼすだけで充分に強いのだ。

1998年

セット:『ストロングホールド』、『エクソダス』、『ポータル・セカンドエイジ』、『Unglued』、『ウルザズ・サーガ』
私のチョイス:《ティタニアの僧侶》(ウルザズ・サーガ)

 

 『ストロングホールド』で、スリヴァーは数を増した。壁を攻撃可能にするエンチャントも登場した。『エクソダス』には後ほど説明するタイプ的カードがあった。『ポータル・セカンドエイジ』のカードはゴブリン、夜 魔、ネズミを参照していた。『Unglued』にはニワトリ・ロードの《Chicken à la King》がいた。クリーチャーをタップすることで能力を起動できるロードだ。同様の起動方法が、『フォールン・エンパイア』の《Vodalian War Machine》で採用されていた。この「コストとしてタップする」は、その後もタイプ的カードに採用されるようになった。『ウルザズ・サーガ』には2枚のタイプ的カードが、ゴブリンとエルフのために用意されていた。エルフは《ティタニアの僧侶》であり、私が選んだカードでもある。

 《ティタニアの僧侶》は強力な値変動効果を持つカードの好例だ。タイプ的カードは、クリーチャーを強化するのではなく、クリーチャーの数を増加させることに重点を置いている場合がある。コントロールしているエルフが増えるほど、このカードが生み出すマナは増加していく。《ティタニアの僧侶》はエルフデッキに差し込んだ一筋の光だった。競技プレイヤーにタイプ的テーマの価値を認識させた、最初のカードのうちの1枚である。

 

 追加で他のカードに関して、ある2枚のカードについて語りたい。1枚目は『エクソダス』の《旗印》だ。タイプ的デザインに常に付きまとう問題の一つは、多種多様なクリーチャー・タイプの種類数に対して、作成できるタイプ的カードの枚数には限界がある点だ。そのため、我々は《旗印》をすべてのタイプ的デッキに使えるようにデザインした。特定のクリーチャー・タイプをプレイするようテキストに書くのではなく、いずれか1つのタイプに注目するテキストである。このカードからは、特定のクリーチャー・タイプを参照するカードしか作成できないわけではなく、タイプ的テーマ全体をカバーできるカードが作成可能だとわかる。

 2枚目は《スリヴァーの女王》だ。この女王は特定のクリーチャー・タイプと相互作用したり、いずれかのタイプから影響を受けるメカニズムを持っていたりはしないため、厳密に分類するとタイプ的カードではない。とはいえ、デッキ構築の観点からはタイプ的カードであると断言できるだろう。スリヴァー・トークンを次々に生み出していく能力は、スリヴァー・デッキに必要不可欠な能力だ。トークン生成はタイプ的戦略の重要な要素であり、我々の使うツールにおいても重要な部分を占めている。タイプ的テーマを機能させるとき、クリーチャー・タイプを参照するルール・テキストだけが機能するテキストではない。《スリヴァーの女王》がよい好例である。

1999年

セット:『ウルザズ・レガシー』、『ウルザズ・デスティニー』、『ポータル三国志』、『メルカディアン・マスクス』
私のチョイス:《錯乱した隠遁者》(ウルザズ・レガシー)
私のネガティブ・チョイス:《仕組まれた疫病》(ウルザズ・レガシー)

 

 『ウルザズ・レガシー』には後ほど説明する2枚のタイプ的カードがあった。『ウルザズ・デスティニー』には壁を参照するカードと、好きなクリーチャー・タイプを参照するカードがあった。これについては後ほど説明する。『メルカディアン・マスクス』は、レベルと傭兵のクリーチャー・タイプを軸としたメカニズム・テーマが2種類あった。レベルは自身より1マナ重いレベルをサーチし、傭兵は自身より1マナ軽い傭兵をサーチした。レベルはその後環境を支配するデッキとなったが、傭兵はほとんど使われなかった。

