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戦略記事

市川ユウキの「プロツアー参戦記」

プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スーパー・ヒーローズ』 前編

市川 ユウキ


 こんにちは!市川(@serra2020)です!今回はプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スーパー・ヒーローズ』の調整記と大会レポートを綴っていこうと思います。

 そして、これはネタバレというか、こちらを読まれている皆様にも既にご存じの方が多いと思いますので先に書きますが……なんと、私、市川。

 

プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スーパー・ヒーローズ』を見事優勝しました!

 普段は最後に結果を書くのですが、今回は素知らぬ顔(というかテンション)で記事を仕上げることも難しそうなので、それ前提でお読み頂けると助かります。

 前編では、7月17日から7月19日までに行われたプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スーパー・ヒーローズ』に向けての調整記をお送りします。よろしくお願いします!
 

0.近況

 前々回のプロツアー『ローウィンの昏明』で10勝6敗、前回のプロツアー『ストリクスヘイヴンの秘密』では9勝7敗の成績を残し、今回のプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スーパー・ヒーローズ』、来年2月に行われるプロツアー『ノークティス:深淵の水府』の権利を獲得しました。

 

 プロツアー『久遠の終端』で1年以上ぶりにプロツアーにカムバックしてきた私ですが、結果に浮き沈みもありつつ、なんとかプロツアーという列車に乗り込めました。

 ただ、一寸先は闇。現行のシステムだと初日落ち(プロツアーは4勝4敗以上で二日目に進出できます)した場合ポイントの加算はゼロ……つまりプロツアーに出ていないのと同義で、一気に継続参戦が難しくなります。

 

 また、今回の結果次第で世界選手権の権利にも影響して来ます。

 今シーズンのプロツアー成績は10勝、9勝でAMPという世界選手権への出場に関わってくるポイントは39点(トーナメント毎に最初の3勝分が引かれたマッチポイントが加算されます)。

 AMPでの世界選手権への参加条件は上位32人。去年のボーダーラインが51点であったことを考えると、今回で11点以上の加算。つまり7勝9敗以上するとセーフティなラインであると考えられます。

 プロツアートレインに乗り続け、世界選手権へ出るにあたって必要な最低条件は初日抜け。かつ、もちろん好成績を目指して準備をはじめました。
 

1.モダン

ティムール続唱(カスケード)
サンプルリスト - 「ティムール続唱」 / モダン[MO] [ARENA]
1 《轟音の滝
1 《迷路庭園
1 《商業地区
4 《沸騰する小湖
4 《霧深い雨林
4 《樹木茂る山麓
1 《湧霧の村
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《踏み鳴らされる地
1 《蒸気孔
1 《繁殖池
2 《
1 《
1 《
-土地(24)-

4 《量子の謎かけ屋
4 《緻密
4 《断片無き工作員
2 《幽愁
-クリーチャー(14)-
4 《否定の力
4 《衝撃の足音
4 《暴力的な突発
4 《死亡 // 退場
4 《火 // 氷
2 《朦朧への没入
-呪文(22)-
2 《兄弟仲の終焉
2 《活性の力
3 《神秘の論争
2 《避け難い裏切り
3 《忍耐
3 《黒曜石の焦がし口
-サイドボード(15)-


 今回の構築フォーマットはスタンダードではなく、モダンです。

 モダンはスタンダードと比較すると使用できるカードプールが広く、新セットの影響を受け辛いフォーマット。そのためカードの禁止や解禁で環境を動かすことが多く、今回はプロツアー前にどちらも行われました。

 

 まず《暴力的な突発》。

 これによって長らくトップティアから退場していたティムール続唱、リビングエンドが復活。

 ティムール続唱は私が大好きなアーキタイプです。2021年に行われたMOCSで優勝させてもらったデッキで、非常に思い出深いです。

 ですが、使用した感触は非常に悪い。

 

 まず、退場している間に加入した汎用的なサイドボードカードが非常に辛い。

 《苛立たしいガラクタ》が戦場にあれば続唱ができませんし、《記憶への放逐》は続唱の誘発そのものをカウンター可能です。丁寧に複製も付いているので、カウンターでバックアップすることもままなりません。

 

 その上、現代のモダン(二重表現)において3ターン目にサイを2体出した程度では勝てません。『モダンホライゾン3』で登場以来、他のフェアデッキを粉々にして来た《魂の導き手》と《オセロットの群れ》コンビにまるで歯が立ちませんでした。

