EVENT COVERAGE

マジックフェスト・横浜2019

インタビュー

耳が聞こえないプレインズウォーカー

Yuichi Horikawa
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 マジックフェスト・横浜2019の会場であるパシフィコ横浜。

 この会場の広さは、6,700平方メートル。天井も高く、非常に広いホールです。

 そこでは、多くのマジックプレイヤーがマジックをプレイしています。いったい何千人のプレイヤーが会場にいたのでしょうか? 4000人? もしかすると5000人以上のプレイヤーがここに集まっていたかもしれません。

 グランプリ本戦、ヴィンテージ、レガシー、そして、スタンダードなど、さまざまなプレイヤーが、さまざまなフォーマットをプレイしています。

 そんな中、何百、何千とあるゲームをプレイしているテーブルで、ただ一人だけ、不思議なカードを広げてプレイしている人物がいました。

 見慣れないカードをテーブルに広げてスタンダードをプレイする彼は私の視線に気づいたのでしょう。彼はジェスチャーで、耳が聞こえないことを私に伝えてくれました。

 その後、彼のプレイを観戦させてもらいましたが、彼は非常に楽しそうにマジックをプレイしていて、《荒野の再生》を使ったデッキを見事に使用していました。

 そして、対戦が終わると対戦相手の方とにこやかに握手をする彼に、お時間をいただいてインタビューさせていただきましたので、ご紹介したいと思います。

 なお、彼とのインタビューは、パソコンのメモ帳機能を使用して、タイピングにておこないました。

マジックとの出会い

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お名前:小林 輝さん
お住まい:横浜在住
年齢:25歳

――この度はお時間いただき、ありがとうございます。まずはじめに、マジックをプレイして、どれぐらいになりますか?

小林:テーブルトップを触ったのは今年の1月、『ラヴニカの献身』のプレリリースです。
マジック自体は去年11月末にMTGアリーナで始めました。

――きっかけは何かあったのでしょうか?

小林:もともと、マジック自体は例えば「MoMaの冬」など、そういったネットの記事で読むのが好きだったんです。
ルールは知らなくても、どういう事があったのか、歴史があったのかを読むのが楽しくて……。
でも、私は耳が聞こえないので、カードゲームといえば対戦相手とのコミュニケーションをとる必要がありますよね?
発声は通じないので、どうしても筆談や身振りでせざるを得ないので、今まで敬遠していました。
でも、MTGアリーナで気楽に始められると知って、それじゃあ触ってみようかなと初めて触ったところ、ものの見事にはまりました。

 彼は、一息ついて続けてくれました。

小林:それでも紙はちょっと……と思ったところに、友人に誘われてプレリリースに参加することになりました。
そこで初めて出会った対戦相手の方々にはとても優しくして頂いて、「あっ、耳が聞こえなくてもマジックはやっていいんだ、やっていけるんだ」と感動しました。そこから紙の方にはまっていって……という流れです。長くてすいません。

――いえいえ、なかなかはじめるときは勇気がいったことと思います。ご友人とともに始められたプレリリースが、テーブルトップでのプレインズウォーカーとしてのはじめの一歩だったんですね。

実際にマジックをはじめてみて

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――さっきの対戦の風景を見ていたのですが、コミュニケーションのために、ターン進行を書いたカードを使用されていましたが、これはどういったアイデアで生まれたんでしょうか?

小林:ターン進行カードは、横浜駅近くにある信心亭というお店でスタンダートの大会に初めてお邪魔して、「今年から始めたばかりです。耳が聞こえませんがよろしくお願いします」と伝えたところ、店員さんが書いてくれたんです。そこからずっと使い続けています。

――すばらしい店員さんの気遣いですね。使っていく中で、ターン進行カードは何か改良はありましたか?

小林:本来、(3)(このカードには番号が小さく記載されていました)は「ドロー」、(4)と(6)は「メインフェイズ」だったんですが、これは身振りで伝えられますし、(テーブルで)場所も取ってしまうので省略しています。本当にこのカードのおかげで、楽しくマジックがスムーズにできると言っても過言ではないので、店員さんのきめ細やかな心遣いに感謝の念が堪えません。

――改良を加えられ今の形になったんですね。ちなみに、それはいつごろですか?

小林:これをもらったのは、確か2月あたりですね。

――2月というと、プレリリースの時期からはそれなりに経ってますが、プレリリースのときはどのようにプレイしていたのですか?

小林:プレリリースの時は、MTGアリーナでルール自体は理解できていたこと、また対戦相手の方の配慮もありスムーズにいっていましたが、その後初めて手にしたテーブルトップのデッキが「青単アグロ」だったんですね。このデッキは、アップキープやコンバット時に《マーフォークのペテン師》などを使うので、なかなか苦労しているところに、このターン進行カードをもらえてすごくうれしかったですね。タイミングがシビアなデッキなので、トラブルも少しあった(その時は店員さんと話して、対戦相手も私も納得した形で解決できました)ので、そのストレスから解放されたことにとても感謝しています。

――ターン進行カードは素晴らしい発明のひとつですね。テーブルトップでの魅力ってなんでしょうか?

