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シングルカードストラテジー
シングルカードストラテジー:《戦争と平和の剣》
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シングルカードストラテジー
剣には夢とロマンがある。
子供の頃に剣という武器に憧れた方も多いのではないだろうか?
ファンタジー系の物語では主人公の扱う武器は剣と相場が決まっているし、近代的なロボット物なんかでもスポットライトの当たる武器は剣をモチーフにしたものが多い。
ロールプレイングゲームなどでも、剣を使わないキャラクターがいないということはないだろう。
多くの物語で主人公の象徴となるもの、それが剣という武器だ。
マジックにおいても「剣」は重要なファクターの一つだ。
装備品というシステムの登場と共に、強力な「剣」カードがいくつも世に出されてきた。
2つのプロテクションを持たせ、2つの能力を与え、2回りほど上の戦闘能力を持ち主に与える。
《火と氷の剣》に代表される、いわゆる「剣」シリーズ。
今までに世に出された四振りの剣は、それぞれが自身が求められる戦場で活躍していった。
そして最新エキスパンション「新たなるファイレクシア」は、その「剣」シリーズの集大成として最後の一振りをこの世にもたらしてくれた。
今回の記事では、今までの「剣」シリーズの歴史を辿るとともに、《戦争と平和の剣》のこれからの可能性について探ってみたいと思う。
過去 ―はじまりは不遇の時代
まずは始まりとなった最初の二つの剣の話をしよう。
過去のミラディン・ブロックの二つ目のエキスパンションである「ダークスティール」で登場したのが《火と氷の剣》と《光と影の剣》である。
この二つの剣は、当時その強力なアドバンテージ能力で注目を集めた。
特に《火と氷の剣》はその能力の強力さゆえ、すぐ第一線で活躍するのではないかと囁かれたほどだ。
だがそれは《頭蓋骨絞め》という悪魔のような装備品を得た神話デッキの横行によって、叶わぬ夢となってしまう。
最速で3ターン、遅くても5ターン目には相手を蹂躙する神話(親和)というデッキに対して、これらの剣のコストは重すぎたのだ。
この時代は、まさしく神話全盛期と言える時代で、どこを見ても神話デッキしかいないような状況だったので、神話に弱い2つの剣が使用に耐えうるものではなかった。
しかもこの時代は神話以外のデッキのメインから《酸化》のようなカードがメインボードから飛んでくるような時代で、苦労してプレイしてもすぐに割られてしまうという、剣から見たら悪夢のような環境だった。
「良くてサイドボード」
それが2つの剣に張られたレッテルだった。
《光と影の剣》
だが明けない夜はないように、不遇な時代にも終わりは来る。
2004年に開催されたグランプリ・名古屋でメインボードに剣を採用したデッキが成績を残したのだ。
17 《沼》 1 《島》 4 《ちらつき蛾の生息地》 -土地(22)- 4 《首を狩る者》 4 《騒がしいネズミ》 4 《真面目な身代わり》 2 《大いなる収穫者》 2 《トリスケリオン》 -クリーチャー(16)- |
4 《金属モックス》 3 《威圧のタリスマン》 4 《夜の囁き》 4 《残響する衰微》 3 《血のやりとり》 2 《死の雲》 2 《光と影の剣》 -呪文(22)- |
4 《萎縮した卑劣漢》 4 《残響する真実》 4 《機械の行進》 2 《迫害》 1 《血のやりとり》 -サイドボード(15)- |
歴史の表舞台に最初に立ったのは《光と影の剣》だった。
このデッキは「戦場に出たとき」の能力を持つクリーチャー(CIPクリーチャー)を展開して相手の行動を制限しつつ、盤面を《死の雲》で一掃して勝つというコンセプトで、このデッキの《光と影の剣》は序盤戦では役に立たないが、中盤戦以降はCIPクリーチャーを回収するアドバンテージエンジンとして活躍してくれる。
