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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第92回:渦巻くメタゲーム?グランプリ・ボルチモア トップ8デッキ特集
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2012.03.08
第92回:渦巻くメタゲーム~グランプリ・ボルチモア トップ8デッキ特集
こんにちはー。
先週はお休みしてしまい、申し訳ありませんでした。私事になるのですが、その間に進級できることが決まったので、これで新年度が始まるまでは安心して記事に専念できそうです。しかしこの時期はいつもどきどきしながら成績表を待っているので、来年度からはもう少し学業もがんばりたいところですね。
・・・っとまあそんな身の上話はこの辺にしておいて、そろそろ本題のスタンダードの話題に移りましょう。
この2週間の間に、アメリカとフランスでスタンダードのグランプリが行われました。率直な感想を申し上げますと、たった2週間でここまで変わるものなのかと、メタゲームの循環の速さに驚いています。
今週はそんな劇的な変化の序章となった、グランプリ・ボルチモアのトップ8デッキを見ていきたいと思います。まずは恒例のトップ8デッキ分布からご覧ください。
~グランプリ・ボルチモア(2月25~26日開催)・トップ8デッキ分布~
(リンク先は英語カバレージ)
優勝 | 「青白Delver-Blade」 |
準優勝 | 「青黒コントロール」 |
3位 | 「赤緑ビートダウン」 |
4位 | 「青黒ゾンビ」 |
5位 | 「青黒コントロール」 |
6位 | 「青黒コントロール」 |
7位 | 「Frites(5色リアニメイター)」 |
8位 | 「青白人間ビートダウン」 |
6種類ものアーキタイプが凌ぎを削った決勝ラウンド。そんな中3名ものプレイヤーをトップ8に送り込んだ「青黒コントロール」は、メタゲームの移り変わりをよく表していると言えるでしょう。
その辺りの考察は「青黒コントロール」の項目でお伝えすることにして、まずは見事栄冠を勝ち取った最新型の「青白Delver-Blade」をチェックしてみましょう。
「青白Delver-Blade」
9 《島》 1 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(21)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《不可視の忍び寄り》 4 《聖トラフトの霊》 -クリーチャー(15)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《蒸気の絡みつき》 2 《思考掃き》 4 《マナ漏出》 2 《四肢切断》 2 《ルーン唱えの長槍》 2 《戦争と平和の剣》 -呪文(24)- |
2 《幻影の像》 1 《外科的摘出》 2 《天界の粛清》 1 《存在の破棄》 1 《神への捧げ物》 2 《雲散霧消》 2 《機を見た援軍》 2 《腐食の突風》 1 《殴打頭蓋》 1 《記憶の熟達者、ジェイス》 -サイドボード(15)- |
2月10日~12日にかけて行われたプロツアー・闇の隆盛に引き続きトップ8の座を射止めたのが、今回の優勝者であるCostaさんと、PVことPaulo Vitor Damo da Rosaの両名。
PVはプロツアーでは「赤緑《ケッシグの狼の地》」を、そしてこのグランプリでは「青黒コントロール」を選んでおり、メタゲームの流れを読み切ったデッキ選択が印象的ですが、Costaさんはプロツアーで使用した「青白Delver-Blade」をアップデートしての栄冠でした。
メインボードにそこまで大きな変化はありませんでしたが、サイドボードはプロツアー・闇の隆盛の結果を受けいくつかの変更を施しています。
