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戦略記事

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

第75回:グランプリ・ブリスベン トップ8デッキ特集

読み物

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

2011.10.20

第75回:グランプリ・ブリスベン トップ8デッキ特集


 こんにちはー。

イニストラード

 先週末、Magic Onlineの世界でも遂にイニストラードがリリースされました。僕はついつい我慢できずに色んなカードに手を出してしまい、夏休みの間にせっせと貯めたチケットが消滅してしまったのですが、読者のみなさんの中にも、プレリリースイベントに参加したり、発売直後のカードを買った方も多いのではないでしょうか?

 しかし、そのくらいに新セットは僕らの心を掴んで離さないわけです!
 《瞬唱の魔道士》だけ買っていなかった自分を恨みたくなりますが、そんな僕の台所事情は置いておくとして、そろそろ本題であるグランプリ・ブリスベンの結果をチェックしてまいりましょう。今までは実戦経験の少なさゆえに、細かいところまで解説することができませんでしたが、今週から徐々に改善されていくと思います。

 それでは、まずはトップ8のデッキ分布から。


グランプリ・ブリスベン結果~トップ8分布

(リンク先は英語カバレージです)

優勝 「青黒コントロール」
準優勝 「緑白トークンビートダウン」
3位 「緑単タッチ《ケッシグの狼の地》」
4位 「赤緑《ケッシグの狼の地》」
5位 「赤緑《ケッシグの狼の地》」
6位 「赤緑《ケッシグの狼の地》」
7位 「青黒コントロール」
8位 「青黒テゼレイター」


 先週、「Tier1、2になりそうなデッキは概ね紹介したはずです」と書いたのですが、残念ながら今まで紹介していなかったデッキが勝つ結果となりました。
 優勝はカウンターの大量に入った「青黒コントロール」がさらっていき、更には次世代の「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」との呼び声も高い「赤緑《ケッシグの狼の地》」がトップ8に3名を送り込む大車輪の活躍を見せています。

 今週は先週までにお伝えできなかった、そして現在のMO界で2強状態となっている「青黒コントロール」と、「赤緑《ケッシグの狼の地》」を重点的に解説していきたいと思います。

 最初は「青黒コントロール」メインで書こうと思っていたのですが、《瞬唱の魔道士》が揃わなかったことと、KJが「青黒コントロール」を紹介してくれていたので、僕は「赤緑《ケッシグの狼の地》」を深く考察していきます。

 まず初めにご紹介するのは、カウンター呪文を愛するみなさんにお勧めの「青黒コントロール」です。


「青黒コントロール」

Jeremy Neeman
グランプリ・ブリスベン2011 優勝[MO] [ARENA]
9 《
6 《
4 《闇滑りの岸
4 《水没した地下墓地
2 《ネファリアの溺墓
2 《幽霊街

-土地(27)-

4 《瞬唱の魔道士
3 《聖別されたスフィンクス
1 《墓所のタイタン
1 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(9)-
2 《肉体のねじ切り
4 《マナ漏出
4 《破滅の刃
4 《熟慮
1 《否認
1 《ゲスの評決
4 《雲散霧消
3 《禁忌の錬金術
1 《黒の太陽の頂点

-呪文(24)-
3 《呪文滑り
3 《幻影の像
1 《肉体のねじ切り
1 《虚無の呪文爆弾
1 《否認
3 《漸増爆弾
1 《黒の太陽の頂点
2 《ネファリアの溺墓

-サイドボード(15)-
Daniel Unwin
グランプリ・ブリスベン2011 7位[MO] [ARENA]
9 《
6 《
4 《闇滑りの岸
4 《水没した地下墓地
2 《ネファリアの溺墓
2 《幽霊街

-土地(27)-

3 《瞬唱の魔道士
3 《聖別されたスフィンクス
2 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(8)-
2 《肉体のねじ切り
4 《破滅の刃
4 《マナ漏出
4 《熟慮
1 《否認
2 《漸増爆弾
4 《雲散霧消
3 《禁忌の錬金術
1 《黒の太陽の頂点

