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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第90回:プロツアー・闇の隆盛 トップ8デッキ特集
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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2012.02.16
第90回:プロツアー・闇の隆盛 トップ8デッキ特集
こんにちはー。
先週末に、今年初めてのプロツアーが幕を閉じました。殿堂入り選手が3名も決勝進出をはたしたこともあり、いつも以上の盛り上がりを見せた今回のプロツアー・闇の隆盛。大熱戦の模様はビデオでご覧いただくことができます(解説は英語です)
殿堂入り選手3名に加え、今年ほぼ確実に殿堂入りするであろうPVことPaulo Vitor Damo da Rosaや、日本勢から唯一トップ8入りをはたした永井さんの試合など、見所満載の決勝ラウンドとなっております。
そんなプロツアーの余韻も冷めやらぬ中、今週末にはグランプリ・神戸が開催されます。今回はMagic Onlineで「闇の隆盛」が発売される前にグランプリが行われるということで、もしかしたらあまり練習ができない方もいらっしゃるかと思いますが、そんな方はなべ(渡辺 雄也)君の記事を見てコツを掴んでおきましょう。
プロツアーのカバレージにはトッププロたちのピック譜もあるので、そちらもぜひ参考にしてみてください。
それでは、本題のプロツアー・闇の隆盛のトップ8デッキをチェックしていきましょう。まずはトップ8分布からご覧ください。
~プロツアー闇の隆盛・トップ8デッキ分布~
優勝 | 「赤緑《ケッシグの狼の地》」 |
準優勝 | 「赤緑《ケッシグの狼の地》」 |
3位 | 「Delver-Spirits(青白黒)」 |
4位 | 「緑黒タッチ赤《ケッシグの狼の地》」 |
5位 | 「青白Delver-Humans」 |
6位 | 「ナヤ(赤緑白)《出産の殻》」 |
7位 | 「青白Delver-Blade」 |
8位 | 「Delver-Spirits(青白黒)」 |
実に様々なデッキが混在した(参考:メタゲームブレイクダウン)プロツアー・闇の隆盛でしたが、そんな中見事なワンツーフィニッシュを飾ったのは「ChannelFireball」謹製の「赤緑《ケッシグの狼の地》」でした。彼らの力作は後ほど紹介させていただくとして、まずは今大会の最大勢力となったこのデッキから見ていきましょう。
「青白Delver-Blade」
9 《島》 1 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(21)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 2 《不可視の忍び寄り》 4 《聖トラフトの霊》 -クリーチャー(14)- |
2 《はらわた撃ち》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《蒸気の絡みつき》 2 《思考掃き》 4 《マナ漏出》 1 《四肢切断》 1 《ルーン唱えの長槍》 3 《戦争と平和の剣》 -呪文(25)- |
2 《幻影の像》 1 《聖別されたスフィンクス》 1 《変異原性の成長》 2 《存在の破棄》 1 《神への捧げ物》 3 《機を見た援軍》 2 《雲散霧消》 1 《忘却の輪》 1 《四肢切断》 1 《審判の日》 -サイドボード(15)- |
445名の参加者が募ったプロツアー・闇の隆盛ですが、そのうちの19%にあたる86名ものプレイヤーが使用したのが「青白Delver-Blade」でした。
「闇の隆盛」で収穫と呼べるものはほとんどありませんでしたが、それにも関わらずこれだけの使用者がいたということは、元よりこのデッキの完成度が高かったという証明でもあると思います。
そんな中、「闇の隆盛」から加入した貴重な新戦力は《思考掃き》です。
《瞬唱の魔道士》、《ルーン唱えの長槍》、そして《ムーアランドの憑依地》とのナチュラルコンボはもちろんのこと、《秘密を掘り下げる者》や《思案》でめくれた要らないカードを墓地に送ることもできる、使い勝手のいいカード。
