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プレインズウォーカーのための「テーロス」案内 その2

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プレインズウォーカーのための「テーロス」案内 その2

The Magic Creative Team / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori

2013年8月28日


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 この記事は第一エキスパンション名の元となった世界、テーロスを紹介する「プレインズウォーカーのための案内」、全三回の第二回である。テーロスの神々についてはその1にて書かれている。

都市国家

 テーロスの人類は自然から文明の地を切り拓く精神を体現している。より小規模な居住地が他にも存在してはいるが、人類の大半はテーロスの三大都市国家であるメレティス、アクロス、セテッサのいずれかに所属している。

メレティス

Adam Paquetteによるコンセプト・アート

 メレティスは学問と魔法と進歩の都市国家である。そして革新的な思想家、敬虔な秘術師、賢明な神託者の都市国家である。メレティスは暴君の支配を打破したことによって誕生し、今日では暴力的な抑圧に対する自由な思想の勝利という精神を保持している。メレティスは神々の偉大な神殿と秘術の学院、建築の偉業、そして敬虔隊を誇っている。


Adam Paquetteによるコンセプト・アート

平原と河川、都市と海:メレティスは海岸沿いに位置し、何本もの河川と広大な草原に囲まれている。シトラと呼ばれる大麦の栽培種の畑が一面に広がり、メレティス人とその家畜達を養っている。ケール川の何本もの支流がその風景に広がり、真水や遠方の村からの交易品をもたらしている。


Adam Paquetteによるコンセプト・アート

文明の中枢:メレティスの偉大なる神殿群は人類の文明が成し遂げた偉業の証である。建築や学問上の功績が至る所に示されている。メレティスは街路さえも、組み合わさった幾何学的形状の石材から成っており、数学的及び神秘主義的原理を表現している。都市の境界内からはテーロスの未開の地は遠く、ほとんど神話の存在であるように感じる。メレティスはセイレーン、トリトン、巨大な怪物達からの攻撃に耐えている。だがメレティスの市民達の多くはケンタウルス一体よりも大きい、またケンタウルスよりも珍しい怪物を自身の目で見たことはない。


Steve Prescottによるコンセプト・アート

(左上)「波」のモチーフ
(右上)精巧な髪型
(中央)緩やかに重ねられた何枚もの布と手織りの衣服

神々への献身:メレティス人は神々の行動を大いに気にかけている。神々の名は彼らの言葉の一部となっている。メレティスで普遍的に使われている、神々の名を含む言い回しを幾つか挙げる。

「ヘリオッドの輝ける槍にかけて」 ......驚嘆の表現。

「神々の御声から我が耳まで(もしくは単純に「神々の御声」)」 ......話し手が真実を話していることを強調する際に使用される――すなわち、話し手はその言葉を神々自身から聞いたという意味の言い回し。

「モーギスの赤い目によって」 ......軽い冒涜の言葉。しばしば、惨劇や横死への反応として使用される。

「エレボスとともに」もしくは「エレボスの傍に」 ......「死亡した」や「死の国にいる」の異なる言い回し。

重要な場所

神殿:メレティスのほぼあらゆる街路に神殿が存在する。近隣の人々のための一部屋のみの単純な聖廟から、大理石の柱の密集隊が支える六階建ての大神殿まで。メレティスにはあらゆる神の神殿が存在し、多くの神殿は複数の神々に捧げられたものとなっている。職人達はメレティスの神殿を頻繁に改良し、砕けた大理石や崩れた彫像を新たなものと交換し、壮大な壁画の上から更に壮大なものを描いている。

エンチャントの島、ダクラ:メレティスが面するセイレーン海は、ダクラと呼ばれる群島に囲まれている。ダクラは、ある人間の銛によってトリトンの古の女王コリンナが殺された時、それを悲しんだ海神タッサが創造したと言われている。タッサの涙が海に落ち、霧深い群島となった。ダクラに人間が上陸することは滅多にない。その島々は未知のニンフ達と獰猛な怪物達をかくまっており、神々の魔法がかけられている。