-呪文(25)-
3 《呪文滑り
3 《幻影の像
1 《肉体のねじ切り
1 《否認
1 《漸増爆弾
1 《決断の手綱
1 《黒の太陽の頂点
2 《殴打頭蓋
1 《記憶の熟達者、ジェイス
1 《ネファリアの溺墓

-サイドボード(15)-

 このデッキ最大の特徴は、メインから9枚も搭載されたカウンター呪文の多さでしょう。そう、このデッキは長らくの間見かけることのなかった、古き良き「フルパーミッション」スタイルのデッキなんです。9枚、と聞くと少し物足りないかもしれませんが、期待の新星である《瞬唱の魔道士》まで合わせると13枚ものカウンター呪文が入っていることになります。

 ローテーション前までは、「Caw-Blade」などがこの手のデッキを環境から締め出していたのですが、憎き《戦隊の鷹》は最早スタンダードに存在しません。それだけではなく、グランプリ前に多いと予想されていた「赤緑《ケッシグの狼の地》」と「太陽拳」に対し、カウンター呪文が最高の解答になることも、このデッキが優勝した原動力のひとつでしょう。

 「赤緑《ケッシグの狼の地》」も「太陽拳」も、1枚1枚のスペルが重い=致命的なスペルは1ターンに1回唱えるのが限度なので、パーミッションデッキに取って比較的相性の良い部類のデッキに入ります。特にカウンター呪文の多いこのリストは、そのふたつのデッキに対して圧倒的に強いです。今でこそリストを見て対抗策を練ることができますが、グランプリ当日にこのリストを知らずに当たった場合は悪夢そのもの。デッキの大半がインスタント呪文で構成されたこのデッキは、青いデッキ特有のいやらしさと魅力を併せ持っているので、どうすればいいか分からずに、そのまま負けていってしまったプレイヤーも多かったのではないかと思います。

 基本的な動きは昔の青いデッキそのもので、大量のカウンターと除去で中盤までを凌ぎ、相手が動かなかったターンには《熟慮》、《禁忌の錬金術》で手札を補充していきます。

 そして、相手の動きが止まる、またはカウンターを構えながらキャストできるマナが揃ったら《聖別されたスフィンクス》と《ワームとぐろエンジン》の出番というわけですね。

 《瞬唱の魔道士》はカウンター、除去のどちらにもなれる上に「瞬速」持ちと、このデッキにうってつけの1枚で、クロックとして活躍する場面も多く使い勝手が非常にいいです。

 「パーミッション」スタイルは相手に合わせた動きをするので、土地が止まらないようにたっぷりと27枚。

 しかしながら、普通の土地を27枚も入れてしまってはマナフラッドに陥るのが目に見えているので、《墨蛾の生息地》や《ケッシグの狼の地》を対処できる《幽霊街》と、ドロー操作兼勝ち手段にもなる《ネファリアの溺墓》を2枚ずつ採用しています。

 特にサイドボードに3~4枚目が用意された《ネファリアの溺墓》には今のうちから注目しておきたいですね。コントロール対決では土地でありながら勝ち手段にもなるので、今後は《幽霊街》を増量したりして対策する必要があるかもしれません。
 あまり序盤から使ってしまうと、相手の墓地に「フラッシュバック」付きのカードが落ちてしまったり、《瞬唱の魔道士》に餌を与える結果になりかねないので、対戦相手に使い始めるタイミングは慎重に見計らうように心掛けましょう。


 メインボードもサイドボードも用途の分かりやすいカードが多いですが、サイドボードの《幻影の像》と《呪文滑り》は少しだけ解説を。

 《幻影の像》は、《原始のタイタン》や《太陽のタイタン》など、デカブツの入ったデッキ全般に効きますが、特に効果的な相手は《最後のトロール、スラーン》を入れてくる緑系のデッキでしょう。
 一応《ゲスの評決》や《黒の太陽の頂点》などはありますが、これだけだと対処法があまりにも少ないので、《幻影の像》のように他のデッキにも効くカードで対策できるのはありがたいですね。