このようにあまりリストに変化がなかったわけなんですが、《秘密を掘り下げる者》を使う性質上、ソーサリーとインスタント以外の新カードを投入しづらいため、これはいささか仕方のないことのように思えます。
ですがこれはあくまで「青白」2色のバージョンに限った話です。何名かのプレイヤーたちは「Delver-Blade」によるミラーマッチの多さを見越し、3色目を足すことで、それに強いアプローチを施してきました。
「Delver-Spirits(青白黒)」
5 《島》 1 《平地》 1 《沼》 4 《金属海の沿岸》 4 《闇滑りの岸》 3 《氷河の城砦》 2 《進化する未開地》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《幻影の像》 4 《ドラグスコルの隊長》 2 《地下牢の霊》 -クリーチャー(17)- |
4 《ギタクシア派の調査》 1 《はらわた撃ち》 4 《思案》 4 《蒸気の絡みつき》 2 《マナ漏出》 1 《神への捧げ物》 1 《存在の破棄》 4 《未練ある魂》 -呪文(21)- |
1 《幻影の像》 2 《地下牢の霊》 2 《外科的摘出》 2 《はらわた撃ち》 1 《啓蒙》 1 《天界の粛清》 1 《神への捧げ物》 1 《存在の破棄》 1 《マナ漏出》 1 《否認》 1 《雲散霧消》 1 《四肢切断》 -サイドボード(15)- |
5 《島》 1 《平地》 1 《沼》 4 《金属海の沿岸》 4 《闇滑りの岸》 3 《氷河の城砦》 2 《進化する未開地》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《幻影の像》 4 《ドラグスコルの隊長》 2 《地下牢の霊》 -クリーチャー(17)- |
4 《ギタクシア派の調査》 1 《変異原性の成長》 4 《思案》 4 《蒸気の絡みつき》 2 《マナ漏出》 1 《神への捧げ物》 1 《存在の破棄》 4 《未練ある魂》 -呪文(21)- |
1 《地下牢の霊》 2 《はらわた撃ち》 1 《外科的摘出》 2 《漸増爆弾》 2 《マナ漏出》 1 《否認》 1 《天界の粛清》 1 《神への捧げ物》 1 《存在の破棄》 1 《雲散霧消》 1 《機を見た援軍》 1 《四肢切断》 -サイドボード(15)- |
先ほどとは打って変わって新カードをふんだんに盛り込んだリストが、こちらの「Delver-Spirits」です。
3色目を足す最大の要因は《未練ある魂》になるわけなんですが、Finkelたちは《ドラグスコルの隊長》を4枚フル投入することで、《未練ある魂》の魅力を最大限に生かそうと試みています。
メインに採用されることは珍しい《幻影の像》も、主に《ドラグスコルの隊長》とのコンボを意識しての採用だと思われ、相手が少しでも隙を見せようものなら、一気に《ドラグスコルの隊長》を並べて単体除去を無駄カードに変えることが可能になっています。
その他には《地下牢の霊》が目を引きます。この結果を見るまでは、個人的には構築レベルかどうか怪しいカードだと思っていたのですが、実際には《秘密を掘り下げる者》から各種タイタンまで、クリーチャーであれば何にでも対処できる優秀なカードでした。これもまた「スピリット」ということで、《ドラグスコルの隊長》との相性もばっちりですし、《幻影の像》のコピー先にもうってつけですね。
この「Delver-Spirits」の長所はと言いますと、前述の通り対「青白Delver-Blade」に強いことです。
《未練ある魂》の稼ぎだすアドバンテージだけでもかなり有利でしょうが、それに加え《ドラグスコルの隊長》のおかげで《ムーアランドの憑依地》対決でも優位に立てますからね。
この戦略をとるにあたり、唯一にして最大の問題は「青白Delver-Blade」側の《戦争と平和の剣》になりますが、そこはメインから《神への捧げ物》と《存在の破棄》を採用することでしっかりとカバーしています。
ミラーマッチ上での単純なクリーチャーのぶつかり合いで負けることはほとんどないはずなので、メインから《戦争と平和の剣》に触れるカードを入れるというのは、非常に理にかなった良い選択だと思います。
