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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
基本セット2013 ドラフト分析編?アーキタイプ・新基準?
読み物
渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
2012.08.03
基本セット2013 ドラフト分析編~アーキタイプ・新基準~
皆さんこんにちは。渡辺です。
前回の記事からちょっと間を空けてしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
8月に入り本格的な夏の気候になってきました。普通に外を歩いているだけで汗だらだらな状態になってしまうほどに夏真っ盛りな天候です。夏バテや熱中症には十分に気をつけましょう。
さて、今回はマジック基本セット2013(M13)リミテッド特集の第3回です。
今回は前までやっていた「点数表」はやらない、というのは以前の記事でもお伝えしました。
では今回の記事は何をするのかというと、M13ドラフトの有効な色の組み合わせと、その組み合わせから作れる「アーキタイプ」について考察していこうと思います。
アーキタイプってなに?
アーキタイプというのは、簡単に説明すると「デッキの方向性」ですね。
リミテッドといえど、勝つためにはデッキにある程度の方向性を持たせなければいけません。
リミテッドにおいて強いデッキというのは、「ただ強いカードが入っているデッキ」ではなく、「デッキの中に入っているカード1枚1枚が上手く機能している」デッキです。
ただ強いカードを入れてもそのカードがデッキ本来の動きとまったく噛み合っていなければ、動きがちぐはぐになってしまい上手く使うことはできません。それではどんな強いカードでも宝の持ち腐れになってしまいます。
強いカードを上手く使うためにも、その強いカードに合わせた方向性のデッキを組むのが望ましいです。
そのデッキの方向性を、大まかな種類ごとに分類したものがアーキタイプです。
今回紹介する例で言えば、
- 白青飛行ビート
- 青黒コントロール
- 赤黒除去
などが代表的なものです。
環境にどんなアーキタイプがあるのかを知っておくのはとても大事なことです。
例えばドラフト中に微妙なカードの2択で悩んだときに、デッキの目指すべき方向性を知っておけばその2択で「アーキタイプの方向性に沿った方を取る」ということができるようになりますからね。
他にも環境のアーキタイプを知っておくことで応用できることは多々ありますが、あまり前振りを長くしても仕方ありません。
早速、M13環境にはどんなアーキタイプがあるのかを見ていきましょう。
青白飛行ビート
どのリミテッド環境でも通用する伝統的なアーキタイプの一つ。それが青白飛行ビートです。
基本戦術は、「地上を固めて飛行で殴る」という至極単純なもの。
相手のクリーチャーの攻勢を壁役のカードで抑えつつ、飛行クリーチャーによるクロックで勝利を目指すという非常に分かりやすい戦法です。
基本的にどの環境でも飛行を持った生物は青と白に割り振られる傾向にあるので、飛行クリーチャーを集めるドラフトをすると自然と青白になるケースが多いですね。
M13でもそれは同じで、コモンの飛行生物を見ても《天空のアジサシ》や《エイヴンの従者》のような低マナ域の飛行クリーチャーから、《庇護のグリフィン》《フェアリーの侵略者》といった重めのマナ域の飛行クリーチャーも用意されていて、航空戦力は十分に用意されています。
相手の攻勢を押しとどめるための壁役のクリーチャーも、《アクラサの守護者》や《クラーケンの幼子》あたりが用意されていますね。
特に《アクラサの守護者》は壁役兼賛美による飛行クロックの増加と、青白でやりたいことを最大限バックアップしてくれるナイスクリーチャー。今回の青白の縁の下の力持ちポジションです。
また、壁役では止まらないようなクリーチャーや、単純に相手が飛行クリーチャーを出してくる場合もあるので、それらに対処できる手段を用意しておけると良いですね。
デッキの最終的な理想形としては、
みたいな感じです。
かなりアバウトに書きましたが、明確な枚数という固定概念は持たないほうが良いので、このような感じで覚えておいてください。
青白飛行ビートはよほど特殊な環境でない限りアーキタイプとして成立するので、ここで覚えておけばこれから先の環境でも応用することができますよ。
サンプルリスト
10 《島》 7 《平地》 -土地(17)- 3 《天空のアジサシ》 2 《テューンの戦僧》 1 《栄光の騎士》 2 《風のドレイク》 1 《従者つきの騎士》 2 《古術師》 1 《空召喚士ターランド》 1 《庇護のグリフィン》 2 《フェアリーの侵略者》 1 《セラの天使》 -クリーチャー(16)- |