アート:Raoul Vitale
役割と重要人物

魔道士の精鋭、秘術師:メレティスにおいて、魔法を織り上げることは由緒ある伝統である。魔法は一人の職人が身につけることのできる、最も偉大な技巧の一つとみなされている。最も熟達した魔道士達は秘術師(驚嘆の職人)として知られている。沢山の秘術師を含むメレティスの魔道士の多くがデカティアで訓練を受ける。だが神々から褒美やもしくは他の明白な予兆を受け取るまで、その人物は真の秘術師とはみなされない。例えば、太陽神ヘリオッドから陽光の槍を授けられた時、もしくは嵐神ケラノスによって荒々しい創造の洞察を授けられた時、一人の魔道士は秘術師として尊敬されるだろう。

石識:メレティスは産業と建築の都市国家である。石識の秘術師達は建築物や様々な大建造物を組み立て、修理する魔法の専門家である。石識の魔術師達は、内陸にて軍用前哨地を作る際に敬虔隊から重宝されている。

形式主義者:メレティスの学者達にとって霊気は特別に重要なものであり、多くが魔法による使用法を研究している。霊気とは数や概念や理論といった抽象的な存在の領域だと信じる者もいる。形式主義者の中には、物理的現実から物体を消失させる魔術を研究している者もいる。彼らは必然にひびを入れ、完全かつ抽象的存在の領域へと具体的存在を移動させることによって現実を「完全にしている」と述べている。

哲人と十二賢:メレティスは哲学的思考の中枢として世界に知れ渡っている。ここでは哲人達が特別な地位にある。彼らはしばしば使用人を随行させており、そのためにより多くの時間を討論や思索や教職に費やすことができる。哲学者の議会である「十二賢」はメレティスの統治組織となっている。十二賢は現在、ペリソフィアに率いられている。


アート:James Ryman

敬虔隊:メレティスは「敬虔隊」、怪物と戦い神々を称える信心深い練達の兵士達によって守られている。メレティス人の敬虔隊はアクロス軍ほど獰猛でもセテッサ軍ほど頑健でもないが、賢く臨機応変である。そして彼らはテーロスの神々への特別な信心深さによって、より多くの勝利へと導かれるのだと信じている。


アート:Willian Murai

戦識:メレティス人兵士は肉体的強さよりも、戦術を通じて戦場を操ることを第一に訓練を受ける。彼らの重装歩兵部隊は利口な策略、珍しいもしくは急激な速度で変化する隊形、果ては見事な勝利のためにあからさまな詐欺さえ用いる。


アート:Lucas Graciano

呪文訓練:メレティスの兵士は全員、少なくとも一つの呪文を知っていると言われている。それはメレティスが流布させている誇張表現かもしれない。だがメレティス重装歩兵の多くが下級の特務魔道士として尊敬されていることは事実である。治療呪文や耐久力を増加させる呪文、そして戦場での策略の呪文はしばしば、兵士としての訓練を受ける間に教えられる。

メレティスにおける人間以外の種族:トリトンは地上では短時間しか生きられないが、それでも僅かなトリトンが沿岸都市メレティスを住処としている。海岸を監視し、クラーケンやアルコンやその他の怪物の攻撃をメレティス人へと告げる見張りや監視塔の番人として働く者もいる。他には浴場で働く者や、デカティアに所属する哲学者として生徒に教授する者さえいる。

 メレティス人にとってフィーリーズ団のケンタウルスの多くは敵だが、メレティスはラゴンナ団と公的に、儚い講和を維持している。ケンタウルスの小さな部族が幾つか、都市との間に有益な交易を確立している。それだけでなく、メレティスの役人達はあるケンタウルスの祝祭を斟酌し、一年に二つの祝日を指定した。講和に従い、メレティス人の前哨地は通常、彼らが見通す土地をケンタウルスの小団が通過することを許す。だがメレティス人兵士の中にはそれを喜ばない者もいる。


アート:Min Yum

彷徨える神託者、メドマイ:賢明なる古のスフィンクス、メドマイはメレティスに定住しているわけではない。その代わりに彼は年に数度、宗教上の儀式や戴冠式、もしくは戦争の始まりといった歴史的に重要な瞬間に姿を現す。未来に起こる出来事についての神秘的な知識を所持しているらしく、メドマイは長い間、メレティスの歴史の一部となってきた。彼の出現は必ずしも吉兆とは限らず、緊急事態となる予言を携えていることもある。


アート:David Palumbo

偉大なる哲人ペリソフィア:現在生きているメレティスの哲学者のうち、最も博識の者はペリソフィアである。その論理、修辞法、精神魔法はあまりに手強く、あらゆる公会のあらゆる論客に匹敵する。ペリソフィアは現在、最年長者として十二賢を統べている。

