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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ディミーア・セルフバウンス:引き算のデッキ構築(スタンダード)

岩SHOW

 何の世界の話でも、引き算は大事だなというのを実感する。あれもこれもそれもどれも……ってやると一体何がやりたいのか、無茶苦茶になるんだよな。料理とかもあれこれと素材を使って複合的な味を作りだすのも良いが、最近はどれだけシンプルに美味しくまとめ上げられるか、狙った素材の味だけを引き出すような引き算を心がけて自炊。映画とかのエンタメも、あれこれボリューミーなのが好きだったけども、過剰なものを排除した落ち着いた構成も良いなぁなんてことに気付いた。

 そしてマジック、これは必ずしも引き算が正しいわけでもなく、足し算が功を奏することもあるが……成功したデッキから何かを引いたデッキというものは必ず登場し、どっちがいいのか我々プレイヤーを惑わせるものである。

 

 スタンダードの「エスパー(白青黒)ピクシー」は《望み無き悪夢》や《逃げ場なし》などのように戦場に出たら能力が誘発するエンチャントを中心に構成されており、それらを《養育するピクシー》などで手札に戻して再利用。それらを何度も戦場に出すことで《呑気な物漁り》を誘発させてクリーチャーを強化、低コストのカードだけで対戦相手を殴り倒す面白く、そして強力なアーキタイプだ。この手の3色デッキが活躍すると…色を減らすという引き算が試みられるのがマジックのお約束。ではこのピクシーデッキから何が引かれたのかというと……

Mike Byrd - 「ディミーア・セルフバウンス」
地域チャンピオンシップ予選(米国アイオワ州アンケニー) 優勝 / スタンダード (2025年1月11日)[MO] [ARENA]
4 《地底の大河
4 《闇滑りの岸
4 《グルームレイクの境界
3 《不穏な浅瀬
1 《魂石の聖域
5 《
3 《
-土地(24)-

3 《遠眼鏡のセイレーン
4 《孤立への恐怖
4 《稲妻罠の教練者
-クリーチャー(11)-
2 《切り崩し
4 《逃げ場なし
1 《喉首狙い
2 《今のうちに出よう
4 《望み無き悪夢
4 《この町は狭すぎる
4 《嵐追いの才能
1 《底なしプール // 更衣室
3 《悪夢滅ぼし、魁渡
-呪文(25)-
2 《除霊用掃除機
1 《切り崩し
2 《ギックスの命令
2 《強迫
2 《否認
2 《ティシャーナの潮縛り
4 《分派の説教者
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 

 引かれたのはまさかの白!おいおい、ピクシーと物漁りをピックアップしておいてそれを取っ払ったリストを紹介するだって?というのは自然な反応だ。そりゃ引き算どころじゃないんじゃないのかとさえ思える、このディミーア(青黒)のデッキは、しかしこれはこれでピクシーの精神性をしっかりと受け継いでいる。エンチャントなどを手札に戻すのは《孤立への恐怖》の役目。ピクシーと同じく低コストで優れた航空戦力であり、そしてデメリットとして設定されたパーマネントを戻す能力がこの手のデッキではメリットになる。エンチャントを使いまわして手札破壊やクリーチャー除去を行い、そして《嵐追いの才能》を戻せばカワウソを増やすことも可能だ。

 この《孤立への恐怖》と共に自分のエンチャントを戻すカードは……《嵐追いの才能》といえば、そう《この町は狭すぎる》!もうすっかりお馴染みなこのコンビネーション。才能レベル2でこの町を墓地から手札に戻し、そしてこの町で才能を回収。このループに対戦相手のパーマネントも巻き込んで、相手の戦場から強力なパーマネントを戻し続ける。そうこうしている間に他のカードで攻めて勝つというパッケージ……様々なデッキに取り入れられているが、これさえあれば白なしでも十分に戦えるという結論に至ったのだろう。大胆な引き算により構築された「ディミーア・セルフバウンス」がスタンダードの新たなトレンドとなっている。

 

 このリストでは恐怖とこの町に加えて、さらにセルフバウンス要素として《今のうちに出よう》もチョイスされている。これはクリーチャーかエンチャントに対する打ち消しであり、また自分のそれらのパーマネントをバウンスするモードも選べる。そして面白いのが、自分へのバウンスの場合は最大で2枚戻せるという点。これで《望み無き悪夢》を激しく出し入れして相手の手札をスッカラカンにできればとっても良い気分。

 またバウンスと言えば相手のクリーチャーを戻す《底なしプール》のチョイスも面白い。バウンスし続ける強烈な嫌がらせを行っても良いし、部屋カードでもあるので長期戦になれば《更衣室》のドアを開け、クリーチャーで殴ってドローすることも可能となかなかに器用だ。リミテッドで超強かったエンチャントなので、スタンダードでも良い仕事をしてくれるかも。デッキの良いアクセントになりそうな期待の1枚!

 スタンダードに居場所を確立した「エスパー・ピクシー」とそれをベースに白を抜いて作られた「ディミーア・セルフバウンス」。引き算によりデッキが生まれる現象、君自身でプレイして体験してみよう!新しいデッキを生み出してちょうだい!

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