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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第77回:グランプリ・広島トップ8デッキ特集:前編「最強の部族」
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2011.11.03
第77回:グランプリ・広島トップ8デッキ特集:前編「最強の部族」
こんにちはー。
The Finals2011/The Limits2011を残すと、国内今年最後の大型イベントであるグランプリ・広島が終わりました。
おそらく、この連載を読んでいただいているみなさんの多くが、会場に足を運んでくださったことかと思いますが、グランプリというイベントや、広島という地域をお楽しみいただけたでしょうか?
僕は金曜日の深夜に実家に到着→月曜日の朝に出発という強行軍だったので、残念ながら久しぶりの広島を楽しむことはできませんでしたが、2日目終了後に行った飲み屋のご飯が予想以上においしくて大満足でした。
そしてなによりも、2日間ずっとマジックを楽しめるグランプリはやっぱり最高ですよね。本戦は796名と、今までのグランプリ・広島と比べても過去最多の参加者数を記録しましたし、それに加え併催イベントも大盛況だったようです。
今週はそんなグランプリ・広島本戦のトップ8デッキの紹介をさせていただきます。デッキの種類が多かったので、申し訳ありませんが2週に分けての紹介になります。
あまり役に立たないかもしれませんが、今週は僕の調整記録も交えながらお伝えしていこうと思っているので、そんなわけで最初に僕のリストをご覧ください。
9 《森》 3 《山》 4 《銅線の地溝》 4 《根縛りの岩山》 4 《墨蛾の生息地》 2 《ケッシグの狼の地》 -土地(26)- 1 《極楽鳥》 4 《ヴィリジアンの密使》 3 《真面目な身代わり》 1 《酸のスライム》 3 《原始のタイタン》 3 《業火のタイタン》 -クリーチャー(15)- |
4 《不屈の自然》 3 《内にいる獣》 4 《金屑の嵐》 4 《緑の太陽の頂点》 4 《原初の狩人、ガラク》 -呪文(19)- |
3 《最後のトロール、スラーン》 1 《解放の樹》 2 《酸のスライム》 1 《ワームとぐろエンジン》 3 《古えの遺恨》 1 《電弧の痕跡》 2 《饗宴と飢餓の剣》 2 《情け知らずのガラク》 -サイドボード(15)- |
最終成績は10勝4敗1引き分け(ID)の42位でした。とてもここには書けないようなたくさんのひどいミスをしてしまったので、トップ8に残れなかったのは必然と言えます。
僕の成績はおいておくとして、グランプリの前々日までは、《ダングローブの長老》入りの「緑単タッチ赤」で出ようと思っていたのですが、結局は《金屑の嵐》入りの「赤緑《ケッシグの狼の地》」型を選んだ理由などを、今週の記事で感じとってもらえれば、と思います。ちなみに負けた相手は「緑白ビートダウン」、「青白クロックパーミッション」、「青白ビートダウン」、「青黒コントロール」でした。
それでは、いつものようにまずはトップ8のデッキ分布から。
~グランプリ・広島トップ8デッキ分布~
優勝 | 「緑白ビートダウン」 |
準優勝 | 「青白人間ビートダウン」 |
3位 | 「太陽拳」 |
4位 | 「青白人間ビートダウン」 |
5位 | 「赤単スライ」 |
6位 | 「青白人間ビートダウン」 |
7位 | 「白単《鍛えられた鋼》」 |
8位 | 「青白緑《出産の殻》」 |
一際目を引くのは、「緑白/青白ビートダウン」の多さでしょう。これはMOの世界と全く同じ現象で、これらのデッキが《ダングローブの長老》入りの「緑単タッチ赤」に強いことを受けての隆盛でしょう。
一口に「緑白/青白ビートダウン」と言っても、様々なバージョンがあるのですが、「緑白」はJuzaの使ったバージョンをメインに、3名残った「青白」バージョンはそれぞれの特徴的な部分について解説していきたいと思います。
トップを飾るのは、見事に優勝を果たしたこのデッキ。
「緑白ビートダウン」