 《呪文滑り》は「赤単」の《燃え上がる憤怒の祭殿》対策として役立ちます。《槌のコス》なんかはカウンターで対処できますが、2マナと軽い《燃え上がる憤怒の祭殿》はそうはいきません。そのため、《呪文滑り》か《漸増爆弾》での対応は必須項目となるでしょう。


「青黒テゼレイター」

八十岡 翔太
グランプリ・ブリスベン2011 8位[MO] [ARENA]
8 《
5 《
4 《闇滑りの岸
4 《水没した地下墓地
4 《墨蛾の生息地

-土地(25)-

2 《呪文滑り
3 《真面目な身代わり
2 《墓所のタイタン
1 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(8)-
3 《蔑み
2 《肉体のねじ切り
2 《虚無の呪文爆弾
3 《破滅の刃
3 《マナ漏出
3 《漸増爆弾
2 《禁忌の錬金術
2 《転倒の磁石
1 《殴打頭蓋
2 《ヴェールのリリアナ
4 《ボーラスの工作員、テゼレット

-呪文(27)-
2 《蒼穹の魔道士
1 《聖別されたスフィンクス
3 《困窮
1 《虚無の呪文爆弾
3 《瞬間凍結
1 《漸増爆弾
3 《死の支配の呪い
1 《ヴェールのリリアナ

-サイドボード(15)-

 「なぜこのデッキを使ったのですか?」との問いに、「《ボーラスの工作員、テゼレット》が好きだから」と答えたヤソ(八十岡 翔太)さんの最新作は言うまでもなく「青黒テゼレイター」です。
 失礼を承知で申し上げますが、ヤソさんのデッキとは思えない分かりやすい構成になっています。

 とは言え、個々の細かいカード選択はさすがの一言。《破滅の刃》の隆盛を見越した《墓所のタイタン》の採用だったり、「青黒コントロール」や「太陽拳」に効果的な《虚無の呪文爆弾》や、「緑単タッチ赤」と「赤緑《ケッシグの狼の地》」の両者に強い《蔑み》と、メタゲームを熟知したカード選択が光ります。

 先週はあまりはっきりとお伝えできなかったのですが、《虚無の呪文爆弾》は、「フラッシュバック」の飛び乱れる対コントロール戦において、非常に重要な役割を果たします。
 特に《瞬唱の魔道士》《太陽のタイタン》《禁忌の錬金術》《堀葬の儀式》を擁する「太陽拳」には効果絶大で、戦場に置いておくだけで相手の動きを抑制することができます。
 《虚無の呪文爆弾》がこちらの戦場にあると、相手は《禁忌の錬金術》を撃ちづらくなりますし、後半まで引っ張れば、相手のカードの多くを無駄牌にできるので、とても1マナとは思えない活躍を見せてくれます。
 コントロール対決では、「土地の並べ合い」も重要なファクターなので、土地が詰まりそうになったら、最悪すぐにドローできるのも高評価の要因ですね。

 上で紹介した「青黒コントロール」との比較としては、《ボーラスの工作員、テゼレット》がコントロール対決で強いことが挙げられます。
 《墓所のタイタン》や《聖別されたスフィンクス》などと比べると、2マナもコストが軽いので、これだけでもコントロール対決では大きな差となります。
 《ヴェールのリリアナ》や《ボーラスの工作員、テゼレット》と、軽いプレインズウォーカーが多いので、能動的に動きやすいのも「青黒コントロール」との違いでしょうか。《蔑み》で相手の手札を見ることも可能なので、相手の展開が芳しくないようであれば、《ボーラスの工作員、テゼレット》の野蛮なまでの攻撃力を活かし、そのまま押しきることが可能となっています。

 このカラーリングで唯一気になるのが、「赤単」の《燃え上がる憤怒の祭殿》に触りづらいところですが、メインから《呪文滑り》2枚、《漸増爆弾》3枚ときっちりと対応できるようにしていますね。

