読み物

週刊デッキ構築劇場

2012.04.09

第56回:井川良彦のデッキ構築劇場・その生物、最強につき

演者紹介:井川 良彦

　2007年の横浜でプロツアーに初参加、「初の海外旅行は、マジックのプロツアーで行きたい」という自身の言葉を2010年のプロツアー・サンディエゴで実現、海外緒戦にしてトップ８入賞を決めてみせた「驚嘆の男（ザ・ワンダーリング・ワン）」。
　その後も、伊藤 敦・高橋 純也と組んだ調整チーム『神様へのブラフ』で切磋琢磨し、日本選手権2011で4位に入賞するなど、多忙な日々にあってもフォーマットを問わずマジックに取り組む、情熱あふれるプレイヤー・ライターである。

　みなさん、モダンを楽しんでいますか？

　プロツアー・アヴァシンの帰還予選のシーズンは終わってしまいましたが、６月にはグランプリ・横浜が控えています！

　グランプリ・横浜トライアルのフォーマットもモダンでおこなわれる場所が多いので、グランプリ・横浜への参加を予定している方はもちろんのこと、モダンを楽しみたい方も是非足を運んでみてください！

　話は変わりますが、皆さんが思い浮かべる「最強のクリーチャー」は、一体どのカードなのでしょうか？

　ビートダウンをこよなく愛するプレイヤーにとっては、モダンで禁止されている、この１マナクリーチャーこそが魂であり最強でしょう。

　また、名実ともに「最強のルアゴイフ」である彼も、この手の議論には欠かせません。

　10年来のプレイヤーにとっては各時代を彩った「青い悪魔」こそが最強の生物であり、

　また、現代マジックを生きるプレイヤーにとっては、スタンダードからヴィンテージまで跳梁跋扈するこのクリーチャーこそが最強なのかもしれません。

　状況により強さの質が異なるマジックにおいて、「最強」という言葉はマジックのカードにはあまり相応しくありません。人それぞれ答えは異なるでしょう。

　しかし、そう少なくない人がこの15マナのクリーチャーを最強だと考えているのではないでしょうか。

　エルドラージ覚醒が生んだ「殴れば勝ち」。その名は《引き裂かれし永劫、エムラクール》！

　戦場に出るだけで相手を絶望の淵に追いやり、一度攻撃宣言をすれば、派手なイラストに添えられた「滅殺６」で相手の陣営はほぼ完全に崩壊するでしょう。

　《秘密を掘り下げる者》も《タルモゴイフ》もこの圧倒的存在の前では塵に同じ。まさに神！まさに最強！！！

　強すぎるがゆえに非常に使いづらいデザインになっている《引き裂かれし永劫、エムラクール》。

　そんな《引き裂かれし永劫、エムラクール》を使い倒すために、いくつかデッキを考えてみました。

「Love Emrakul！」[MO] [ARENA]

2 《湿った墓》 1 《血の墓所》 1 《繁殖池》 1 《蒸気孔》 1 《神聖なる泉》 1 《踏み鳴らされる地》 4 《真鍮の都》 1 《宝石鉱山》 4 《霧深い雨林》 4 《新緑の地下墓地》 -土地（20）- 4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー（4）-	4 《五元のプリズム》 4 《信仰無き物あさり》 4 《血清の幻視》 4 《手練》 3 《思考囲い》 3 《緊急時》 3 《御霊の復讐》 3 《太陽の拳》 4 《太陽との交感》 4 《裂け目の突破》 -呪文（36）-	1 《ドライアドの東屋》 3 《払拭》 4 《紅蓮地獄》 3 《倦怠の宝珠》 4 《変身》 -サイドボード（15）-

《裂け目の突破》+《引き裂かれし永劫、エムラクール》

　モダンの大会に出たことがある人なら、一度はこのコンボを食らって投了したことがあるのではないでしょうか。
　たった５マナと２枚で(ほぼ)ゲームに勝てちゃう必殺コンボ！！

　《やっかい児》と《詐欺師の総督》は大っ嫌い。神を平伏させるアイツらは一体何者なんだ。

《御霊の復讐》+ ディスカード手段+《引き裂かれし永劫、エムラクール》

　そのシャッフル能力ゆえ、《ゾンビ化》《堀葬の儀式》のような普通のリアニメイトでは《引き裂かれし永劫、エムラクール》を墓地から場に出すことはできません。
　ですが、インスタントである《御霊の復讐》を使えば、そのシャッフル能力が解決される前に戦場に釣り上げることが可能です！