 1999年のタイプ的デザインの頂点として、レベル・テーマ全体を選ぼうとしていた。タイプ的メカニズムを構築するという流行を引き継いでいたもののためだ。しかし、ここではもう少し自分好みなカードを選ぶことにした。これは私のコラムなので、ちょっと位は許されるだろう。なので1999年のカードには《錯乱した隠遁者》を選んだ。このカードはリスの初めてのタイプ的カードだ(アーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheがこのカードでアメリカ選手権の代表チームを作ったのは有名な話だ)。追加で説明すると、トークンを生成すると共にそのトークンも強化できる初のタイプ的カードでもあり、カード1枚でリスの軍団を作ることができる。

 

 私はいつもネガティブな紹介をしないようにしているが、《仕組まれた疫病》について触れずにはいられなかった。このカードはタイプ的デッキへの対抗策としてデザインされたが、あまりにも強く、一部のフォーマットで特定のデッキタイプをプレイできなくしてしまった。メタカードを印刷することに問題はないが、タイプ的デッキのように特に愛されているカジュアルなテーマに関して、それを根絶してしまうものではあってはならない。

 

 他にも取り上げるべきカードが2枚ある。『ウルザズ・デスティニー』の《ウルザの保育器》は、選んだタイプのコストを{2}軽減するカードであり、初めての軽減するタイプ的カードだ。『ホームランド』の《An-Zerrin Ruins》もタイプを選ぶが、選んだタイプを妨害するカードである。『メルカディアン・マスクス』の《奸謀》は、自分のクリーチャーすべてを特定のクリーチャー・タイプに変える初めてのカードだ。

2000年

セット:『ネメシス』、『プロフェシー』、『インベイジョン』
私のチョイス:《エルフのチャンピオン》(インベイジョン)

 

 『ネメシス』ではレベルと傭兵が増えた。これらと同様、デッキから特定のクリーチャー・タイプのカードをサーチする赤、青、緑のカードも作られた。また選んだクリーチャー・タイプのカードを踏み倒して戦場に出す《ベルベイの門》も存在した。『プロフェシー』でもレベルと傭兵が増え、リスのタイプ的カードも存在した。『インベイジョン』には鳥、エルフ、カヴー、反射 、ツリーフォーク、苗木のタイプといったタイプへの、単発のタイプ的デザインが多数あった。

 私が2000年のカードとして選んだのは『インベイジョン』の《エルフのチャンピオン》だ。各色は特性タイプを持っている。特性タイプはその色を体現する汎用クリーチャー・タイプのことだ。『アルファ版』では赤、青、黒の特性タイプに対応したロードがいたが、緑のロードの登場は『インベイジョン』まで待たなければなかった。『アルファ版』の他のロードと合わせるため、+1/+1と土地渡りを与えるようデザインされている。デザイン的な面での新規要素はないが、人気のクリーチャー・タイプをサポートする重要性に気付き始めたことが読み取れる。

2001年

セット:『プレーンシフト』、『アポカリプス』、『オデッセイ』
私のチョイス:《不自然な淘汰》(アポカリプス)

 

 『プレーンシフト』のタイプ的カードは、ゴブリン、カヴー、苗木、ゾンビなどがあった。《アンデッドの王》のようなカードからは、過去のタイプ的ロードを改良したことがわかる。『アポカリプス』には、クリーチャー・タイプの旗手を中心にしたサブテーマと、エルフ、ゴブリン、カヴー、マーフォーク、ゾンビのタイプ的効果があった。同じセットの《真鍮の伝令》は、強化するクリーチャー・タイプを選ぶことができた。

 振り返って私が注目した大きな変化は、タイプ的デッキをサポートする方法の変遷だ。私が選んだ2001年のカード《不自然な淘汰》はその一例である。クリーチャーのタイプを適切なタイプへ変更することで、どんなタイプのクリーチャーもタイプ的テーマをサポートできるようになる。組みたいと考えているクリーチャー・タイプが、すべてを持っているとはかぎらない。マナ総量の抜けがあったり、サイズが適切に揃わなかったり、デッキに必要となる効果が足りないかもしれない。そうした場合に備え、違うタイプのクリーチャーを数枚採用できるようにするカードを作ろうとしていた。このカードは、様々な手段を模索していたときの一枚だ。