ボロス・エネルギー
CMack_ - 「ボロス・エネルギー」
Magic Online Modern Challenge 64 優勝 / モダン(2026年6月22日)[MO] [ARENA]
1 《栄光の闘技場
4 《乾燥台地
1 《ダルコヴァンの露営地
2 《優雅な談話室
4 《溢れかえる岸辺
4 《湿地の干潟
1 《
3 《平地
3 《聖なる鋳造所
-土地(23)-

4 《ナカティルの最下層民、アジャニ
4 《魂の導き手
4 《オセロットの群れ
4 《敏捷なこそ泥、ラガバン
2 《歴戦の紅蓮術士
3 《勝利の楽士
-クリーチャー(21)-
2 《血染めの月
3 《鏡割りの寓話
4 《電気放出
3 《ゴブリンの砲撃
1 《稲妻
1 《ロクの伝説
2 《スレイベンの魔除け
-呪文(16)-
1 《塔の長官、ボロミア
1 《天界の粛清
2 《真昼の決闘
3 《黒曜石の焦がし口
1 《外科的摘出
1 《ロクの伝説
1 《苛立たしいガラクタ
2 《Tear
3 《空の怒り
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)
   


 エネルギーはエースで4番だった《火の怒りのタイタン、フレージ》がとうとう禁止に。しかし、ボロス・エネルギーは相変わらず勝ちまくっていました。

 《火の怒りのタイタン、フレージ》はミラーを筆頭としたフェアマッチで最も強いカードでした。そのため、この禁止はある種の紳士協定のようなもので、ミラーマッチでお互いに入れられないのであれば他のマッチに上がるカードを入れられるようになります。

 

 上記のリストには入っていませんが、最終的には余ったスロットに《イーオスのレインジャー長》を3枚程度入れるのが主流になっていきます。

 これは生け贄に捧げた時の能力がベルチャーやネオブランドなどの、エネルギーが苦手としているコンボデッキに対して効果的で、《火の怒りのタイタン、フレージ》がないならないなりに相性が良くなるマッチアップがあるというのが興味深いトピックでした。

イゼット果敢
lilianna1989 - 「イゼット果敢」
Magic Online Modern Challenge 32 優勝 / モダン(2026年7月12日)[MO] [ARENA]
2 《乾燥台地
2 《血染めのぬかるみ
1 《焦熱島嶼域
3 《
3 《沸騰する小湖
3 《蒸気孔
1 《轟音の滝
3 《樹木茂る山麓
-土地(18)-

4 《ドラゴンの怒りの媒介者
4 《僧院の速槍
4 《精鋭射手団の目立ちたがり
-クリーチャー(12)-
4 《コーリ鋼の短刀
4 《表現の反復
4 《溶岩の投げ矢
4 《稲妻
4 《ミシュラのガラクタ
4 《変異原性の成長
4 《定業
1 《邪悪な熱気
1 《暴力的衝動
-呪文(30)-
4 《記憶への放逐
1 《洪水の大口へ
1 《溶融
1 《神秘の論争
1 《呪文貫き
2 《呪文嵌め
2 《トーモッドの墓所
3 《邪悪な熱気
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)



 その《火の怒りのタイタン、フレージ》がいなくなり、フェアミラーで弱くなっているところを突いているのがイゼット果敢です。

 

 《火の怒りのタイタン、フレージ》がいなくなったことにより、《精鋭射手団の目立ちたがり》を計画したり、《表現の反復》でリソースを増やしたりなどのゲームを長引かせる動きに裏目がなく、相性が逆転しました。

 

 加えて、イゼット果敢は見た目よりキルターンが遅いデッキで、アミュレットのようなコンボデッキを苦手としていましたが《睡蓮の原野》の禁止によってそれが弱体化したのも追い風です。

親和
WanderingOnes - 「親和」
Magic Online Modern Challenge 32 優勝 / モダン(2026年6月21日)[MO] [ARENA]
4 《焦熱島嶼域
2 《
2 《シヴの浅瀬
4 《尖塔断の運河
1 《蒸気孔
4 《ウルザの物語
-土地(17)-

4 《河童の砲手
4 《ピナクルの特使
-クリーチャー(8)-
3 《ギックスのかぎ爪
4 《仕組まれた爆薬
3 《金属の叱責
4 《ミシュラのガラクタ
4 《オパールのモックス
1 《真髄の針
4 《定業
1 《影槍
1 《朦朧への没入
1 《スケートボード
4 《トーモッドの墓所
4 《武器製造
1 《溶接の壺
-呪文(35)-
1 《血染めの月
3 《記憶への放逐
1 《減衰球
2 《湖に潜む者、エムリー
2 《感電破
1 《ハーキルの召還術
1 《神秘の論争
1 《大梟の小夜曲
1 《石の脳
1 《苛立たしいガラクタ
1 《鞭打ち炎
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)
   