天馬乗りのヒパティア:ヒパティアはメレティスのケイラメトラ神殿にて、農園に仕える魔道士としての訓練を受けた。だが後に自身の天職は戦場にあると悟った。彼女はメレティスの軍にて剣と盾を手にし、都市への脅威との戦いにおいて素晴らしい才能を示した。

 ある戦いの最中、彼女はメレティスを一望する台地にて傷を負った。彼女は頭上にペガサスの群れが飛んでいるのを見て、無言で祈りを捧げた。一体のペガサスが舞い降りてその背に騎乗することを許し、彼女の命を救った。そして一人と一騎は離れがたい存在となった。


アート:Cynthia Sheppard

トリトンの英雄、トラシオス:メレティスの人間達に混じって、ほんの少数のトリトン達が暮らしている。最も有名なのはトラシオス、海神タッサの神聖なる承認を受けたと信じる熟達の戦士である。かつてメレティス人がトラシオスの家族をミノタウルスの略奪隊から救ったことから、彼は今メレティスの名誉のために戦っている。戦いにおける彼の武勇は奇跡的であり、ただの一撃さえも彼に当てたものはないと言われている。

歴史

執政官の暴君、アグノマコス:メレティス人は、今や彼らの都市国家となっているその地域はかつて、アグノマコスと呼ばれる一人の執政官――飛行する大型の野獣に騎乗し、外套を被った大将軍――によって統治されていたことを知っている。アグノマコスは見たところ不死で、何世紀にも渡って鉄の拳による統治を続け、彼が兵士や個人的な護衛として用いたレオニンよりも何世代も長生きしていた。アグノマコスはその統治下、彼の帝国を積極的に拡大し続けた。北は森林、東は山脈にまで限りなく広く、行く先の未開の地全てに無慈悲な秩序を見せつけた。

 伝説によればエファラ神が人間へと魔法を授け、アグノマコスを打ち破り、レオニンを追放し、メレティスを暴政から解放する手助けとしたのだという。アグノマコスに勝利した人間達は彼の帝国の瓦礫からメレティスの開化都市を創設した。今日でもレオニンはメレティスから離れたままで、貿易や対話には無関心である。

アクロス


Adam Paquetteによるコンセプト・アート

 強大な都市国家アクロスを囲む山岳地域はその地と外のテーロス世界との間の盾を務めている。アクロス人は同じ時代にあってさえ半分神話的な存在である。彼らはテーロスで最も恐ろしい戦士達として知られている。彼らは数えきれない王の名のもと、槍に生き槍に死す。そして戦闘への完璧な肉体と精神を追い求める文化を育てながら何世代にも渡って軍隊を鍛え続けている。


Adam Paquetteによるコンセプト・アート
重要な場所

コロフォン:中央砦でありアクロスの力の座はコロフォン、崖の上に位置する巨大多層構造物である。その分厚い石壁の内でアクロスの人々は礼拝をし、訓練し、生活を営む。コロフォンの最深部にはアクロスの玉座の間がある。ここでは斥候と急使達が、アクロスの領土の最遠まで達する前哨地からの報告を行っている。


Adam Paquetteによるコンセプト・アート

前哨地:アクロス全土に渡って幾つかの前哨地が点在している――ストラティアンにとっては略奪先を探す、もしくは怪物や侵略者を偵察する際の足場となる地である。

  • 一つ目峠:この前哨地はストラティアン達によって、ある理由で注意深く選ばれている。サイクロプスが豊富に生息しているためだ。彼らは敵を峠へと誘い込み、縄張りを積極的に防衛するサイクロプスを利用して手痛く確実な死をもたらす。
アート:Chase Stone
  • ファラガックス橋:王の許しなくアクロスへと侵入するいかなる者に対しても、ストラティアンは全力をもってこの巨大な石橋を防御する。橋がかかるその広く深い裂け目は死の国へと通じており、その深みからは汚らわしいクリーチャーが出現すると主張する者もいる。
  • タイタンの階梯:これはアクロスを防衛する花崗岩の崖を貫く自然の通路である。ストラティアンは何世紀にも渡ってこの奇妙な構成物を防護し、また低地を侵略する足がかりとして利用してきた。

