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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:ターボ・ネクロ、カードはデザインを越える(レガシー)

岩SHOW


 カードってどうやって作っているんだろうか。マジックのカードはいくつかのチームに分かれた開発部によってデザインされている。あらかじめ大まかなデザインを行う部門、その部門から引き継いだファイルを元にセットを仕上げていく部門、実際にゲームをプレイを重ねながら数値などの微調整を行う部門……そしてフレイバーに関する部門など、沢山の人の手と長い時間をかけて、カードは作られている。

 なんでも『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』はコラボ先の関係者の方と入念に打ち合わせを行い、約5年の歳月をかけて完成したとのこと。これってクールなエピソードだよなぁ。というわけでマジックから感じられるクールさを追求し、クールなデッキをじっくり観察する「今週のCool Deck」。今回はカードデザインのお話からスタート。

 

 デザイナーが意図していないであろう形で輝くカードというものがある。作り手もクールであれば、その作品を用いる遊び手もクールなのがマジックだ。与えられたカードを使い込み、本来の意図とは別の形で活かす……そんな光景を幾度も目にしてきた。例えば《大いなるガルガドン》。この巨大なビーストは待機コストを支払い追放、アップキープが来るたびに時間カウンターが減っていきいずれは戦場に降臨する……しかしじっくり待っていてはターンがかかりすぎるため、アーティファクト・クリーチャー・土地を生け贄に捧げることでも時間カウンターを減らすことが可能。生け贄にしても損しない類のパーマネントを餌にして、お得に素早く展開してね!というデザインなわけだが……時間カウンターなど関係なく、何度でも生け贄を行えるという点が当時注目された。

 もっとも輝いたデッキは《目覚ましヒバリ》《影武者》との無限コンボ。ガルガドンでヒバリを生け贄に捧げて墓地の《影武者》+パワー2以下のクリーチャーを戦場に戻し、《影武者》はヒバリのコピーに。ヒバリ武者とそのクリーチャーをガルガドンで生け贄にし、ヒバリ武者の能力で墓地の《影武者》ともう1体を戻し……これにより《造物の学者、ヴェンセール》《誘惑蒔き》などの戦場に出た時に誘発する能力を延々と使いまわして相手の盤面を台無しにできる。このコンボ、楽しいし強いし、何よりガルガドンの使い方がクールすぎて好きだったなぁ。

 というわけで今回紹介するデッキも同様に、おそらくはこういった使われ方をするとイメージされていなかったんじゃないかな?そんな想定外の動きを披露するクールなデッキをチョイス。ではその全容をご覧いただこう。

wonderPreaux - 「ターボ・ネクロ」
Magic Online Legacy Challenge 32 優勝 / レガシー (2025年5月25日)[MO] [ARENA]
7 《冠雪の沼
7 《
-土地(14)-

3 《ダウスィーの虚空歩き
4 《ボガートの獲物さらい
3 《古の館底種
3 《黙示録、シェオルドレッド
-クリーチャー(13)-
2 《金属モックス
2 《水蓮の花びら
4 《暗黒の儀式
4 《強迫
4 《思考囲い
4 《不憫な悲哀の行進
2 《不敬者破り
4 《魂の撃ち込み
4 《ネクロドミナンス
3 《一つの指輪
-呪文(33)-
3 《致命的な一押し
1 《殺し
3 《オークの弓使い
3 《攪乱のフルート
3 《虚空の力線
2 《外科的摘出
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 

 レガシーの「ターボ・ネクロ」というコンボデッキ。ネクロとは《ネクロドミナンス》のこと。ターン終了時にライフを支払い、その枚数分カードを引くという強烈なアドバンテージをもたらす。毎ターンの通常ドローはスキップされる、墓地の置かれたカードは追放されるなど古き時代の名カード《ネクロポーテンス》のリメイクである。このネクロは手札の上限が5枚になるというさらに厳しい制限も設けられており、ライフを大量に払っても手元に残るのは5枚のみになる。ただ、インスタントやそのタイミングで唱えたり能力を起動できるカードであれば、引いてきて即使用するという形で恩恵を享受できる。

 そこでターン終了を迎えると同時に大量ドロー、そのままターンを終えずに複数のアクションを行って勝利を狙うのが「ターボ・ネクロ」というコンボ。勝ち方は色々狙えるが、このリストは純粋な黒単でまとめられているのがクールだ。用いるのは《魂の撃ち込み》。手札2枚を追放することでマナを支払わずに唱えられ、対象に4点ダメージを飛ばすインスタントだ。4点回復も出来るのでネクロで減ったライフも安心。これを連打して勝負を決める!

 

 ……とは言ったが、《魂の撃ち込み》は4点ダメージ。ネクロで19枚ドローして4枚引けたりしても、4×4=16点と相手のライフを削り切れるかはかなり怪しい。そこでこのデッキはあるクリーチャーを用いる。冒頭で述べた「デザイン段階では想定されていなさそうな使い方」、このデッキのそれにあたるカード《古の館底種》だ。

 このホラーは自分の唱えるデーモン・ホラー・ナイトメアのコストを軽減させる。そのためそういったクリーチャーで固められたデッキで使うものに見えるが……このデッキではもう一つの能力がキーとなる。呪文を唱えた際、その呪文のマナ総量に対して実際に支払ったマナが少なかった場合、その差である点数分対戦相手のライフを失わせる。この《古の館底種》をコントロールしていて《魂の撃ち込み》をその代替コストで唱え場合、マナ総量7に対して支払ったマナは0なので……7点ルーズ!撃ち込みのダメージと合計して実に11点!これを2回行うか、館底種を2体コントロールするかで20点以上ライフを失わせて勝利、というのがこのクールなコンボの狙いだ。

 館底種がいれば、クリーチャーやプレインズウォーカーにしかダメージを与えられない《不憫な悲哀の行進》も対戦相手のライフを削る手段になる。この行進はマナではなく手札の黒いカードを追放することで唱えるためのマナが{2}軽減される。X=10で唱えても実際に払ったマナは黒マナ1つのみというようなアクションも十分に狙えるため、ネクロで引きまくった手札を注ぎ込んでフィニッシュ!実際のところデザイン段階でどこまでこのようなコンボを想定していたかはわからないが……デーモンなどのクリーチャーデッキで使うようにしか見えないこのカードを、レガシーでネクロと組み合わせるというコンボに気付いたプレイヤーたちには「クール」という最大限のサイン時の言葉を贈らせてもらおう。

 『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』本セットにも統率者デッキにも、長い年月をかけてデザインされたカード達が含まれている。その中には作り手の想像を超えてクールな活躍を見せるカードもあるかもしれない。さあ、次元を超えるたびに出かけよう。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Find the unexpected‼

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