 それとここでも使われている《肉体のねじ切り》は、マナクリーチャーを筆頭に、《流城の貴族》から《墨蛾の生息地》まで除去できる優良カード。今後はより一層の活躍が期待できるでしょう。

 最後に、「青黒テゼレイター」と言えば、環境に溢れかえる《古えの遺恨》の存在が気になるところでしょうが、いつもお伝えしているように、ヤソさんのデッキはサイド後にアーティファクトをギリギリまで削れるように作られているので、相手が《古えの遺恨》を入れてくるのを逆手に取って、それを無駄牌に変えることができます。
 サイドボードにアーティファクト破壊が大量に入っているのは、最近のトレンドと言えますが、そんな時はヤソさんのように、サイド後に普通の「青黒コントロール」にシフトする手法がいいでしょう。


「緑白トークンビートダウン」

Tim Fondum
グランプリ・ブリスベン2011 準優勝[MO] [ARENA]
8 《
4 《平地
4 《剃刀境の茂み
4 《陽花弁の木立ち
4 《ガヴォニーの居住区

-土地(24)-

4 《極楽鳥
3 《アヴァシンの巡礼者
2 《ヴィリジアンの密使
4 《刃の接合者
4 《刃砦の英雄
2 《霊誉の僧兵
1 《ワームとぐろエンジン
2 《月皇ミケウス

-クリーチャー(22)-
4 《忘却の輪
2 《踏み荒らし
2 《迫撃鞘
3 《エルズペス・ティレル
3 《情け知らずのガラク

-呪文(14)-
3 《最後のトロール、スラーン
1 《大修道士、エリシュ・ノーン
2 《外科的摘出
3 《帰化
1 《迫撃鞘
2 《戦争と平和の剣
1 《饗宴と飢餓の剣
1 《原初の狩人、ガラク
1 《墨蛾の生息地

-サイドボード(15)-

 第73回の連載で紹介した、「緑白ビートダウン」の別バージョンがこちらになります。以前紹介したものとは違い、Timさんのリストはトークンを出すカードが多く、数で押すタイプに仕上がっていますね。

 メインボードには2種類のプレインズウォーカーが採用されていますが、どちらもただトークンを出すだけにとどまらず、《情け知らずのガラク》は貴重な除去として、《エルズペス・ティレル》は対「赤単」などで重宝するライフゲインとしての役割をはたしてくれます。

 さらに、これらと《迫撃鞘》の相性の良さにも要注目です。特に《情け知らずのガラク》は、《ヴェールの呪いのガラク》に変身すると毎ターン「接死」持ちのクリーチャーが出せるので、クリーチャーデッキ相手にはこのコンボだけで勝ててしまうこともあるでしょう。

 いつの時代も「緑白」というカラーリングは全体除去に弱いものですが、プレインズウォーカーを多用すると、全体除去にも強くなるという付加価値があります。安定して勝つためには、《審判の日》や《黒の太陽の頂点》対策は必須になると思うので、そんな時はTimさんのようにプレインズウォーカーに頼るのもひとつの手ですね。


 少し脱線してしまいましたが、トークンをバックアップする手段は《迫撃鞘》だけではありません。

 トークンを出せば出すほど大きくなる《霊誉の僧兵》、トークン戦略を確立させる原動力となった《月皇ミケウス》と《ガヴォニーの居住区》、そして古来より伝わる伝家の宝刀《踏み荒らし》と、トークンと相性の良いカードがこれでもかというくらい詰め込まれたデッキになっていますね。

 他に気になる点として、《ヴィリジアンの密使》や、《ミラディンの十字軍》よりも優先されて使用されている《刃の接合者》など、赤いデッキを意識したクリーチャー選択が目を引きます。しかし「青黒コントロール」と「緑単タッチ赤」、「赤緑《ケッシグの狼の地》」が多い現状であれば、《刃の接合者》は《ミラディンの十字軍》に入れ替えてもいいでしょう。「青黒コントロール」と「緑単」系統のデッキに対して、2ターン目の《ミラディンの十字軍》は十分な決定打になりますからね。