1 《送還》 3 《武勇の誇示》 1 《本質の散乱》 1 《安全な道》 1 《睡眠》 -呪文(7)- |
青黒コントロール
青白と同じく、どの環境でも存在すると言っていいカラーリングの青黒。
青白はビート寄りの色の組み合わせでしたが、青黒はどちらかというとコントロール寄りな色の組み合わせになります。
青のドローやカウンターと黒の除去や手札破壊を駆使して、カードアドバンテージを稼ぎながらゆっくりコントロールして戦うのが青黒の基本的な戦術です。
M13リミテッドの青黒も、《予言》や《精神腐敗》でカードアドバンテージを取りつつ、《本質の散乱》や《殺害》で相手のクリーチャーを対処しながら戦うというパターンが多いです。
青白と違って呪文による干渉が多い青黒では、《古術師》は非常に重宝します。
青黒はアドバンテージを稼いで戦っていくので、《古術師》はその戦略に非常に合っているカード。1/2のブロッカーは心もとないですが、そこにアドバンテージが発生しているなら話は別。青黒ならどんな呪文を回収しても強いですからね。《殺害》あたりを回収できたら小躍りもの。
一つ注意しておきたいのは、青黒コントロールを組むときは何か「フィニッシャー」になるようなカードを用意すること。
青黒は相手の邪魔をすることには長けていますが、その分序盤から攻めることは苦手です。相手を邪魔するようなカードばかりでゲームを長引かせた後に、結局相手を倒せないというようなことになってしまっては本末転倒です。
なのでゲームを素早く終わらせられるような、所謂フィニッシャーのポジションに当たるカードをデッキに忍ばせておくようにしたいですね。
最近はクリーチャーの質が高いので、そんなに意識しなくとも4~5マナくらいのクリーチャーが自然とフィニッシャーになることもあります。
M13でいうなら《リリアナの影》あたりは安価で使いやすいフィニッシャーといえます。
デッキの理想形としては、
- 除去多め
- アドバンテージを取るカードが多い
- 強力なフィニッシャーが入っている
といった感じでしょうか。
青黒系のコントロールデッキも他の環境で組むことができるメジャーなアーキタイプの一つなので、これも覚えておいて損はないですよ。
サンプルリスト
9 《沼》 7 《島》 1 《広漠なる変幻地》 -土地(17)- 1 《任務に縛られた死者》 2 《ボーラスの占い師》 1 《悪名の騎士》 1 《風のドレイク》 1 《吸血鬼の夜鷲》 1 《虚無の忍び寄り》 1 《上品な工作員》 1 《ネファロックスの召使い》 1 《狩漁者》 2 《リリアナの影》 1 《ゾンビの大巨人》 -クリーチャー(13)- |
1 《墓暴き》 1 《血の署名》 1 《殺害》 1 《予言》 1 《精神腐敗》 1 《睡眠》 1 《ターランドの発動》 2 《本質の吸収》 1 《墓場からの復活》 -呪文(10)- |
赤黒除去
上で挙げた青白・青黒と同じく、ほとんどのリミテッド環境でアーキタイプとして確立している赤黒除去。
黒と赤という除去を擁する2つの色の組み合わせであるこのカラーリング。この2色で目指すデッキは、相手のクリーチャーを除去で対処しつつ殴るという、まぁこれも非常に分かりやすい戦法です。
M13でもこの戦法は健在で、赤には《灼熱の槍》と《金屑化》、黒には《殺害》と《本質の吸収》という優良除去が用意されているので、これらで相手のクリーチャーを対処しながら戦っていくのが基本的な戦い方です。
リミテッドにおいて除去はいつでも重宝するものなので、これらの除去はできるだけ多く集めるようにしたいですね。
赤黒を組む際に注意したいのは、クリーチャーの線が細くならないようにすること。
《峡谷のミノタウルス》と《原初の狩猟獣》のような分かりやすい例もありますが、赤や黒のクリーチャーは他の色に比べるとクリーチャーが弱めにデザインされる傾向にあります。除去がある色でクリーチャーまで強いと手が負えないので当然といえば当然ですね。
ただそれでも、やはり最低ラインは守れているようなクリーチャーでデッキを固めるようにしたいところです。
《血の座の吸血鬼》や《苛まれし魂》のような単体で役に立たないクリーチャーは極力使わないようにしましょう。
除去カードは確かにリミテッドでは強力ですが、それを相手の弱いクリーチャーに打っていてはせっかくの除去も有効に使えているとはいえません。
「最低でも相手のクリーチャーと相打ちは取れるくらいのクリーチャーで戦線を支え、相手の強力なクリーチャーに対して除去を使う」というようにしたいですね。
というわけで赤黒除去の理想形としては、
- 除去が多い
- 相手の弱いクリーチャーに除去を打たなくてもいいくらい、クリーチャーがしっかりしている
こんなところですかね。
そういえばこの前のグランプリ・上海を制したLi Bo選手が決勝でドラフトしたのもこのアーキタイプでした。
彼のリストからは得られるものも多いと思うので、是非参考にしみててください。