8 《森》 4 《平地》 4 《ガヴォニーの居住区》 4 《剃刀境の茂み》 4 《陽花弁の木立ち》 -土地(24)- 4 《極楽鳥》 4 《アヴァシンの巡礼者》 4 《ミラディンの十字軍》 4 《刃砦の英雄》 2 《刃の接合者》 2 《霊誉の僧兵》 2 《月皇ミケウス》 -クリーチャー(22)- |
2 《迫撃鞘》 3 《忘却の輪》 3 《踏み荒らし》 3 《情け知らずのガラク》 3 《エルズペス・ティレル》 -呪文(14)- |
1 《悪鬼の狩人》 2 《最後のトロール、スラーン》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 2 《帰化》 2 《天界の粛清》 1 《忘却の輪》 2 《饗宴と飢餓の剣》 2 《戦争と平和の剣》 1 《情け知らずのガラク》 1 《原初の狩人、ガラク》 -サイドボード(15)- |
グランプリ・ブリスベン準優勝のリストを、グランプリ・広島に向けてナック(中村 修平)さんと共に調整したというJuzaのマスターピース。
第75回の解説でも少し書いた通り、メタゲームの変化を受けて《ミラディンの十字軍》をメインから4枚採用しています。
「緑白/青白」のどちらにも共通するのが《ミラディンの十字軍》の存在であり、このカードこそが、今回のグランプリで白いビートダウンが結果を残せた最大の理由と言っても差し支えありません。
優勝したJuzaと、準優勝の白木さんが採用している《刃砦の英雄》も現代の白いデッキのトレンドです。
両者ともに単体でゲームを決めるだけの力がありますし、《ミラディンの十字軍》には「プロテクション(黒)(緑)」、《刃砦の英雄》には「タフネス4」という除去耐性があるのも素晴らしいですね。
特に《ミラディンの十字軍》の強さには目をみはるものがあり、単体の性能もさることながら、サイド後の《饗宴と飢餓の剣》、《戦争と平和の剣》との組み合わせも特筆に値します。
メタゲーム上トップに位置する「緑単タッチ赤」、「赤緑《ケッシグの狼の地》」、「青黒コントロール」など、多くのデッキがこのカードを苦手としており、《ミラディンの十字軍》たった1枚だけでゲームが終わってしまうことも決して珍しくありません。
冒頭にも書いたように、僕もグランプリ前々日までは《ダングローブの長老》の入った「緑単タッチ赤」で出ようと思っていたのですが、それを諦めたのはMOであまりにも《ミラディンの十字軍》入りのデッキに勝てなかったからに他なりません。
もしも《ダングローブの長老》入りで出るにしろ、少なくともメインから除去が入ってないリストは使うのをやめようと思えるくらいに、このカードの強さは際立っています。
現環境で主に使われている除去呪文は《内にいる獣》、《破滅の刃》、《忘却の輪》の3種類なのですが、この中でこの狂った3マナのクリーチャーに効くのは《忘却の輪》のみ。さらにグランプリ前に最も多いと予想されていた「緑単タッチ赤」に対してはほぼブロックもされないということで、このカードの活躍はグランプリ前から約束されていたようなものです。
唯一白いデッキ対決時のみ大きな活躍はできないかもしれませんが、それもあくまでメインボードの話で、サイド後は《戦争と平和の剣》がこのクリーチャーを手の付けられないカードへと変えてくれます。
すでにみなさんご存じかと思われますが、この2枚の組み合わせまさしく一撃必殺と形容するのが相応しいほどに強力です。これほどまでに白いビートダウンデッキのミラーマッチが増えてきた現状であれば、《戦争と平和の剣》のメインボード採用を検討してもいいでしょう。
《刃砦の英雄》は《ミラディンの十字軍》とは少し違い、メタゲームや、他のカードとの組み合わせ云々ではなく、単体での強さが際立ちます。
「アタックしてもいいですか?」
もしもこの問いに「はい、どうぞ。」と答えるしかないのならば、ゲーム終了の合図です。このクリーチャーに2回も殴られて生き残っていられることはなかなかないでしょうし、とにかくアタックされるまでに対処することが必須となります。
《ミラディンの十字軍》とは違い、《内にいる獣》でも《破滅の刃》でもなんでも死んでしまいますが、その代わりに生き残ってしまった場合のリターンがあまりにも大きいので、4マナを支払うだけの価値は十二分にあります。