神殿:アクロスには主要な神々――主にパーフォロスとイロアス――へと捧げられた神殿が数か所存在するが、ストラティアンのアクロスへの多くの義務から、主要な寺院は遠く離れた山岳地帯に位置している。

フォベロス:フォベロスはアクロス領内の荒れ地である。そして比較的安全な地域と確実に危険な地域とを隔てる境界でもある。ストラティアンの宿営地は常にここ、人間の領域とその外との境界に置かれる。彼らは一月程で新たな編成に交代する。そして彼らは当然、略奪的なレオニンや人食いのミノタウルス、炎を吐くドラゴンの恐ろしい話を聞く。フォベロスとアクロスの国境は長く険しく、そのためストラティアンは一団で巡回しながら、アクロスの辺境全てを監視している。

役割と重要人物

ストラティアン:アクロス文化の中心はコロフォンの大壁の内にあるが、その人口の大半はアクロス軍を構成する放浪の戦士団、ストラティアンである。これらの戦士団は完全に自給自足で、狩りと略奪によってその数を養い、戦場において若年の兵士を訓練する。ストラティアンは都市国家間の道を旅する商人や交易商人達を襲おうとする、自身の縄張りから辺境に入り込んだ怪物を捜索する任務を課せられている。


Richard Whittersによるコンセプト・アート
  • アラモン(放浪者):これらはアクロスの王国の国境付近を常に移動し続ける軍勢である。彼らは速度が重視された武装の、不屈で頑丈な戦士達であり、そのため彼らは警戒されることなく移動や攻撃を行うことができる。彼らは征服すべき新たな領域を発見する軍勢である。
アート:John Severin Brassell
  • ルーコス(狼):これらはアラモンが攻撃目標を見つけ、ゲリラ戦を仕掛けた後に呼ばれるアクロスの精鋭兵達である。ルーコスは進軍して村を制圧し、奴隷を捕えてコロフォンへと略奪品を持ち帰る。
アート:Johann Bodin
  • オロマイ(番人):これらはコロフォンから決して離れることなく、要塞を侵略から守る軍勢である。オロマイはまた、アクロス軍の大半が長い期間に渡って国を離れる際に大勢の農奴達を管理している。

アナックスとサイミーディ:アクロスの現在の王はアナックスという名の獰猛な戦士であり、現在の――同じく獰猛な――王妃がサイミーディである。


〈アナックスとサイミーディ〉 アート:Willian Murai

 アナックスは40代後半のいかつい男性で、かつてはイロアスの信者であった。歳を経た後に彼はパーフォロスへと改宗し、小帝国を築く方向へと人々を導いた。この転換はアクロスの職人達から現在見られる芸術の流行に反映されている。剣と鎧は今や装飾されている。陶器、衣服、壁画、織物は古のアクロスの紋様を表現しつつ、その象徴は世代から世代へと伝えられてきた。国民にとって、アナックスは疑いなく従うことのできる偉大なる指導者である。他の都市国家では、彼は熟達の戦術家にして無情な殺人者として知られている。

 サイミーディはケラノスを第一に崇拝している。彼女は熟達の戦士であるが、それ以上に強力な予見者でもある。彼女は稲妻に撃たれて垣間の未来視を与えられた。サイミーディは王である夫の正当性について一部の責任を負っているとみなす者もいる。サイミーディはニンフといったような神的クリーチャーに近い力を自覚し始めている。彼女はそういったクリーチャーの力を抽象的に垣間見て、神々は忠実な者達へと恩恵を授けるのだと感じている。このことから、ケラノスの教団はコロフォンにて足がかりを得ている。それだけでなく、サイミーディは常に嵐が荒れ狂う遠い山頂に特別な神殿を建造した。嵐の季節の間には彼女はそこを訪れ、銀の高座にて瞑想を行う。

炎語り:彼らパーフォロスのシャーマン達は、アクロスの偉大な山々の火山と裂け目に宿ると言われる奇妙な幻霊を崇拝している。炎語り達は多くの現代的アクロス人の耳と信念を捕えている。炎語りの祝福を受けるために、もしくは彼らから予言を受け取るために山へと巡礼に赴くアクロス人もいる。


