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Making Magic -マジック開発秘話-
『サンダー』を呼び起こせ その1
2024年4月22日
ここ2週にわたって、『サンダー・ジャンクションの無法者』の展望デザイン提出文書を公開してきた(その1、その2)。本日と来週は、カード個別のデザインの話をしよう。今回の焦点となるのは、以前から知られているキャラクターの新カードについてと、キャラクターを新カードに当てはめる最適な方法についてだ。
《爆発の仕掛け人、ブリーチェス》と《双眼のマルコム》
ブリーチェスとマルコムは、どちらも「鉄面連合」(イクサランの海賊集団)の一員であり、ヴラスカ率いる「喧嘩腰」号の船員である。両者とも初代『イクサラン』のストーリーに登場したが、そのブロックではカードが用意されなかった(ストーリーは通常、カードセットの確定後に執筆されるのだ)。この両者が初めてカードになったのは、『統率者レジェンズ』でのことだった。
この2枚はどちらも「共闘」を持ち、ストーリー上でそうであるように共闘するようデザインされた。どちらも海賊のタイプ的であり、リソースを生み出す。ブリーチェスはカードを、マルコムはそのカードを唱える助けになる宝物をもたらすのだ。そしてこのキャラクターたちには、『イクサラン:失われし洞窟』でイクサランを再訪した際に2枚目のカードが作られた。
我々があるキャラクターのカードを再作成するとき、その新しいカードも既存のカードも同じキャラクターを表現していると感じられるように作ろうと心がけている。機能面が同一である必要はないが、我々が気に入る特定の感覚というものがあるのだ。新旧2枚を同じデッキに入れてもしっくりくるように仕上げたい。
この新バージョンのブリーチェスとマルコムでは、異なる技術を使った。ブリーチェスは海賊のタイプ的と戦闘との関わりを残しつつ、サボタージュ能力(対戦相手に戦闘ダメージを与えたときに誘発する能力のことを、開発部はこう呼んでいる)ではなく攻撃誘発の能力にした。マルコムの方は、サボタージュ能力とあなたがカードを唱えるのを助ける手段を残した。ブリーチェスとマルコムはこのバージョンでも互いにシナジーを生むが、今度はブリーチェスがマナをもたらし、マルコムがカードをもたらす形になった。
今回のブリーチェスとマルコムのカードは、当初ファイルになかったと思う。なぜなら「無法者」の包括に海賊が含まれていなかったからだ。『イクサラン:失われし洞窟』でスタンダードに多くの海賊が追加され、無法者のフレイバーにも良く合っていたため、セット・デザイン・チームが無法者の包括に加えるべきだと判断した。『サンダー・ジャンクションの無法者』の最初のプレビュー記事でも語ったように、展望デザインは無法者の包括に4種類のクリーチャー・タイプを入れて提出した。セット・デザインが必要なときにもう1つ追加できるよう、1枠空けておいたのだ。
『サンダー・ジャンクションの無法者』におけるブリーチェスとマルコムのカードは、『機械兵団の進軍』でやったようなチーム・カードとして始まった。チーム・カードはこのセットのテーマではなかったものの、この2体は仕事をともにするバディであることが知られていたため、そこから始めることにしたのだ。
〈悪事をたくらむもの、マルコムとブリーチェス〉(Ver.1a)
{2}{U}{U}{R}{R}
伝説のクリーチャー ― ゴブリン・セイレーン・海賊
4/4
飛行、威迫
あなたがカード1枚を引くたび、宝物1つを生成する。
初期案では青赤のカードだった。ブリーチェスが常に赤単色で、マルコムは常に青単色だったからだ。それらがチームを組むのだから、両方の色を持つことになるだろう。初期のデザインは海賊のタイプ的な働きをしていなかった(『サンダー・ジャンクションの無法者』と関わりがなかったためだ)が、宝物トークンを生成し、カードを引くこととのシナジーを持っていた。先述した通り、このカードは他のブリーチェスやマルコムと同じデッキに入れてもうまく機能するようになっている。
