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ブロック間シナジー――『テーロス』の場合

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ブロック間シナジー――『テーロス』の場合

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2013年10月11日


 プロツアー『テーロス』は間もなく始まり......そしてあなたがこれを読んでいる間に実際に行われているかもしれません(訳注:原文の掲載時点)。もちろん、これはこのゲームで最高のプロたちがトロフィーを掲げる栄誉を賭けて互いに競い合うことを意味していますが、そのためには非常に優れたスタンダードのデッキを要求されます。私はプロたちがどんなデッキを考え出すか、そしてどの『テーロス』のカードがこのプロツアーでデビューするかを見るのを楽しみにしています。

 昨今のデザインとデベロップにおいて最も重要な部分の1つは、ブロックを越えたシナジーを作って互いのセットがスタンダード内でよくプレイされるようにすることですが、それはまたスタンダードのローテーションのときに多くの変化をもたらします。多種多様に変化するメタゲームは健全なメタゲームと言えます。現在のスタンダードには《スフィンクスの啓示》のような強力なカードが引き続き存在していますが、その一方で《太陽の勇者、エルズペス》や《羊毛鬣のライオン》、そして《ナイレアの信奉者》のようなカードが一気に現れました。この2つのセットの混合は(うまくいけば)『ラヴニカへの回帰』ブロック構築とも、『テーロス』ブロック構築とも、そして『テーロス』と『Huey』環境のスタンダードとも違った独特のメタゲームを作り出します。このメタゲームの絶え間ない変化は、プレイヤーをスタンダードへと復帰させ続ける事柄の1つであり、我々が維持したいと思っているものです。しかしながらこれを機能させるには、我々の仕事に構造的な計画が必要になります。

 過去何年かを振り返ってみると、これが破綻しているところはすぐに見つかります。なぜなら、我々は推したいデッキをそのブロックの中のカードだけで強力なものにしようと一生懸命取り組んでいたからで、よって多くの「ブロックの怪物」はそのブロックの外部からのカードを基本的に必要とすることなくスタンダードで競技レベルのデッキになってしまいました。そして、いったんそのブロック内の関連するカードを導入すると、圧倒的な差をつけてスタンダードの最強のデッキになってしまいました。これの最も明白な例は「親和」で、これは隣接する『オンスロート』ブロックや『神河』ブロックのカードをほとんど使いませんでしたが、《電結の荒廃者》が印刷されてからデッキほぼそのものが禁止されるまでの間、常にスタンダード最強のデッキの座に君臨し続けました。このブロックがブロック内で機能するよう作られていたことは間違いありませんが、ローテーションすることでその問題を解決できるものは何もありませんでした。またスケジュールの関係上、我々が本当に強力な対策カードをスタンダードに投入できたのは『神河救済』で、実際に影響を与えるには余りにも遅すぎました。

 もう1つのもっと分かりやすい例は「フェアリー」で、これは《苦花》が印刷されて以降、1強でなかったとしてもスタンダード最強のデッキの1つであり続けました。親和とはある程度対照的に、このデッキは隣接するセットからカードを採用しましたが、デッキの核となるものは同じブロックの中に存在しました――《苦花》、《呪文づまりのスプライト》、《霧縛りの徒党》、《変わり谷》、そして《謎めいた命令》です。あなたは《滅び》と《祖先の幻視》、または《苦悶のねじれ》をサポート呪文としてプレイしていたかもしれませんが、デッキの中核はローテーションしませんでした。加えて適切にメタゲームを調整する目的で、『アラーラの断片』ブロックの年の後期に《火山の流弾》や《大貂皮鹿》のような驚くべき強さの対策カードを入れなければなりませんでしたが、それらは《苦花》の禁止を防ぐことには成功したものの、その間にスタンダードの改善はできませんでした。

 ブロックを越えたシナジーの目標には、これらブロックの怪物の発生を防ぐことだけではなく、新しいセットのカードのためにメタゲームのスペースを空けておくことも含まれます。『テーロス』ではエンチャント除去の規模が『ラヴニカへの回帰』ブロックの年よりも少し縮小されており、従ってプレイヤーがエンチャントを多用したデッキを作りたいと思っても、それが即座に対策されることはありません。

 今考えると、我々が『ゼンディカー』の年に印刷した長期的なスタンダードの健全さにとって最も危険なカードの1つは、フェッチランドでも、《水蓮のコブラ》でも、《ゴブリンの先達》でもなく――《タクタクの潰し屋》でした。今ではばかげた話かもしれませんが、このカードを『ワールドウェイク』に入れた当時、我々は『ミラディンの傷跡』がどのような展開をするのか正確には知らず、それが旧『ミラディン』と同じぐらいのアーティファクトの量があったなら、この一枚のカードが次の1年間全体を押しやってしまう可能性がありました。

 もちろん、このカードは結局《石鍛冶の神秘家》と《精神を刻む者、ジェイス》に続く存在には全くなりませんでしたが、前年のデッキに来年の対策を過剰に与えることは、メタゲームを停滞させる最も簡単な方法の1つです。この場合だと、もし同盟者デッキがとても強力だったならアーティファクトの運用にかなり大きな損害が出ていたでしょう。例えそうでなくても、このカードを複数枚入れるだけでアーティファクトを多用する対戦相手を倒してしまいます。『ミラディンの傷跡』ブロックの方向性は明らかに《タクタクの潰し屋》の存在が問題にならないほど十分な違いがありましたが、これは現在我々が積極的に避けようとしている間違いの一種です。我々は特定のカードの単体のパワーレベルにおいて間違うことは常にありますが、行っていることの構造を正しくすることができます。