小林:プレリリースで初めて対戦した後、対戦相手の方と話す機会がありまして、対戦中に「あれはあぁすればコンバットトリックできましたよ」といったアドバイス、マジック歴や「印象に残ったデッキは何かありますか?」という話ができて、すごく楽しかったんですね。言うなれば、共通の趣味ですから、同好の士との会話が楽しくないはずがないんですよね。それが一番の魅力でしたね。そこからどんどんどんどんはまっていって……すごく楽しい話も聞けて、今じゃ毎週3~4回はいろいろな店に行き続けています。

――お店でプレイするようになって、なにか変わったことはありますか?

小林:MTGアリーナだと対戦相手が見えないので、例えば「エスパー・コントロール」が対面になった時、《ドミナリアの英雄、テフェリー》が出た時点でのハンド(手札)に対抗札がなかったらすぐ投了していました。長期戦になってしまいますし、やっていても逆転できることはないと思っていまして……。でも、テーブルトップだと投了することはまずないんですよね。長く楽しみたいので。

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小林:そうしたら、その時点で対抗札がなくても、後から(有効なカードを)引き続けて、大逆転!ということもたくさん経験して、MTGアリーナでもできる限り最後まであきらめずにやるようになりましたね。もちろんそのまま負けてしまうこともありますが……逆転できた時は「続けてよかった!」とつくづく思います。ネバーギブアップの精神をつけられたのが一番変わったところかなと思います。

――諦めない心、たしかにマジックにおいて重要な要素の一つだと思います。かなり、精力的にマジックをされていて驚きました。もともと、カードゲームが好きだったのでしょうか?

小林:カードゲームは他のゲームなどを触れていましたが、先述した通り対戦相手がいないのでコレクションに近い状態でした。マジックを始めたのは、SNSの友人たちがマジックをやっていて、すごく楽しそうにしていましたし、最初に言った「MoMaの冬」「12knights」といった話を見て、こんなに濃い歴史があるカードゲームなんだ、というのが一番のきっかけになったかもしれません。興味があったところに、友人のことやいろいろなことが重なりはじまったイメージですね。


インタビューはパソコンのタイピングを通じて行いました。

小林:一番の理由は、気軽にできるアリーナの存在でしたね。家で気楽にできるそのおかげでマジックと出会えて本当に人生で一番うれしいことかもしれません。それと同時に、「なぜもっと早く始めなかったんだろう」と後悔もしていますが、これから楽しもうと考えています。

――まだ、25歳で若いんですから、これからいくらでもマジックできますよ! ミシックチャンピオンシップだっていけますよ!! 勇気が出ずにマジックをはじめられない方が世界中にたくさんいると思っているんです。そういった方に向けて何かアドバイスはありますか?

小林:偉そうなことは言えないのですが、やってみないことには「これからやっていけるのか」ということ自体も分からないわけですし、やっぱり興味があるのならば、まず触れてみることをおすすめします。それでだめだったら諦めればいいですし、マジックの世界は思ったより親切な方々がたくさんいます。私自身も、ターン進行カードなどの思いがけないサポートをいただいたり、今回の初めてのイベントであるマジックフェスト・横浜でも(イベント中は)「テーブル番号を固定します」といった配慮もいただけたので、まずやってみること、相談してみることが一番だと思います。

――はじめるのは、すごく勇気がいったことだと思いますが、小林さんのその一歩がいまの良い状態をつくっていけていると強く感じます。今回はじめての大きなイベントとのことです、何か感想はありますか?

小林:まず思ったのは、「えっ、パシフィコでやるの?」でした。横浜に住んでいるので、規模の大きさは理解できるので、そんなに大きい会場でやるんだ……?と思いました。実際に来てみて、スケールの大きさに圧倒されっぱなしでした。視界に入る人たちは全員マジックをしに来ているんだ、あの子ども(6歳でマジックフェスト・京都に参加したそうです)も、海外の方々も、女性の方も、男性の方も全員同じマジックというゲームをしに来ているんだと思うと感動を覚えました。これだけたくさんの人が集まって、楽しく競い合ってるという世界は初めて見たのでそれだけでも来てよかったと思いました。

――会場に来ないとなかなか体験できない経験ですよね。最後に、今回はじめて、大きいイベントの大会に参加されましたが、今後のマジックでの目標は何かありますか??

小林:実をいうと、The Finals(チャレンジ)ありましたよね?それに参加しようかなとずっと悩んでいて、でも何かトラブルとかあったら……と思って、申し込めなかったんです。でもインタビューを通じて、競技シーンに出ても問題はないと言っていただけたので、これからはグランプリにも参加してみたいなと思います。目指すのは優勝!ということで。

――ぜひ、優勝してやりましょう!! お時間いただきまして、ありがとうございます。


 彼とのインタビューで感じたのは、小林さんが心からマジックを楽しんでいる姿でした。

 また、「なぜもっと早く始めなかったんだろう」と打っている彼の姿からは、本当に後悔の念が感じられました。そう彼が感じているのは、マジックを始めてから出会った多くの人との関わりからだと思います。インタビュー中、マジックで出会った人々に彼は、強い感謝の念を持っていることをひしひしと感じました。

 彼の純粋な人柄が、彼の周りに多くの人を引き付けているのでしょう。

 彼は、プレインズウォーカーとして歩み始めたばかり、マジックを通じて多くの人に出会い、そして、たくさんの思い出を作っていくことでしょう。

 彼の踏み出した、小さな一歩は、確実に彼の世界を変えたのだと思います。

 願わくば、彼の今後のマジック人生がより明るいもの、そして、もっと楽しいものになればと思います。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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