サンプルリスト
10 《山》 7 《沼》 -土地(17)- 2 《モグの下働き》 1 《真紅の汚水這い》 1 《貪欲なるネズミ》 1 《歩く死骸》 2 《武器商人》 2 《かき回すゴブリン》 1 《巨大蠍》 1 《無謀な粗暴者》 1 《リリアナの影》 1 《血狩りコウモリ》 1 《火翼のフェニックス》 1 《群衆の親分、クレンコ》 1 《炎の精霊》 -クリーチャー(16)- |
2 《クレンコの命令》 1 《灼熱の槍》 1 《反逆の印》 1 《吸血鬼の印》 1 《金屑化》 1 《チャンドラの憤怒》 -呪文(7)- |
ここまで紹介したのは、どの環境でも通用するアーキタイプです。
これらは環境に対する理解度が少なくても、他の環境で培った知識や経験である程度完成系がイメージできるものでした。
ここからは他の環境では組むことのできない、M13特有のアーキタイプを紹介していきます。
白黒賛美
M13で復活したキーワード能力・賛美をフィーチャーしたアーキタイプ。
カードリストを見た段階で誰もがアーキタイプとして組めると思ったのではないでしょうか。
《エイヴンの従者》や《ネファロックスの召使い》などの賛美クリーチャーを集めて、後は殴る。
ただそれだけですが、賛美という能力がリミテッドでは単純に強いので、この環境では一線級のアーキタイプとして認知されています。
普通なら使われないようなただのバニラクリーチャーである《銀毛のライオン》や《歩く死骸》が1つか2つサイズを上げて殴っているなんて光景も、この色なら日常茶飯事。それほど賛美というシステムが強いということでもあります。
まぁこのようなバニラクリーチャーならまだ可愛いもので、ブロック不可の《苛まれし魂》のようなカードだと、それだけでライフを削りきってしまうこともしばしば。
他のアーキタイプでは使いづらい《苛まれし魂》ですが、このアーキタイプで使うとブロックされないという能力が非常に頼もしいものになります。それほど賛美デッキにとって回避能力は重要ということですね。
ドラフトをするなら、間違いなく卓の誰かはやっているアーキタイプといっても過言ではないでしょう。
とはいえそんな白黒賛美にも弱点はあります。それはタフネス1除去のカードに弱いこと。
実はこの環境の賛美持ちのクリーチャーを見てみると、半分以上のクリーチャーがタフネス1なのです。
《ひどい荒廃》で1対1交換ならまだ許せますが、《居すくみ》や《チャンドラの憤怒》の2枚は打たれると盤面によっては壊滅的な打撃を受けることも。
一応《栄光の突撃》という回答が白に用意されていますが、元のカードパワーが低いカードなのでメインから使うのはちょっと気が引けます。上で挙げた2種類のキラーカードを打たれたときのサイド要員くらいの認識にしておくのがよいかと。
上手く組めた白黒賛美はこういったカードで手痛いしっぺ返しをくらうことがあるので、油断は禁物です。
まぁ下に載せているサンプルデッキのグランプリ・サンパウロの優勝デッキのような、そんなことは超越しているデッキが生まれることもありますが・・・。
とりあえず覚えておきたいのは、「白黒賛美は強力なアーキタイプではあるが、環境にきちんと回答が用意されている」ということ。
もしドラフトで白黒賛美をやっているならキラーカードは優先的にカットしたり、逆に自分がやっていないならキラーカードの確保はちゃんとしておくようにしたいですね。
白黒賛美の理想形としては、
- 賛美クリーチャーがきちんと確保できている
- 回避持ちのクリーチャーが確保できている
- サイドボードに《栄光の突撃》のような、キラーカードに対する回答を持っている
こんなところでしょうか。
サンプルリスト
12 《沼》 5 《平地》 -土地(17)- 1 《任務に縛られた死者》 1 《エイヴンの従者》 1 《血の座の吸血鬼》 1 《悪名の騎士》 3 《吸血鬼の夜鷲》 2 《リリアナの影》 1 《血狩りコウモリ》 1 《ボーラスの信奉者》 1 《ダスクマントルをうろつくもの》 1 《群れの癒し手》 1 《ロウクスの信仰癒し人》 1 《グリクシスの首領、ネファロックス》 -クリーチャー(15)- |
1 《ひどい荒廃》 2 《血の署名》 1 《平和な心》 2 《本質の吸収》 1 《公開処刑》 1 《ザスリッドの指輪》 -呪文(8)- |
白赤《ラッパの一吹き》
《クレンコの命令》《従者つきの騎士》《隊長の号令》といった1枚で複数のクリーチャーを展開するカードで横に並べ、《ラッパの一吹き》でドーン!するというアーキタイプ。
上手く横に並べる系のカードが取れないとデッキとして機能しないのですが、上手く組めたときの爆発力は環境でもトップクラスです。
《クレンコの命令》→《従者つきの騎士》→《隊長の号令》のマナカーブ通り綺麗に展開していって5ターン目に《ラッパの一吹き》を打つと、なんと21点分のダメージをたたき出すことができます。やっほーい!!
