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2019ミシックチャンピオンシップⅣ(バルセロナ)

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2019ミシックチャンピオンシップⅣ 最終日の注目の出来事

Corbin Hosler
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2019年7月28日

 

 モダン環境は、ここ数か月で大きな変動が起きた。しかしその中でトラルフ・セヴラン/Thoralf Severinの手に優勝トロフィーをもたらしたのは、伝統的なデッキであった。ミシックチャンピオンシップ優勝トロフィーを自国へ持ち帰らんとするアルヴァロ・フェルナンデス・トレス/Alvaro Fernandez Torresとの決勝戦。セヴランは「トロン」を揃え、この激戦を制したのだ。

 大盛り上がりの大会最終日より、注目の出来事をお届けしよう。

ミシックチャンピオンシップ王者、トラルフ・セヴラン

 今大会に至る前にも、(この6年間で3度の上位入賞と)セヴランは実績を積み重ねてきた。YouTubeの動画シリーズ「Arena Boys」でも活動しており、彼に声援を送るファンは多い。

 セヴランの魅力は、和やかな人柄にある。勝っても負けても、3ターン目トロンを決めてもトロンが1枚もなくても、彼はフィーチャー・マッチの場であろうと、笑顔を見せ、笑い声を上げるのだ。だが実は彼自身はスポットライトに当たるのを好んでおらず、ミシックチャンピオンシップの大舞台におけるプレッシャーを見事に制御していた。そして大会が進みマッチ・ポイントを重ねていくうちに、友人を増やしていったのだ。

 彼が選択した「トロン」デッキは、古き良きものだ。他の「トロン」使いたちは《大いなる創造者、カーン》と1枚挿しのサイドボードを積極的に試し、「エルドラージ・トロン」や「青単トロン」へ枝分かれしていった。モダンというフォーマットとともに、「トロン」も進化を続けてきたのだ。しかしその中でセヴランは、ドイツ人プレイヤーと今大会に向けたプレイテストをともにするうちに、ある重大なことに気づいた――当日は「ホガーク」を倒すべく構築されたデッキが一定数現れるはずだが、それらに対して一番強いのはクラシックな「トロン」であると。

 その戦略は完璧に機能し、セヴランは今大会を通して上位を維持した。その勢いは決勝ラウンドでも止まらず、圧倒的有利な「ジャンド」を2連続で下して決勝進出を決めた。

 しかし最後の試合はそこまで相性の良い相手ではなかった。フェルナンデス・トレス/Fernandez Torresが操る「鱗親和」は、「トロン」が繰り出す強烈な一撃の多くをかわせる上、複雑かつ高速の攻め手を持つ極めて厄介な相手だ。しかしそれでも《絶え間ない飢餓、ウラモグ》は絶大な力を発揮し、決勝戦では何度もセヴランを救った。特に第2ゲームの、セヴランが勝つにはこれしかないという場面でのトップデッキは、この試合の鍵となる瞬間だった。

 

 決勝戦を通して、セヴランのデッキはエンジン全開で動き続けた。またたく間に開幕2連勝を飾ると、第3ゲームでは接戦を落としたものの、第4ゲームでは残りライフ1点まで追い詰められる難しいゲームを制したのだ

 彼の友人が、チームメイトが、そして実況のライリー・ナイト/Riley Knightが、その瞬間を待ちわびていた。

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王者決定!!! 舞台裏では、@ToffelMTGの友人たちが#MythicChampionshipIV決勝戦の張り詰めた緊張感の中で最後の瞬間を待っていました。祝福に飛び出すその瞬間を。

 

 セヴランは信じられないほどの大活躍を見せてくれた。彼の名はミシックチャンピオンシップ王者としてここスペインの地に刻まれるだろう!

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「Hareruya Sword」と「Ultimate Guard」がチームシリーズ上位2チームに

 チームシリーズもいよいよ大詰め。今大会はチームシリーズに参加しているチームとそのメンバーたちにとって、多くのものが懸かっていた。上位2チームに入りチームシリーズ決勝を争うことが何よりも重要なのだ。

 ケルヴィン・チュウ/Kelvin Chew、ジェレミー・デザーニ/Jérémy Dezani、ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguez、グジェゴジェ・コワルスキー/Grzegorz Kowalski、アンドレア・メングッチ/Andrea Mengucci、リー・シー・ティエン/Lee Shi Tianの6人で構成されたチーム「Hareruya Sword」は、合計122点で今大会を迎えた。上位入賞は固いが、他に4つのチームが103~112点で追って来ている状況では決して安心はできなかっただろう。