 禁止改定の影響を受けなかった親和は、より存在感を放っていました。

 

 なぜ解禁されたのか不思議な0マナ加速である《オパールのモックス》を筆頭に、《ピナクルの特使》や《武器製造》を絡めて2ターン目にすこぶる対処し辛い《河童の砲手》が出ることもしばしば。

 

 《ウルザの物語》による持久力、《金属の叱責》による対応力を備え、まさに最強に見える親和。チーム内に親和マスターたる井川(良彦)さんがいるのも大きく、困ったら親和を使えば良いと考えているチームメイトも多かったです。

御霊の復讐
Rvng - 「御霊の復讐」
Magic Online Modern Challenge 32 優勝 / モダン(2026年7月7日)[MO] [ARENA]
3 《溢れかえる岸辺
1 《神無き祭殿
1 《神聖なる泉
1 《
4 《湿地の干潟
1 《行き届いた書庫
1 《草むした墓
1 《平地
4 《汚染された三角州
1 《薄暗い裏通り
1 《
1 《地底街の下水道
1 《湿った墓
-土地(21)-

4 《偉大なる統一者、アトラクサ
4 《ファラジの考古学者
2 《グリセルブランド
4 《超能力蛙
3 《孤独
2 《スーペリア・スパイダーマン
-クリーチャー(19)-
4 《儚い存在
2 《信仰の繕い
2 《否定の力
4 《御霊の復讐
1 《冥途灯りの行進
2 《異世界の凝視
2 《虹色の終焉
3 《思考囲い
-呪文(20)-
4 《記憶への放逐
3 《神秘の論争
2 《量子の謎かけ屋
1 《孤独
1 《呪文嵌め
1 《時を解す者、テフェリー
3 《空の怒り
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)



 前回のモダンプロツアー『久遠の終端』でも使用した御霊の復讐ですが……今回は非常にネガティブでした。

 

 一番大きかったのが親和の存在です。

 現在の親和のリストは《メムナイト》や《羽ばたき飛行機械》のような0マナのクリーチャーを廃し、《トーモッドの墓所》や《仕組まれた爆薬》などの相手によって劇的に効く0マナのカードを採用するアプローチを採っています。

 その《トーモッドの墓所》は御霊の復讐にクリティカルヒット。0マナ設置で隙もなく、しかもそれを突破する術はこのデッキにはありません。

 

 そのため、コンボプランは諦めてフェアプランを通そうとしますが、そこは親和の土俵。《河童の砲手》は場に出てしまうと対処し辛いですし、《ウルザの物語》も与しづらいカラーリング。

 

 御霊の復讐のサイドに入っている《空の怒り》も、他でエネルギーが出るわけではないので十分な効果を発揮しません。先んじて《武器製造》を置かれてしまうと4マナを要求されますし、《河童の砲手》をプレイされてしまえば他のアーティファクトを一掃しても意味がない。

 

 現在流行っているリストにも懐疑的でした。最近は《量子の謎かけ屋》を廃して《ファラジの考古学者》に回帰してコンボルートを強化している形が主流ですが、これが感触が悪い。

 フェアラインになったときの《ファラジの考古学者》と《量子の謎かけ屋》の差分は圧倒的ですし、単純に《ファラジの考古学者》でカードをヒットするには非クリーチャー呪文の枚数が足りていないと感じました。

ルビー・ストーム
azax - 「ルビー・ストーム」
Magic Online Modern Challenge 64 優勝 / モダン(2026年623日)[MO] [ARENA]
3 《乾燥台地
3 《血染めのぬかるみ
2 《優雅な談話室
1 《宝石の洞窟
2 《
1 《聖なる鋳造所
3 《沸騰する小湖
1 《蒸気孔
1 《轟音の滝
2 《樹木茂る山麓
-土地(19)-

4 《モンスーンの魔道士、ラル
-クリーチャー(4)-
4 《捨て身の儀式
2 《不可能の一瞥
4 《ヘックス・マジック
4 《魔力変
3 《炎の中の過去
4 《発熱の儀式
4 《無謀なる衝動
4 《ルビーの大メダル
2 《ヴァラクートの覚醒
2 《願い
4 《レンの決意
-呪文(37)-
1 《血染めの月
1 《兄弟仲の終焉
1 《巣穴からの総出
1 《炎魔法
3 《狼狽の嵐
1 《電位式リレー
1 《ぶどう弾
1 《炎の中の過去
3 《虹色の終焉
2 《Tear
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)
  