「緑単タッチ《ケッシグの狼の地》」

Andreas Pranoto
グランプリ・ブリスベン2011 3位[MO] [ARENA]
18 《
1 《
1 《根縛りの岩山
2 《ケッシグの狼の地
4 《墨蛾の生息地

-土地(26)-

3 《極楽鳥
2 《ラノワールのエルフ
1 《ダングローブの長老
2 《真面目な身代わり
1 《最後のトロール、スラーン
1 《酸のスライム
2 《原始のタイタン
3 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(15)-
4 《不屈の自然
4 《内にいる獣
4 《緑の太陽の頂点
4 《原初の狩人、ガラク
2 《情け知らずのガラク
1 《解放された者、カーン

-呪文(19)-
1 《ヴィリジアンの堕落者
1 《解放の樹
2 《最後のトロール、スラーン
1 《酸のスライム
2 《古えの遺恨
2 《漸増爆弾
1 《茨潰し
1 《冒涜の行動
2 《饗宴と飢餓の剣
1 《殴打頭蓋
1 《情け知らずのガラク

-サイドボード(15)-

 こちらは第73回の連載で紹介した「緑単タッチ赤」デッキに比較的近い形ですね。このデッキの売りは、《ダングローブの長老》の存在に加え、《情け知らずのガラク》、《原初の狩人、ガラク》という2種類のガラクの共存にあるでしょう。
 やはりマナクリーチャーを筆頭とした、小型クリーチャーの多い現在のメタゲームだと、《情け知らずのガラク》は非常に強力ですし、「プレインズウォーカー・ガラク」が多い現在のメタゲームであれば、ガラクをめぐるミラーマッチにおいて、ゲームの主導権を握る役割をも果たしてくれます。
 かつて《精神を刻む者、ジェイス》がスタンダードを席巻していた頃に、それに対抗するために《ジェイス・ベレレン》までもが3~4枚採用されたのと同じく、《情け知らずのガラク》は《原初の狩人、ガラク》対策としても優秀というわけですね。

 以前紹介した時は、このデッキの顔とお伝えした《ダングローブの長老》が1枚しか入っていないことに違和感を覚えた方も多いでしょうが、そこにはひとつの理由があります。
 それこそが、今回トップ8に3名ものプレイヤーを送り込んだ「赤緑《ケッシグの狼の地》」の存在です。


「赤緑《ケッシグの狼の地》」

Luke Mulcahy
グランプリ・ブリスベン2011 4位[MO] [ARENA]
7 《
5 《
4 《銅線の地溝
4 《根縛りの岩山
2 《ケッシグの狼の地
4 《墨蛾の生息地

-土地(26)-

1 《極楽鳥
4 《ヴィリジアンの密使
4 《真面目な身代わり
1 《最後のトロール、スラーン
3 《酸のスライム
2 《原始のタイタン
4 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(19)-
4 《不屈の自然
3 《金屑の嵐
4 《緑の太陽の頂点
1 《小悪魔の遊び
1 《迫撃鞘
1 《殴打頭蓋
1 《情け知らずのガラク

-呪文(15)-
1 《エズーリの射手
1 《呪文滑り
1 《ヴィリジアンの堕落者
2 《最後のトロール、スラーン
1 《酸のスライム
1 《隠れしウラブラスク
2 《古えの遺恨
1 《金屑の嵐
1 《魔女封じの宝珠
2 《情け知らずのガラク
2 《解放された者、カーン

-サイドボード(15)-
Hao-Shan Huang
グランプリ・ブリスベン2011 5位[MO] [ARENA]
8 《
3 《
4 《銅線の地溝
4 《根縛りの岩山
2 《ケッシグの狼の地
4 《墨蛾の生息地
1 《幽霊街