このカードは比較的真っ直ぐというか分かりやすいカードなので、解説はこれくらいにしておいて、知っておくと得をしそうなルール情報をひとつだけ。
《刃砦の英雄》と、下で紹介する「青白ビートダウン」に採用されている《聖トラフトの霊》の両者に共通するのは「攻撃すると、攻撃している状態のトークンを生み出せる」というもの。
これは普段であればあまり意味を持たず、ただトークンを出して相手を撲殺するだけなのですが、対戦相手が《ギデオン・ジュラ》をコントロールしており、なおかつ「+2」能力を起動されている時には特に重宝します。
なぜなら、これらのカードから生みだされるトークンは、《ギデオン・ジュラ》の能力を無視して本体へとアタックできるからです。
《ギデオン・ジュラ》の能力は「攻撃クリーチャーを指定する際」に《ギデオン・ジュラ》への攻撃を強制するものなのですが、出現するトークンは「攻撃クリーチャー指定」されることはないため、攻撃先の指定が可能です。
つまり、あなたはトークンで「本体に攻撃」か、「《ギデオン・ジュラ》に攻撃」か、はたまた「他のプレインズウォーカーに攻撃」かを、トークンを出す際に選ぶことができるのです。
最近は《ギデオン・ジュラ》があまり使われていないので、そこまで役に立つ情報ではないかもしれませんが、そのような状況で、トークンは本体でも《ギデオン・ジュラ》の隣にいるプレインズウォーカーでも狙える、というのは覚えておいて損はないはずです。
少し脱線してしまいましたが、これだけでもいかに《ミラディンの十字軍》と《刃砦の英雄》が強いか分かっていただけたかと思います。
これらを《極楽鳥》と《アヴァシンの巡礼者》で素早く呼び出し、それをさらに《月皇ミケウス》《踏み荒らし》《ガヴォニーの居住区》でバックアップしていけば、対戦相手が白旗を上げるのも時間の問題でしょう。
しかしながら、これだけだと《審判の日》だけで簡単に負けてしまいそうなものですが、それを許さないのが2種類のプレインズウォーカーたち。
《情け知らずのガラク》も《エルズペス・ティレル》も、対コントロール戦で特別強いわけではありませんが、《審判の日》への耐性が付くだけでもこのデッキにとって十分な意味を持ちます。
ここでも《ガヴォニーの居住区》は秀逸で、例え何発《審判の日》を撃たれようとも、プレインズウォーカーと《ガヴォニーの居住区》の組み合わせが揃っていれば、すぐさま態勢を立て直すことができますからね。
そもそも《ミラディンの十字軍》や《刃砦の英雄》のように、カウンターや除去できなかった場合にそれだけで負けてしまうカードが多い上に、《情け知らずのガラク》《エルズペス・ティレル》《ガヴォニーの居住区》のような対処法の限られたカードまで使ってくるとあらば、今回のグランプリでコントロールデッキがベスト8に1つしか残れなかった理由も見えてきます。
サイド後に《最後のトロール、スラーン》や《饗宴と飢餓の剣》などが加われば、コントロールデッキ耐性はさらに跳ね上がることになりますし、このデッキの対策の難しさは見た目以上のものがあると言えるでしょう。
「緑白ビートダウン」に対し、《審判の日》が有効なカードなのは紛れもない事実ではありますが、それだけで勝てるほどあまくない相手だという認識を持っておきましょう。
そして《審判の日》に強くするという意味合いでも、現環境において「飛行」クリーチャーが強いという意味合いでも注目なのが森田(雅彦)さんやローリー(藤田 剛史)さんたちが使用した以下のバージョンになります。
「緑白トークンビートダウン」
7 《森》 5 《平地》 4 《剃刀境の茂み》 4 《陽花弁の木立ち》 4 《ガヴォニーの居住区》 -土地(24)- 4 《極楽鳥》 4 《アヴァシンの巡礼者》 2 《調和者隊の聖騎士》 4 《ミラディンの十字軍》 1 《悪鬼の狩人》 4 《刃砦の英雄》 -クリーチャー(19)- |
4 《深夜の出没》 3 《忘却の輪》 3 《迫撃鞘》 3 《饗宴と飢餓の剣》 1 《戦争と平和の剣》 3 《情け知らずのガラク》 -呪文(17)- |
