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がんばれ、がんばれ、ハ・イ・ド・ラ!

Brian David-Marshall / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa

2013年9月13日


 時々、「マナコストにXを含むハイドラ」はマジックのどのセットにもあるように思えることがあります。しかしそれだけ収録されていても、それらは新しいスタンダード環境を席巻するのには幾度となく失敗しています。マナをすべて注ぎ込ませはするものの、実に様々な能力を持つこの柔軟なファッティが好まれないのは、どうしてでしょう? こうしてちょっと振り返ってみても、ここ数シーズン、スタンダード環境の開幕に姿を見せたものはいないのです。


アート:Ryan Pancoast

 《黙示録のハイドラ》がプレビューされたときは、大盛り上りでした。これを7マナで唱えれば10/10のマシンガンになるということを、ちょっと考えてみてください。道端に群がる英雄気取りの連中を狙い撃ち、あるいは対戦相手が残したライフを狙い撃ってゲームを終わらせてくれるのです。しかし必然、このカードを出すときはタップ・アウトを伴い、対戦相手に1ターンの猶予を与えることでしょう――その前、こちらの終了ステップに何かを仕掛けられてしまうかもしれません。たとえ置かれるカウンターの数が倍になろうと、次のターンに活躍できるか定かでないものへ支払うには、あまりにも重いコストだったのです。

 《残忍なハイドラ》は歓迎する大きな声もなく登場し、スタンダードで使用可能な間、真剣勝負の場で見られることはほとんどありませんでした。対戦相手もカウンターを置けるというのは面白い能力ですが、双頭巨人戦や統率者戦のような多人数戦のフォーマットを除いて、ゲームに関係するとは言えません。序盤にプレイしてその後ゲームが進むにつれてマナを注ぎ込んでいく、ということができるのは悪くないのですが、そのマナを使っている間に良くないことが起こる危険を増やすだけだったのです。

 《始源のハイドラ》は《残忍なハイドラ》が改良されたもので、序盤にプレイしておくことができながら追加でマナを払わなくても育つようになっています。『基本セット2012』リミテッドをたくさん遊んだプレイヤーなら、これが終末の時計のようなカードであることを良くご存知でしょう。ところが、このカードはリミテッドでさえもバウンスされ、破壊され、あるいはエンチャントされてその脅威を封じ込められました。《始源のハイドラ》は、きっと大きな大会へ乗り込むものだと思われていましたが、その姿は見られませんでした。

 《変幻のハイドラ》はフレイバーに満ちたカードで、「首を1本切り落としてもそこから2本生えてくる」という神話上の怪物の一側面を見事に捉えています。問題は、その能力が実用的でなかったということでした。スタンダードにあるハイドラを実際に除去するなら、当然誰だって致死量のダメージを用意することでしょう――そうなればもう死を免れるすべはありません。一番の問題は、マナをすべて注ぎ込んだところで除去されるのを待つことしかできない、ということだったのです。

 《野蛮生まれのハイドラ》は二段攻撃持ちの怪物ですが、これまで見てきたハイドラたちとまったく同じ弱点があります。このカードは最近登場した《巨森のハイドラ》とともに、何か大きな変化が起きないか待ちつつベンチを温め続けています。私としては、クリーチャーを出してそれが《破滅の刃》で除去されるのはまったく気になりません。それより1ゲーム中に何度も出し直さなければいけない方がよっぽど嫌です――それがマナをすべて使うようなクリーチャーなら尚更です。こういったカードを使おうと考えると、《送還》、《アゾリウスの魔除け》、そして新たに登場する《航海の終わり》がその考えを邪魔してきます。打ち消し呪文に突っ込ませるのはもちろん、対戦相手にまるまる1ターン与えて対処する手段を見つけられてしまえば、その結果は言うまでもないでしょう。

 スタンダードで使われるカードには、こういった様々な問題を心配する必要のないものが求められます。さてそれでは、マナコストにXを含むハイドラで初めてスタンダードでの活躍が見られそうだ、と私が感じているものをご紹介しましょう。

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 さあ、今こそひと皮剥けるときです。相変わらず《破滅の刃》で除去されるのは仕方のないことですが、この前途有望な新人に対して対戦相手ができることはかなり限られる、ということに注目してみてください。

 まず、《中略》を気にして土地をひとつ立たせたり「《本質の散乱》が来ませんように」と儚い祈りを捧げたりする必要がなく、すべてのマナを気兼ねなく注ぎ込むことができます。《霧裂きのハイドラ》は(そこまで大きい必要かあるかはさておき)巨大なサイズで戦場に着地することでしょう。

 このファッティが速攻を持つというのは、ゲームを大きく動かすはずです。対戦相手がアンタップを迎えれば、これを《次元の浄化》で流せるかもしれません。しかしその前に1回は殴りつけているのです。前回(リンク先は英語)、私は《クルフィックスの預言者》について、5ターン目にこのシミックのカードを出し対戦相手のターンの終わりに《カロニアのハイドラ》を瞬速で繰り出す、という重厚なシナリオをご紹介しました。そこからアンタップ後、6枚目の土地を置いて《霧裂きのハイドラ》を5/5で送り込んでやるのはどうでしょう。そのターンの攻撃は20点に届くのです。土地を置けずに《カロニアのハイドラ》に《霧裂きのハイドラ》が加わるだけでも、18点ものダメージを叩き出しますよ。

 そして、ここ数シーズンのスタンダードで青いデッキが頼りにしていたテンポを稼ぐ武器は、プロテクション(青)を持つ《霧裂きのハイドラ》を前にしてはまるで使い物になりません。また《ボーラスの占い師》やそれに代わるかもしれない《前兆語り》のようなカードも、全体除去を用意するまでダメージを抑える役目を果たせないのです。

 マナコストにXを含むハイドラたちが総出でチアリーディングに使うようなポンポンを持ち、ついに登場したスタンダード環境に影響を与えそうな仲間を応援するときが来ました。それではご一緒に。「フレー、フレー、ハ・イ・ド・ラ!」

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