対「Delver-Blade」に強くなったその一方で、相性が悪くなってしまった相手が「赤緑《ケッシグの狼の地》」や「黒緑タッチ赤《ケッシグの狼の地》」のような「ビッグマナ」系統のデッキです。
《ドラグスコルの隊長》と《未練ある魂》を抱えるこのデッキは、タップアウトすることが多いため《マナ漏出》を減らしているのでしょうが、これがこのマッチアップではネックになってきます。
プロツアー前はそれほどまでに対「青白Delver-Blade」を意識せざるをえなかった、そしてその予想は見事に当たっていたのですが、今回の「赤緑《ケッシグの狼の地》」ワンツーフィニッシュという結果を受け、今後はもう少しカウンターを増量してもいいかもしれません。《マナ漏出》が2枚だという事実を知られてしまった今となっては、このデッキ相手に多くのプレイヤーが《マナ漏出》を警戒せずにばんばん呪文を唱えてくると思うので、それを逆手にとってカウンターを増やしておけば、相手の裏をかくことができるでしょう。
とはいえ、全ては今後のメタゲーム次第ですね。「赤緑《ケッシグの狼の地》」が増えるようであればカウンターの増量を検討すべきでしょうが、依然として「青白Delver-Blade」が多いようであれば、殿堂入りプレイヤーたちが選んだこのリストをぜひお試しください。
「青白Delver-Humans」
5 《島》 5 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(20)- 4 《教区の勇者》 4 《秘密を掘り下げる者》 2 《宿命の旅人》 4 《瞬唱の魔道士》 2 《聖トラフトの霊》 -クリーチャー(16)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《蒸気の絡みつき》 1 《信仰の盾》 4 《マナ漏出》 3 《町民の結集》 1 《存在の破棄》 1 《深夜の出没》 2 《迫撃鞘》 -呪文(24)- |
1 《地下牢の霊》 2 《はらわた撃ち》 1 《精神的つまづき》 1 《信仰の盾》 2 《否認》 2 《神への捧げ物》 1 《天界の粛清》 1 《戦慄の感覚》 1 《漸増爆弾》 2 《忘却の輪》 1 《機を見た援軍》 -サイドボード(15)- |
《秘密を掘り下げる者》を使用したデッキの最後を飾るのは、《教区の勇者》を用いたアグレッシブな「Delver-Humans」です。
《秘密を掘り下げる者》と《瞬唱の魔道士》のクリーチャータイプが「人間」であることに目を付けた構築で、基になったリストはグランプリ・オーランドで12位に入賞したSamuel Blackのものだと思われます。
このリストの強みは、1マナ域に《教区の勇者》を採用することで、「クロックパーミッション」デッキが得意とする「クロック(ダメージソース)を設置してそれを各種呪文でバックアップする」という状況を作りやすくなっていることです。
このデッキが理想の動きをすると、1ターン目に《教区の勇者》→2ターン目に《秘密を掘り下げる者》×2といった馬鹿げた展開もできるので、環境でも屈指の爆発力を秘めたデッキだと思います。
このデッキの新戦力である《町民の結集》は、《教区の勇者》のためだけに生まれたと言っても過言ではないカードで、《教区の勇者》から《町民の結集》に繋げるだけで、わずか2ターン目にして5点ものダメージソースを用意できる優れもの。
《町民の結集》の登場により爆発力が向上したので、このアーキタイプを選ぶ意味は以前よりも大きくなったと感じています。
その半面で弱点はと言いますと、5枚ずつ均等に入った《島》と《平地》を見てもらえば分かるように、一般的な「青白Delver-Blade」よりも色事故の危険性が高くなっていることです。
「青白Delver-Blade」が青マナだけあればある程度は動けるのに対し、このデッキは青マナと白マナの両方を都合よく引かないと円滑には動けません。そのため、少しでも色事故を回避しやすくするためにも、このデッキを使う場合はRachidさんのように《ギタクシア派の調査》を4枚採用するといいと思います。
余談ではありますが、個人的に「クロックパーミッション」デッキにおける《ギタクシア派の調査》は強すぎると形容して差し支えないカードだと思っています。《ギタクシア派の調査》さえあれば、どの呪文をカウンターすべきか悩む必要がなくなりますし、それ以外の情報管理も非常に楽になりますからね。