1 《悪鬼の狩人》 2 《最後のトロール、スラーン》 2 《使徒の祝福》 2 《帰化》 2 《四肢切断》 2 《忠実な軍勢の祭殿》 1 《内にいる獣》 1 《忘却の輪》 1 《情け知らずのガラク》 1 《ギデオン・ジュラ》 -サイドボード(15)- |
こちらは3マナ圏に《深夜の出没》を採用し、ミラーマッチや《審判の日》耐性を引き上げたもの。《深夜の出没》のトークンには「飛行」が付いているので、ミラーマッチで膠着しがちな地上戦を無視して、空からの攻め手を確保できる優秀な1枚です。
2マナ圏も、それに合わせて相性の良い《調和者隊の聖騎士》が選ばれていますね。余談ではありますが、森田さんたちは2マナ圏をどれにするかを前日に相当に悩んでいて、お店で《修道院の若者》や《磁器の軍団兵》をも大量に購入していたとかいないとか。
それ以外にもメインから《饗宴と飢餓の剣》と《戦争と平和の剣》を採用したり、《迫撃鞘》の枚数を多めにしたりと、ミラーマッチと対コントロールを強く意識していたことが伺えます。
《饗宴と飢餓の剣》、《戦争と平和の剣》は多くのマッチアップで有効なので、個人的にはJuzaの《踏み荒らし》よりもこちらの戦略をお勧めしたいです。
他に注目のカードとして、サイドボードの《使徒の祝福》が挙げられます。
これは主に《ミラディンの十字軍》や《饗宴と飢餓の剣》を除去から守る用のカードです。
「緑単タッチ赤」などは、《ミラディンの十字軍》に対しても、《饗宴と飢餓の剣》に対しても、極僅かな対抗策しか持っていないので、1発でも弾いてしまえばゲームの主導権を握り続けることができます。
次はトップ8に最多の3名を送り込んだ「青白ビートダウン」を。
「青白人間ビートダウン」
12 《平地》 1 《島》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(24)- 4 《教区の勇者》 3 《先兵の精鋭》 2 《宿命の旅人》 4 《堂々たる撤廃者》 4 《ミラディンの十字軍》 2 《悪鬼の狩人》 3 《聖トラフトの霊》 4 《刃砦の英雄》 -クリーチャー(26)- |
4 《清浄の名誉》 3 《忘却の輪》 3 《天使の運命》 -呪文(10)- |
4 《レオニンの裁き人》 3 《四肢切断》 3 《機を見た援軍》 3 《忠実な軍勢の祭殿》 2 《殴打頭蓋》 -サイドボード(15)- |
こちらは先週の第76回で紹介したMO界のスーパースター、_Batutinha_さんのリストを少し変更したもののようです。
注目すべき点は、《聖トラフトの霊》の増量と、《幽霊街》を削って《平地》と《島》を増やし、_Batutinha_さんのものよりも安定性を重視していることでしょう。
《聖トラフトの霊》は、高い打点に加え単体除去への耐性はもちろんのこと、グランプリ・広島で最も数の多かった「緑単タッチ赤」が、序盤にブロッカーを用意できない展開が多いデッキだったこともこのカードの増量を後押ししたと考えられます。
仮に相手の戦場にブロッカーがいて殴れなくとも、白木さんのように《天使の運命》を3枚採用していれば隙あらば10点近いダメージを狙えるので、戦場に置いておくだけで大きなプレッシャーになります。
これは《ミラディンの十字軍》+《戦争と平和の剣》のようなもので、今後も注目の白いデッキのひとつの勝ちパターンと言えますね。
マナベースの安定については、グランプリのように長丁場になればなるほど重要になってくる要素で、白木さんが不戦勝なしから準優勝まで駆け上がったことと、安定性を追い求めた土地構成は決して無関係ではないはずです。
全体的に非常に綺麗でバランスの良いリストに仕上がっていますが、「緑白/青白ビートダウン」の隆盛を受け、今後はそれ専用のサイドボードを用意してもいいでしょう。具体的には《戦争と平和の剣》が一番でしょうか。
他にも、意外性の高い《審判の日》が良さそうに思えます。普通に撃っても強いですが、特に相手が《悪鬼の狩人》でこちらのクリーチャーを隠している場合にはすぐにゲームが終わります。
それと準々決勝の観戦記事でも書いた通り、白木さんは本来はかなりのコントロールフリークのようで、本音としては今回もコントロールデッキを持ち込みたかったそうです。しかし現環境でコントロールデッキは厳しいとの判断から、使用するデッキをこの「青白ビートダウン」に切り替えたとのこと。