新たに加えられたカードは《外科的摘出》《天界の粛清》《腐食の突風》《殴打頭蓋》《記憶の熟達者、ジェイス》の5種類で、その中でも特に重要なのが《腐食の突風》です。
これはCostaさんがプロツアーの決勝ラウンドでJon Finkelの駆る「Delver-Spirits(第90回)」に敗れたことを踏まえての変更でしょう。《未練ある魂》の有無もあり、やはりこのマッチアップは「青白Delver-Blade」にとって厳しいものなので、このカードの採用も納得です。
《腐食の突風》はこのデッキだけに限らず、実に多くのデッキのサイドボードカードとして活躍を見せていたようですし、今後も「Delver-Spirits」や《未練ある魂》の入ったデッキが幅を利かすようであれば、ぜひともサイドボードに用意しておきたい1枚ですね。
《外科的摘出》と《記憶の熟達者、ジェイス》は、主に「青黒コントロール」などのコントロール対策カードで、プロツアー・闇の隆盛以降にMagic Online(以下MO)上で「青黒コントロール」が数を増やしていたこと、そしてこのグランプリの直前にBrad Nelson(2010年度年間最優秀選手)が良質な「青黒コントロール」の記事を書いていたことも手伝い、多くのプレイヤーが「青黒コントロール」を意識してデッキを組み上げていたようです。
《天界の粛清》に関しては、このデッキが苦手とする《死の支配の呪い》や、プロツアー・闇の隆盛でワンツーフィニッシュを飾った「赤緑《ケッシグの狼の地》」の主戦力である《高原の狩りの達人》、さらには「ゾンビ」系統のデッキや「赤単」系のデッキなど、環境の多くのデッキに対応できる手広さが魅力です。
今のメタゲームであれば、白いデッキのサイドボードには必ず入れておきたい重要なカードだと思います。
残る《殴打頭蓋》はパッと見では対ビートダウン専用機に見えるのですが、Costaさんは対「青黒コントロール」戦でもサイドインしていましたね。これは「青黒コントロール」側がサイド後に除去を大量に入れてくることを見越した上でのプランでしょうが、僕は最初はCostaさんの意図が全く分からず、何か別のカードと見間違えているのかと決勝戦の動画を見ながら首を傾げていました。
しかしながらCostaさんは実際に《殴打頭蓋》を纏わせた《聖トラフトの霊》にて、《血統の守り手》2体という絶望的な場を乗り越え、最終的に《ムーアランドの憑依地》+《殴打頭蓋》という「青黒コントロール」プレイヤーにとってどうしようもない場を作り上げて、見事に優勝の座を掴み取りました。
おそらくではありますが、Costaさんも最初は対ビートダウン用に《殴打頭蓋》を採用したと思われます。この辺りの臨機応変な対応は、ひとつのデッキを使い続けたからこそ得られたものかもしれません。
こういったサイドボーディングの上手さもそうですが、やはりプロツアーとグランプリで連続入賞するようなプレイヤーからは学ぶべきことが多いですね。
アメリカのグランプリの大半は動画配信されているので、お時間がある方はぜひそちらもご覧になってみてください。
お次は今大会で台風の目となった「青黒コントロール」を。
「青黒コントロール」
8 《島》 6 《沼》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 3 《ネファリアの溺墓》 2 《幽霊街》 -土地(27)- 3 《瞬唱の魔道士》 2 《聖別されたスフィンクス》 -クリーチャー(5)- |
3 《悲劇的な過ち》 1 《虚無の呪文爆弾》 4 《マナ漏出》 4 《熟慮》 2 《喉首狙い》 1 《漸増爆弾》 3 《禁忌の錬金術》 2 《雲散霧消》 2 《死の支配の呪い》 3 《黒の太陽の頂点》 1 《青の太陽の頂点》 2 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(28)- |
1 《幻影の像》 2 《血統の守り手》 1 《ワームとぐろエンジン》 2 《外科的摘出》 1 《虚無の呪文爆弾》 1 《瞬間凍結》 1 《否認》 1 《漸増爆弾》 1 《雲散霧消》 2 《殴打頭蓋》 1 《ネファリアの溺墓》 1 《幽霊街》 -サイドボード(15)- |