反復1回でこの2キャラクターを別のカード2枚にする決定へと至ったが、それらは互いにシナジーを持つものになった。どちらもすべてのブリーチェスとマルコムが入るデッキの統率者としてプレイできるよう、片方のキャラクターを描くカードになっても両方青赤だった。
〈黒幕の見習い、ルーサ〉(Ver.1b)
{2}{U}{R}
伝説のクリーチャー ― オーク・邪術師
2/4
あなたが追放領域から呪文を唱えるたび、{1}を支払ってもよい。そうしたなら、その呪文をコピーする。あなたはそのコピーの新しい対象を選んでもよい。
青赤の2枠目には、もともとストリクスヘイヴンのプリズマリ大学生であるルーサが入る予定だった。彼女は『ストリクスヘイヴン:魔法学院』で注目された5人の生徒の1人だ。当時の彼女のカードは以下の通り。
プリズマリ大学のルーサは、芸術的パフォーマンスにすべてを捧げている。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』における青赤陣営は巨大呪文を中心に据えていたため、彼女のカードは呪文をコピーするものだった。彼女の焦点を呪文をコピーすることに定めたため、新たなカードはそれを新しい方法で実現するものとなる。追放領域から唱えることと結びつけるのは、「計画」メカニズムとの相性も抜群だった。
〈発破の熟練者、ブリーチェス〉(Ver.2b)
{2}{U}{R}
伝説のクリーチャー ― ゴブリン・海賊
3/4
あなたが追放領域から呪文を唱えるたび、アーティファクト1つを生け贄に捧げてもよい。そうしたなら、その呪文をコピーする。あなたはそのコピーの新しい対象を選んでもよい。これは各ターンに1回のみ行う。
ブリーチェスとマルコムそれぞれにカードを用意すると決まったときに、ルーサの枠がブリーチェスに与えられることになった。セット・デザイン・チームはこのデザインを気に入り、ほとんどそのまま残した。ストーリー上でブリーチェスが爆破のエキスパートとしてオーコの一味に加わることが決まったため、セット・デザイン・チームは能力のコストをマナからアーティファクト1つ(構築デッキではほとんどの場合宝物1つ)を生け贄に捧げることに変更した。その上で、このカードに他のものとの組み合わせの幅を持たせるために、宝物は生成しないようにした。プレイテストによって、これが何度も機能するのは望ましくないことが示されたため、各ターンに1回という制限を設けた。
〈密偵、マルコム〉(Ver.2a)
{3}{U}{R}{R}
伝説のクリーチャー ― セイレーン・海賊
4/4
カード1枚が戦場からあなたの手札に加えられるたび、あなたは代わりにそれを戦場に戻してもよい。
ブリーチェスが爆破のエキスパートで、マルコムは見張りのエキスパートだった。この能力がどこから来たのかはわからない。おそらく、他のカードのためにデザインされたものをここで試すことにしたのだろう。見張り役というアイデアには合っているものの、マルコムらしさはそれほど感じられず、ブリーチェスとのシナジーも薄かった。
〈密偵、マルコム〉(Ver.3a)
{2}{U}{R}
伝説のクリーチャー ― セイレーン・海賊
3/3
飛行、威迫
あなたが追放領域から呪文を唱えるたび、調査を行う。(手掛かり・トークン1つを生成する。それは、「{2},このアーティファクトを生け贄に捧げる:カード1枚を引く。」を持つアーティファクトである。)
次のバージョンでは、その2つの問題点が解消された。まず既存のマルコムのカードが使っていたメカニズム的領域(トークン生成とドロー)に戻ったこと。宝物・トークンを生成する代わりに手掛かり・トークンを生成するようになり、見張り役であることとの結びつきもある。またブリーチェスと同じく追放領域から唱えることを意識したデザインで、シナジーも強くなっている。
〈発破の熟練者、ブリーチェス〉(Ver.3b)
{1}{U}{R}
伝説のクリーチャー ― ゴブリン・海賊
3/3
あなたが各ターン内のあなたの2つ目の呪文を唱えるたび、アーティファクト1つを生け贄に捧げてもよい。そうしたなら、その呪文をコピーする。あなたはそのコピーの新しい対象を選んでもよい。