 新カード《ヘックス・マジック》の加入によって『マジック:ザ・ギャザリング|マーベル スーパー・ヒーローズ』発売時に話題の中心となったルビー・ストーム。

 実際、以前から採用されていた《不可能の一瞥》はかなり微妙なスロットに感じていたので、そこがアップデートされるなら可能性があります。

 

 しかし感触は×。

 イゼット果敢の隆盛も含めて、白いデッキはサイドボードに《真昼の決闘》を複数枚採用するのが標準になっていますし、それが採れないデッキは《減衰球》や《三なる宝球》をプレイしてきて、相当意識されているなという印象。

 《ヘックス・マジック》でルビー・ストームも確かに強化されているとは思いましたが、革新的なほどかと言うとそれほどでもなく、それでいて環境のガードが上がりきっていて、使いたいとは全く思えませんでした。

ボロス土地破壊
McWinSauce - 「ボロス土地破壊」
Magic Online Modern Challenge 96 トップ4 / モダン(2026年7月12日)[MO] [ARENA]
1 《アーデンベイル城
3 《コーリ山の僧院
4 《解体爆破場
4 《廃墟の地
2 《
4 《平地
2 《錆付谷の橋
3 《聖なる鋳造所
2 《沈んだ城塞
-土地(25)-

4 《孤独
-クリーチャー(4)-
2 《アベンジャーズ解散
4 《浄化の野火
4 《浸食作用
3 《電気放出
4 《真昼の決闘
3 《流刑への道
4 《自由の代価
2 《ロクの伝説
1 《神の怒り
4 《空の怒り
-呪文(31)-
2 《跳ねる春、ベーザ
2 《天界の粛清
1 《目覚めた猛火、チャンドラ
1 《孤児護り、カヒーラ
2 《一時の猶予
4 《安らかなる眠り
2 《Tear
1 《神の怒り
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)
  


 《浸食作用》、《自由の代価》と、《流刑への道》と《浄化の野火》の5~8枚目のカードが増えたことによって現れた新進気鋭のモダンデッキ、それがボロス土地破壊です。

 モダンのデッキは《乾燥台地》のような通称フェッチランド、《聖なる鋳造所》のような通称ショックランドがある関係から基本土地の枚数はスタンダードなどと比べると少なく、大体のデッキが1~3枚程度になっています。

 

 そのため、《廃墟の地》や《解体爆破場》で特殊土地を破壊して基本土地を持ってこさせつつ、それらを《自由の代価》などで破壊していくとあっという間に相手の基本土地が枯れ、《自由の代価》と《浄化の野火》が「対戦相手の土地を破壊し、1ドロー」するスペルとなってしまうのです。

 

 《電気放出》+《空の怒り》パッケージがフェアデッキに強く、苦手なコンボデッキには《真昼の決闘》や《安らかなる眠り》などの白の優秀なヘイトパーマネントで対抗する、その割り切った構成に好感が持てます。

 

 問題点は、既にこのデッキが世に出回っていること。

 基本土地を純増することによってわかりやすく勝率が上げられるこのマッチを見越して、世のモダンデッキ全てが今までのリストより基本土地を1~2枚程度増やしていました。

 これらの変更はボロス土地破壊にとって死活問題。《廃墟の地》や《流刑への道》で基本土地を持ってこさせてから《浄化の野火》などで相手のマナ基盤を破壊するアプローチなので、“残機”とも形容される対戦相手の基本土地の枚数が増えていくと、みるみる勝率が下がっていきます。

 正直、出てくるのが早すぎた。もしこのデッキがプロツアーでお披露目されていたら躍進していたのは想像に難くありません。

 その他、エルドラージ・トロン、アミュレット・タイタン、繁殖鱗コンボなど、数多のデッキをチームで検証していく中、チームが注目したデッキは……

八百長試合エルドラージ(エルドラージ・ランプ)
aspiringspike - 「エルドラージ・ランプ」
Magic Online Modern Challenge 64 トップ8 / モダン(2026年5月25日)[MO] [ARENA]
1 《ドライアドの東屋
4 《エルドラージの寺院
5 《
1 《幽霊街
1 《苔汁の橋
4 《ウギンの迷宮
-土地(16)-