-土地(26)-

1 《極楽鳥
4 《ヴィリジアンの密使
2 《真面目な身代わり
1 《最後のトロール、スラーン
1 《酸のスライム
4 《原始のタイタン
2 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(15)-
4 《不屈の自然
3 《金屑の嵐
4 《内にいる獣
4 《緑の太陽の頂点
3 《原初の狩人、ガラク
1 《情け知らずのガラク

-呪文(19)-
1 《ヴィリジアンの堕落者
1 《解放の樹
2 《最後のトロール、スラーン
1 《ワームとぐろエンジン
2 《外科的摘出
2 《感電破
2 《古えの遺恨
1 《帰化
1 《金屑の嵐
1 《情け知らずのガラク
1 《幽霊街

-サイドボード(15)-
Jacky Zhang
グランプリ・ブリスベン2011 6位[MO] [ARENA]
8 《
2 《
4 《銅線の地溝
4 《根縛りの岩山
2 《幽霊街
2 《ケッシグの狼の地
4 《墨蛾の生息地

-土地(26)-

1 《極楽鳥
4 《ヴィリジアンの密使
3 《真面目な身代わり
1 《酸のスライム
4 《原始のタイタン
3 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(16)-
4 《不屈の自然
3 《金屑の嵐
3 《内にいる獣
4 《緑の太陽の頂点
4 《原初の狩人、ガラク

-呪文(18)-
1 《ヴィリジアンの堕落者
1 《解放の樹
2 《最後のトロール、スラーン
2 《古えの遺恨
1 《金屑の嵐
3 《記憶殺し
2 《饗宴と飢餓の剣
1 《殴打頭蓋
1 《解放された者、カーン
1 《

-サイドボード(15)-

 「Starcitygames オープントーナメント・ナッシュビル」で彗星のごとく現れ、瞬く間に勢力を伸ばしてきたのが、「赤緑《ケッシグの狼の地》」デッキです。

 日本で《ダングローブの長老》を軸にした「緑単タッチ赤」が研究されている間、海外では《原始のタイタン》から《墨蛾の生息地》と《ケッシグの狼の地》を導くアプローチが研究されていました。
 少し大雑把なまとめ方になってはしまいますが、《ダングローブの長老》の入った形を日本式、《ダングローブの長老》の入っていない形を海外式として比較してみましょう。

 日本式の顔である《ダングローブの長老》が強いという事実は、今まで何度かお伝えしてきましたし、PWCや日本の大会結果を見てもらえれば理解していただけるかと思います。しかし《ダングローブの長老》が真価を発揮するには、デッキ内にそれ相当数の《》を入れる必要性が出てきます。

 これに待ったをかけたのが、海外式の象徴である《墨蛾の生息地》ということになります。これは赤を足す理由である《ケッシグの狼の地》を最大限に有効活用できる方法で、《墨蛾の生息地》と《ケッシグの狼の地》が揃ってしまえば、驚くほどの速さで対戦相手を毒殺することが可能です。

 しかし《墨蛾の生息地》4枚、《ケッシグの狼の地》1枚、《》1枚を入れると、《》の総数が大幅に減ってしまうので、《ダングローブの長老》は平凡なクリーチャーに成り下がってしまいます。つまるところ、4枚ずつの《ダングローブの長老》と《墨蛾の生息地》を共存させるのは難しいという結論を出さざるをえないでしょう。

 海外式は《》を削ってしまったために入らなくなった《ダングローブの長老》の代わりとして、《ワームとぐろエンジン》を採用しています。
 これにより今まで以上に、《ケッシグの狼の地》の魅力を引き出すことが可能です。「接死」持ちのクリーチャーに《ケッシグの狼の地》の能力で「トランプル」を付ければ、ブロッカーには1点だけ割り振ればよくなり、残りのダメージは全て本体、またはプレインズウォーカーに割り振ることができます。
 もちろん、《酸のスライム》でもこれは同様なので、これらのクリーチャーのブロックの仕方は注意するようにしましょう。

 どちらにもそれぞれの良さがあるのですが、グランプリ前に一大勢力として認知されていた「太陽拳」が、メインから《審判の日》を3枚以上入れていることが多いという事実は、《墨蛾の生息地》の採用を大きく後押ししたと考えられます。