この時点で、セット・デザイン・チームはこのセットにおける青赤のアーキタイプを「1ターンに呪文を2回唱える」ことを求めるものにしようと決定した。「計画」やインスタント、ソーサリーとの相性は良く、他の戦略との関わりも良くなった。ブリーチェスの最終バージョンはこのバージョンをほとんどそのまま残し、そこへ爆発のエキスパートとしてのブリーチェスの役回りを捉えるべく、ランダム要素とダメージを与える効果を添えた。コイン投げをするカードをデザインする際に我々が近年とっている戦略は、どちらの結果が出てもプレイヤーにとって嬉しいものにすることである。望む効果が得られないのは好ましくはないが、それはそれで価値がないわけではない。ブリーチェスはマナ・コストとサイズはそのままに、威迫を持って完成したのだった。
マルコムのコストは、ブリーチェスをプレイする前にプレイできるよう{2}{U}{R}から{U}{R}に変更された。それにより3/3から2/2への変更が必要になったが、ブリーチェスと異なるスタッツにできた。それから、我々は通常、同じ2色の多色カードが2枚ある場合は異なるマナ・コストを設定することを好む。そしてブリーチェスに威迫を追加したため、マルコムの威迫は速攻に変更された。
これら2枚のアート指示は以下の通りである。
*** 拡張アート用のアスペクト比でお願いします***
セットコード:QXX
舞台:『Quilting』
色:青と赤のマナに関わる伝説のクリーチャー
場所:122~132ページを参考に、砂漠に走る「線路」(167~178ページを参照)にて
行動:ブリーチェス(添付を参照)は、破壊をこよなく愛する猿のような見た目のゴブリンの海賊である。45~57ページや89~97ページを参考に、彼の新しい衣装をデザインしていただきたい。彼のビジュアルデザインにおいて欠かせないカトラスと海賊帽を必ず着けること。ブリーチェスが「線路」(167~178ページを参照)上に設置した魔法のダイナマイトの束に点火しようとしているシーンを描いていただきたい。他には、線路上の他の場所で発生した爆発が小さく見えるかもしれない。背景には彼が爆破した後の瓦礫の山が見えるかもしれない。
焦点:ブリーチェス
雰囲気:タガの外れたやつ。混沌を愛する者。破壊的。
注意:このアートは(1)標準のアスペクト比 (2)拡張マージン込み(添付のテンプレート参照)の2種類のアスペクト比で印刷されます。標準のアスペクト比で切り取れるように絵を組み立て、拡張マージンの部分は、拡張アスペクト比で印刷されたカードで見えるイースターエッグとして、追加の面白い詳細で埋めてください。
*** 拡張アート用のアスペクト比でお願いします***
セットコード:QXX
舞台:『Quilting』
色:青と赤のマナに関わる伝説のクリーチャー
場所:111~117ページを参考に、砂漠に開く峡谷の上空
意図:マルコム(添付を参照)は、翼を持つセイレーンの海賊である。45~57ページや89~97ページを参考に、彼の新しい衣装をデザインしていただきたい。彼のビジュアルデザインにおいて欠かせないゴーグルとロングコートを必ず着けること。
行動:遠くに「線路」(167~178ページを参照)が小さく見える中で、上空高く飛びスパイ活動をするマルコムの姿を描いていただきたい。背景の線路のどこかに爆発が見えるかもしれない。地平線の先に竜巻や嵐が巻き起こっているのが見えるかもしれない。
焦点:マルコム
雰囲気:楽しく、大胆で、冒険的。
注意:このアートは(1)標準のアスペクト比 (2)拡張マージン込み(添付のテンプレート参照)の2種類のアスペクト比で印刷されます。標準のアスペクト比で切り取れるように絵を組み立て、拡張マージンの部分は、拡張アスペクト比で印刷されたカードで見えるイースターエッグとして、追加の面白い詳細で埋めてください。
《放浪する牧場主、ブルース・タール》
ブルース・タールは、ゼンディカー出身の遊牧民だ。彼は悪役だからこのセットに入ったわけではない。西部劇テーマのセットに、高名な遊牧民を加えない理由があるだろうか?