4 《運命を貪るもの
4 《フレイアリーズの信奉者
4 《約束された終末、エムラクール
4 《ロナスの狂信者
4 《まどろみのトラッジ
4 《まき散らす菌糸生物
-クリーチャー(24)-
4 《八百長試合
4 《緑の太陽の頂点
4 《コジレックの命令
4 《邪悪鳴らし
4 《変わり樹の共生
-呪文(20)-
1 《食らいつく変わり身
1 《溜め込み屋のアウフ
3 《忍耐
3 《歴史の彼方
4 《難題の予見者
3 《三なる宝球
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)



 まさかの、《八百長試合》型のエルドラージデッキでした。

 

 このデッキはモダンの有名配信者、aspiringspike氏発案のデッキで、1マナ6/6のスタッツの《まどろみのトラッジ》によって登場しました。1マナでプレイした場合、麻痺カウンターが乗って出るので戦闘には参加できませんが、《八百長試合》のカウンターの乗せ先としては最適です。

 《ウギンの迷宮》を絡めれば最速で2ターン目に《約束された終末、エムラクール》を秘匿からプレイすることが可能です。

 

 その他、《ロナスの狂信者》から《まき散らす菌糸生物》などのランプ要素も。《まどろみのトラッジ》はここでも大活躍で、《ロナスの狂信者》から4マナ捻出できるようになり、手札から《約束された終末、エムラクール》をプレイする展開もままあります。

 調整初期に平山(怜)さんが見つけてきて何回かプレイするも、特に良い感触を得ず一旦チーム調整からフェードアウトします。

 

 その後、チーム調整の過渡期に岡井さんが、対親和を考えて《活性の力》がサイド後プレイ出来るモダンのデッキが良いと考えたところにこのデッキが再浮上します。

回転

 初期リストから《運命を貪るもの》や《変わり樹の共生》などが抜けたり……

回転

 《八百長試合》の当たり兼通常キャストも可能な《嵐の目、ウギン》。緑マナでありつつ《ウギンの迷宮》の追放コストにもなる《真実を溺れさせるもの》(たまにプレイするとそれなり)を採用したり。

行弘 賢/Ken Yukuhiro - 「エルドラージ・ランプ」
プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スーパー・ヒーローズ』 / モダン(2026年7月17日~7月19日)[MO] [ARENA]
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《魂の洞窟
1 《ドライアドの東屋
4 《エルドラージの寺院
5 《
1 《宝石の洞窟
1 《苔汁の橋
4 《ウギンの迷宮
-土地(18)-

4 《フレイアリーズの信奉者
2 《真実を溺れさせるもの
4 《約束された終末、エムラクール
4 《ロナスの狂信者
4 《まどろみのトラッジ
4 《まき散らす菌糸生物
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ
-クリーチャー(24)-
4 《八百長試合
4 《緑の太陽の頂点
4 《コジレックの命令
4 《邪悪鳴らし
2 《嵐の目、ウギン
-呪文(18)-
3 《虚空の杯
1 《四肢切断
1 《長老ガーガロス
2 《忍耐
3 《活性の力
1 《宝石の洞窟
2 《難題の予見者
2 《三なる宝球
-サイドボード(15)-


 《》が何枚あればボロス土地破壊に耐えられるか検証したり、その結果マナベースにフリースロットが1枚あるから《宝石の洞窟》を採用したり。サイド後の《記憶への放逐》対策で《緑の太陽の頂点》から持ってこられるフィニッシャーとして《長老ガーガロス》を採用するなどしてデッキが毎日激変。

 その過程で今回トップ8に入った行弘さんを筆頭に、ひとり、またひとりとチームメイトが調整に参加していき、加速度的にデッキがブラッシュアップしていくさまは見ていて痛快でしたね。

 最終的にチーム、森山ジャパンの総勢15名のうち半数以上の8名が使用する、チーム使用者最多のチームデッキとなりました。
 

2.使用デッキ

市川ユウキ/Yuuki Ichikawa - 「シミック新生化(ネオブランド)」
プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スーパー・ヒーローズ』 / モダン(2026年7月17日~7月19日)[MO] [ARENA]
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《繁殖池
1 《溢れかえる岸辺
2 《
3 《迷路庭園
1 《
4 《霧深い雨林
1 《沸騰する小湖
1 《吹きさらしの荒野
-土地(15)-