また《死の雲》を打った後に速やかにゲームを終わらせられるカードでもあるので、このデッキの《光と影の剣》メイン採用は非常に納得がいくところだ。
ただこの後も神話全盛期は続き、遂に神話デッキの中核パーツのほとんどが禁止になるという事態にまで発展した。
そうなれば・・・神話というデッキが異常だっただけで、2種類の剣のカードパワーは高いことは見ての通り。
神話デッキが環境からいなくなったことにより、ついに2種類の剣の時代が始まった。
《火と氷の剣》
特に《火と氷の剣》は能力が単純ながら強力なこともあって、すぐに一線級の活躍を見せた。
デッキの方向性にもよるが、その構造に関わらずカードアドバンテージが取れてしまうことと、環境のRDW-レッドデックウィンズと呼ばれる赤単スライが居たことからそのプロテクション(赤)の部分を評価され、《光と影の剣》に比べこちらの方が使用頻度が高かった。
またRDWの同系でもプロテクション能力が非常に強く、同系メタカードとしても使われることとなった。
16 《山》 4 《ちらつき蛾の生息地》 -土地(20)- 4 《凍らし》 4 《炎歩スリス》 3 《かまどの神》 4 《罰する者、ゾーズー》 3 《ヴァルショクの魔術師》 4 《弧炎撒き》 -クリーチャー(22)- |
4 《金属モックス》 3 《尖塔の源獣》 4 《マグマの噴流》 2 《爆片破》 3 《煮えたぎる歌》 2 《火と氷の剣》 -呪文(18)- |
1 《尖塔の源獣》 3 《静電気の稲妻》 3 《真髄の針》 3 《粉砕》 4 《溶鉄の雨》 1 《火と氷の剣》 -サイドボード(15)- |
こうして二振りの剣は歴史に名を刻み、ローテーションという自然の摂理によってスタンダードシーズンから姿を消していった。
その後もエクステンデッドなどで活躍したらしいがそれはまた別の話、昔話はここまでにしよう。
現在 ―環境にマッチした剣
そして時は流れ2010年10月。
この《火と氷の剣》《光と影の剣》と同じ、2つの色を持つ剣がミラディンの傷跡に現れた。
《肉体と精神の剣》
長年の時を経て現代に蘇った「剣」シリーズの3番手は、青と緑の2色に彩られた剣だった。
このカードの情報が出たとき、誰もが《火と氷の剣》《光と影の剣》の再来と思って心を躍らせただろう。
ただ《肉体と精神の剣》は上の二つとは違い、赤と黒という除去色に対するプロテクションを持たなかった。
また能力も片方は2/2を戦場に出すという及第点のものだが、相手の山札を10枚削るというのはそれほど強力ではないように感じられた。
使われるかどうかは環境次第。それが《肉体と精神の剣》の第一印象であった。
だがこの当時の環境は(現在もそうだが)、《原始のタイタン》と《精神を刻む者、ジェイス》の2大巨頭が猛威を奮っている環境だったので、その2つに対するプロテクション(緑)と(青)を持つ剣としてビートダウンデッキが採用すると活躍を見せた。
また、それまでは十分な装備品がなく、使用が難しいとされていた《石鍛冶の神秘家》がこの剣によってその存在感を増した。
20 《平地》 -土地(20)- 4 《メムナイト》 4 《羽ばたき飛行機械》 4 《きらめく鷹》 4 《闘争の学び手》 4 《石鍛冶の神秘家》 4 《コーの装具役》 4 《戦隊の鷹》 4 《コーの空漁師》 -クリーチャー(32)- |
4 《聖なる秘宝の探索》 2 《肉体と精神の剣》 2 《アージェンタムの鎧》 -呪文(8)- |
4 《未達への旅》 4 《真心の光を放つ者》 4 《コーの火歩き》 3 《白騎士》 -サイドボード(15)- |
そして時は現在へと至る。
今の環境で「剣」と言えば、「あのカード」を指す以外ないだろう。
《饗宴と飢餓の剣》
スポイラーが公開された時のプロたちのこのカードへの反応は様々だった。