8 《島》 7 《沼》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 2 《ネファリアの溺墓》 2 《幽霊街》 -土地(27)- 3 《瞬唱の魔道士》 2 《墓所のタイタン》 -クリーチャー(5)- |
3 《悲劇的な過ち》 4 《マナ漏出》 4 《熟慮》 2 《破滅の刃》 2 《漸増爆弾》 3 《禁忌の錬金術》 2 《雲散霧消》 2 《飢えへの貢ぎ物》 2 《死の支配の呪い》 3 《黒の太陽の頂点》 1 《青の太陽の頂点》 -呪文(28)- |
1 《幻影の像》 2 《血統の守り手》 2 《虚無の呪文爆弾》 1 《外科的摘出》 1 《瞬間凍結》 1 《否認》 1 《喉首狙い》 1 《雲散霧消》 1 《飢えへの貢ぎ物》 2 《殴打頭蓋》 2 《ネファリアの溺墓》 -サイドボード(15)- |
8 《島》 7 《沼》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 4 《ネファリアの溺墓》 -土地(27)- 2 《瞬唱の魔道士》 1 《聖別されたスフィンクス》 1 《墓所のタイタン》 -クリーチャー(4)- |
1 《悲劇的な過ち》 4 《マナ漏出》 4 《熟慮》 3 《漸増爆弾》 2 《喉首狙い》 3 《禁忌の錬金術》 2 《雲散霧消》 2 《死の支配の呪い》 3 《黒の太陽の頂点》 1 《青の太陽の頂点》 3 《ヴェールのリリアナ》 1 《ソリン・マルコフ》 -呪文(29)- |
1 《幻影の像》 1 《血統の守り手》 2 《蔑み》 2 《虚無の呪文爆弾》 1 《外科的摘出》 1 《悲劇的な過ち》 1 《雲散霧消》 1 《血統の切断》 2 《死の支配の呪い》 1 《決断の手綱》 1 《青の太陽の頂点》 1 《解放された者、カーン》 -サイドボード(15)- |
ここまで何度か触れてきましたが、今回「青黒コントロール」が勝ち組になったのはメタゲームの産物に他なりません。
その変化とは、ずばり「赤緑《ケッシグの狼の地》」が増えたことです。「赤緑《ケッシグの狼の地》」のリストを見ればそれもそのはず、チーム「ChannelFireball」謹製の「赤緑《ケッシグの狼の地》」は対クリーチャーデッキに特化しており、このような純粋なコントロールデッキを苦手としているんです。
「赤緑《ケッシグの狼の地》」の期待の新鋭こと《高原の狩りの達人》も、「青黒コントロール」から見ればかわいいもので、本体を除去してしまえばたったの2点クロックでしかありませんし、使い道のなかった《黒の太陽の頂点》だったり、「変身」後にトークンごと《漸増爆弾》でふっ飛ばされたりと、対クリーチャーデッキでの強さとは裏腹に、このマッチアップでは悪いところばかりが目につきます。
他の《高原の狩りの達人》を使ったデッキ、例えば後述の「赤緑ビートダウン」の場合は、《高原の狩りの達人》以外にもプレッシャーをかけられるカードが多いので、余った除去で都合よくやられてしまうなんてことはないのですが、「赤緑《ケッシグの狼の地》」は他にアタッカーと呼べる軽量クリーチャーを持たないため、《高原の狩りの達人》が出る頃には相手の手札にもある程度の余裕ができてしまうんですね。
さらにPV以外が採用している《聖別されたスフィンクス》は「赤緑《ケッシグの狼の地》」に劇的な1枚で、《内にいる獣》を持たない今のリストでは、このクリーチャーが出てしまうとほぼそれだけで詰んでしまいます。
最近では1枚1枚のカードパワーが高いため、昔よりも相性の良し悪しを感じることが少なくなってきましたが、「青黒コントロール」対「赤緑《ケッシグの狼の地》」は、控え目に言っても6:4か7:3で「青黒コントロール」が有利だと思います。