4 《アロサウルス乗り
1 《偉大なる統一者、アトラクサ
2 《フレイアリーズの信奉者
1 《忍耐
2 《気前のよいエント
2 《暴走暴君、ガルタ
1 《グリセルブランド
1 《わめき騒ぐマンドリル
1 《終わらぬ歌、ウレニ
1 《歓楽の神、ゼナゴス
-クリーチャー(16)-
1 《橋仕掛けの戦い
4 《記憶への放逐
4 《異界の進化
2 《自然の要求
4 《新生化
3 《否定の契約
4 《次元の創世
1 《定業
4 《召喚士の契約
2 《夏の帳
-呪文(29)-
1 《忌まわしき眼魔
1 《大修道士、エリシュ・ノーン
1 《わめき騒ぐマンドリル
1 《洪水の大口へ
4 《神秘の論争
2 《自然の要求
1 《否定の契約
2 《稲妻罠の教練者
2 《夏の帳
-サイドボード(15)-


 そんな中私が使用したのは……そう、愛するネオブランドでした。

 理由を説明します。

メタゲーム上のポジションが良い

 去年のプロツアーで使用しなかった理由はポジションの悪さ。

 

 具体的にはベルチャーと御霊の復讐を乗り越えられないという点でした。

 しかし、現在は状況が一変。ベルチャーは親和や《イーオスのレインジャー長》を採用したボロス・エネルギーを乗り越えられずほぼ絶滅。御霊の復讐に関しては、まだメタゲーム上に存在はしますが、数こそ去年と比べると大幅に減っています。

 また、環境トップと想定している親和にゲームプランが立たず、トーナメントの負け組になるのではないかと考え、ここの不利はある程度看過することにしました。

回転

 また、親和をターゲットとしたデッキ。具体的にはストームや繁殖鱗コンボなどが直前週に行われた大型大会、Magic Online Modern Showcase Challengeで台頭して来ました。

 この2つに対してキルターンの早いネオブランドは有利に立ち回れるため、この結果もネオブランドをプレイしようと考えていた自分には追い風でした。

 

 また、直近でネオブランドが全く勝っていなかったのも重要でした。

 ネオブランドはピンポイントな対策の上から勝てるほどのデッキ強度はありません。《封じ込める僧侶》や《墓掘りの檻》がプレイされるのが一般的なタイミングで勝つことは難しく、狙いを定めてプレイする必要があります。

リストの細かいアップデート
 

 一年前に使用してからこのデッキは細かいアップデートが幾度か行われました。

 一例として挙げると、《忍耐》の採用。《忍耐》はそれ単体として《御霊の復讐》やストームなどの墓地を使うデッキへの対策として優れていますが、自分のデッキを修復するカードとしても機能します。

 

 《暴走暴君、ガルタ》は主に《アロサウルス乗り》を《新生化》した時のオプションとして採用されています。

 コンボ達成後の手札に《召喚士の契約》が残っていたらそれから《歓楽の神、ゼナゴス》にアクセスすると《暴走暴君、ガルタ》で場に出すことができ、《歓楽の神、ゼナゴス》の誘発で《暴走暴君、ガルタ》に修整を与え、そのターンに勝つことができます。

 

 その他にも手札に来た《グリセルブランド》などの大型クリーチャーをプレイすることも可能です。

 概ねこのデッキは《アロサウルス乗り》から《グリセルブランド》にアクセスするデッキですが、《グリセルブランド》を複数採用するより、採用枚数を絞って《暴走暴君、ガルタ》を入れた方がお得です。

 《暴走暴君、ガルタ》と手札に来てしまった《グリセルブランド》を同時に出すこともできますし、《暴走暴君、ガルタ》は緑色のカードなので《アロサウルス乗り》のコストに充てられますからね。

 

 なので、《暴走暴君、ガルタ》は初期のリストは3枚採用されていましたが、現在は2枚に枚数を抑えて代わりに《忍耐》が1枚採用されています。

 例えば《グリセルブランド》で7枚引いたところに《暴走暴君、ガルタ》が2枚来てしまった場合などはディスカードで《原初の飢え、ガルタ》を捨て、《忍耐》でライブラリーに戻せばまた《新生化》で《暴走暴君、ガルタ》をプレイできるので、通常プレイで強い《忍耐》を入れた方がこれまたちょっとお得なのです。

 

 また、サイドボードに《稲妻罠の教練者》と《忌まわしき眼魔》を採用。

 このコンビネーションはサイドボード後のカウンターや手札破壊があるマッチアップや、《苛立たしいガラクタ》や《真昼の決闘》などのヘイトパーマネントを掻い潜るのに効果的です。

 もともとは《氷牙のコアトル》と《忌まわしき眼魔》で発明されたこのシステムですが、ネオブランドのリストをチェックしていたところそのスロットを《稲妻罠の教練者》にしているリストを見つけ、一目惚れ!

