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エターナル・フォーマットのデベロップ

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エターナル・フォーマットのデベロップ

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2013年10月18日


 既に『統率者(2013年版)』のプレビューをご覧になったなら、レガシーやヴィンテージに影響を及ぼすかもしれない数枚のカードに気付いたかもしれません。具体的に言うと〈修復〉と〈真の名の宿敵〉のことですが、今回はもう1枚お話ししたいカードがあります。このカードはこのフォーマットで完全に《剣を鍬に》に取って代わることはないでしょうが、間違いなく《剣を鍬に》よりも優れた状況があります。我々が過去数年のスタンダードで苦労して成し遂げた素晴らしい事柄の1つに、メタゲームによって価値の上下する対策手段を作り上げたことがあります。例えばプレイヤーたちは《破滅の刃》と《英雄の破滅》をそれぞれ何枚使うか、興味深く重要な選択をするところまでたどり着きました。我々は《剣を鍬に》と、もしくはもっと多くのカードと比較することになるかもしれないものを作ったと思います。

 とは言え、ちょっと先走りすぎました。それでは〈予期せぬ不在〉をご覧ください。

エターナル・フォーマット向けのカードを印刷する理由

 2011年に発売された最初の『マジック・ザ・ギャザリング―統率者』では、我々は《漁る軟泥》、《狼狽の嵐》、《トレストの密偵長、エドリック》などのレガシーに影響を及ぼすカードを印刷しました。同じように『プレインチェイス2012』では《悪意の大梟》と《断片無き工作員》をこのフォーマットに与え、それらは最近のレガシーにおいて多くプレイされています。これらのカードは偶然ではなく、我々はこれら(と他にもいくつか)をエターナル・フォーマットで頭角を現すだろうと期待して印刷し、そしてその結果には概ね満足しています。我々はエターナル・フォーマットをコントロールしようとする努力はほとんどしていませんが、このフォーマットが停滞し過ぎないように十分なカードを印刷するようにしたいと考えています。このフォーマットの売りの1つは......そうですね、10年たってもあなたのデッキが使えてなおかつ競技レベルにあることだと私は思います......しかし何も変化がないならば、その魅力は衰えていくでしょう。

 エターナル・フォーマット、具体的にはレガシーとヴィンテージのことですが、これらに向けたカードを印刷することは困難です――我々はまさに20年の歴史に立ち向かうことになり、そしてその最初の数年にはいくつかのかなり無茶苦茶な強さのカードが含まれています。結局のところ、スタンダードで使用可能なセットでレガシーに影響を与えたい場合、最も成果が上がるのはクリーチャーです。以前にカードパワーのインフレについての記事でお話ししたように、我々は過去数年を費やしてスタンダードでの呪文とクリーチャーのパワーレベルの均一化をしようとしており、それらは結果としてエターナル・フォーマットで極めて強力なクリーチャーを印刷する結果に繋がりました。しかし、これはまたエターナル・フォーマット向けの呪文を作るのがかなり困難であることも意味しています。

 例えば、このフォーマットに打ち消し呪文を加えることはほぼ不可能です。数年に1度、我々は《呪文貫き》のようなほとんどの状況で他のカードより優れたカードを思いつくことができますが、《Force of Will》や《対抗呪文》、《目くらまし》、そして《もみ消し》と張り合うのは容易なことではなく、これらのカードに対抗し得るような打ち消し呪文のほとんどはモダンやスタンダードで使うには強力すぎます。我々はしばしばこのフォーマットの小さな隙間を埋めるようなカードを見つけ出します――より良い「願い」の対象や、ちょっとだけ優れた回答となるカードなど――ですが、実際にメタゲームを変えうるカードを印刷できることは稀です。『ラヴニカへの回帰』ブロックを振り返ってみると、レガシーに最も大きな影響を与えたカードは《死儀礼のシャーマン》で、《突然の衰微》や《イゼットの魔除け》などのカードはいくつかのデッキでサポート用のカードとして見かけられます。

 しかしながら我々の目標の1つは、これらのフォーマットで使える楽しく興味深いものにするカードを印刷し続けることであり、『統率者(2013年版)』のようなセットは我々が適正なバランスを見つけることを可能にします。今回のプレビュー・カードを振り返って下さい――我々は軽すぎる無条件除去を印刷しないようにしているので、もし〈予期せぬ不在〉をスタンダードで使えるとしたら、スタンダードで最も強力なカードの1つになっていたでしょう。我々はスタンダードにレガシーと同じような量のシャッフル手段を設けてはいませんが、それでも私はこのカードはスタンダードで許容しうるものになるかどうかギリギリのところだろうと考えています。しかしながら統率者戦でのこのカードの立ち位置はかなり違ってきます。これは強力ですが、1対1の除去のひとつに過ぎず、このセットの他のカードのようにこのフォーマットを揺るがすことにはならないでしょう。

 そのバランスを見つけ出すことがこの製品の最も重要な部分の1つです――結局のところ、これの対象となる顧客は統率者戦のプレイヤーなのです。我々はレガシーでだけ優秀なカードを入れたいとは思わないので、従ってこのセットのカードに統率者戦とレガシーの両方でプレイヤーが使って興味深い部分を見つける必要があります。統率者戦は相対的に遅く、多くのマナ加速が入っているのでこのフォーマットで強力なカードの大部分のマナ・コストは重くなっています。しかしそれは軽いカードの入る余地がないということではありません。また、2対1を取れるカードはいいカードなのは間違いありませんが、4人以上でのゲームでは大抵細かいことをするよりも全力で行くほうがずっと重要です。《至高の評決》のようなカードの取れるアドバンテージはスタンダードでは3対2や4対1ぐらいですが、統率者戦では16対1になることもしばしばあります。これらのカードの直接的なカード・アドバンテージに焦点を当てる代わりに、我々は統率者戦でも強力ながらレガシーでもまた強力になりうる別のものを提供したいと考えました。


〈予期せぬ不在〉 アート:Min Yum

 対戦相手の統率者を「しまい込む」のがそれを半永久的に対処する最も効果的な方法であり、〈予期せぬ不在〉のようなカードはそのカードをライブラリーの一番上に置くことが、単に追放するよりも実際に優れていることを意味しています。〈真の名の宿敵〉は個人戦ではとても強力ですが、多人数戦では政治的な視点を提供してくれます。〈修復〉はレガシーではマナ加速や《不毛の大地》の再利用の手段として使えますが、統率者戦では対戦相手の土地をその相手に対して使ったり、《ガイアの揺籃の地》などを戦場に戻したりできます。両方のフォーマットで使い道があるカードを作ることは我々にとって重要であり、そして単にレガシーで強力なカードを作ってそれを統率者のセットにねじ込もうとした場合よりも、もっと自然な方法でこれらのカードのデザインとデベロップができるようにします。

 レガシーのファンの1人として、私はこれらのカードがこのフォーマットで何ができるかを見られることに興奮しています。《瞬唱の魔道士》のようにこれらがこのフォーマットを揺るがすような影響を及ぼすとは思いませんが、様々なデッキにいくつかの新しく興味深い選択を与えると期待しています。我々はこのようなカードをレガシーに加えることができるときはいつでも、この最も人気のあるエターナル・フォーマットに注意を払う素晴らしい機会を持っていると思います。そしてそれは、このフォーマットのプレイヤーのために多くの利点があると私は思います。

 ではまた来週お会いしましょう。

 サムより

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