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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
基本セット2013 7つの分析編?M13を分析しました?
読み物
渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
2012.07.20
基本セット2013 7つの分析編~M13を分析しました~
こんにちは。渡辺です。
ついに発売された『マジック基本セット2013(略称・M13)』。新しいセットの発売というのは、何だかワクワクしてしまいますね。
構築のためにカードを買い揃えたり新しいパックでドラフトしたりと楽しみ方は人それぞれですが、そのどれもが皆さんの期待に応えてくれる内容になっていると思います。
特にリミテッドに関しては基本セットにしては非常にバランスが取れていて、面白い環境だと個人的には思いました。
構築でも《スラーグ牙》や《怨恨》あたりのカードが環境にどのような変化をもたらすのか要注目です。
何にせよ待望の新しいセットの発売です。新セットM13を目一杯楽しんでいきましょう!!
さて、今回はそのM13リミテッド特集の第2回・「7つの分析」編をお送りしていきます。
特集記事2回なので、1回目をまだ読んでいないという方はこちらも併せてどうぞ。
7つの分析というのは、そのリミテッド環境を7つの視点から分析して、その環境がどのような環境なのかを考察していくものです。
今回もこの7つの視点からM13環境を分析していきたいと思います。
- クリーチャー除去
- システムクリーチャー
- タフネス1クリーチャー
- マナ基盤
- コンバットトリック
- 装備品
- ブロックのメカニズム
この7つの視点がどのような基準で選ばれているかは、以前僕が書いた記事に載っているのでこちらをご覧ください。
出現率の低いレアや神話レアは除外して、出現率の高いコモンとアンコモンに絞って考察していきます。
あと僕自身が今までに実際にM13環境をプレイして思ったことも書いていきますね。
では各項目ごとに見ていきましょう。
1. クリーチャー除去
まずは環境にあるクリーチャー除去をリストアップしてみます。
コモン
アンコモン
環境にあるアンコモン以下の除去カードはこれくらい。
質・量ともに基本セットにしてはかなり充実している印象です。
最近の『アヴァシンの帰還』や『イニストラード』環境は除去が弱めに設定されていたので、それらと比較してみると分かりやすいですね。(参考:アヴァシンの帰還 7つの分析編、イニストラード 7つの分析編)
まずはコモンから見ていきましょう。
軽くて優秀なところを見ていくと、《平和な心》《殺害》《灼熱の槍》《捕食》と、各色に用意されています。ちょっと使いにくいですが、一応青にも《硬化》がありますね。
重い除去で優秀なカードも《本質の吸収》《金屑化》《神聖なる評決》とあって、色別に枚数を見ると、やはり除去色の赤と黒に多めに割り振られていますが、一応全ての色に除去カードが存在します。
今年も再録されている《垂直落下》ですが、シールドをやった感じではメインデッキに採用しても問題ない印象を受けました。
白と青が相手なら打つ対象には困らず、黒と赤にも《血狩りコウモリ》や《ドラゴンの雛》がいるので完全に腐ることが少なく、《吸血鬼の夜鷲》や《焼炉の仔》のような強力なクリーチャーを対処できることもそれなりにありました。
緑相手には完全に無駄カードになってしまいますが、それ以外の4色にはそれなりに有効なので今年の《垂直落下》もメインデッキから使ってもよさそうです。
アンコモンまで見ると《公開処刑》や《炬火の炎》といったかなり優秀なものから、《溶岩噴火》みたいなゲームを決めうるX点火力の呪文もあります。クリーチャーだけでなく、土地以外のカードにも対処することができる安心安定の《忘却の輪》も去年から継続ですね。
コストが{X}{R}{R}とダブルシンボルを要求する《溶岩噴火》は難しいですが、他の3種はどれも色マナ拘束がシングルシンボルと緩いので、タッチして使うことを検討することも多そうです。それくらい今回はアンコモンの除去カードのスペックが優秀ですね。