アート:Maciej Kuciara

人食い:訓練の間、全てのストラティアンはモーギスの脅威について警告を受ける。その神は戦闘の最中に戦士達の心へと入り込み、より多くの血と苦痛を渇望させるためである。あらゆるアクロス人は、モーギスがいかにして復讐の小さな炎を点し、それを狂気の業火へと育てるかを知っている。そのような欲望に圧倒された者は都市を出奔し、モーギスを崇拝する者達の小集団を探す。そのよじれた神を崇拝する者全てが共食いをするわけではないが、全員が怒りと血の渇きを切望している――そしてミノタウルスのように人間の肉を食らう者も存在する。

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イロアスの競技会

アート:Jason Felix

 戦士の文化と規律から、アクロス人はイロアス神を好んで崇拝している。イロアスの競技会は毎年、夏の萎れるような熱の中で開催される。簒奪者を除外し、最も頑健な運動選手達だけを勝ち残らせるために。運動選手達が表彰を受ける円形闘技場が、イロアスの本神殿でもある。

  • アリッサ:イロアスの競技会の新たな英雄がアリッサと呼ばれる女性である。彼女は僻地の村からやって来ると、競技会において投槍で全ての相手を打ち負かした。だが彼女が不朽の名声を得たのはその理由からではない。発作的な嫉妬からモーギスは黒い蝙蝠に似たクリーチャーを送り、競技会の後の祝賀の最中にアクロスの英雄の幼い息子を奪い去った。それが子供とともに空へと飛び去る中、アリッサはその投槍を人間には到底不可能な速さで放ち、蝙蝠のような生物を串刺しにすると、彼女は赤子を受け止めて恙なく戻っってきたのである。
  • ラナトス:アクロスのレスリング選手ラナトスは、闘技場で闘士たち全員に打ち勝った後、真の挑戦のために野生のアクロス雄牛を連れてきた。そして丸一日にも及ぶ奮闘の末に、その獣を押さえつけた。
アート:Jason Chan

ナイモシュネ:セテッサからやって来た女戦士ナイモシュネはパンクラチオン(ボクシングとレスリングの混合格闘技)の腕前で名高い。伝説によれば試合の最中、一体のサイクロプスが試合場を襲撃し、観衆と闘士たちへと襲いかかった。ナイモシュネは闘技場から飛び降り、一瞬のぶつかり合いの後、その怪物の首をへし折ったのだという。

セテッサ


Adam Paquetteによるコンセプト・アート
地理

 鳥瞰的に眺めると、セテッサはその中心であるケイラメトラの神殿から外側へと広がっており、その形は一本の木の樹冠のように見える。森が切り開かれた中に、家族の住居や他の公的な建造物が置かれている。セテッサはニストスの森と開けた低木の茂みとの間の、不規則に広がる地域を取り囲んでいる。道は曲がりくねって狭く、通常は荷車を通す十分な幅もない。野生のままの空間に縄の吊り橋がかけられており、徒歩での移動の助けとなっている。

 南に行くと、セテッサは高い尾根と接している。その住人達は内側に巣穴のような居住地を掘り、また農場や果樹園のために尾根を「棚」状に刻んだ。この防御的な場所は、都市が攻撃された際の防衛に使用されている。また秘密の地下通路が森へと通じている。

 セテッサの最外縁部は木々と植生の密集した輪から成り、他所者を防ぐ自然の壁の機能を果たしている。木々には射手達のための足場が設けられ、その壁は常に警備されている。ケイラメトラの戦神官達が都市に出入りする者達を監視している。セテッサの人々は共同体に重きをおき互いを家族のように扱うが、他所者がたやすく歓迎されることはない。


Adam Paquetteによるコンセプト・アート
住民と社会的秩序

 セテッサの人口は主として女性と子供からなる。結婚の風習は存在せず、資産は共有のものとなっている。先祖は母系に辿られる。セテッサの住人達が最も重要視するのは子供達の幸福である。都市国家の守護神ケイラメトラは孤児の神であり、捨て子達は外から連れて来られて都市国家の中で育てられる。セテッサの子供達は「アルクーリ」(「小熊」の意。単数形は「アルクーロス」)と呼ばれており、共同体全体において最高に尊重されている。子供達は神殿から訓練場まで、あらゆる場所で歓迎される。


Steve Prescottによるコンセプト・アート

(上・左)厚さのある革紐。
(上・右)素朴な「民族調」の髪型。
(中央・左)女性はこの都市で高い地位を占める。上質な服装。着飾っている。
(下・左)川の流れの紋様。
(下・中央)裸足が一般的。
(下・右)衣服に骨/木の留め具。