『テーロス』のテーマの種を蒔く

 来年のセットへの種を蒔くカードを作る頃までに、我々がそれらのデッキがどのようなものかを十分に把握していることはめったにありません――何しろそれはまだデザインの初期なのですから。その代わり、我々は来年のテーマに種を蒔く作業に取り組みます。これは我々がセットを構築向けにデベロップするときに確かな足場と、そしてうまく行けば全てのパーツを今年のセットから取るものではない、楽しく興味深いカードとアーキタイプを作ることができる余地を与えてくれます。『基本セット2011』の《鋼の監視者》や『基本セット2013』の《遥か見》のように、それらのカードはかなりあからさまになることがあります。また、『基本セット2012』の《渋面の溶岩使い》や《彼方の映像》のようにずっと分かりにくいこともあります。これらは当たり外れがあり、そしてそのセットの方向性は種を蒔いたカードと合うとは限りませんが、それでも構いません。これらの狙いは、最も重要なことは何なのかを示すことです。デッキの中のローテーションするカードの存在は、我々にセットのパワーレベルのリスクのいくつかを背負わせ、次のセットをそれの該当するスタンダードにおいてパワーアップさせなくても使えるようにするということであるはずです。

エンチャント
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 この年の前にいくつかのエンチャント・カードで種を蒔いておいたので、去年よりも多くの人たちが『テーロス』は強力なエンチャント・テーマだという予想を的中させました。旧『ラヴニカ』ブロックにはエンチャントの小テーマがありましたが、『テーロス』の前にそのテーマを行わないように今回はそれを最小限に抑えました。

 『テーロス』のエンチャントの方向性の多くは授与と神々に関係していますが、私はこれらのカードのうちいくつかのための場所が依然としてあると考えています。加えて『テーロス』ブロックにはまだ2つのセットが残されており、それらのセットにはこれらのカードが現れるための多くの余地が残されています。

信心
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 信心の種はありふれたところに隠されており、それを人々が見つけるのは基本的に不可能だったと私は考えています。多色テーマのブロックからマナ・シンボルが濃いパーマネントが得をする環境に向かうのは変に思えるかもしれませんが、最も創造的な方法がそれを可能にしました――混成マナです。

 《ボロスの反攻者》の素晴らしいところは、白単、赤単、赤白の戦略で3つで役割をこなし、《鍛冶の神、パーフォロス》や《太陽の神、ヘリオッド》の運用を可能にしたところです。それだけでなく、これは神の顕現間近まで信心を集めてくれます。今年と来年はマナ・シンボルの不足の心配は不要な一方で、基本的にトリプル・シンボルのカード数は極めて少数です。混成マナは『テーロス』を支援するために『ラヴニカへの回帰』ブロックに入れられたわけではありませんが、それは信心をスタンダードで私が楽しいと信じるレベルまで推し進めることも含んでいます。しかしそれが強すぎる場合に来年に被害を与えるべきではありません。

英雄的
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 英雄的は恐らくスタンダードでは主流ではない戦略の1つですが、容易に現れるかもしれません。1体のクリーチャーにオーラや強化呪文を積み重ねるのは伝統的に悲劇の元となってきましたが、我々は《神々の思し召し》のようなカードを『テーロス』に収録して英雄的デッキがいくらかプレイされるようにしました。《威名の英雄》に《ひるまぬ勇気》を唱えた場合に直面したなら、ゲームはすぐに決着するでしょう。4ターン目に《巨大化》を唱えれば、それはまさに致命的です。

次なるテーマを流行らせる

 1年を通してカードで支援するのと同じぐらい重要なのは、《タクタクの潰し屋》について先にお話したようにその1年に生き残る余地を与えるようにすることです。《古えの遺恨》のようなカードを『イニストラード』で印刷したことは、『ミラディンの傷跡』ブロック(少なくともそのアーティファクト)が次の年を支配しないようにする助けになりました。これを『ミラディンの傷跡』の前年に印刷することは、単に『ミラディンの傷跡』ブロックの可能性を奪うだけでしょう。

 その点において、我々は『ラヴニカへの回帰』ブロックに『テーロス』の種を蒔くときにいくつかの要素を残しました。何人かの人たちが、なぜ《屈辱》が『ギルド門侵犯』や『ドラゴンの迷路』に入っていないのかと怒りの声を私に送ってきました――その理由は我々が『テーロス』がどのようにプレイされるか正確に分からず、リスクを大きくしたくなかったからでした。《摩耗+損耗》のようなカードはメインデッキに入れるのは簡単ではありませんが、《屈辱》は死に札になることはほとんどなく、メインデッキに入れるリスクは極めて小さいものです。また旧『ミラディン』ブロックのスタンダードでは《粉砕》、《酸化》、《ヴィリジアンのシャーマン》がプレイされているところを多く見かけましたが、我々は《破壊的な享楽》のようなより興味深いエンチャント除去がプレイされるように扉を開けておきたいと考え、そしてそうするための最良の方法は『テーロス』ブロックにそれらのカードを残すことでした。

 さて、我々の仕事は良い結果を出すでしょうか? それはいまのところ分かりませんが、私は『テーロス』がスタンダードに巨大な影響を与えるであろうと信じています。我々が生み出したスタンダード環境の中で最も多様性に富んだ環境の1つである『イニストラード』と『ラヴニカへの回帰』環境を後にして、様々なデッキと興味深いメタゲームの変化が来るこの1年を楽しみにしています。

 サムより

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