EVENT COVERAGE

ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019

観戦記事

決勝:Matt Sperling(アメリカ) vs. Eli Loveman(アメリカ)

Corbin Hosler
authorpic_FrankKarsten.jpg

2019年4月28日

 

 ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019決勝。この席に向かい合って座る両者に、もはや立場の違いなど存在しない。一方には、大会2日目に驚異の追い上げを見せ、奇跡的に自身3度目となるミシックチャンピオンシップ・トップ8入賞を果たした、歴戦のプレイヤーたるマット・スパーリング/Matt Sperling。もう一方には、グランプリ・トップ8入賞で5度目のミシックチャンピオンシップの参加権利を得てここまで上がって来た、25歳のイーライ・ラヴマン/Eli Loveman。

 両者が手にしたデッキは、どちらも爆発力があるものだ。スパーリングは《実験の狂乱》搭載型の「親和」。《実験の狂乱》はゲーム後半に引き込むと弱い《羽ばたき飛行機械》と《メムナイト》のようなカードの弱点を補い、「親和」の特長であるロボット軍団による素早い攻勢に、ゲーム後半の粘り強さも加えている。

 ラヴマンは「人間」。こちらもモダンの主要アーキタイプの1つであり、今大会のトップ8にも使用者3人を送り出している。《教区の勇者》と《サリアの副官》による攻撃力に《帆凧の掠め盗り》や《翻弄する魔道士》による妨害手段をあわせ持つこのデッキは、環境のあらゆるデッキに対抗できる手立てを有している。ラヴマンはこのデッキを駆り、2日目8戦全勝でトップ8入賞を果たしたのだ。

Finals-EL-vs-MS.jpg

ゲーム展開

 最終決戦の始まりは、両者とも強力な滑り出しだった。ラヴマンが《霊気の薬瓶》をプレイし、スパーリングは《メムナイト》から《バネ葉の太鼓》、《大霊堂のスカージ》と高速の展開を見せる。

 たしかに爆発的なスタートを切ったスパーリングだったが、しかし《オパールのモックス》がないため2マナ域の展開が一手遅れた。そして「親和」側にとって不運なことにこの試合の先攻はラヴマンであり、その「2マナ域」――《電結の荒廃者》は、《翻弄する魔道士》によって封じられることになる。これによりスパーリングは、《信号の邪魔者》の助けだけで攻勢を続けることを余儀なくされた。

 一方のラヴマンは、《サリアの副官》と2枚目の《霊気の薬瓶》で盤面を築くのだが、ダブル・マリガンを喫しているためプレッシャーをかけるための脅威が足りていない。さらに《手付かずの領土》を「ウィザード」指定でプレイしたため、マナ基盤にも不安を抱えていた。

 それでも《教区の勇者》が戦線に加わり、ほどなくして《カマキリの乗り手》も現れた。スパーリングは土地を引き込み、手札で足止めを食っている《電結の荒廃者》を見つめるのみ。ラヴマンが先勝するまで時間はかからなかった。

 第2ゲーム、スパーリングのデッキはさらに速度を増した。しかしラヴマンの「人間」デッキは、後攻かつマリガンで手札が1枚少ない状態にも関わらず、筋書きをひっくり返してみせた。ラヴマンは《霊気の薬瓶》から《教区の勇者》と展開すると、続けてこのデッキの「コンボ」のひとつ――《サリアの副官》を唱え、能力の誘発にスタックして《霊気の薬瓶》から2枚目の《サリアの副官》という強烈な動きを披露した。突如として現れた凄まじい力の軍勢を前に、スパーリングが《電結の荒廃者》だけで対抗するのは困難だ。

 《頭蓋囲い》を引き込んだことでわずかな希望が生まれたが、戦闘中に《霊気の薬瓶》から《反射魔道士》が出てくる状況になった今、もはや《電結の荒廃者》は脅威にならない。スパーリングは《電結の荒廃者》を手札に戻すのではなく、すべてのパーマネントを戻すことを選んだ――つまりカードを片付け、0-2でサイドボード後のゲームに進むことを決断した。