「青黒コントロール」が相当数いた関係上、今回のグランプリで「赤緑《ケッシグの狼の地》」がトップ8に残れなかったのは必然と言え、今後メインから《最後のトロール、スラーン》の増量や、《原初の狩人、ガラク》、または《解放された者、カーン》の採用など、何かしらの策を講じなければこの相性差が覆ることはないでしょう。
そして「青黒コントロール」と言えば、コントロール対決の王者としても名高いわけなんですが、それは《ネファリアの溺墓》の存在があってこそです。
対コントロール戦での高い勝率を維持するためにもサイド後に4枚にするのは確定として、難しいのはこれをメインに何枚採用すべきかという問題。
PVはトップ8プロフィール上で、「思いの外ミラーマッチが多かったから、もっとミラーマッチを意識してメインから3枚目の《ネファリアの溺墓》を入れとけばよかったね。あとミラーマッチ用のサイドボードももう少しほしかった。」と語っており、準々決勝でメインからより多くの《ネファリアの溺墓》を、サイドに3枚目の《幽霊街》を擁していた準優勝者のデッキに敗れていますが、《沼》を6枚以下にしてしまうと3ターン目や4ターン目に{B}{B}を出すのが難しくなり、これは対ビートダウン戦で致命傷になりかねません。
そのため、個人的にはよっぽどメタゲームがコントロールに寄っているという確信がない限りは、PVの土地構成が最善だと思います。特に2位と6位の方のリストのように、《ヴェールのリリアナ》や、サイドボードに《血統の守り手》を取っているのなら、なおさら《沼》は多めの方が展開がスムーズになっていいでしょう。
それと今後よく見かけそうな除去カードとして、《血統の切断》が挙げられます。
これは主に「不死」を持つ《絡み根の霊》や《ゲラルフの伝書使》に対して効果的なカードで、他にも《死の支配の呪い》以外では対処の難しい《墓所這い》なんかにも良く効きます。
基本的に「不死」を持ったクリーチャーを効率よく対処できるのはカウンター呪文くらいのものですが、今後は《血統の切断》も良い「不死」対策として居場所を見つけられるはずです。
このグランプリ・ボルチモアでは、そんな「不死」クリーチャーたちを軸に据えたデッキがふたつトップ8に残っています。ひとつめは「黒単ゾンビ」デッキに青を足したものでした。
「青黒ゾンビ」
14 《沼》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 -土地(22)- 4 《墓所這い》 4 《戦墓のグール》 2 《煙霧吐き》 4 《幻影の像》 2 《スカースダグの高僧》 4 《戦墓の隊長》 4 《ゲラルフの伝書使》 2 《ファイレクシアの抹消者》 -クリーチャー(26)- |
3 《悲劇的な過ち》 3 《ゲスの評決》 4 《迫撃鞘》 2 《饗宴と飢餓の剣》 -呪文(12)- |
1 《墓地を刈り取るもの》 2 《ファイレクシアの抹消者》 1 《ファイレクシアの変形者》 2 《虚無の呪文爆弾》 3 《困窮》 3 《腐食の突風》 2 《戦争と平和の剣》 1 《沼》 -サイドボード(15)- |
ここ数週間でメキメキと頭角を現してきたのが「青黒ゾンビ」デッキ。カバレージをご覧になっている方ならご存じかもしれませんが、この翌週に行われたグランプリ・リールでは、14勝0敗2ID(合意の上での引き分け)からの全勝優勝を飾っていますし、今最も旬なデッキのひとつです。
トップ8プロフィールにて、Mattさんは「《スカースダグの高僧》は弱すぎた。」とのコメントを残していますし、先々週お伝えした通り、2マナ域をどうするかという課題は未だ解決できていませんが、それを差し置いても十分に強力で魅力的なデッキですね。
このデッキは次週の連載で深めに考察する予定なので、「黒単」系のデッキや「ゾンビ」好きのみなさんはお楽しみに。
「赤緑ビートダウン」
8 《森》 3 《山》 4 《銅線の地溝》 4 《根縛りの岩山》 3 《ケッシグの狼の地》 2 《墨蛾の生息地》 -土地(24)- 4 《極楽鳥》 4 《ラノワールのエルフ》 4 《絡み根の霊》 1 《夜明けのレインジャー》 4 《高原の狩りの達人》 3 《ファイレクシアの変形者》 2 《地獄乗り》 1 《最後のトロール、スラーン》 1 《酸のスライム》 -クリーチャー(24)- |