「プロテクション(黒)は除去耐性と申し分ないが、盤面に触れないのがネックではないか」とされていたからだ。
《石鍛冶の神秘家》から持ってくる動きは強いが、ビートダウン的にはテンポ的に遅いのと、土地がアンタップした後にどれだけ展開できるか、また使うべき手札があるのかというのが懸念材料となった。
これらは全てビートダウンデッキが《饗宴と飢餓の剣》を使うときのことを想定して議論された。
「装備品はビートダウンが使うもの」という先入観があったからだ。
だが、ミラディン包囲戦で現れたこの剣は、発売直後に行われたプロツアー・パリで恐ろしいほどの活躍を見せた。
この記事を読んでいる方ならもうご存知かと思う。「Caw-Blade」である。
5 《島》 4 《平地》 4 《天界の列柱》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 1 《霧深い雨林》 4 《地盤の際》 -土地(26)- 4 《戦隊の鷹》 4 《石鍛冶の神秘家》 -クリーチャー(8)- |
4 《定業》 4 《呪文貫き》 3 《マナ漏出》 1 《剥奪》 1 《冷静な反論》 4 《審判の日》 1 《シルヴォクの生命杖》 1 《饗宴と飢餓の剣》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 3 《ギデオン・ジュラ》 -呪文(26)- |
2 《悪斬の天使》 4 《失脚》 3 《漸増爆弾》 2 《神への捧げ物》 2 《瞬間凍結》 1 《否認》 1 《肉体と精神の剣》 -サイドボード(15)- |
このデッキタイプは「コントロールに装備品を入れる」という発想から来ていて、《戦隊の鷹》の装備品との相性も相まって同イベントで上位を占めるに至った。
またトップ8で《石鍛冶の神秘家》と《饗宴と飢餓の剣》を使っていないのは1人だけで、残りの7人は全てこのセットを使っていたことから、この組み合わせが環境でも随一の力を持っていると言うことも証明した。
《石鍛冶の神秘家》を使ったデッキの中でも「Caw-Blade」は抜群の安定性を誇り、その後も環境を引率しつづけた。
今のスタンダード環境を代表するデッキと言っていいだろう。
さらに、エクステンデッドフォーマットでも《石鍛冶の神秘家》パッケージは強力とされ、青白やナヤなどのデッキで多用された。
加えて、《饗宴と飢餓の剣》単体でも十分な活躍が見込めるとし、デッキの動きとその能力が非常に噛み合っているフェアリーは《饗宴と飢餓の剣》を入れることが一般的となった。
詳しく知りたい方は4月に開催されたグランプリ・神戸のカバレージを見ると良いだろう。
さて、過去―現在の話はここまで。
この記事の本題とも言える、「未来」の話をしよう。
未来 ―《戦争と平和の剣》
「新たなるファイレクシア」がもたらした「剣」シリーズの最後の一振り、それが《戦争と平和の剣》だ。
まずはそのプロテクションの意義から考えてみよう。
対抗色サイクルの残った色の組み合わせは白と赤。
プロテクション(赤)は《火と氷の剣》の部分でも触れたが、対赤に対して絶大な性能を誇る。
最近の赤には《躁の蛮人》や《圧壊》のようなアーティファクト破壊があるが、これらがメインボードから打たれるようなことはないので、メイン戦においてはこの能力は絶対の信頼を置いてよいだろう。
プロテクション(白)も今の環境なら強力だ。
今の環境の顔とも言える「Caw-Blade」は、戦線を支えるのに《戦隊の鷹》のブロックや《糾弾》などの除去を使用する場合が多い。これらに対して、プロテクション(白)は最高の回答と言ってよいだろう。
このようにプロテクションの色だけ見ても優秀な《戦争と平和の剣》だが、最後の一振りだけあって能力の方の強さも折り紙つきだ。
《突然の衝撃》能力は相手に突きつけるダメージクロックが通常よりもずっと早く、いきなり相手のライフの半分を持っていってしまうことも多々あるだろう。