 

 《稲妻罠の教練者》は《氷牙のコアトル》と比べると瞬速がないこと、緑色のカードでないことがデメリットですが、1/2というスタッツが良い。《オセロットの群れ》をブロックできますし、《オークの弓使い》で射抜かれません。

 また、カード4枚の中から1枚手札に加える能力と、1ドローでは前者のほうがずっと良い。《稲妻罠の教練者》で手札に加えたいカードは概ね《新生化》か《異界の進化》のような仕掛けるカード、もしくは《夏の帳》や《神秘の論争》などのそれらをバックアップするカードに限定されますからね。

プレイに慣れている
 

 え?《アロサウルス乗り》を《新生化》して《グリセルブランド》出すだけのデッキでしょ?と疑問に思った人もいるかと思いますが、このデッキ……間違いなくプレイが出ます。

 大振りで一度しかコンボに向かえないからこそ、一つのプレイで生死を分かつとも言えるのです。

 

 例えば《召喚士の契約》経由で《新生化》を唱えなければいけない手札。手札に《記憶への放逐》がない場合、それを《グリセルブランド》の2回の起動、14枚ドローで引ける確率はおよそ75%、4回トライしたら1回は契約死してしまいます。

 

 そのため、《次元の創世》で回し打つこともあります。《次元の創世》が2枚目の《召喚士の契約》や《アロサウルス乗り》、《歓楽の神、ゼナゴス》などに変わったら《召喚士の契約》のコストを払わずに勝つこともありえます。

 

 その他、《霧深い雨林》が2枚、《新生化》はあるが《アロサウルス乗り》や《召喚士の契約》などがない手札をキープするのか、など。

 

 これも様々な加点減点要素がありキープしたりしなかったりします。

 例えば十分な緑色のカードが手札にない場合はそこから緑色のカード、《アロサウルス乗り》と引かなければいけませんし、逆に《否定の契約》と《記憶への放逐》があり《アロサウルス乗り》や《召喚士の契約》を引いた瞬間に一気に最強の手札に変わり得るなど、要素が多分にあります。

 このように定型化できない要素もそれなりにあって、世間が思っているよりプレイの影響が出るデッキです。

 これらの要素から、今回の使用を決意しました。
 

3.リスト解説

 既存のリストと異なる要素だけ解説します。

メインデッキ:《フレイアリーズの信奉者》2 / 《橋仕掛けの戦い》1 / 《気前のよいエント》2

回転

回転

 マナベースのフレキシブルなスロット。基本的に通常プレイする分には《橋仕掛けの戦い》が最も強力です。《グリセルブランド》で引いた7枚にあれば、相手のクリーチャーを除去しつつ更にライフを獲得することが可能ですからね。

 とはいえ、《フレイアリーズの信奉者》は《召喚士の契約》でサーチできる関係から何枚かはデッキに必要になります。通常ドローで《フレイアリーズの信奉者》を引きつつ、3マナ目として《フレイアリーズの信奉者》を《召喚士の契約》でサーチするパターンがあるので2枚がミニマムだと考えています。

 逆に《フレイアリーズの信奉者》の3枚目をサーチするパターンはかなりのレアケース、例えば《異界の進化》+《夏の帳》と動く必要があって《フレイアリーズの信奉者》を2枚通常ドローしているなどの状況になりますのでカットできると思います。

 

 《気前のよいエント》も《フレイアリーズの信奉者》と似た役割を有しています。《召喚士の契約》でサーチしてきて、サイクリングで《繁殖池》にすることによって《召喚士の契約》から青マナを調達することができます。

 一方で、《気前のよいエント》を通常ドローしていれば青マナは確保できているので《気前のよいエント》2枚目は先程の《フレイアリーズの信奉者》の2枚目と同じ要素を持っていません。

 ただ、ここはシンプルな青マナカウントとして《橋仕掛けの戦い》の2枚目より優先することにしました。

 ここに関しては最後まで悩んだところでした。実際に一緒にネオブランドを使用したチームメンバーでも差分のある箇所です。

メインデッキ:《自然の要求》2
 

 《自然の要求》をメインデッキから2枚採用しました。

 これはチームメイトの平山さんの発案です。親和の増加やボロス土地破壊のメイン《真昼の決闘》、またボロス・エネルギーの《ゴブリンの砲撃》などを鑑みると、メインデッキからプレイすることは理に適っていると感じました。