実は、僕はグランプリの前の週に、使える時間をフルに使って、MOで「青白コントロール」を調整していました。これは個人的な好みの問題で、この環境のコントロールデッキはきついと分かってはいながらも、できることならグランプリ本戦でコントロールデッキを使いたいと思い、グランプリ前の貴重な最後の週末をその調整に充てたというわけです。
しかしながら、その調整の結果はと言いますと、月曜日に挫折してしまうという最悪のものでした。
そのせいで他のデッキに使える時間がかなり限られてしまい、最終的に本戦で使った「赤緑《ケッシグの狼の地》」も、満足のいくデッキに仕上げることができなかったと感じています。今年の大会はほぼ全てこの繰り返しで、今回の調整過程で最も反省すべき点だったと思います。
今後は白木さんを見習い、無理な時は無理だと早めの段階から割り切れるようにしないといけませんね。
「青白人間ビートダウン」
9 《平地》 3 《島》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(23)- 4 《教区の勇者》 4 《ギデオンの法の番人》 4 《堂々たる撤廃者》 4 《聖トラフトの霊》 4 《ミラディンの十字軍》 2 《悪鬼の狩人》 -クリーチャー(22)- |
4 《清浄の名誉》 4 《天使の運命》 4 《マナ漏出》 3 《饗宴と飢餓の剣》 -呪文(15)- |
2 《悪鬼の狩人》 2 《天界の粛清》 1 《神への捧げ物》 3 《機を見た援軍》 2 《忠実な軍勢の祭殿》 4 《戦争と平和の剣》 1 《ムーアランドの憑依地》 -サイドボード(15)- |
佐藤さんのリストは、軽めに寄せた構成が特徴的な「クロックパーミッション」型。
特に印象的なのが4枚ずつ採用された《聖トラフトの霊》と《天使の運命》で、このコンボがいかに馬鹿げた強さだったかと言うのは、準々決勝のカバレージを読んでいただければ理解していただけるはずです。
さらに4枚の《聖トラフトの霊》を活かすべく、そして「緑単タッチ赤」を倒すべく、メインから3枚投入された《饗宴と飢餓の剣》も佐藤さんのリストの特徴です。それに加え、要所を弾く《マナ漏出》までもが採用されているので、このデッキ相手に「緑単タッチ赤」や「赤緑《ケッシグの狼の地》」で勝つのは相当に難しいでしょう。
しかし4枚ずつ投入された《聖トラフトの霊》と《マナ漏出》によって、《島》を多めに入れなければならなくなっており、僅かながらですがマナベースに不安を抱えることになっています。
それと、装備品や《天使の運命》が氾濫するメタゲームを完全に読み切った《ギデオンの法の番人》は、今回のグランプリでは良い働きをしてくれたはずですが、今後ミラーマッチが多発するようであれば、《ギデオンの法の番人》と《マナ漏出》の両方を入れる構築は多少のリスクが伴います。なぜならば、対戦相手に《堂々たる撤廃者》を出されてしまった場合に、無駄カードがかなり増えてしまいますからね。
とは言え、気になったのはその2点くらいですし、サイドボードの《戦争と平和の剣》4枚を含め、すごく綺麗で素晴らしいリストに仕上がっていると思います。このリストは今回紹介する3つの中で、最も「緑単タッチ赤」系のデッキに強い構成ですね。
10 《平地》 1 《島》 4 《ムーアランドの憑依地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 -土地(23)- 4 《ギデオンの法の番人》 4 《教区の勇者》 4 《宿命の旅人》 4 《堂々たる撤廃者》 4 《ミラディンの十字軍》 -クリーチャー(20)- |
4 《清浄の名誉》 3 《マナ漏出》 2 《忘却の輪》 4 《深夜の出没》 2 《饗宴と飢餓の剣》 2 《戦争と平和の剣》 -呪文(17)- |
2 《悪鬼の狩人》 2 《瞬間凍結》 1 《マナ漏出》 2 《天界の粛清》 4 《機を見た援軍》 2 《忘却の輪》 2 《戦争と平和の剣》 -サイドボード(15)- |