 第3ゲームでついに、スパーリングが《実験の狂乱》搭載型「親和」ならではの強みを見せた。2ターン目《頭蓋囲い》から3ターン目に《実験の狂乱》を設置すると、以後《羽ばたき飛行機械》が無駄なドローにならなくなった。これに応じてラヴマンは『ラヴニカの献身』の新戦力《拘留代理人》で《実験の狂乱》を追放し、その後スパーリングと台本があるようなやり取りをした。

スパーリング:「お友達はそいつを気に入ったようだが、今俺のデッキ・トップに乗ってるカードはお気に召さないだろうな」

ラヴマン:「どうせ《感電破》でしょう?」

スパーリング:*その場の全員に見えるように《感電破》をめくる*

 和やかな笑い声が漏れたが、これでスパーリングが優勢となり、彼は《頭蓋囲い》によって底上げされた攻撃でラヴマンのライフを残り11点に落とし込んだ。ラヴマンも《帆凧の掠め盗り》を繰り出して天秤を戻そうとしたものの、ロボットの軍勢を食い止めることは叶わず、さらに2枚目の《頭蓋囲い》を装備した《ちらつき蛾の生息地》も攻撃に加わるとスパーリングの勝利は揺るがなかった。

 これまでの3ゲームでは稲妻のごとき高速の展開が続いたが、第4ゲームはやや遅めに進んだ。ラヴマンは土地が1枚で止まりながらも、《貴族の教主》2枚を立て続けに展開。一方のスパーリングも《羽ばたき飛行機械》と《鋼の監視者》という立ち上がりだった。スパーリングの初動は「親和」デッキにとって悪くはないものだったが、ラヴマンのサイドボードから入った《イゼットの静電術師》が《鋼の監視者》を撃ち落とし、壊滅的な被害を与えた。さらに《カマキリの乗り手》がラヴマンの戦線に続き、2体の《貴族の教主》の「賛美」を受けてスパーリングに4ターン・クロックを突きつけた。

 スパーリングは《電結の荒廃者》で盤面を立て直し(《イゼットの静電術師》の電撃を耐えられるだけの餌は十分にある)、4枚目の土地を置いてターンを返した。ラヴマンが3枚目の《貴族の教主》を繰り出して《カマキリの乗り手》が6/6で襲いかかると、スパーリングは《墨蛾の生息地》でのチャンプ・ブロックを選択し、それを生け贄に捧げて《電結の荒廃者》を2/2に成長させた。戦闘後、2体目の《カマキリの乗り手》が加わり、スパーリングは苦しい状況でターンを迎えることになった。彼は2枚目の《電結の荒廃者》を繰り出しただけで、ターンを返す。

 ラヴマンは、ミシックチャンピオンシップ王者が決まり得る大事なターンを迎えた。彼はまず、《帆凧の掠め盗り》でスパーリングの手札を確認する。そこには《感電破》と、《イゼットの静電術師》を前に繰り出せないでいた《鋼の監視者》が2枚あった。

 それでもスパーリングは諦めない。盤面には《電結の荒廃者》2体と《羽ばたき飛行機械》1体。彼は2/2の《電結の荒廃者》を3/3にして生け贄に捧げ、《羽ばたき飛行機械》に+1/+1カウンターを3個移動させて《カマキリの乗り手》を1体討ち取った。しかし続く《反射魔道士》で《羽ばたき飛行機械》は手札に返っていき、次の攻撃でスパーリングは残りライフ4点まで追い詰められた。スパーリングは最後のドローでも何も得られず、ラヴマンのミシックチャンピオンシップ優勝を称え右手を伸ばすのだった。

 
イーライ・ラヴマン、ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019優勝おめでとう!

(Tr. Tetsuya Yabuki)

  • この記事をシェアする

RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

RANKING

NEWEST

サイト内検索