4 《感電破》 4 《緑の太陽の頂点》 4 《戦争と平和の剣》 -呪文(12)- |
1 《最後のトロール、スラーン》 1 《解放の樹》 1 《酸のスライム》 2 《古えの遺恨》 2 《魔力のとげ》 3 《腐食の突風》 2 《饗宴と飢餓の剣》 1 《情け知らずのガラク》 2 《原初の狩人、ガラク》 -サイドボード(15)- |
今をときめくもうひとつのビートダウンデッキがこちらの「赤緑ビートダウン」。このデッキもまた、次週のメイントピックにする予定なのですが、こちらはカード選択について二点だけ。
1. 最高の4マナ域・《地獄乗り》
先々週は《高原の狩りの達人》か《地獄乗り》か《オキシド峠の英雄》、どれにすべきかはっきりとした意見を述べることができませんでしたが、実際にこのデッキを使ってみて確信を持ったのは、《地獄乗り》こそが至高の4マナ域だということです。
単体でも4点という非常に大きなクロックになる上に「速攻」まで付いていますし、なんと言っても秀逸なのはこいつが2体以上並んだ時です。《地獄乗り》が2体いれば、攻撃クリーチャー1体につき2点のダメージが誘発するため、1回のアタックで2桁のダメージを叩きこむこともざらにありますし、仮に相手の戦場に何匹ブロッカーがいようとも、《地獄乗り》の能力だけで本体を削り切ることも十分に起こりえます。
《高原の狩りの達人》には、ビートダウンに強いという《地獄乗り》とはまた違った魅力があるため比較対象となりえますが、一度《地獄乗り》を使ったらもう《オキシド峠の英雄》には戻れません。《原始のタイタン》や《ワームとぐろエンジン》を前にしても希望が持てる《地獄乗り》は、今後の赤いデッキを支える優秀なクリーチャーだと思います。
こいつが真価を発揮するには一定数のクリーチャー数が必要なので、火力過多の「赤単」などでの使用は微妙かもしれませんが、このデッキのようにクリーチャーが横に並びやすいデッキならば、他の追随を許さない圧倒的な攻撃力を誇ります。
そんなわけで、ぜひともみなさんにも《地獄乗り》を4枚採用してほしいところですが、{2}{R}{R}というキャスティングコストの関係上、そうするのであれば《墨蛾の生息地》を諦める必要が出てくるでしょう。
しかしながら、個人的には《墨蛾の生息地》なんて惜しくもなんともないくらい《地獄乗り》の強さは際立っていると思っています。《ファイレクシアの変形者》のコピー先としても最上級のものですし、新時代のエースをぜひ試してみてほしいですね。
2. 《戦争と平和の剣》か《饗宴と飢餓の剣》か?
ほぼ緑単色に近いこのデッキは《ミラディンの十字軍》に弱いため、《戦争と平和の剣》を選ぶのは自然な流れと言えます。ダメージ効率の面で見ても、《饗宴と飢餓の剣》よりも優れていますしね。
ですがこのグランプリ以降、ミラーマッチと対「ゾンビ」の回数が圧倒的に増えてきているので、個人的にはメインは《饗宴と飢餓の剣》、サイドに《戦争と平和の剣》という形をお勧めします。
ミラーマッチにおいて、《戦争と平和の剣》でも《極楽鳥》に付くなり《ケッシグの狼の地》のバックアップがあれば決定打になりますが、単体の性能で見た場合は、《絡み根の霊》や《高原の狩りの達人》のトークンに手を焼く《戦争と平和の剣》よりも、こちらの任意のクリーチャーを(概ね)アンブロッカブルにでき、相手の選択肢を狭めていける《饗宴と飢餓の剣》に軍配が上がると思います。
対「青黒コントロール」や対「赤緑《ケッシグの狼の地》」戦でも《饗宴と飢餓の剣》の方が優れているので、それもまたメインに《饗宴と飢餓の剣》を推す要因です。
「青白人間ビートダウン」
13 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(24)- 4 《宿命の旅人》 4 《教区の勇者》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 4 《忠実な聖戦士》 4 《悪鬼の狩人》 4 《ミラディンの十字軍》 4 《刃砦の英雄》 -クリーチャー(28)- |