最後を飾るのは鬼塚さんのリスト。こちらも佐藤さんと同じく、《刃砦の英雄》を抜いて軽めに作られているのが目を引きます。
試合の観戦記事を書かせていただいた都合上、鬼塚さんには少しだけ話を伺うことができたのですが、鬼塚さんは「青白人間ビートダウン」というよりも、どうやら現環境の「飛行」クリーチャーの強さに焦点を当てて、デッキ構築をスタートしたようです。端的に言えば、《宿命の旅人》や《深夜の出没》の採用ですね。
もちろん、《刃砦の英雄》も調整過程で試したようですが、デッキ全体として単体除去への耐性を意識しているので、4マナで除去耐性がないのはデッキに合わないとの判断から、最終的には不採用となったそうです。
鬼塚さんのリストは、《深夜の出没》を筆頭に、《マナ漏出》《饗宴と飢餓の剣》《戦争と平和の剣》など、対コントロールに強くできているという印象を受けます。
ただし、今後はミラーマッチが今以上に増えるので、リストに変更を加えるとすれば、もう少しミラーマッチ用のカードを採用したいですね。この形なら《審判の日》がしっくりくるでしょう。
デッキの解説はここまでになるのですが、最後に、「緑白」と「青白」の簡単な比較と今後について。
~「緑白」と「青白」の短所と長所、両者の相違点~
まずは両者の長所として、単純なデッキパワーが高く、「緑単タッチ赤」「赤緑《ケッシグの狼の地》」を筆頭とする、緑メインのデッキ全般に強いことが挙げられます。
これは《ミラディンの十字軍》を採用しているだけで自然とそうなりますし、《刃砦の英雄》や《饗宴と飢餓の剣》を採用すれば、それをさらに高めることができます。
そしてビートダウンデッキを選ぶ大きなメリットとして、対戦相手のデッキを知らなくても、キープ基準がぶれない、というものがあります。
最初に紹介した僕のリストと比べていただけると一目瞭然ですが、所謂「受け」を主体とするデッキは、いくつかの土地と《金屑の嵐》が初手にあればキープするのが当然ですが、これは相手のデッキがコントロールだった場合に大きなディスアドバンテージになってしまいますし、逆もまたしかりです。
しかしビートダウンデッキは相手のデッキが何であれ、土地がなかったりだとか、極端に手札が重くない限りはだいたい初手をキープできます。
もちろん、勝つためにはシビアなマリガンも必要になってきますが、こと相手のデッキを知らない1戦目においては、ビートダウンデッキと他のデッキの初手のキープ基準、そしてそれがゲームに与える影響を最も受けにくいデッキは、ビートダウンに他ならないでしょう。
今のところ、この2つのデッキにこれと言った弱点はないように見えますが、グランプリの結果を受け、今後はこのデッキがメタられる側にまわることが懸念されます。
《審判の日》1枚で負けてしまうようなデッキではないですが、今以上に除去が増えたりだとか、《戦争と平和の剣》の増加は容易に想像ができます。
「緑白」と「青白」の相違点もこれに関係があり、この2つが直接対決をすると、マナクリーチャーや《情け知らずのガラク》、それに《ガヴォニーの居住区》擁する「緑白」側が少し有利なので、今後は「緑白」バージョンがもっともっと活躍するかもしれません。
そうは言っても、「青白」側も《戦争と平和の剣》や《審判の日》を増量することで互角に渡り合えるので、デッキを作る段階で幾分か相性を変えることができるでしょう。
先週までは、どのデッキも「緑単タッチ赤」を倒すために構築を進めていましたが、今度は「緑白/青白ビートダウン」が目の敵にされる番です。
他のデッキへのガードを下げないようにしつつ、ミラーマッチもしっかりと対策しなければならない。自身があまりにも勝ちすぎたために、今度は自身がメタられる。これぞメタゲームの食物連鎖と言った感じですが、このデッキのデッキパワーは間違いなく本物なので、世界選手権2011やThe Finals2011でも変わらぬ活躍を見せてくれるでしょう。
さて、今週はここまでになります。来週は「緑白/青白ビートダウン」以外のデッキに加え、トップ8以外のデッキも特集しようと思っているのでお楽しみに!
それでは、また来週ー!
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