 もう一つ述べておきたいことがある。ここで詳しくは語らないが、私は『オデッセイ』のクリエイティブ・リードを務めていた。そのため、セットにどのクリーチャー・タイプを入れるべきかなど、様々なテストを行える立場にいた。なので定番のクリーチャー・タイプに焦点を当てるのではなく、マイナーなタイプに重点を置くようにした。タイプ的テーマをサポートするということは、あるタイプに対してプレイヤーがデッキを組めるほど充分な種類を印刷することを意味している、という認識があったためだ。その結果、エイトグ、セファリッド、クレリック、ドルイド、ドワーフ、リス、ウィザードのような、あまりサポートされてないタイプのタイプ的カードを作ることができた。

2002年

セット:『トーメント』、『ジャッジメント』、『オンスロート』
私のチョイス:《スカークの探鉱者》(オンスロート)

 

 2002年はタイプ的ダムが大きく決壊し、なだれ込んだ年となった。主な理由は『オンスロート』にあるが、『トーメント』と『ジャッジメント』にもバーバリアン、鳥、ドワーフ、ゴブリン、ミニオン、ナイトメア、ゾンビのタイプ的カードが登場した。ビル・ローズ/Bill Roesが『インベイジョン』の首席デザイナーとなり、テーマを中心にブロックを構築することとなった。『インベイジョン』ブロックは多色カード、『オデッセイ』ブロックは墓地をテーマにしていた。『オンスロート』ブロックのテーマはゲーム・チェンジャーになった。

 ビルは『オンスロート』のデザイン提出文書に満足していなかったため、私にレビューを依頼し、どうすべきか意見を聞いてきた。『オンスロート』で私が気に入っていた要素の一つは、霧衣 クリーチャーと呼ばれる一連の青のクリーチャーだ。このクリーチャー群は自身のクリーチャー・タイプを変更することができる。しかし、『オンスロート』にはこれらを積極的に活用する方法がほぼ存在していなかった。私はビルに「『オンスロート』をタイプ的効果をテーマにしたブロックにしないか」と提案した。ビルは当初は懐疑的だったが、私は次のように説明した(用語は現代のものに修正済み)。

 私は言った。「ビル、聞いてくれ。」「データから、タイプ的カードは人気があることが分かっている。これらのカードのほとんどは強くない。良いカードはほとんどないんだ。それでも、プレイヤーはタイプ的カードをプレイしてくれている。何度も何度もたくさん。じゃあ、このテーマを中心に据え、良いカードをたくさん作ったらどうなるか考えてみてくれ。タイプ的テーマを使った、競技レベルのデッキが存在すると仮定しよう。競技プレイヤーもカジュアル・プレイヤーも使ったらどうなる? この可能性を想像してみてくれ。」

 ビルは私の言葉に説得され、私にこのセットにタイプ的テーマを取り入れるよう指示をした。そして大成功を収めたのだ。『オンスロート』はタイプ的テーマが世に知られ、開発部がその本当の価値を理解し始めたセットである。

 私が2002年のカードに《スカークの探鉱者》を選んだ理由はいくつかある。1つ目は先ほど述べたように競技プレイヤーとカジュアル・プレイヤー両方がプレイしていたタイプ的カードだっただめだ。2つ目はコモンのタイプ的カードが持つ影響力の大きさが分かるカードだからだ。3つ目はタイプ的テーマの新たな表現方法、つまりそのクリーチャー・タイプのカードを他のカードによって生け贄に捧げてリソースへと変換する方法を示したことだ。


タイプは語らず、ただ在るのみ

 今回は以上となる。タイプ的カードの歴史の振り返り第一弾をお楽しみいただけただろうか? いつものように、今日の記事やタイプ的カード、テーマへの感想やフィードバックをメールやソーシャル・メディア(XTumblrInstagramBlueskyTikTok)を通じて(英語で)送ってもらえると幸いだ。

 来週はその2をお届けする。

 あなたと共にあるクリーチャー・タイプが見つかることを祈っている。


(Tr. Ryuki Matsushita)

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