※(色)マナ拘束・・・カードの右上に表記されているマナコストのうち、色マナのシンボルで表してある部分が大きいことを「マナ拘束が厳しい/強い」、逆を「弱い/緩い」という。デッキを組む時の土地のバランスに影響を及ぼす。色マナのシンボルの数で「シングルシンボル、ダブルシンボル・・・」と言われるのがメジャーである。
※タッチ・・・デッキのメインカラーとは別の色の、強力なレアやデッキに足りない役割のカードを入れるために色を足すこと。
全色に軽いところから重いところまで満遍なく除去が用意されていて、非常に充実したラインナップといえるでしょう。
相手の強力クリーチャーや《商売の秘訣》《吸血鬼の印》のようなオーラが付いたクリーチャーを対処するためにも、これらの除去はしっかりと用意するようにしたいですね。
2. システムクリーチャー
次は環境にいるシステムクリーチャーを見ていきます。
システムクリーチャーとは戦闘に参加させる以外の目的で使うクリーチャーのことで、自身の起動型能力を繰り返し使用したり、他のカードと組み合わせて強力なコンボなどを狙ったりします。
コモン
- 《ヴィダルケンの幻惑者》
- 《血の座の吸血鬼》
- 《かき回すゴブリン》
アンコモン
環境に居る何かしらシナジーを形成できそうなクリーチャーはこれくらい。こうして見ると非常に少ないですね。
最近はティムやヒーラーがあまりデザインされないのと、今回はタッパーもいないので、今回のシステムクリーチャーは非常に少なくなっています。
※ティム...タップしてクリーチャーにダメージを与える起動型能力を持ったクリーチャーの総称。《放蕩魔術師》の絵柄のおじさんがとある映画の人物に似ていることから付いた。
※ヒーラー...ダメージを軽減する能力を持ったクリーチャーの総称。《サマイトの癒し手》の英語名より。
※タッパー...クリーチャーをタップさせる能力を持ったクリーチャーの総称。《ギデオンの法の番人》等がいる。
とはいえお馴染みのハスク枠である《血の座の吸血鬼》や、ルーター枠の《かき回すゴブリン》は用意されていますね。
※ハスク...自身のクリーチャーを生け贄に捧げる能力を持ったクリーチャーの総称。《ナントゥーコの鞘虫》の英語名より。
※ルーター...カードを引いてカードを捨てる(またはその逆の)能力を持ったクリーチャーの総称。《マーフォークの物あさり》の英語名より。
今回のレイコマ枠である《反逆の印》がアンコモンなので《血の座の吸血鬼》はちょっと使いづらいかもしれませんが、不要なカードを新しいカードに変えられる《かき回すゴブリン》のルーター能力はどんな場面でも重宝するでしょう。
※レイコマ...相手のクリーチャーのコントロールを1ターンだけ奪うカードの総称。《命令の光》の英語名の略称から。
また《ヴィダルケンの幻惑者》なんて懐かしいクリーチャーも帰ってきています。《精神刻み》と合わせてライブラリーアウト戦略を狙ってみるのもありかもしれません。
※ライブラリーアウト戦略...相手の「ライブラリーからカードを引けなくなることによる敗北」を狙う戦略。リミテッドは構築と違い、デッキの最低枚数が40枚なので、この戦略が狙いやすいとされている。
《武器商人》は除去能力を何回も使える、非常に優秀なシステムクリーチャー。
能力の使用にゴブリンを生け贄にする必要がありますが、今回の赤には《ゴブリンの付け火屋》や《クレンコの命令》のような生け贄用のゴブリンが用意されています。最悪自身を生け贄にすることもできるので、絶対に腐らないのはえらいですね。
4点という環境の大体のクリーチャーに対処できるダメージと、出してすぐに能力を起動することができるのも高評価です。
僕はプレリリースイベントでこのクリーチャーを使われる側だったのですが、これと《クレンコの命令》だけで盤面を全て対処されてしまいました。こういったシステムクリーチャーは実際に一回使われてみるとどれくらい強いのかが分かりますね。
環境が終わるまでに一回くらいは《群衆の親分、クレンコ》と一緒に使ってみたいですね。
3. タフネス1クリーチャー
次は環境にいるタフネス1クリーチャーの重要性と、それに効果的に対処できるカードを見ていきます。
各色のクリーチャーをざっと見渡すと、やはり低マナ域のクリーチャーはタフネス1のクリーチャーがそれなりにいますね。
各色のエース級のコモンクリーチャーを見ても、