Steve Prescottによるコンセプト・アート

 セテッサにも男性はいるが、ほとんどは都市の端にある動物達の訓練場、アマトロフォンの近くに住んでいる。男性は年若いうちの「遍歴」、世界を放浪し母親から離れて家となる場所を探し求める実践が奨励されている。女性は戦争の訓練を受けることによって、男性は世界で自身の道を見つけることによって英雄になると信じられている。

ケレマの覆いと結節点

 セテッサにはナイレアの各季節を称え、ケイラメトラの植生の儀式が行われる「結節点」がある。セテッサには他の神々の神殿はないが、何らかの神への捧げ物はそれらの聖地へと置かれる。それぞれの結節点の下は星原(せいげん)――ニクスの幻視――となっている。

 結節点は多様な神々への導管であり、この国におけるエンチャント魔法の源である。この事象は「ケレマの覆い」と呼ばれている。セテッサでは、神託者達がケレマの覆いを解読している。それは世界をまたがって流れる、霧のような星原として描写されている。星原の中は星座に似たイメージがある。それらは神々の物語を伝え、未来を予見するために使用される。


アート:Adam Paquette

春の結節点:春の結節点はケイラメトラ神殿の背後、瑞々しい庭園の中にある。蔓と萎れることのない花々で作られたアーチの形状をしている。春の結節点は豊穣、召喚、癒しの魔法の源である。不穏な関係にあるにもかかわらず、ケイラメトラはナイレアを姉であるかのように語り、ここに彼女への捧げ物をするよう人々を奨励する。

夏の結節点:はバセラ塔の近く、オリーブの古木の木立の中にある。深緑色の葉が木立を覆う梢を成し、都市国家中を自由にさまよう多くの獣達にとってお気に入りの休息所となっている。夏は力の季節とされ、夏の結節点は力を増大する源である。ここではナイレアへと、またはイロアスの競技大会前にはイロアスへの礼拝が行われる。


アート:Wesley Burt

秋の結節点:秋の結節点は南の尾根沿いに位置する黄金の林檎の果樹園の中にある。天然の玄武岩のアーチが、常に炎が燃やされる狭い洞窟へと導いている。それは秋の収穫のために大地を温めるパーフォロスの炎だとセテッサの人々は信じており、秋の実りを願って供物を捧げる。ここでセテッサの戦士達は戦争の双子、イロアスとモーギスへと敬意を払う。彼らは、勝利における栄誉と怖れは同等のものとみなしている。


アート:Matt Stewart

冬の結節点:冬は眠りと死の季節とみなされている。冬の結節点はセテッサの最遠、その都市の創設よりも前からあると信じられているライオンの古い巣穴の中に存在する。この古の巣穴は埋葬塚の下にある小さな岩の洞窟である。洞窟は死の国へと続いていると言われており、空気中には血と腐敗の臭いが漂っている。ここで人々はファリカとエレボスへと捧げ物をする。老後の悲しみや苦痛が和らぐことを望んで、もしくは死の国を今歩く誰かを偲んで。

見張り塔と砦

アート:Greg Staples

 セテッサには四つの見張り塔が存在する。それぞれに動物の名前がつけられており、セテッサの戦士達にて構成される連隊が所属している。

レイナ塔(獅子):この石灰岩の塔はセテッサの中心であるケイラメトラ神殿の傍に建っており、都市国家の守護者達の住まいとなっている。彼女らは「小熊」の頃から最高の戦闘訓練を受けてきており、両刃の斧で戦う。彼女らを率いるのはアンソーザ、ケイラメトラの戦士議会の長でもある。彼女は神に最も近しい助言者であると考えられており、神が居合わせない時(大抵の時でもある)には都市の実質的統治者である。


アート:Raymond Swanland

ハイラックス塔(隼):この木造の塔はセテッサの南の国境沿いの尾根に立っている。そこでは鷹匠と斥候が従事している。彼女らの長の名はファードラといい、かつてはメレティスの孤児でセテッサにて育てられた。彼女は弱冠19歳だが、その戦闘技術から指導者としての名声を得た。