さらにこのデッキに関して言えば、「ファイレクシア・マナ」を利用して《町民の結集》や《信仰の盾》の「窮地」能力を使いやすくする副次効果もあります。
以上の理由から、「Delver-Humans」を使う際には、ぜひとも《ギタクシア派の調査》4枚を採用してみてほしいですね。
「赤緑《ケッシグの狼の地》」
6 《山》 5 《森》 4 《銅線の地溝》 4 《根縛りの岩山》 4 《墨蛾の生息地》 2 《ケッシグの狼の地》 -土地(25)- 1 《極楽鳥》 4 《高原の狩りの達人》 3 《真面目な身代わり》 1 《最後のトロール、スラーン》 1 《酸のスライム》 4 《原始のタイタン》 2 《業火のタイタン》 -クリーチャー(16)- |
4 《感電破》 4 《太陽の宝球》 4 《不屈の自然》 1 《鞭打ち炎》 4 《金屑の嵐》 2 《緑の太陽の頂点》 -呪文(19)- |
2 《最後のトロール、スラーン》 1 《秋の帳》 2 《帰化》 2 《古えの遺恨》 2 《焼却》 1 《鞭打ち炎》 2 《内にいる獣》 1 《原初の狩人、ガラク》 2 《解放された者、カーン》 -サイドボード(15)- |
6 《山》 5 《森》 4 《銅線の地溝》 4 《根縛りの岩山》 4 《墨蛾の生息地》 2 《ケッシグの狼の地》 -土地(25)- 1 《極楽鳥》 4 《高原の狩りの達人》 3 《真面目な身代わり》 1 《最後のトロール、スラーン》 1 《酸のスライム》 4 《原始のタイタン》 2 《業火のタイタン》 -クリーチャー(16)- |
4 《感電破》 4 《太陽の宝球》 4 《不屈の自然》 1 《鞭打ち炎》 4 《金屑の嵐》 2 《緑の太陽の頂点》 -呪文(19)- |
2 《最後のトロール、スラーン》 1 《秋の帳》 2 《帰化》 2 《古えの遺恨》 1 《焼却》 1 《鞭打ち炎》 2 《内にいる獣》 2 《原初の狩人、ガラク》 2 《解放された者、カーン》 -サイドボード(15)- |
昨シーズンの開幕戦となったプロツアー・パリでは、あの「Caw-Blade」を華々しくデビューさせ栄冠を勝ちとった「ChannelFireball」の面々ですが、そんな彼らが今年の開幕戦に持ち込んだのは、アップデートされた「赤緑《ケッシグの狼の地》」でした。
世界選手権の彌永君のリスト(参考:第80回)から変わったのは、大きく分けて以下の二点です。
- 環境の変化に合わせた全体除去の増量
- 「闇の隆盛」で得た《高原の狩りの達人》
ひとつめの変化はここ最近の連載で何度かお伝えしているように、「呪禁」持ちのクリーチャー、具体的には《聖トラフトの霊》に触れるカードの増量です。
名実ともにに大本命だったデッキが《聖トラフトの霊》を使用しており、このクリーチャーは放っておくとすぐさまゲームが終わってしまうので、これは納得の変更ですね。
そしてふたつめの項目である《高原の狩りの達人》も、「青白Delver-Blade」を強く意識しての採用だと思われます。
クリックで変身します
「闇の隆盛」がくれた新たなエースは、「青白Delver-Blade」に対して有効なカードです。4マナという軽さは《マナ漏出》をケアしながらのプレイを容易に行え、なおかつ相方の「狼・トークン」とライフゲイン能力が《蒸気の絡みつき》に対する強力なアンチテーゼとなります。
その軽さゆえに、《聖トラフトの霊》の返しのターンにキャストできる機会も多いでしょうし、「青白Delver-Blade」への新たな解答と呼べる頼もしき存在。このクリーチャーの登場により、愚直なビートダウンデッキ相手にも強くなっていますし、「赤緑《ケッシグの狼の地》」は以前にも増して、「アンチビートダウンデッキ」という地位を確かなものにしたという印象を受けました。
ミラーマッチでの弱さこそ気になりますが、これはFinkelたちと同じく、まずは「青白Delver-Blade」を第一にメタるべきだという共通認識が生みだした事象でしょう。
ちなみにPVは、ミラーマッチの決勝戦でサイド後に《高原の狩りの達人》を残していましたが、個人的には全部抜いてしまってもよかったように思えます。
対「青白Delver-Blade」時の強さとは裏腹に、怪獣大決戦になるミラーマッチでは、《高原の狩りの達人》が与えるインパクトはそこまで大きなものではありませんからね。