- 《エイヴンの従者》
- 《天空のアジサシ》
- 《ネファロックスの召使い》
- 《かき回すゴブリン》
- 《東屋のエルフ》
こんな感じにタフネス1クリーチャーが用意されています。
アンコモン以上の優秀なものでも《栄光の騎士》《悪名の騎士》といった賛美持ちの騎士たちや、《上品な工作員》《武器商人》のようなシステムクリーチャーもいるので、これらのクリーチャーにはしっかりと対処できるようにしたいですね。
では環境にある有効な対処カードを見ていきます。
タフネス1への対処カード
環境にあるタフネス1クリーチャーに有効に対処できるカードはこれくらい。
《エルフの幻想家》や《貪欲なるネズミ》もアドバンテージを取りながらタフネス1クリーチャーへの牽制になりそうに見えますが、この環境のタフネス1クリーチャーは飛行などの回避能力を備えているか、賛美などのバックアップを得て攻撃してくるのでこれらのクリーチャーで攻勢を抑えることはほとんどできません。
なので直接相手のクリーチャーに触れるカードか、《ゴブリンの付け火屋》のような戦闘時にタフネス2まで対処できるカードでようやく有効な対処手段となります。
基本的にタフネス1のクリーチャーはゲーム序盤で出てくるので、《居すくみ》や《ひどい荒廃》のような軽いカードは対処カードとして間に合いますが、《チャンドラの憤怒》は5マナと比較的重いので間に合わないケースもあります。序盤用のカードを対処したいのに打てるのは中盤以降というのは少々おかしな話。
タフネス1クリーチャーに対処するカードが少ないから《チャンドラの憤怒》を使おう、という考えで使うには5マナはちょっと重いです。《チャンドラの憤怒》はタフ1キラーというよりも、本体4点&邪魔な小型ブロッカー排除という役割のカードとして使ったほうがよいでしょう。
一つ注意しておきたいのは、タフネス1に対処するカードをデッキに入れすぎないということ。
《ひどい荒廃》や《刃の雨》なんかは確かに序盤は有効にタフネス1に対処できますが、逆に中盤~後半に出てくるタフネス2以上のクリーチャーに対してはほぼ無意味です。これらのカードを大量に持ちながら大型クリーチャーに殴られては本末転倒ですね。
なのでこういったゲーム序盤にしか役に立たないカードはデッキに入れすぎないように注意しましょう。目安は多くても2枚まで。3枚以上の投入はやめたほうが無難ですね。
4. マナ基盤
次は環境のマナ基盤を見ていきましょう。
M13のマナサポート関連のカードはレアの土地を除くとこの3種。
前回の記事でも触れましたが、M13環境はマナサポート関連のカードが少ないので、基本的にはそれらに頼らなくても平気なように2色でデッキを組むようにするのが基本です。
一応どの色でも使える《進化する未開地》と《適合の宝石》はありますが、《進化する未開地》はメイン色のために使わなくてはいけないときもあったり、《適合の宝石》のプレイに3マナ、起動に3マナと使うのにかなりのマナを要求されるので、これらを頼って3色で組むのはあまりオススメしません。
一応緑ならこれに加えて《遥か見》まで用意できるので3色は比較的やりやすいですが、それでも2色+1色の形にまとめるのが無難です。
基本的にマナベースの強い環境ではないので、どうしても使いたいカードが無い限りは2色でデッキを組むようにしましょう。
5. コンバットトリック
次は環境にあるコンバットトリックを見ていきます。
※コンバットトリック...戦闘を変化させる呪文や能力で、特に相手から見えないものを指す。《殺害》のような除去呪文も戦況を変化させるのでコンバットトリックとされる。
環境にある戦闘時に関与するカードはこれくらい。
《剛力化》や《武勇の誇示》のような分かりやすいクリーチャー強化呪文から、《栄光の突撃》《ラッパの一吹き》のような全体強化、《濃霧》や《安全な道》のような軽減呪文まで多種多様に揃っています。
まぁこれだけ挙げても実際に使われるのは半分くらいです。
《栄光の突撃》や《ラッパの一吹き》なんかはデッキを選びますし、《大蛇の贈り物》や《打ち寄せる水》なんかはデッキに入れたいスペックではありません。
したがって、各色からプレイされるコンバットトリックはある程度予想することができます。
緑なら《剛力化》、白なら《武勇の誇示》、赤なら《火をつける怒り》といったように、各色にどんなコンバットトリックがあるのかをしっかりと覚えておきましょう。