ちなみにこれらのトークン出す系のカードと《庇護のグリフィン》は非常に相性が良いので、このアーキタイプを組む際は《庇護のグリフィン》は絶対に確保するようにしたいですね。
かなりパックからのカードの出に左右されてしまうアーキタイプなので、こういうアプローチもある、と覚えておくくらいでよいでしょう。
このアーキタイプの理想形としては、
こんなところですかね。
サンプルリスト
8 《山》 8 《平地》 1 《広漠なる変幻地》 -土地(17)- 1 《ゴブリンの付け火屋》 1 《軍用隼》 2 《モグの下働き》 1 《エイヴンの従者》 3 《従者つきの騎士》 1 《かき回すゴブリン》 1 《武器商人》 1 《無謀な粗暴者》 3 《庇護のグリフィン》 -クリーチャー(14)- |
1 《クレンコの命令》 2 《武勇の誇示》 1 《炬火の炎》 1 《忘却の輪》 1 《ラッパの一吹き》 1 《隊長の号令》 1 《チャンドラの憤怒》 1 《溶岩噴火》 -呪文(9)- |
青緑《商売の秘訣》
最後に紹介するのは、今まで一回も話題に出さなかった緑を絡めたカラーリング。
「M13の最弱色」と言われている今回の緑ですが、青と組み合わせると案外多くのシナジーがあり、他のアーキタイプとも互角に戦えるようなデッキを組むことができます。
特に《原初の狩猟獣》に《商売の秘訣》をつけるという、コモン同士のこのコンボは環境で対処できるカードはほとんどなく、決まったら勝ちと言っても過言ではないくらいです。この2枚の組み合わせが、この色の組み合わせの最大の魅力ですね。
《東屋のエルフ》から2ターン目に《巻物泥棒》を出す動きも非常に強いですね。
クリーチャーの質が全体的に上がって以前よりも使いにくくなった《巻物泥棒》ですが、2ターン目に出るなら話は別。流石に2ターン目に出たときのプレッシャーは凄いです。
他にも、接触戦闘の多い緑では《打ち寄せる水》が思いのほか活躍したり、緑の大型クリーチャーをブロックしようしている小型クリーチャーを《土砂降り》で無理やり寝かしたりと、緑の戦略をサポートするカードが青に多く用意されているように感じます。
青緑の理想形としては、
こんな感じですかね。
下にあるサンプルリストは、僕がグランプリ・上海の二日目の1stドラフトで組んだものです。
《原初の狩猟獣》こそ取れなかったのですが、それ以外は非常に良くできた青緑を作れたので、是非参考にしてみてください。
サンプルリスト
8 《森》 8 《島》 -土地(16)- 3 《東屋のエルフ》 1 《真珠三叉矛の達人》 1 《濃霧の層》 4 《巻物泥棒》 1 《狩漁者》 1 《エルフの大ドルイド》 1 《クローン》 1 《咆哮するプリマドックス》 1 《とげのベイロス》 1 《歩哨蜘蛛》 1 《ガラクの群れ率い》 1 《スラーグ牙》 -クリーチャー(17)- |
2 《捕食》 2 《送還》 1 《否認》 2 《商売の秘訣》 -呪文(7)- |
今回はここまで。
今回はいつもの「点数表」ではなく、アーキタイプ特集という形にしましたが、いかがでしたでしょうか。
以前の記事でも書きましたが、M13リミテッドは基本セットとは思えないくらい奥が深い環境です。
ここで挙げた以外にも、まだアーキタイプと呼べそうなものはまだまだあるでしょう。まだ誰も試してないようなアーキタイプもあるかもしれません。
もしかしたら8月にあるワールド・マジック・カップやプレイヤー選手権で、プロたちの手によって新しいアーキタイプが出てくるかもしれませんね。
つい先日マジック・オンラインにもM13が導入されましたし、これから始まるプロツアー「ギルド門侵犯」の予選大会は、10月に「ラヴニカへの回帰」が出るまでこのM13環境で行われます。
MOで遊ぶという方も、プロツアー予選を頑張るという方も、身内でワイワイドラフトするという方も、まだまだ続くM13リミテッドを楽しんでいきましょう!!
今回で「リミテッドのススメ・基本セット2013編」は終了となります。
それでは、またどこかで。
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