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マジック・スポットライト:シークレッツ

戦略記事

データでみる「マジック・スポットライト:シークレッツ」

増田 勝仁


 「マジック・スポットライト:シークレッツ」メインイベントの全参加者は893名。

 ここまで大規模なトーナメントは国内でもそう多くない。

 そして893人が持ち込んだデッキは、単なる893個の選択ではない。

 勝つために何を信頼し、何を警戒し、何を捨てたのか。

 その集合が、いまの環境そのものだ。

 今回は全デッキリストを集計し、その痕跡から環境を読み解いていこう。
 

環境の共通言語 ―― 多くのプレイヤーが共有したもの

 まずは採用率ランキングから見てみよう。

採用デッキ数ランキング トップ30
順位 カード名 採用デッキ数 採用率
1 467 52.3%
2 マルチバースへの通り道 451 50.5%
3 軽蔑的な一撃 445 49.8%
4 蒸気孔 434 48.6%
5 呪文貫き 400 44.8%
6 リバーパイアーの境界 376 42.1%
7 噴出の稲妻 367 41.1%
8 尖塔断の運河 341 38.2%
9 瞬間凍結 317 35.5%
10 食糧補充 313 35.1%
11 除霊用掃除機 286 32.0%
12 選択 274 30.7%
13 手練 272 30.5%
14 観念の名誉教授 266 29.8%
15 金屑の嵐 261 29.2%
16 今のうちに出よう 259 29.0%
17 魂標ランタン 253 28.3%
18 轟く機知、ラル 250 28.0%
19 戦略的裏切り 231 25.9%
20 嵐削りの海岸 230 25.8%
21 渦泥の蟹 224 25.1%
22 始まりの町 222 24.9%
23 ブーメランの基礎 222 24.9%
24 無効 220 24.6%
25 嵐追いの才能 218 24.4%
26 精鋭射手団の目立ちたがり 215 24.1%
27 没頭 215 24.1%
28 舷側砲の一斉射撃 214 24.0%
29 焼きつけ 205 23.0%
30 報いの呪詛 205 23.0%
 
 

 最も多くのデッキで採用されていたのは《》で467デッキ。全体の52.3%にあたる。

 続く《マルチバースへの通り道》が451デッキ、《軽蔑的な一撃》が445デッキ、《蒸気孔》が434デッキ、《呪文貫き》が400デッキ。

 893人が参加した大会で、半数近いプレイヤーが同じカードを採用していたことになる。

 ここで注目したいのは順位そのものではない。

 上位に並んでいるカードたちが、環境について何を語っているかだ。

 

 例えば《軽蔑的な一撃》。

 445デッキ、49.8%。

 約2人に1人が採用している計算になる。

 この数字は単純に「カードが強い」という話では説明できない。

 なぜなら打ち消し呪文は本来、使うデッキを選ぶカードだからだ。

 それにもかかわらず半数近いデッキに採用されているということは、この環境には多くのプレイヤーが対処しなければならない重い呪文が存在していたということだろう。

 《ジェスカイの啓示》や《渦泥の蟹》のようなカードが環境に溢れていたからこそ、この数字になったのだろう。

 

 《呪文貫き》も同様だ。

 400デッキ、44.8%。

 序盤こそ強いものの、終盤には価値の下がる《呪文貫き》がこれだけ高い採用率を記録している。

 つまりプレイヤーたちは長期戦でのリソース勝負以上に、序盤の主導権争いを重要視していたと考えられる。

 

 そして《瞬間凍結》の35.5%という数字も印象的だ。

 実に317デッキ。

 3人に1人以上が緑対策を持ち込んでいたことになる。

 それはつまり、緑単上陸が「当たる前提」で考えられていたデッキだったということだろう。

 893人はそれぞれ異なるデッキを持ち込んだ。

 しかしその土台には共通認識が存在していた。

 《軽蔑的な一撃》は重い呪文への警戒を、

 《呪文貫き》は環境の速度を、

 《瞬間凍結》は緑単上陸の存在感を語っている。

 カードの採用率を見ているようで、実際に見えているのはプレイヤーたちの環境認識そのものなのだ。

 ランキング上位のカードたちは、この環境の「共通言語」だったのである。
 

環境の重力「青」

 続いて総採用枚数ランキングを見てみよう。

総採用枚数ランキング トップ30
順位 カード名 総採用枚数
1 2201
2 蒸気孔 1659
3 リバーパイアーの境界 1381
4 尖塔断の運河 1309
5 1276
6 噴出の稲妻 1253
7 手練 1083
8 選択 1081
9 907
10 嵐追いの才能 865
11 ブーメランの基礎 859
12 精鋭射手団の目立ちたがり 849
13 マルチバースへの通り道 845
14 渦泥の蟹 783
15 食糧補充 783
16 没頭 777
17 呪文貫き 758
18 平地 734
19 始まりの町 692
20 報いの呪詛 658
21 軽蔑的な一撃 581
22 今のうちに出よう 570
23 強迫 543
24 グルームレイクの境界 536
25 神聖なる泉 535
26 観念の名誉教授》 // 《祖先の回想 531
27 瞬間凍結 531
28 湿った墓 518
29 ラノワールのエルフ 504
30 503
 

 そこから浮かび上がるのは、環境の中心に存在した色だ。

 総採用枚数1位は《》の2201枚。

 

