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グランプリ・京都2018

トピック

市川ユウキの二面性~「理知的」で「情熱的」~

by Masashi Koyama

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 市川ユウキは理知的だ。

 奔放なキャラクターを全面に押し出しているSNSや生放送を見ていると、彼のイメージはそれとは正反対にあるように見えるかもしれない。だが、彼の試合を観察しそして話を聞いていくと表層部分とは異なる彼の姿が見えてくる。

優勝インタビューで見えた姿

 私が初めて市川のインタビューを取ったのはグランプリ・上海2015の優勝インタビューだった。

 当初予定になかったインタビューだったため質問が拙いものになってしまったが、それでも彼はこちらの意図を汲み取ろうとし、分かりやすい言葉を選びながら丁寧に答えを紡ぎ出してくれた。

 それは、さらなる経験を積んで、歴戦のトッププロとして君臨する今でも変わりない。

市川ユウキとレガシー

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 今でこそ2度のプロツアーサンデーと3度のグランプリ戴冠を果たし、現役のゴールドレベル・プロとして活躍している市川だが、彼がトーナメントシーンで最初に名を馳せたのはレガシーのイベントだった。

 Magic Online Championship予選のためにレガシーを始めた市川は、その後すぐグランプリのサイドイベントとして行われた日本レガシー選手権を制したのだ。

 その後、同イベントを連覇した市川はプロツアー『ニクスへの旅』プロツアー『マジック2015』でプロツアートップ8に進出し、世界のトッププロという立場を確固たるものにしていく。

 そんな市川は日本初となる3人チーム構築で行われる本グランプリにおいて、レガシーをプレイしている。

 言うまでもなく市川は世界で戦うプロのマジックプレイヤーであり、そのスキルが一般のプレイヤーより高いことは自明の理だろう。だが、市川はそれでも奢らず、Magic Onlineでは勝敗の記録を緻密に記録し、レガシーの環境を分析し、その結果を持ってこのグランプリへ臨んでいる。

「ロジカル」を貫く姿勢は今も昔も変わりなく

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「ずっとひとりでマジックをやっている時期が長かったので、どうやって学びを増やすかということを考えていました。今は逆に知り合いが増えましたが、以前ほど時間を使えるわけではないので、どうやって密度の濃い練習ができるかということを考えています」

 市川は「論理的に考えることが一番いい」と強調する。漠然と練習するのではなくて、常にトライをしながら考え、そして結果を検証する。その一連のサイクルを続けることで、市川はプレイヤーとしての実績を積み重ねてきた。

 その貪欲で論理的な姿勢は市川の試合後の姿から垣間見ることができる。グランプリという競技レベルの高いイベントともなると、試合が終われば勝敗にかかわらずすぐにマッチエリアから立ち去ってしまうプレイヤーも多い。だが、市川は対戦相手としっかり感想戦を行い、会話しながら自らのプレイに誤りがなかったか、あるいはもっと正しいプレイはなかったのかを常に思考している。

 グランプリ・京都2018でも市川のその姿勢は健在だった。フィーチャーマッチとなった第3回戦。「スニーク・ショウ」を相手にした市川は《血染めの月》を対処するかどうかの岐路に立たされた。ここでこれを対処してしまえば、対戦相手が繰り出すであろう、さらなる脅威に対応することはできない。

 結果、続く《実物提示教育》からの《グリセルブランド》により市川は1ゲーム目を落とした。

 マッチ自体は市川が2ゲーム目を取り返したところでチームの勝利が確定し、市川の試合は勝敗を決することなくそこで終了した。その直後、市川が発したのは「1ゲーム目勝てたかもしれませんね。ミスでした」という反省の言葉だった。市川は矢継ぎ早に互いの盤面と相手のライフ、自身の手札を振り返りながら状況を再現していく。

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 数え切れないくらいにこなしてきたであろう感想戦。この積み重ねが今の強い市川を作り上げたのだろう。

ライブストリーミングから得るものは多い

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 市川と言えば生放送、というイメージを持っている人は多いのではないだろうか。かつて市川は積極的に生放送の配信を行っていた。

 プロとなり、またマジックに割ける時間が少なくなると、以前に比べ配信頻度は下がっていたが、市川は最近生放送の配信再開を決断した。

 市川にその理由を尋ると「楽しいからですね!」と逡巡もなく述べた後に、少し間を置いてからまた口を開いた。

「もちろん僕は(プロなので)普通のプレイヤーよりはマジックが上手いと思うんですが」と前置きしながら市川は続ける。「100個やそれ以上の数のコメントを見ていると、その中にひとつかふたつは光る鋭い意見があります。そういう時は考えることが凄く増えて、生放送をやっていてよかったなと思いますね」

 市川は、たとえ凡庸に見える質問であっても、きっちり思考、言語化し視聴者に説明する。言葉の限界は思考の限界だ。一部の例外はあるだろうが、感覚的には「そうであろう」と思っていても、それを言語化し反芻しなければ、進化も進歩も望めるはずがない。

 そうしたサイクルを繰り返し、得たものが市川の中に経験として蓄積されていく。

ロジカルに、情熱的に

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「Musashi」のチームメイトであり、本イベントでもチームを組む山本賢太郎(写真左)、行弘賢(写真右)

 「Musashi」のチームメイトでありプラチナ・プロである行弘賢もまた、市川のその能力を高く評価する。「僕らはもちろん全員ロジカルですよ!」と行弘は笑いながら念押ししつつも、「言語化の能力はチームの中でも市川君は間違いなくトップクラスだと思います」と賛辞の言葉を惜しまない。

 同時に、もうひとつの市川の側面についても間髪を入れずに答えてくれた。

「チームを盛り上げてくれるムードメーカーですよ!」

 市川ユウキは情熱的だ。

「(新たに生放送を始めたプラットフォームである)Twitchでは日本人のマジックプレイヤーが全く放送していなかったんですよ。僕が生放送を始めたことで盛り上がっていけば、例えばヤソ(八十岡翔太)やナベ(渡辺雄也)が放送を始めるかもしれません。そうしてマジックの業界自体も活性化すれば、こんなに良いことはありませんね」

 市川は生放送についても熱い想いを秘めていた。

 今期ここまで獲得プロ・ポイントが11点と不振に喘いでいる市川。今期の目標は「プロツアーで結果を残し『Musashi』に貢献し、ゴールド・レベルを維持する」ことだ。

 市川は今シーズンの残りを理知的に、そして情熱的にこの目標に挑むこととなる。

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