〈放浪する発明家、ムッツィオ〉(Ver.1)
{2}{U}{R}
伝説のクリーチャー ― 人間・工匠
2/3
トークンでないアーティファクト1つがあなたのコントロール下で戦場に出るたび、{U}を支払ってもよい。そうしたなら、それは飛行と騎乗1を持ち、他のタイプに加えて飛行機械である1/1のクリーチャーになる。
このセットにどのキャラクターを登場させるかの議論には時間がかかり、さまざまなキャラクターが試された。フィオーラ出身のムッツィオは、『コンスピラシー』にて初登場した人間の工匠である。この枠はもともとムッツィオに割り当てられていた。初期のデザインはアーティファクト・クリーチャーを作り出すムッツィオの感覚を捉えたものになっている。
それから間もなくして、クリエイティブ・チームがブルース・タールの収録を求めることに決めた。彼がこれまでに唯一カード化されたのは、『統率者(2016年版)』収録のこの1枚だ。
そして彼の新たなカードの初期案が以下の通りである。
〈畜牛男爵、ブルース・タール〉(Ver.2)
{2}{R}{W}
伝説のクリーチャー ― 人間・戦士
3/3
上陸 ― 土地1つがあなたのコントロール下で戦場に出るたび、白の2/2の雄牛・クリーチャー・トークン1体を生成する。
あなたがコントロールしている雄牛1体以上が攻撃するたび、ターン終了時まで、それらは二段攻撃と絆魂を得る。
ブルース・タールの最初のカードがクリーチャーに二段攻撃と絆魂を与えるものだったため、今回の初期デザインも雄牛・トークン限定にすることを除いてそれを踏襲した。能力の付与先となる雄牛・トークンを確保できるよう、白の2/2の雄牛・トークンを生成する「上陸」能力も備えている。(『サンダー・ジャンクションの無法者』における牛は、白の2/2の雄牛・トークンなのだ。)
あるキャラクターの新カードの初期案がそのキャラクターの既存カードに近いものになるのは、よくあることだ。最終バージョンまで近いものになるとは限らないが、基本的に第一歩としやすいのである。そのキャラクターにふさわしいデザインを見つけながらもカードとして成立させるのには、コツがいるわけだ。
〈畜牛男爵、ブルース・タール〉(Ver.3)
{3}{R}{W}
伝説のクリーチャー ― 人間・戦士
3/4
あなたがコントロールしている雄牛・トークンは+1/+1の修整を受ける。
あなたのアップキープの開始時に、あなたのライブラリーの一番上からカード3枚を追放する。そうしたとき、これにより追放されたカードの中の土地1枚につき1体、白の2/2の雄牛・クリーチャー・トークンを生成し、ターン終了時まで、その追放されたカードの中から土地最大1枚と呪文最大1枚をプレイしてもよい。
セット・デザインはこのカードの全体的な雰囲気を気に入ったものの、いくつかの変更を試した。まずクリーチャーに二段攻撃と絆魂を与えるのではなく、恒常的に+1/+1するものになった。雄牛・トークンを生成する能力は「アップキープの開始時に」誘発する能力となり、雄牛の生成と衝動的ドローが合わさったものになった。これにより、統率者戦でより使いやすいカードになった。
プレイテストにより、このカードの最適な使い方が亀のように身を固めることであると示された。あらゆるリスクを避けてブルース・タールでリソースを築き上げていくのだ。このカードを機能させるためには攻撃を促す必要があったため、能力は攻撃時と戦場に出た時に誘発するものに戻った。衝動的ドローの効果は次のあなたのターン終了時まで拡張され、特にブルース・タールをプレイしたターンに引き当てたカードを唱えられるチャンスを増やした。常在能力は+1/+1の修整を与えるものから二段攻撃へ変更され、攻撃的な戦略を後押しした。二段攻撃はさらに、初代のカードも彷彿とさせる。マナ総量は4マナに減り、スタッツも3/4から4/3に変更されたのだった。
最後に、このカードのアート指示をお見せしよう。
*** 拡張アート用のアスペクト比でお願いします***
セットコード:OTJ
舞台:サンダー・ジャンクション
色:赤と白のマナに関わる伝説のクリーチャー