 さらに《蒸気孔》《リバーパイアーの境界》《尖塔断の運河》とイゼットカラーの土地が続く。

 興味深いのは、上位に特定の呪文が並んでいるわけではないことだ。

 土地そのものが環境の中心色を指し示している。

 ここまで土地が並ぶランキングは、この環境の中心が極めて明確だったことを示している。

 

 さらに《噴出の稲妻》《手練》《選択》《呪文貫き》《食糧補充》といったカードが続く。

 除去。

 ドロー。

 打ち消し。

 環境を支える重要な役割をイゼットカラーのカードが担っている。

 もちろん他の色が存在しなかったわけではない。

 

 《》は1276枚で5位。

 《ラノワールのエルフ》もトップ30入りしている。

 興味深いのは、《瞬間凍結》も317デッキに採用されていることだ。

 《》が総採用枚数5位に入っていることからも分かるように、緑単上陸は間違いなく環境の有力勢力だった。

 《瞬間凍結》の高い採用率は、その存在感の大きさを裏付けている。

 つまり環境の構図は単純な「青系一強」ではないということを意味する。

 緑単上陸という有力な勢力が存在し、その上で青系(イゼット果敢、イゼット・スペレメンタル、4色コントロール)が環境全体を定義していた。

 だからこそ今回のメタゲームは、

 「青を使うか、青を意識するか」

 だったのではないだろうか。

 デッキの種類は違っても、多くのプレイヤーが同じ重力の影響下でデッキを構築していた。

 893人のデッキリストは、その事実を雄弁に物語っている。
 

環境の前提、デッキの核

 採用率ランキングと総採用枚数ランキングを並べてみると、さらに面白いことが見えてくる。

 それは「環境を意識して採用されるカード」と「デッキを支えるカード」の違いだ。

カード 採用デッキ数 総採用枚数 平均採用枚数
軽蔑的な一撃 445 581 1.31
呪文貫き 400 758 1.90
選択 274 1081 3.95
手練 272 1083 3.98
噴出の稲妻 367 1253 3.41
 
 

 例えば《軽蔑的な一撃》。

 445デッキで採用されているにもかかわらず、総採用枚数は581枚。

 単純計算すると1デッキあたり約1.3枚となる。

 多くのプレイヤーが持ち込んでいるが、大量には積まれていない。

 つまりこのカードはデッキの主役ではない。

 《呪文貫き》も似た傾向を見せている。

 400デッキ採用で758枚。

 広く採用されているが、4枚積まれているわけではない。

 

 面白いのは、《軽蔑的な一撃》が採用率3位でありながら総採用枚数では21位に留まっている一方、《選択》や《手練》は採用率こそ30%前後ながら総採用枚数ではトップ10入りしていることだ。

 同じランキング上位でも、その意味は大きく異なる。

 《選択》は274デッキ採用で1081枚。

 《手練》は272デッキ採用で1083枚。

 採用しているデッキのほとんどが4枚近く投入している計算になる。

 《噴出の稲妻》も367デッキ採用で1253枚。

 こちらも採用するなら複数枚というカードだ。

 《軽蔑的な一撃》は環境を意識して採用されるカード。

 《選択》や《手練》はデッキを支えるカード。

 採用率ランキングだけでは見えないものがある。

 総採用枚数ランキングだけでも見えないものがある。

 二つを重ね合わせることで初めて、893人が何を環境の前提と考え、何を勝利への武器として信頼していたのかが見えてくる。
 

土地が語る環境

 今回のランキングでもう一つ印象的だったのは土地の存在だ。

 総採用枚数トップ30には12枚もの土地がランクインしている。

 《》《蒸気孔》《リバーパイアーの境界》《尖塔断の運河》。

 

 さらに《始まりの町》《グルームレイクの境界》《神聖なる泉》《湿った墓》も並ぶ。

 アーキタイプは様々だ。

 だが土地を見ると、多くのプレイヤーが似たようなマナ基盤を共有していたことが分かる。

 特に目立つのは青を中心とした多色化だ。

 《発見の石板》や《ジェスカイの啓示》を擁する4色コントロールは、その象徴的な存在と言える。

 《マルチバースへの通り道》が採用率2位、50.5%を記録しているのも、こうした多色化傾向を裏付ける数字だ。

 451デッキで採用されながら総採用枚数は845枚。

 平均すると1.87枚。

 つまりデッキの核ではない。

 それでも半数以上のプレイヤーが必要としていた。

 このカードの存在は、多くのプレイヤーが複数色のマナを安定して運用したいと考えていたことを示している。

 イゼット果敢。

 イゼット・スペレメンタル。

 4色コントロール。

 見た目はまったく違うデッキだ。

 しかし土地を見ると、その多くが同じ青いマナ基盤を共有している。

 デッキの個性は呪文に現れる。

 だが環境の骨格は土地に現れる。

 今回の集計では、その骨格が非常にはっきりと浮かび上がっていた。
 

893人が描いた環境

 

 893人が持ち込んだデッキはそれぞれ異なっていた。

 しかしその中には確かな共通点があった。

 多くのプレイヤーが共有していた前提。

 環境の中心に存在したイゼット果敢やイゼットスペレメンタル。

 警戒されていた緑単上陸。

 多色化を象徴する4色コントロール。

 そして、環境を支えるカードとデッキを支えるカードの違い。

 今回の集計から見えてきたのは、最強デッキの答えではない。

 893人のプレイヤーが、この環境をどのように理解していたのかという集合知である。

 デッキリストとは単なるカードの束ではない。

 勝つために何を信頼し、何を警戒し、何を捨てたのか。

 893個のデッキリストは、その問いへの答えだった。

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