バセラ塔(狐):この塔に駐留する連隊はニストスの森を守り、ナイレアの許しなく森へ入ろうとする侵入者を監視している。バセラの戦士達はナイレアに歓迎され、古の木々の中で生きることに長い期間を過ごす。彼女らは訓練の間、弓術とゲリラ戦法を中心に学ぶ。彼女らの長はニケータ、50歳の女性で現在はセテッサで過ごす時間が大半である。彼女は「小熊」達への弓術の訓練を監督している。


アート:Ryan Barger

オーフィス塔(蛇):この塔はケイラメトラ神殿近くの自然の空間に隠されている。戦士議会のために身分を隠して旅をし、情報を集める放浪の戦士や間諜達の本拠地としての役割を担っている。彼女らは旅を始めようとする若者達へと助言をしたいと願う共感的な家族のように、「遍歴」のための道を探し出す。オーフィスの戦士達は行方不明の、または捨てられた子供を探して彼らをセテッサへと連れ帰る。彼女らの指導者は子供の頃に奴隷に売られたカリアスである。彼女はオーフィスに助け出されてセテッサへと連れて来られる前に片目と指を何本か失っている。


アート:Steve Prescott
重要地点

アボラ市場:アボラ市場はセテッサ正門を入ってすぐの場所にある巨大な青空市場である。他所者はこの市場を一定の日数の間使用することを許可されるが、都市の大半を歩き回ることは禁止されている。セテッサ人に対しては、この市場は毎日、一年中開いている。

 貨幣は一般的ではないが、国外からの商人達は時折硬貨を受け取る。セテッサ人の間では、あらゆる商業は物々交換にて行われる。新鮮な果物や野菜、パン類、魚、肉、ナッツ、種、香辛料等全てが豊富にある。「猛禽の間」が常置されており、そこでは隼やその他の訓練された猛禽達が他の都市からの商人向けに売られている。訓練されたセテッサの猛禽達はテーロス最高のものと考えられている。


Adam Paquetteによるコンセプト・アート

アマトロフォン:アマトロフォンは多様な獣の隠れ家であり訓練場である。これらの動物達は社会において栄誉ある位置を占めている。アマトロフォンは森の広範囲とセテッサ辺境の草原を含んでおり、馬のための広い厩舎、戦士と獣の両方の戦闘訓練場がある。ケイラメトラは獣を自然の守護者として重視している。ペガサス、狼、ライオンさえも戦士達とともに戦闘の訓練を受けている。彼らはまた都市国家内を自由に放浪し、放し飼いの護衛としての役割を果たしている。セテッサに残る男性は動物の世話と、馬や隼や他の獣の訓練を手助けする。

アンソーザと巨人:セテッサを嵐が揺らし、樹齢数百年の木々をなぎ倒した。ケイラメトラはケラノスの身勝手さを非難した。彼女の厚かましさに怒り狂ったケラノスは真に大規模な嵐を送り、作物を破壊し、若木から枝をもぎ取り、人々を屋内に閉じ込めた。

 狩りに出ていた若きアンソーザが豪雨の中に取り残された。彼女がケイラメトラのお気に入りであることを知るケラノスは、ニクスから一筋の稲妻を放った。それは土の下に幾星霜もの間埋葬されていた一体のタイタンの墓を撃った。アンソーザの目の前の地面が盛り上がり、木々は根こそぎにされ、怯えた鳥達が嵐の空へと飛び去った。身の丈三十フィートを優に超える大地のタイタンが、原初の安息所から立ち上がった。それは壊れた木の幹を掴むと、若き戦士へと豪快に振るった。アンソーザはかろうじて逃げ、タイタンは追いかけた。ナイレアは彼女の森が受けた傷を見ると、蔓を伸ばしてタイタンの脚をとらえた。アンソーザは振り返り、タイタンがよろめくのを見た。タイタンが蔦から自由になろうともがく中、彼女は鹿のような素早さで蔦を使って肩までよじ登った。そしてタイタンの耳のすぐ下に、柔らかい肉の部分を発見した。

 ケイラメトラの名を叫びながら、彼女はその肉へと短剣を深く突き刺した。娘の嘆願を聞いたケイラメトラはアンソーザに魔法をかけ、タイタンの頭を身体から切り落とすほどの超自然的な力を与えた。切られた首が地面に落ちると、それは嵐に浸された地面に半分沈んだ。今もその頭蓋骨はその場所に横たわり、狐たちがその口の大きな穴を住処にしているという。


アート:David Palumbo

 その3では、テーロスの怪物達と人間以外の種族を眺める予定だ。

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