場所:砂漠の花(130~131ページを参照)が咲く、乾燥台地。
意図:描かれるのは、ゼンディカー出身の頑固な牛飼いであるブルース・タール。普段は彼と同じくらい頑固な役牛と騒がしい日々を送っている。サンダー・ジャンクションでは、多元宇宙じゅうから集まる愛しい牛たちを喜んで世話している(役牛については添付を参照)。
行動:自転車のハンドルのような形の口ひげを蓄えた、ブルース・タールを描いていただきたい。自由放浪団の衣装(添付を参照。衣装については23~26ページを参照)に身を包んだ彼は、個性あふれる牧牛を連れて台地をまたがり遊牧している。もしかしたら、彼が一頭に花を与えており、他が順番を待っているところかもしれない。
焦点:ブルース・タール
雰囲気:動物の仲間を守る忠実な守護者。
注意:このアートは(1)標準のアスペクト比 (2)拡張マージン込み(添付のテンプレート参照)の2種類のアスペクト比で印刷されます。標準のアスペクト比で切り取れるように絵を組み立て、拡張マージンの部分は、拡張アスペクト比で印刷されたカードで見えるイースターエッグとして、追加の面白い詳細で埋めてください。
《詐欺師、エリエット》
エリエットは、エルドレイン出身の魔女である。『エルドレインの森』のストーリー終盤にアショクが現れ彼女を勧誘したため、このセットに必要なキャラクターになった。
データベースを改めて見てみると、その枠にこのキャラクターが入る前のカードがあって、見ていて楽しい。
〈骨折りの無法者〉(Ver.1)
{1}{B}
クリーチャー ― スケルトン・無法者
3/1
このターン、あなたが悪事を働いていたなら、[カード名]は破壊不能を持つ。
これは「悪事」の最初期のデザインの1つだった。このデザインは最終的に、{4}{B}で5/4の《狂信的な用心棒》となった。
〈祝賀会の出迎え〉(Ver.2)
{2}{B}{B}
クリーチャー ― スケルトン・ならず者
4/4
威迫
あなたが悪事を働くたび、ライフ1点を失いカード1枚を引く。(悪事を働くとは、対戦相手や対戦相手がオーナーであるパーマネントや呪文、能力、カードを対象とすることである。)
このデザインは最終的に、{1}{B}で1/2飛行の《不吉な前兆の鴉》となり、各ターンに1回の制限が設けられた。コストなしや低コストで繰り返し対象にできる能力が多すぎたのだ。
〈祝賀会の出迎え〉(Ver.3)
{1}{B}
クリーチャー ― トカゲ・ならず者
1/1
威迫
あなたが悪事を働くたび、以下からこのターンに選択されていないものを選ぶ ―
- [カード名]に+1/+1カウンター1個を置く。
- ターン終了時まで、[カード名]は接死を得る。
- ターン終了時まで、[カード名]は絆魂を得る。
- ターン終了時まで、[カード名]は威迫を得る。
このカードは悪事とモードを持つ効果を組み合わせたものだ。このセットには「放題」があるため、他のモードを持つ効果の大半が削除されたのだと私は思っている。このデザインは、放題がこのセットに入る以前のものに違いない。(放題は後から追加されたメカニズムの1つだ。)
〈祝賀会の出迎え〉(Ver.4)
{B}
クリーチャー ― トカゲ・ならず者
1/1
威迫
あなたが1回以上の悪事を働くたび、ターン終了時まで[カード名]は+2/+2の修整を受ける。この能力は、各ターン1回しか誘発しない。(悪事を働くとは、対戦相手や対戦相手がオーナーであるものや対戦相手がコントロールしているものを対象とすることである。)
この効果は、セットに収録されていないと思う。(《見覚えのある余所者、ラザーヴ》が+1/+1カウンターを得る効果を持っているが。)
そしてようやく、エリエットの登場だ。おさらいのため、『エルドレインの森』での彼女のカードを確認しよう。
〈魅惑する者、エリエット〉(Ver.5)
{2}{W}{B}
伝説のクリーチャー ― 人間・邪術師
4/4
あなたがコントロールしているオーラは、「{W}{B}: エンチャントされているパーマネントを追放する」を持つ。
