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鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」

第12回:世界選手権を楽しもう! ところで、PoYとHoFってなんなのさ?

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鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」

2011.11.15

第12回:世界選手権を楽しもう! ところで、PoYとHoFってなんなのさ?


 こんにちは、鍛冶です。
 今日はもう火曜日なので、明後日(17日、現地時間)からついに2011年度の世界選手権が始まります!

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 実は昨日のデッキ構築劇場でも少しだけ触れたのですが、先日のグランプリ・上海(リンク先は英語カバレージ)に夏休みということで参加したところ、案外良い成績を残すことができ(ちなみに、1バイでした!)、本戦の直前に行われたトライアルの成績もうまく反映され、今年の世界選手権の参加権利をいただくことができました。

 しかし、せっかく久しぶりの世界選手権ということなのに、つい昔のカヴァレージを読みふけってしまったりと、テスト前の掃除状態だったりするのですが(笑)

 ところで、世界選手権といえば他のプロツアーとは違い、なんだか格式高い印象があるかと思うのですが、その理由は一体どこから来ているのでしょう。

 それは、世界最高のプレイヤーである世界チャンピオンを決めるというだけでなく、「PoY(Player of the Year)」「HoF(Hall of Fame)」の授賞式を兼ねていることもあると思うのです。

 ところで「PoY」に「HoF」って、カヴァレージや週刊連載でもよく使われる単語ですが、そもそもどうやって決まっているんでしょうか?


☆Player of the Yearとは

 プレイヤー・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀選手賞、Player of the Year)は、そのプロツアー・シーズンにおいて、最もプロツアー・ポイントを獲得したプレイヤーに与えられる称号で、この世界選手権がシーズンの最終戦。

 これはとてもシンプルで、グランプリやプロツアーの成績次第で獲得できるポイントに基づいて決定されます。
 つまり、この週末の成績で結果が決まるというわけですね。

2011 プレイヤー・オブ・ザ・イヤー順位 (11月2日現在)
順位 氏名 プロポイント 国名
1 Owen Turtenwald 54 アメリカ
2 Martin Juza 52 チェコ
3 Luis Scott-Vargas 48 アメリカ
3 Ben Stark 48 アメリカ
5 渡辺 雄也 47 日本
6 八十岡 翔太 44 日本
7 Paulo Vitor Damo da Rosa 41 ブラジル
7 中村 修平 41 日本

 先週末のグランプリ・サンディエゴの結果がまだ反映されていませんが、Owen Turtenwaldが6位で5点、Luis Scott-Vargasが50位で1点、八十岡 翔太が15位で3点、中村 修平が12位で4点を、それぞれ獲得しています。

 特に、来年度のプロプレイヤーLv8(受賞資格は50点)を目指している中村、渡辺、八十岡の3人の成績がとても気になるところです!


☆Hall of Fameとは

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 今年表彰されるプレイヤーは、スウェーデンのAnton Jonssonに、アメリカのSteve O'Mahoney-Schwartz、そして日本から中村 修平の3名です。

 プロのマジックプレイヤーを表彰する制度として、2005年のマジック開始10周年を記念し、マジックの発展に貢献してきたプレイヤーの功績を永遠に称えることを目的として創設されました。日本語ではマジック・プロツアー殿堂と訳されます。

 殿堂入りしたプレイヤーは毎年プロプレイヤーズ・クラブのレベル5の認定を受けることになり、そのレベル5の特典はというと、

  • すべてのグランプリで3Byeを得る。
  • 所属する国の国別選手権の出場権を得る。
  • 今期中に開催されるすべてのプロツアーと世界選手権の出場権を得る。出場権は前日まで獲得しないため、各プロツアーのプロツアー予選に出場できる。
  • プロツアーや世界選手権に参加するたびに、もれなく250ドルを獲得する。

 というもので、未来永劫プロツアーに参加できてしまうのです!
 しかし、この憧れの殿堂入りプレイヤーの仲間入りを果たすためには超えなければならない高い高いハードルがあるのです。