相手のプレインズウォーカーに対しても、プレイヤーに攻撃しつつ誘発した《突然の衝撃》能力を相手のプレインズウォーカーに与えることができるので、プレインズウォーカーが幅を利かせている今の環境には頼もしい能力だ。
これからはプレインズウォーカーと手札の枚数を常に気にしながらプレイしなければならないかもしれない。
ライフ回復能力も、クリーチャー同士の対決ならダメージレースという概念が馬鹿らしくなるほどの回復量だ。
褒めるところしかないような能力だが、あえて欠点を挙げるとするなら、
- 盤面には(プレインズウォーカーがいる場合を除いて)ほぼ影響しない
- カードアドバンテージは取れない
等がある。
もっとも、多大なライフアドバンテージをを獲得できるので、上の欠点は些細な問題な気もするが・・・。
スタンダードへの影響
ではこのカードが今のスタンダードにどんなインパクトを与えるかを考えてみたいと思う。
当然のように《石鍛冶の神秘家》が入ったデッキ、「Caw-Blade」や「ボロス」等のデッキでは、《石鍛冶の神秘家》からの選択肢として投入されるのは間違いない。
それにより赤単のような、純粋にライフを攻める赤いデッキは環境から駆逐されてしまう恐れもある。
プロテクションとライフ回復という2方面が厳しい赤単からしたら、《戦争と平和の剣》は悪夢のようなカードだろう。
またプロテクション(白)という観点から見て、《石鍛冶の神秘家》デッキに対して強いという側面もある。
《戦争と平和の剣》を使う立場のデッキの最大の敵は、相手の使う《戦争と平和の剣》なのだ。
これらのデッキの除去カードの取捨選択にも影響が出るだろう。
後から引いてくる《糾弾》や《稲妻》はプロテクション(赤)と(白)の前に沈黙してしまう。
とはいえメインボードから《神への捧げ物》のようなアーティファクト対策を取るのもナンセンスだ。
それらを加味して、これからは相手の装備品ごとクリーチャーを抑えることができる《転倒の磁石》が今まで以上に活躍するのではないだろうか。もっとも《転倒の磁石》はあくまでも時間を稼ぐだけなので、根本的な解決にはならない。
根本的に解決したいのなら《内にいる獣》などが良さそうだが、果たしてそのデメリットがどう出るか・・・。
何にせよ《戦争と平和の剣》の加入により今のスタンダードも大きな変化を見せそうだ。
今から次のスタンダード環境が楽しみである。
そして、これから
最後にこれだけは言っておきたい。
《戦争と平和の剣》は強い!
そんなことは言われなくても分かっているという方はたくさん居ると思うが、口をすっぱくして何度でも言おう。
《戦争と平和の剣》は強い!!
個人的には今までの四振りの剣のどれよりも強いと思っている。
何といっても能力が誘発したときのライフの推移が激しすぎる。
ただの1/1クリーチャーが《戦争と平和の剣》を持って殴るだけで、7点から8点程度のダメージを与え、更にライフを回復するというのはおかしな話だ。
《石鍛冶の神秘家》からの動きは言うまでもないが、《石鍛冶の神秘家》を使わないようなクリーチャーデッキにただ入れるだけでも水準以上の働きをしてくれるだろう。
個人的には4枚入れてもいいくらいだと思っている。
《戦争と平和の剣》を複数枚引いても、能力の重複がそのまま勝ちに繋がる能力というのがその理由だ。
これは「未来」の話なので断定はできないが、《戦争と平和の剣》は環境を支える1枚になると予想している。実際に蓋を開けてみないと分からないことではあるが、この予想が大きく外れることはないだろう。
《戦争と平和の剣》の未来の話はここまでだ。
今回の未来の話が本当になるかどうかは、これを読んでいる貴方自身で確認してほしい。
これは遠い未来の話ではなく、すぐに訪れる未来の話なのだから。
ではまたどこか別の未来で。
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