 結果的に、2位の座に上がったのは昨年のチームシリーズ優勝チーム「Ultimate Guard」だった。アンドリュー・クネオ/Andrew Cuneo、リード・デューク/Reid Duke、ジョン・フィンケル/Jon Finkel、ウィリアム・ジェンセン/William Jensen、ポール・リーツェル/Paul Rietzl、マット・スパーリング/Matt Sperlingの6名が、チームシリーズ優勝のタイトルを懸けて「Hareruya Sword」と激突する。

モダンのメタゲーム

 モダンの創設から8年。今やこのフォーマットは、マジックで最も愛される遊び方の1つになった。最近も環境に大きな影響を与えるセットが続々と登場し、モダンは進化を続けている。

 数週間前に《黄泉からの橋》を失ったにも関わらず、今大会は《甦る死滅都市、ホガーク》が頂点の座に君臨した。「ドレッジ」の形があれば《復讐蔦》も用いて爆発力を高めたものもあるが、いずれにせよ「ホガーク」デッキはこの週末で最も支配的なデッキであった。フランク・カーステン/Frank Karstenによる詳しい分析もあるので、ぜひご覧いただきたい。

 メイン・デッキから《虚空の力線》を採用するプレイヤーがいる中で、墓地の脅威はその絶大な力を振るった。しかしプレイヤーたちはそれに備えていた――結果的に「ホガーク」はトップ8に1名しか送り出せず、決勝戦は大きな変更のない「緑トロン」と「鱗親和」による戦いになったのだった。

チャン・ツウヤァンが準々決勝で大逆転

 「ジャンド」を操るチャン・ツウヤァン/Zhang, Zhiyangと「ウルザ・ソプターソード」を手にしたマニュエル・レンツ/Manuel Lenzによる準々決勝、決着の第5ゲーム。チャンは守勢に立たされたているだけでなく、残りライフも風前の灯火だった。レンツの盤面には《最高工匠卿、ウルザ》に《時を解す者、テフェリー》、《ボーラスの工作員、テゼレット》、そして《ボーラスの工作員、テゼレット》の手で5/5のクリーチャーになっている《アーカムの天測儀》が並んでいる。一方チャンの盤面には……何もない。敗退する前に何度かドロー・ステップがあるだけだった。

 

 だがそのわずかなドローがチャンに光を与えた。チャンは相手のプレインズウォーカーとクリーチャーを1つずつ取り除いていった。残りライフは1点のままだが、ついに反対側の盤面から脅威が消え去った。そして《漁る軟泥》がチャンの盤面に降り立つと、彼のライフを回復しながら対戦相手のライフを喰らっていった。数ターン後、チャンは準決勝進出を決めたのだった。

ななな、なんて試合でしょう! 準々決勝第5ゲームで、チャン・ツウヤァン選手が残りライフ1点から逆転しました!!! #MythicChampionshipIV

 

アルヴァロ・フェルナンデス・トレスが空を飛ぶ

 準々決勝ではもう1つ接戦が繰り広げられた。アルヴァロ・フェルナンデス・トレス/Alvaro Fernandez Torresとマーティン・ミュラー/Martin Mullerによる一戦だ。トレスが選択したのは、今大会においては少数派の「鱗親和」。対するミュラーは「ホガーク」だ。トレスの《搭載歩行機械》が9/9の巨大なサイズまで成長したが、さらに大きなミュラーの《屍肉喰らい》を前にしていた。その上ミュラーは飛行機械の大群が致命的であることをよく知っており、戦闘による相討ちを許さないよう細心の注意を払っていた。

 しかしトレスは、《自然の要求》をうまく使ってみせた。対戦相手の盤面に対象がいない中、彼は自身の《搭載歩行機械》へ《自然の要求》を放ち、ライフを回復しつつ飛行機械の大群を生み出したのだ。その2ターン後にゲームは決着したのだった。

 

さらなる戦いへ

 次回は、10月18~20日にアメリカ合衆国・カリフォルニア州ロングビーチで開催される「2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)」の模様をお届けする。この大会は「MTGアリーナ」を用いて行われ、再びマジック・プロリーグ選手たちとセヴランに続いてマジック界の頂点に立たんと意気込む「挑戦者」たちが激突するだろう。

(Tr. Tetsuya Yabuki)

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RESULTS

対戦結果 順位
最終
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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