 それは、まずは殿堂にノミネートされ、そこから世界中のプレイヤーの投票の上で選ばれなければならないのです。

 そのノミネート条件というのが、

  • 生涯獲得プロツアー・ポイントが100点以上であること。
  • 初めてプロツアーないし世界選手権に出場してから10年間が経っていること。
  • 現在DCIから出場停止処分を受けていないこと。

 というものです。

 まず最初の難関であるプロポイント100点を超えている日本人は現在29名しかおらず、10年選手であることを含めると更に少なくなるでしょう。

 さらにここから、マジックの歴史における先駆者、長年プロツアーで務めたマジック記者、高レベルジャッジなどのトーナメントスタッフ、DCIの管理スタッフ、プロツアーを直接守り影響を与えてきたWotC社内外の人々、過去の殿堂入りメンバー、プロツアーの直接の経験を持つWotC従業員で構成される「投票委員会(Selection Committee)」と、生涯獲得プロツアー・ポイントが100点以上のプレイヤーで構成される「プレイヤー委員会(Players Committee)」の2つの団体からの投票でメンバーは絞られます。

 各委員会のメンバーはそれぞれ最大5人までに投票でき、
「(投票委員会の比率×67%)+(プレイヤー委員会の比率×33%)」
 という計算により、得票率が40%以上のプレイヤーが選ばれるという仕組みになっています。

 PoYと比べてとても複雑な仕組みなのですが、つまりはHoFに入るためにはたくさんのライバルがいて、その多くがプロツアー・チャンピオンやPoY経験者という、Magicでも受賞するには最も難しいものだと言えるでしょう。

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 しかし、今回の中村修平氏の世界選手権前の生涯獲得ポイントは431とぶっちぎりの成績ということもあってか、あのJon FinkelやGary Wiseも彼に投票しており(しかもblogでコメントもしてました!)、
 蓋を開ける前から99%彼は受賞するだろうと世間では言われていたほどで、凄いとしかいえませんね。

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 また、今回選出されたAnton Jonssonは世界的にはリミテッド・マスターとして有名なんですが、彼は少し引退していた時期もあります。

 彼とは面識があったのですが、2006年のプロツアー・神戸の時にAnton Jonssonにプロ活動を引退することを心に決めているという話を、プロツアー終了後のお酒の席でされたことがとても印象的で、練習の時間がとれなくなってきた自分にも、彼の言葉が強く刺さったのを覚えています。

 しかし、「マジックは逃げない」。

 Anton Jonssonはまたプロのマジックシーンに帰ってきて、そしてすぐにグランプリでTop8に入賞してカムバックを果たしました。

 こういったところに10年選手というハードルの高さを感じさせられますが、そこを感じさせないあたり、むしろ現役の頃以上の努力をしているのでしょうね。
 彼に限らず、プレイヤーから離れたりすることもありますが、マジックとの付き合いかたは人それぞれで難しいものです。

 僕自身、完全にマジックを断っていた時期があったのにも関わらず、こうして週刊連載を書かせてもらっているというのも何かの縁だと思いますし、
 「Play the Game, See the World」というフレーズもありましたが、マジックをしながら世界を旅するのは本当に面白いですよ!
 なんだか今回は同窓会に参加するような気分で準備をしている次第ではありますが(笑)。


 というわけで、今回は中村 修平氏をお祝いしたいという気持ちを込めて、カヴァレージや週刊連載でも使われる「PoY」と「HoF」について解説していきました。
 HoF授賞式は試合の前日、Twitter上で祝福の嵐が起こるハプニングに期待していますが、実際はどうなのでしょうか。

 この記事が掲載されるころには、僕もアメリカ行きの飛行機に乗っている頃かと思います。
 それではまた来週!& GL!


※鍛冶は羽田発の便を国際線は成田空港という思い込みで間違えるトラブルを起こしてしまいましたが、ギリギリで何とか間に合いました。

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