参考になるかどうか分かりませんが、一応僕なりのミラーマッチ戦のサイドボーディングプランを載せておきます。
対ミラーマッチ・サイドボーディングプラン(PVのリストの場合)
out
4《高原の狩りの達人》、1《最後のトロール、スラーン》、1《鞭打ち炎》、4《金屑の嵐》in
2《帰化》、2《古えの遺恨》、2《内にいる獣》、2《原初の狩人、ガラク》、2《解放された者、カーン》
ミラーマッチではマナを巡る攻防、そしてその後に訪れる《原始のタイタン》と《墨蛾の生息地》をどう対処するかが重要になります。
サイド後はマナ加速のみならず、《帰化》と《古えの遺恨》で《太陽の宝球》を破壊したり、《酸のスライム》と《内にいる獣》でマナを攻める攻防が加わります。
メインボード戦では、マナ加速のない手札はほぼ確実にマリガンすることになりますが、サイド後はマナを攻めるカードを投入することで、多少ではありますがマリガンの回数を減らすことができます。こちらがマナ加速をするのも、相手のマナを攻めるのもあまり大きな差はありませんからね。
そのマナを巡る攻防の後に、最終的にはお互いの《原始のタイタン》が戦場に降臨することになるでしょうが、そこで重要になるのが《墨蛾の生息地》に対処できるカードの総数です。
《原始のタイタン》はこちらの《原始のタイタン》なりで相打ちに取れば問題はありませんが、《ケッシグの狼の地》にバックアップされた複数枚の《墨蛾の生息地》を相打ちで対処しようとしても、トランプルダメージで毒殺されるのは目に見えています。
つまるところ、相手に《原始のタイタン》を先に出された場合は《墨蛾の生息地》を割れないと後手側が確実に負けてしまうので、これくらいの枚数を投入してもばちは当たらないでしょう。
Kiblerのリストであれば、《原初の狩人、ガラク》が1枚少ないので、《最後のトロール、スラーン》を残す感じですね。
最後になりますが、今回の結果を受け僕が改めて感じたことは、彼らのデッキ選択の上手さです。
「ChannelFireball」勢が昨年使ったデッキを振り返ってみると、「Caw-Blade」「ボロス(赤白ビートダウン)」(以上参考:第57回)、「白単タッチ青《鍛えられた鋼》」(参考:第80回)など、実に様々なアーキタイプを使いこなして結果を残しています。
今回の「赤緑《ケッシグの狼の地》」に関して言えば、「ChannelFireball」の総帥であり、コントロールデッキをこよなく愛する男Luis Scott-Vargasが最も嫌いそうなアーキタイプに見えますが、それでもテストプレイで論理的に出した答えに従う、良い意味での「デッキに対する拘りのなさ」が彼らの強さの一因かなと思いました。
もちろん、どんなデッキでも使いこなす高い技術と、メタゲームを的確に読み切る洞察力があってこそだとは思いますが、これほどまでに毎回トップ8に数名を送り出すのは歴史的快挙と言うほかありません。今後も彼らの動向から目が離せませんね。
「黒緑タッチ赤《ケッシグの狼の地》」
6 《森》 4 《沼》 1 《山》 4 《森林の墓地》 1 《竜髑髏の山頂》 4 《墨蛾の生息地》 2 《ケッシグの狼の地》 2 《進化する未開地》 1 《幽霊街》 -土地(25)- 1 《極楽鳥》 1 《裏切り者グリッサ》 4 《真面目な身代わり》 2 《酸のスライム》 4 《原始のタイタン》 4 《墓所のタイタン》 -クリーチャー(16)- |
4 《太陽の宝球》 4 《不屈の自然》 3 《破滅の刃》 1 《喉首狙い》 2 《漸増爆弾》 2 《緑の太陽の頂点》 3 《黒の太陽の頂点》 -呪文(19)- |
1 《ヴィリジアンの堕落者》 2 《最後のトロール、スラーン》 1 《解放の樹》 2 《虚無の呪文爆弾》 2 《古えの遺恨》 2 《死の支配の呪い》 1 《黒の太陽の頂点》 2 《殴打頭蓋》 1 《ヴェールのリリアナ》 1 《原初の狩人、ガラク》 -サイドボード(15)- |
日本勢で唯一トップ8に進出した永井さんのデッキは、第86回で紹介したConleyのデッキの最新版でした。
メインボードは《進化する未開地》が入ったことで以前よりも安定性が増していることと、《未練ある魂》などを意識してか、《漸増爆弾》の枚数が増えています。それとサイドボードの《最後のトロール、スラーン》と《古えの遺恨》が増量されていますね。