 なぜならば、日本式と海外式の最も大きな違いは、全体除去への耐性の有無にあると僕は考えているからです。

 海外式にメインから3枚投入された《金屑の嵐》を見てもらえば分かるように、このデッキはマナ加速をクリーチャーに頼っていません。日本式だと《極楽鳥》と《ラノワールのエルフ》が入っているスペースを削り、そこを死ななければ効果がない代わりに除去に強い《ヴィリジアンの密使》に置き換えているので、単純な速度と言う意味では日本式に軍配が上がります。

 しかしながら、海外式はそれによって圧倒的な除去耐性を得ています。日本式が苦手としている《金屑の嵐》も、《審判の日》も、海外式にはほとんど効果がありません。

 デッキ内のクリーチャーを見ていけばそれも当然で、死んだ時にボーナスが得られる《ヴィリジアンの密使》《真面目な身代わり》《ワームとぐろエンジン》に加え、戦場に出た時にはすでに仕事を終えている《原始のタイタン》、そしてそこから導かれる《墨蛾の生息地》。このデッキの全体除去耐性は、現環境でも屈指のものだと分かっていただけるでしょう。

 そして、そういった日本式とのリストの違いにより搭載可能となった、《金屑の嵐》も海外式を選ぶ立派な動機となりえます。先ほど紹介した「白緑ビートダウン」相手なんかはこれだけで大きな有利を得ることができますし、クリーチャーが多めに入った「赤単スライ」相手にも非常に効果的なカードです。《金屑の嵐》を撃つ直前に、相手のパーマネントを《内にいる獣》で3/3にしてついでに除去する小技もありますね。

 それと僕は《内にいる獣》のような、対戦相手に何かをプレゼントするカードは基本的に嫌いなのですが、そんな僕でも4枚搭載をお勧めするくらいに、このデッキの《内にいる獣》は強いです。
 プレインズウォーカーはもちろんのことながら、非常に対処法の限られている《刃砦の英雄》や《聖別されたスフィンクス》を1枚で対処できるのはすばらしいですね。
 他にも《原始のタイタン》がブロックされた時に、ブロッカーにキャストすることで対戦相手に与えられるダメージを増やしたり、自分の《ヴィリジアンの密使》に使用して疑似《不屈の自然》のような使い方もできます。もしも《酸のスライム》を多めに取っているリストであれば、ランデスとして使うのも効果的です。

 逆に日本式は、《ダングローブの長老》の存在そのものが最大の長所となります。《審判の日》の多いメタゲームだと厳しいですが、例えば今回のグランプリで優勝した「青黒コントロール」などは、一度《ダングローブの長老》が着地してしまうと、ほとんど触ることができませんからね。

 まだ少ししか試せていないのですが、日本式と海外式が直接対決をすると、海外式が少し有利かな、という印象を受けました。《原始のタイタン》の枚数差もありますし、なんといっても《ワームとぐろエンジン》の存在が大きすぎます。日本式側は、マナ加速の多さを活かして押しきるのが理想的ですが、海外式側が《金屑の嵐》を引くかどうかが勝負の分かれ目ですね。

 以上のことを踏まえると、今のところ海外式の方がメタゲームに合っている気がします。

 どちらのバージョンを使うにしろ、比較的苦手としている「青黒コントロール」がかなりの勢いで増えてきていますし、他の青いデッキも今回のグランプリの結果を受けカウンターを増量している傾向にあるので、メインから《最後のトロール、スラーン》を入れた方がいいかもしれません。

 ちなみに、「青黒コントロール」のようなカウンターの大量に入ったデッキと対峙した場合は、カウンターをあまり意識せずに、ひたすら呪文を唱え続けるといいと思います。このデッキはマナ加速が少ないので、《マナ漏出》を警戒して3マナ余るまで待つ、という行為をするのが難しいですし、なによりも、対戦相手が《熟慮》や《禁忌の錬金術》で手札を整えてしまう前に、何かひとつ致命的なスペルを通してしまうのが理想ですね。