4 《清浄の名誉》 1 《四肢切断》 3 《天使の運命》 -呪文(8)- |
3 《レオニンの遺物囲い》 2 《精神的つまづき》 3 《マナ漏出》 2 《天界の粛清》 1 《漸増爆弾》 1 《四肢切断》 1 《忘却の輪》 2 《腐食の突風》 -サイドボード(15)- |
4枚差しの多い非常に僕好みのリストに仕上がっていますが、従来のリストと比べると、《聖トラフトの霊》のような青マナを必要とするカードを極力減らし、《忠実な聖戦士》や《悪鬼の狩人》のようなダブルシンボルのカードをふんだんに盛り込みつつ、マナベースに《平地》を多めに入れることで、安定性の向上を図っています。
新顔の《スレイベンの守護者、サリア》は「青黒コントロール」や「赤緑《ケッシグの狼の地》」相手に重宝するカードで、とりわけ先手の場合の強さには目をみはるものがありますね。
「先制攻撃」持ちということで戦闘力もそこそこ頼りになり、《絡み根の霊》に強いのは好印象です。
《スレイベンの守護者、サリア》の採用に伴い、スペルをギリギリまで減らすように構築されています。
この「青白人間ビートダウン」を今選ぶ理由として、《ミラディンの十字軍》が再び活躍できるメタゲームに戻ってきたことが挙げられます。
「ゾンビ」デッキと「赤緑ビートダウン」にはこれだけで勝ててしまうことも多いので、そういった意味で今後はもっと見かける機会が増えるデッキかもしれません。
「Frites(5色リアニメイター)」
6 《森》 1 《山》 1 《平地》 4 《銅線の地溝》 4 《剃刀境の茂み》 4 《黒割れの崖》 2 《闇滑りの岸》 1 《根縛りの岩山》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 4 《アヴァシンの巡礼者》 1 《ラノワールのエルフ》 4 《業火のタイタン》 4 《大修道士、エリシュ・ノーン》 -クリーチャー(17)- |
4 《信仰無き物あさり》 4 《根囲い》 4 《追跡者の本能》 4 《未練ある魂》 4 《堀葬の儀式》 -呪文(20)- |
3 《最後のトロール、スラーン》 2 《ワームとぐろエンジン》 2 《古えの遺恨》 2 《天啓の光》 2 《記憶の旅》 4 《戦争と平和の剣》 -サイドボード(15)- |
先々週紹介した「5色リアニメイター」がグランプリでトップ8入賞を果たし、ただ動きが斬新で面白いだけのデッキではないということが改めて証明されました。
2週間前よりはメタゲーム上に《ネファリアの溺墓》が増えているので、《記憶の旅》を増やすなり、《酸のスライム》を入れるなり、もう少し対策カードを増量してもいいかもしれません。
余談になりますが、このデッキはフランス勢が持ち込んだデッキということで、海外では「Frites(フランス語でフライドポテトの意)」という名前で呼ばれているそうです。French Ritesを略したみたいでかっこいいですね。
...っと最後はただの雑談になってしまいましたが、グランプリ・ボルチモアのデッキ解説はここら辺で切り上げて、最後にグランプリ・ボルチモア前後のメタゲームの動きを軽くおさらいしてお別れしましょう。
- 「赤緑《ケッシグの狼の地》」に勝ちやすい「青黒コントロール」の増加
- 「ゾンビ(主に青黒、次いで赤黒、黒単)」、「赤緑ビートダウン」の台頭
簡潔にまとめるとこのふたつに集約されると思います。
2. に関しては、とにかく「不死」というキーワード能力が世界を変えるほどに強かったということですね。
このグランプリ以降、このふたつのデッキはますますの活躍を見せることになるのですが、それはまた来週の記事でお伝えしたいと思います。
それでは、また来週-!
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