何度か試した結果、やはり《最後のトロール、スラーン》は青いデッキに対する最高のカードだと思いましたし、個人的にもサイド後には3枚にすることをお勧めします。
対戦相手も《幻影の像》などで対策してきますが、その枚数はごくわずかなので、1枚目よりも2枚目、3枚目の《最後のトロール、スラーン》の方が、対処の難しさがグッとあがりますからね。
《古えの遺恨》に関しては、「赤緑《ケッシグの狼の地》」の項目でも述べたように、ミラーマッチでも非常に重要な役割を占める上、事前の予想である程度の数がいると予想された「白単タッチ緑《鍛えられた鋼》」に対しても効果的なので、これもまた納得の増量です。
惜しくも準々決勝でPVに敗れてはしまいましたが、永井さんの活躍によりこの「黒緑」バージョンの可能性も再確認されたことでしょう。
全体除去では《鞭打ち炎》と《金屑の嵐》擁する赤に軍配が上がりますが、タイタンでも何でも後腐れなく除去できる単体除去は黒ならではの特権です。そのため、今後ミラーマッチが増えるようであれば、再び「黒緑」バージョンに日の目が当たるかもしれません。
「ナヤ(赤緑白)《出産の殻》」
6 《森》 1 《平地》 1 《山》 4 《剃刀境の茂み》 4 《銅線の地溝》 3 《陽花弁の木立ち》 2 《根縛りの岩山》 3 《ガヴォニーの居住区》 -土地(24)- 4 《極楽鳥》 3 《アヴァシンの巡礼者》 1 《ラノワールのエルフ》 4 《絡み根の霊》 1 《ヴィリジアンの密使》 4 《刃の接合者》 1 《悪鬼の狩人》 4 《高原の狩りの達人》 1 《真面目な身代わり》 1 《酸のスライム》 1 《霊誉の僧兵》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《業火のタイタン》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 -クリーチャー(28)- |
4 《出産の殻》 2 《迫撃鞘》 2 《忘却の輪》 -呪文(8)- |
2 《刃砦の英雄》 1 《責め苦の総督》 1 《ファイレクシアの変形者》 1 《最後のトロール、スラーン》 1 《酸のスライム》 3 《精神的つまづき》 1 《秋の帳》 1 《天啓の光》 1 《古えの遺恨》 1 《忘却の輪》 2 《饗宴と飢餓の剣》 -サイドボード(15)- |
今までは「バント(青緑白)」カラーが多かった「《出産の殻》」デッキですが、「闇の隆盛」の加入により、攻撃的なクリーチャーを軸にするという新境地を切り開きました。
《絡み根の霊》は「不死」能力があるため《出産の殻》と相性が良いですし、《高原の狩りの達人》も《出産の殻》から導くことで即座に「変身」することができたり、自身を《出産の殻》で生け贄に捧げようとも、「狼・トークン」とライフゲインが付いてくる、まさしくこのデッキにピッタリの1枚。
このリストは2マナ域に《絡み根の霊》を、3マナ域に《刃の接合者》を、そして4マナ域に《高原の狩りの達人》を4枚採用することにより、前述の通りビートダウン戦略だけでゲームを押しきることが可能になっています。
《出産の殻》を引かない状況をどう打開するか、というのが「《出産の殻》」デッキに普遍的に付随する問題で、これはとりわけ《出産の殻》を割られやすい2ゲーム以降に表面化しやすいものでした。しかしこれほどまでにビートダウン戦略がしっかりしていれば、《出産の殻》のない状況でも十分に戦うことができるでしょう。
最近では「バント」カラーでも使用率が高い《ガヴォニーの居住区》ですが、「ナヤ」バージョンだと緑絡みの「ミラディンの傷跡」の2色土地をフルに使えマナベースに余裕があるので、「バント」バージョンよりも多めの枚数を採用することができます。
マナベース面での優位と《高原の狩りの達人》の存在は、「ナヤ」バージョンの隆盛を予感させるに十分な理由に思えます。「バント」なのか「ナヤ」なのか。近いうちに答えが出るようであれば、追って報告させていただきたいと思います。
今週は以上になります。いよいよ明後日に迫ったグランプリ・神戸ですが、僕は不戦勝を求めて、前日のグランプリ・トライアルから参戦予定です。
会場に行かれるみなさんはよろしくお願いいたします! みんなで最高のグランプリにしましょう!
それでは、また来週ー!
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