~対「青黒コントロール」戦での心得~

 ついでになりますが、対「青黒コントロール」で僕が意識していることをいくつか書いておきます。個人的に重要だと思うのは以下の2点です。

 1. とにかく攻め続ける
 2. サイドボーディングは慎重に


1. とにかく攻め続ける

 上で語ったように、「青黒コントロール」相手にはとにかくスペルを連打する方がいいと思います。長期戦になってもこちらは不利になる一方なので、何も考えず何か通ればラッキーくらいの勢いで、ひたすらに呪文を唱えましょう。

 そして対「青黒コントロール」戦で重要になるのが《ヴィリジアンの密使》です。一見非常に地味に見えるカードですが、相手としてはカウンターも除去も使いたくないので意外と厄介な存在なんです。

 こいつが序盤に通れば10点くらいは軽く持っていってくれますし、中盤以降に《ケッシグの狼の地》が加われば、相手も渋々除去を使ってくれます。これは《ヴィリジアンの密使》だけでなく、《墨蛾の生息地》にも同じことが言えます。あまり序盤から殴ると《破滅の刃》の絶好の的ですが、中盤以降で土地が1枚なくなっても問題のない状況なら、ひたすらに殴りましょう。
 そうすることで相手の除去を使わせることができるかもしれませんし、ある程度毒カウンターを貯めておけば、相手がフルタップで《聖別されたスフィンクス》を呼んだターンにそれを《内にいる獣》→返しのターンで《ケッシグの狼の地》セットから毒殺、なんてプランも見えてきますしね。

 前述の通り、こちらの理想としては積極的に呪文を唱え続けることですが、手札に呪文がなくなってしまって、なおかつ土地が5~6枚あるのなら、すぐさま攻めに転じましょう。


2. サイドボーディングは慎重に

 僕は今サイドに3枚ずつの《最後のトロール、スラーン》と《饗宴と飢餓の剣》を入れているのですが、重要なのは「何を抜いてこれらを入れるか」です。

 ビートダウン対策の《金屑の嵐》は当然抜くとして、残りの枠は何を抜くのか。色々と考えを巡らせたのですが、相手のカウンターは並大抵の量ではないので、僕は《不屈の自然》を数枚抜いてデッキの密度を高めるようにしています。
 最初は3ターン目に《最後のトロール、スラーン》を出せるということもあって、ずっと《不屈の自然》を4枚残して《ヴィリジアンの密使》を減らしたりしていたのですが、これだと息切れするのが早い上に、《ゲスの評決》や《ヴェールのリリアナ》で《最後のトロール、スラーン》を失うことも多かったので、考えを改めました。
 せっかく通った《饗宴と飢餓の剣》が置物になることが多かったのも、《不屈の自然》を抜く最後の一押しになりましたね。

 上に書いたように、《ヴィリジアンの密使》は対「青黒コントロール」で重要なカードだと何度かやって気付きましたし、《不屈の自然》を4枚残してしまうと、相手が無視してもいいスペルがあまりにも多いんですよね。

 《内にいる獣》を1枚か2枚くらい減らしてもいいかもしれませんが、このカードしか《聖別されたスフィンクス》に触れるカードがないことと、《聖別されたスフィンクス》は生き残ってしまうと確実に負けるので、4枚残した方がいいと思っています。仮に相手の土地が止まる展開なら、土地に撃ってもいいですしね。


 この2点を意識するようになって、最初に対峙した時よりも幾分かはマシになった気がしました。これが正解かどうかは分かりませんが、みなさんも自分なりのセオリーを見つける手掛かりにでもしていただければ幸いです。



 今週は以上になります。来週はグランプリ・広島直前ということで、MOの結果などを見ながら、メタゲームの予想をしてみたいと思います。新環境になってから今週までの記事と内容が被っていまうかもしれませんが、できるだけ新たな発見をお届けできるようにMOで調整したいですね。

 それでは、また来週ー!

グランプリ・広島2011

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