 

 ここは《夏の帳》との比較ですが、《夏の帳》をメインから4枚採用しなければいけないようなメタゲーム、つまり手札破壊やカウンターが飛び交う環境だと考えるのであれば、そもそもネオブランドをプレイするべきではないと思います。

 

 たまに《自然の要求》を《自然のままに》と散らして採用されているリストもありますが、私は断固反対です。

 

 最も影響が出るマッチアップがドメインズーです。《自然のままに》では《ドラコの末裔》、《力線の束縛》が対象に取れないのでサイドインできません。

 

 その他、対親和戦では《夏の帳》や《記憶への放逐》を経由して《河童の砲手》の護法を突破することがあるのですが、その場合でも《自然のままに》では《河童の砲手》を対象に取れません。

 確かに《自然の要求》のライフゲインで勝てないパターンもあるのですが、そもそも《自然のままに》だとサイドインできる範囲が狭まってしまいます。

サイドボード:《稲妻罠の教練者》2 / 《忌まわしき眼魔》1
 

 サイドの仕掛けカード。《稲妻罠の教練者》はプランにするために4枚採用して試したこともありました。

 しかし、結局変身先である《忌まわしき眼魔》を複数枚採用しないので、多重にドローしたとしても一回しか《新生化》で仕掛けることができません。そのため、カードとして手応えを覚えてはいましたが2枚の採用に抑えました。

 

 この《稲妻罠の教練者》+《忌まわしき眼魔》プランを果たしてどこまでサイドインするべきなのか計りかねたため、文字通り練習中全てのマッチアップでこのパッケージをサイドインしてみました。

 

 その結果、ほとんどのマッチアップでサイドインすることに。《真昼の決闘》や《イーオスのレインジャー長》でこちらを足止めしてくるボロス・エネルギーや……

 

 《苛立たしいガラクタ》で《アロサウルス乗り》に牽制を掛けてくる親和戦など。

 対親和はこちらも《自然の要求》や《神秘の論争》などで1対1交換をしやすく、それゆえに手札を《アロサウルス乗り》用にキープできない事情もあります。

 そのため、手札消費の少ない《稲妻罠の教練者》+《忌まわしき眼魔》システムは思ったより機能します。

 相手の《ウルザの物語》を《自然の要求》で破壊して、《河童の砲手》を《神秘の論争》でカウンターして《忌まわしき眼魔》が完走するパターンは練習中しばしば見受けられ、その状況を「シミック・コントロール」と呼んでいました。

サイドボード:《大修道士、エリシュ・ノーン》1
 

 対ボロス・エネルギー用。《オセロットの群れ》のトークンが横に広がった場合《グリセルブランド》で攻撃した返しに致死ダメージを受けてしまうパターンがあります。

 7マナのカードなので《アロサウルス乗り》を《新生化》しても持ってこられないので、大体《グリセルブランド》で引き増したあとの次弾のカードとなります。

 

 その他繁殖鱗コンボや、サムワイズコンボなど、クリーチャーを軸としたコンボデッキなどにもサイドインでき、1枚のスロットで効用が高いと感じています。

サイドボード:《否定の契約》1
 

 サイドボードに4枚目を用意しました。基本的には《グリセルブランド》をプレイしてターンを返したら負けうるマッチアップ、主にストームやアミュレット戦でサイドインします。

 この辺りに対しては相性は良いものの、このあたりはダイスロールで相性が振れるくらいのマッチアップでもあると考えているので、取りこぼし辛いように採用しました。

 

 普段からこのデッキをプレイしている、自分、平山さんを筆頭にリームリーダーの森山(真秀)さん、宇都宮(巧)さん、井川さんが合流し、チームメンバー5人が使用することになりました。
 

4.まとめ

 

 私の心はかつてないほど穏やかでした。

 モダンで扱い慣れたデッキのメタゲームが良く、プロツアーの準備ができている。このゲームに精通しているプレイヤーであれば、自分の苦手なデッキでも、ポジションが良いと思ったら使うべきだと考えています。

 ですが、それはそれとして自分の愛するデッキが思う存分使える状態であれば、それはやはり最高なのです。

 こういう、あまりにも自分に都合の良いプロツアーも、永くやっていたらあるんだなあ……とぼんやりと思っていました。

 プロツアー出発の一週間前には、自分でネオブランドをプレイする手を止め、チームメンバーの練習を眺めていました。



 ──といったところで前編は終了です。

 後編ではドラフト環境の考察からトーナメントレポートをお届けします。お楽しみに!

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