特に《神聖なる評決》や《フェアリーの侵略者》のような重めのコンバットトリックはプレイで回避できる部分もあるので、白が4マナ残していたり青が5マナ残しているときには、これらのカードを常に警戒してプレイするようにしたいですね。
6. 装備品
次は環境にある装備品を見ていきます。
環境にある装備品はこの6種。
どれもアンコモンなのと、《帆凧》以外の指輪シリーズは色が合ってないと使いづらいことから、メインから《溶解》などを入れて対策するほどではないですね。
指輪シリーズは装備しているクリーチャーが指定されている色ならターンごとに強化されていくもので、基本的にはその色をやってないとデッキには入れたくないスペックです。速攻やトランプルを与えるだけの装備品ではデッキには入れたくないですね。
ただ《ザスリッドの指輪》だけは色が合ってなくてもデッキに入れてもいいくらいのスペックです。マナがかかるとはいえ、どんなクリーチャーにも再生能力を付加できるのは非常に魅力的です。
今回の指輪シリーズに対する認識としては、基本的にはデッキの色と指輪の指定する色が合っていたら入れる。ただし黒の指輪だけは色が合ってなくても入れることを考慮。といった感じでしょうか。
この環境の装備品に対する回答として赤に《金屑化》があります。
普通に使える除去であり、装備品対策も兼ねているカードで、これで2対1交換されると非常に戦況が厳しくなってしまいます。
こういったカードで損をしないように、相手のデッキが赤い場合は意味がないときにクリーチャーに装備をしないように注意しましょう。
もし相手のデッキの中に《金屑化》を見たなら、サイド後にデッキから装備品を抜いてしまうのも一つの手段ですね。
7. ブロックのメカニズム
最後にセット内のメカニズムを検証して、それがドラフトでアーキタイプとして成立するかを考察します。
※アーキタイプ...マジックにおいてはデッキ全体のコンセプトや戦略を指す言葉。
M13のメカニズムといえば、既に文中に何度も出てきていますね。そう賛美です。
賛美
能力の説明自体は前回の記事でしたので、そのあたりは割愛します。
賛美は去年の基本セット2012の狂喜と同じく非常に攻撃的な能力です。こういった能力はリミテッドでは重宝されるもので、今回のM13ドラフトでも賛美というキーワードに沿ってドラフトすることは可能でしょう。
M13にある賛美を持ったカードはほとんどが白と黒に割り振られているので、賛美のアーキタイプを目指すなら必然的に白と黒に手を出すことになります。恐らく白黒のカラーリングが賛美のアーキタイプをやるなら一番適しているでしょう。
賛美が複数集まれば、ただの2/2でも攻撃時には4/4や5/5くらいの大きさになるので、対戦相手にとっては非常に脅威です。
他の要素を考えなくても、賛美という能力はリミテッド視点で見ると非常に強力な能力なので、M13ドラフトではあちこちで賛美による高速ゲームが展開されるでしょう。
賛美は確かに強力な能力ですが、弱点も用意されています。
賛美の弱点としては、攻撃するクリーチャーが常に単体なので《濃霧の層》や《原初の土》のような硬いクリーチャーを用意されると突破しづらかったり、《送還》のようなカードで簡単に攻撃を捌かれてしまうこと。
また賛美持ちのクリーチャーはタフネス1のクリーチャーが多いので、タフネス1対策のカードは賛美全般に非常に強いです。《居すくみ》なんかは偶に相手の場を壊滅させてしまうこともありますね。
賛美は確かに強い能力ですが、このように対策できるようにも設定されています。
果たして環境の最強のアーキタイプは賛美なのか? それともまったく別のアプローチなのか?
まだこの問いに答えを出す必要はありません。M13環境はまだ始まったばかり。
小難しいことを考えるのはこれくらいにして、実際にドラフトをプレイしていきましょう!!
実際にプレイしていけば、おのずと答えは分かっていくものですからね。
では今回の基本セット2013『7つの分析編』はここまでです。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。
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