エリエットは白黒の人間・邪術師であり、オーラに関わる能力を持っていたため、新しいカードにもそれらをすべて反映させた。初期案では、オーラでクリーチャーを除去できるようにする能力だった。
〈魅惑する者、エリエット〉(Ver.6)
{1}{W}{B}
伝説のクリーチャー ― 人間・邪術師
2/4
あなたがコントロールしているオーラ1つが、対戦相手がコントロールしている土地でないパーマネント1つにつけられるたび、そのオーラのマナ総量がそのパーマネントのマナ総量以上である場合、そのオーラがエンチャントされ続けている限り、あなたはそのパーマネントのコントロールを得る。
オーラで対戦相手のクリーチャーを除去する以上に楽しいことはあるだろうか? オーラで対戦相手のクリーチャーを奪えるとしたら? ゲームが完全に支配されてしまうことのないよう、対戦相手のクリーチャーにつけたオーラのマナ総量がそのクリーチャーのマナ総量以上である場合のみ奪えるように制限を設けた。それからエリエットのコストを下げて、4/4から2/4にした。
その後「色の協議会」メンバーの誰かがこのカードを見た。それは青単色のカードに見えた。白も黒も、クリーチャーを奪うのに適した色ではない。白はその行動をまったく想定されていない色であり、黒も第3色に留まっているのだ。(多色カードに第3色の能力を持たせることは想定されていない。)このカードに見受けられる唯一の白要素は、エンチャントに関連していることだけだ。エンチャント重視のテーマのセットでなければ、青単色でもおそらくこの効果は持たないだろう。
セット・デザイン・チームはこのデザインを心から気に入ったため、このカードに青を加えることにした。それからもう少し白黒であることを感じられるように、その2色の常盤木キーワード能力である絆魂も加えた。これにより再び4マナ4/4に戻すことになったのだった。
エリエットのアート指示はこうだ。
*** 拡張アート用のアスペクト比でお願いします***
セットコード:QXX
舞台:『Quilting』
色:白と黒のマナに関わる伝説のクリーチャー
場所:プロスペリティにある高級ホテル。154~166ページを参照。
意図:エリエット(添付を参照)は、魅惑的で狡猾な魔女である。58~71ページや89~97ページを参考に、彼女の新しい衣装をデザインしていただきたい。彼女のビジュアルデザインにおいて欠かせない、高い襟と割れた鏡のモチーフを必ず衣装に含めること。
行動:賑わう酒場のテーブルで優雅にくつろぐエリエットの姿を描いていただきたい。他の客たち(155~156ページを参照)はみな、彼女の紫色の夢魔法に魅了され、彼女に奉仕している。彼女とテーブルを囲む誰かは、突っ伏して食事に顔を埋めているかもしれない。酒場の背景には、彼女の鏡像が映っているかもしれない。
焦点:エリエット
雰囲気:圧倒的な力、命の危険、官能的。
注意:このアートは(1)標準のアスペクト比 (2)拡張マージン込み(添付のテンプレート参照)の2種類のアスペクト比で印刷されます。標準のアスペクト比で切り取れるように絵を組み立て、拡張マージンの部分は、拡張アスペクト比で印刷されたカードで見えるイースターエッグとして、追加の面白い詳細で埋めてください。
『サンダー』は鳴り続ける
本日はこれで以上だ。カード個別のデザインの物語を楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、本日取り挙げられたカードや『サンダー・ジャンクションの無法者』全般に関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(X(旧Twitter)、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、その2でお会いしよう。
その日まで、あなたがお気に入りのキャラクターの役を楽しみますように。
(Tr. Tetsuya Yabuki)
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