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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

マルドゥ・エンジェル:オブジェクトの領域移動(スタンダード)

岩SHOW

 マジックのルール用語に「オブジェクト」というものがある。カードテキストにこれが書かれることはないので、知らない人もいることだろう。これはたとえば手札のカード1枚、パーマネント、スタック上の能力などなど……あらゆる領域で1つと数えられるもののことだ。領域ってのは手札、墓地、ライブラリーなどのことだね。

 このオブジェクトというのはそれが同一のものであるかどうかを参照するために用いる用語である。どういうことか?オブジェクトは1つの領域に1つしか存在しない。領域を複数またいで存在することはないってことだ。墓地と戦場両方に同時に存在するカードはない、といえばわかりやすいかな。当たり前のことではあるが、ルールでこのようにきちんと定義されているからこそ「手札でありパーマネントである」みたいなバグが発生しないようになっているってわけだね。

 僕もルールに明るいわけではないので詳細はわからないことが多いが、オブジェクトに関してプレイヤーが把握しておくと良いものを紹介しよう。それはパーマネントに関するルール。例えばプレインズウォーカーの忠誠度能力など、1ターンに1度しか起動できない能力を持ったパーマネントがある。これを起動した後に《ちらつき》のようなカードで追放、つまり領域を移動させる。こうして別領域を経て戦場に戻ってきたものは……前とは別のオブジェクトとして扱うことになる。つまり1ターンに1回の能力はまだ起動していない状態であり、おかわりすることが可能になっている。

 《ちらつき》のような処理を行うカードや能力は通称“ブリンク”。ブリンクを行うことでオブジェクトを別物にして得をする…今回はそんなテクニカルなデッキを取り上げよう。

Emmanuel Leclainche - 「マルドゥ・エンジェル」
ストアチャンピオンシップ 優勝 / スタンダード (2023年5月20日)[MO] [ARENA]
3 《ラフィーンの塔
4 《コイロスの洞窟
4 《砕かれた聖域
3 《日没の道
2 《憑依された峰
1 《皇国の地、永岩城
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
4 《平地
3 《
-土地(25)-

4 《希望の源、ジアーダ
4 《ギラプールの守護者
1 《第三の道のロラン
4 《怒りの大天使
3 《セラの模範
4 《鋼の熾天使
3 《ファイレクシアの肉体喰らい
-クリーチャー(23)-
4 《運命的不在
3 《冥府の掌握
2 《喉首狙い
4 《精霊界との接触
2 《不死なる悪意
-呪文(15)-
3 《危難の道
2 《覆い隠し
1 《喉首狙い
1 《第三の道のロラン
2 《大都市の改革家
1 《ファイレクシアの肉体喰らい
1 《セラの模範
2 《石の脳
2 《不死なる悪意
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 このスタンダードのリストは、白黒2色に赤をほんのり添えた3色デッキ、マルドゥと呼ばれるカラーリングだ。このカラーリングになっている理由は《怒りの大天使》!彼女のキッカーコストの支払いのための色足しであり、これにより2点ダメージ×2をばら撒いて戦場を綺麗にしたり対戦相手のライフを削ったりしながら、絆魂能力を活かして回復する。

 この大天使を中心に他にも天使クリーチャーを複数搭載し、それらの展開を《希望の源、ジアーダ》でサポートする「マルドゥ・エンジェル」デッキのパターンの一つというところだね。ジアーダがいれば後続の天使はサイズが上昇した状態で戦場に出てくる。飛行や絆魂がある天使らがサイズも獲得すればまさしく天下無敵。《鋼の熾天使》のような単騎でも強いカードが搭載されており、白と黒の除去もあるのでクリーチャーデッキとの殴り合いを大いに結構大歓迎という構成だな。

 さて、冒頭のオブジェクトに関するカードを紹介しよう。《ギラプールの守護者》!発明に満ち溢れた次元カラデシュにおける天使であり、これはクリーチャーを追放してからそれのオーナーのターン終了時に戻すという時間差が発生するタイプのブリンクである。戦場に出ることが条件の誘発型能力の再誘発を狙ったりするのがメインの使い方になるだろう。ただこのリストだと……

試作クリーチャーがいる!これぞオブジェクトのルールを学ぶにはぴったりな面々だな。試作能力を持ったクリーチャーは、通常のコストではなく試作コストで唱えることもできる。マナ総量が軽くなる代わりに色マナを要求するようになり、無色ではなくその色になる。サイズは通常コストよりも小さくなっているので、大型クリーチャーを序盤で用いるためのオプションと考えよう。本来7マナ7/5という大型クリーチャーである《ファイレクシアの肉体喰らい》を試作だと黒い3マナ3/3として運用できる。それでいてテキストに書かれた能力は通常コストと同じものなので、戦闘要員としてなかなか活躍してくれる1枚だ。

 この試作クリーチャーを《ギラプールの守護者》で追放すると……追放領域に行ったことで戦場にいた時とは別のオブジェクトとして扱われる。試作コストで唱えたものであっても、追放されて戦場に戻ってくる時には通常コストで唱えたものとして戻ってくる、というわけだ。4ターン目に巨大サイズの戦力が手に入る!《鋼の熾天使》も同様にブリンクすれば試作から本作に出世するので、ギラプールの発明パワーを頼ってイカツイ盤面を作り上げよう!

 《精霊界との接触》の魂力能力もまたブリンクであり、ギラプールと同じくこれでも施策クリーチャーを別オブジェクトに変更させてサイズアップを狙うことが可能だ。相手がクリーチャー除去を撃ち込んできたところをこれで回避して、より悪い状況にランクアップしてやると最高に気分が良くなるな。

 また、墓地に落ちても別オブジェクトになるので《不死なる悪意》も面白い働きを見せる。これは死亡したクリーチャーを墓地から戦場に戻すものなので、試作が製品版に化ける!しかも+1/+1カウンターを乗せるボーナス付きなので、このちょっとしたコンボが決まった瞬間に対戦相手が投了、なんてこともザラにあるだろう。たった1マナなので自分のターンに動きながら相手のターンに構えると言うのが容易なので、しっかり睨みを利かせるプレイングを心がけていこう。

 今回はルールのお話がメインになってしまったが……普段あまり触れていないカードの挙動のその理由について、丁寧に文字に起こしておくのも大事だろうと意気込んでやってみた。他にもわからない挙動などあれば、気軽に声をかけてもらえれば。タイミングが合えばここで取り上げさせていただくかも(というかこちらとしてもネタが貰えてありがたい)。SNSなどで見かけたら気軽に声かけてね!

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