　《信仰無き物あさり》《思考囲い》と合わせて、今ならたったの３マナ！安い！速い！強い！

《太陽の拳》+《引き裂かれし永劫、エムラクール》

　「《引き裂かれし永劫、エムラクール》をプレイして追加ターンを得たい！でも15マナなんて出せないよ...」

　そんなあなたにオススメなのがこちら。そのワガママな願いを、たったの「３マナ+５マナ」の分割払いで叶えましょう！
　このコンボが決まったら、きっと存分にドヤ顔をキメることができるでしょう！

《変身》+《引き裂かれし永劫、エムラクール》

　スタンダードでも活躍したこのコンボ。
　相手が《稲妻》《流刑への道》のような単体除去を抜いたところを見計らってサイドインしましょう！

　なお、《変身》した返しに《ヴェールのリリアナ》を出されて悲しみを背負っても、当方は一切責任を負いません。

　《引き裂かれし永劫、エムラクール》の能力で《ドライアドの東屋》がライブラリーに戻るので、めげずに再チャレンジしてください。

　《引き裂かれし永劫、エムラクール》も好きだけど、他の勝ち手段でも勝てるデッキがいいな。って方にはこちらをどうぞ。

「Emrakul, the Red Star」[MO] [ARENA]

8 《山》 4 《菌類の到達地》 4 《溶鉄の金屑場》 4 《背骨岩の小山》 -土地（20）- 3 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー（3）-	4 《稲妻》 4 《欠片の飛来》 4 《溶岩の撃ち込み》 2 《信仰無き物あさり》 4 《ぶどう弾》 4 《捨て身の儀式》 4 《紅蓮術士の刈り痕》 4 《煮えたぎる歌》 4 《裂け目の稲妻》 3 《裂け目の突破》 -呪文（37）-	4 《窯の悪鬼》 3 《紅蓮地獄》 3 《焼却》 3 《巣穴からの総出》 2 《記憶の点火》 -サイドボード（15）-

《背骨岩の小山》+《引き裂かれし永劫、エムラクール》

　秘匿土地といえば、過去のスタンダードでキスキン・白黒トークンを支えた《風立ての高地》が有名ですが、そういえばこんなカードもありました。

　７点という、微妙に達成しづらい秘匿条件ですが、ひとたび秘匿を解除すれば《ぶどう弾》なり《引き裂かれし永劫、エムラクール》なり、相手を介錯してくれること間違いなし。

　もちろん、上にも挙げた《裂け目の突破》《引き裂かれし永劫、エムラクール》コンボで瞬殺してもいいですし、《ぶどう弾》+《紅蓮術士の刈り痕》で相手を撃ち落とすのも爽快ですね。

　とにかく相手の予想の斜め上！想定外こそが人生！という方にはこちら。

「Eldraffinity」[MO] [ARENA]

2 《島》 3 《空僻地》 4 《ダークスティールの城塞》 4 《墨蛾の生息地》 3 《ちらつき蛾の生息地》 -土地（16）- 4 《羽ばたき飛行機械》 4 《メムナイト》 4 《信号の邪魔者》 4 《大霊堂のスカージ》 4 《鋼の監視者》 3 《刻まれた勇者》 3 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー（26）-	4 《オパールのモックス》 3 《バネ葉の太鼓》 4 《頭蓋囲い》 3 《霊気への折り込み》 4 《物読み》 -呪文（18）-	3 《エーテル宣誓会の法学者》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 2 《墓掘りの檻》 3 《鞭打ち炎》 3 《古えの遺恨》 3 《裂け目の突破》 -サイドボード（15）-

《霊気への折り込み》+ ０マナ生物 +《引き裂かれし永劫、エムラクール》

　普通の親和だと思った？　残念！《引き裂かれし永劫、エムラクール》ちゃんでした！

　ここに挙げた以外にも《召喚の罠》《風立ての高地》《対抗激》《場当たりな襲撃》など、《引き裂かれし永劫、エムラクール》を活かせそうなカードがモダンには沢山存在します。

　《ウルザの塔》などのいわゆるウルザランドを揃えて15マナでプレイするのも楽しいですが、せっかくのモダン環境なので、みなさんが自分だけの《引き裂かれし永劫、エムラクール》ライフをエンジョイしてくれれば幸いです。

　グランプリ・横浜でトロフィーを掴むのは、一体誰のどんなデッキになるのでしょうか。
　ひょっとすると、まだ見ぬ《引き裂かれし永劫、エムラクール》デッキが栄冠を掴むかもしれませんね。

　モダン環境、まだまだ目が離せません！！

　ということで、今回は《引き裂かれし永劫、エムラクール》尽くしでお届けしました。
　また次回お会いしましょう！