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コラム

ロン・フォスターの統率者日記

第4回:名古屋にて

ロン・フォスター
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 コマンド・ゾーンにゲストとして参加してきました!

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 読者の皆さん、こんにちは! 今回の記事は、先日のマジックフェスト・名古屋2019前後で特に印象に残っているエピソードや統率者の話題を取り上げたいと思います。いっぱいありますので、前置きは抜きにして早速本題に入りたいと思います。

諮問委員会が増殖を行う

 読者の中にご存知の方も大勢いらっしゃるかと思いますが、統率者をフォーマットとしてまとめているメンバーが4人います。

  • 統率者戦を世界に披露した元ジャッジのシェルドン・メネリー/Sheldon Menery
  • ジャッジポリシーを管理するトビー・エリオット/Toby Elliott
  • カナダのジャッジ代表を務めていたギャヴィン・デュガン/Gavin Duggan
  • そしてウィザーズ社でプロイベントのポリシーを管理するスコット・ララビー/Scott Larabee

 この4人は10年以上統率者ルール委員会(Rules Committee、略してRC)として禁止カードの決定やフォーマットのルール調整を行ってきました。

 去年の秋、RCは世界中に広がりつつある統率者をさらに改善し、より幅広くプレイヤーの意見を反映させるべく統率者諮問委員会(Commander Advisory Group、略してCAG)を発足することにしました。その会員に選ばれた6人は、

  • インターネットでカジュアルプレイヤーの立場に立って「Commanderin' MTG」のポッドキャストの司会をするシヴァム・バット/Shivam Bhatt
  • YouTube番組「Game Knights」の司会者の1人であるジョシュ・リー・クワイ/Josh Lee Kwai
  • カナダ出身ヨーロッパ在住のレベル3ジャッジのシャーロット・セーブル/Charlotte Sable
  • イベント取材&マジック戦略家のアダム・スタイボースキー/Adam Styborski
  • マジック解説者&ヴィンテージスーパーリーグ選手で有名なレイチェル・アグネス/Rachael Agnes

 というメンバーです。諮問委員会はカードを禁止にしたりルールを変更する権限はありませんが、RCでそれが話題となったとき善し悪しを討論して、自分が関わっているコミュニティーの意見を提示したりします。

 マジックフェスト・名古屋と同じ週末に行われていたコマンドフェスト・シアトルで、諮問委員会に新しいメンバーが加わったので、その人物を紹介したいと思います。言うまでもなくこの新しいメンバーは統率者の大ファンで、アメリカ中のイベントに顔を出して統率者をプレイし、試合のことをよくTwitterなどで実況しています。でも、何よりも注目すべきなのはこの人は自分の統率者になりきってプレイをすることです。そう、この人物オリビア・ゴーバー=ヒックス/Olivia Gober-Hicksはプロのコスプレイヤーなのです。

シアトルでCAGに新しく加わったオリビアさんがテイサ・カルロフを演じているところ(中)とRCのシェルドン(左)とスコット

 私が初めてオリビアさんに出会ったのは、数年前のグランプリ・ラスベガスです。オリビアさんはそのころにはもうコスプレにはまっていて、地元だけではなくアメリカ西海岸のコスプレ・コミュニティーのリーダー的な存在になっていて、ノウハウを共用して希望者にコスプレのアドバイスをしたり集会を開いたりしていました。あの時は、かなりガチな《エーテリウム造物師、ブレイヤ》のデッキを使っていたことを覚えています。当然それをプレイするにあたり、統率者であるブレイヤの本格的なコスチュームを身に付けています。目にカラーコンタクトまで付けていて、その不気味さが気になってゲームに集中できなかった私でした。

ブレイヤを演じるオリビアさん

 コスプレイヤーだから超カジュアル派と思われてしまうかもしれませんが、オリビアさんは負けず嫌いで闘魂が強く、常にシナジー満載のデッキを使っています。今後の活躍を期待しています!

ライフはしょせん資源

 マジックというゲームには、いろいろな資源(リソース)があります。一番に思い浮かぶのはマナでしょうが、カードだって資源のひとつです。毎ターンにカードを1枚新しく手札に加えることで、できることが増えます。クリーチャーは攻撃したり防御したり勝敗を左右するリソースです。そして、当たり前と思っているプレイヤーもいるかもしれませんが、ライフもリソースになることがあります。マジックはライフがゼロになったら負けとなるゲームなので、自らライフを削ることは一見不自然な行為と思われるかもしれませんが、実際には最後の1点が残れば勝てるので、それ以外のライフを資源として考えればいろいろ面白いことができるのです。統率者戦では、開始点のライフが個人戦の倍の40点になっているので、なおさらというわけです。

 黒は昔からライフをリソースとして使うカードが多いですよね。もっとも有名なのは《ネクロポーテンス》かもしれませんが、《吸血の教示者》や《ボーラスの城塞》などがあります。

 そして、統率者戦には低コストの全体除去呪文である《毒の濁流》があります。これはライフを支払いさえすればするほど効果をもたらす呪文ですので、どんなに大きいクリーチャーでもライフさえあればやっつけることができます。

 私がプレイしていたテーブルで、《囁き絹の外套》が装備されている《まどろむ島、アリクスメテス》が登場しました。2発の統率者ダメージで負けてしまうから参加プレイヤーはこれを恐れています。周りが「何とかしなくちゃ」と呟いている中で、私が言ったのは「大丈夫。処理できるから、安心していいよ。でも、クリーチャーを出さない方がいいからね」でした。アリクスメテスをコントロールしているプレイヤーに「《滅び》か《苦痛の命令》か」と尋ねられた私は、首をかしげました。「じゃあ、なんだ?……外套がついているから《破滅の刃》みたいに対象を取るものは効かないし…」

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「ライフを12点支払います」


 

相手「あっ、それは……効きますね。」

使える資源を見落としていませんか?

 統率者戦はマジックのカードなら(一部を除き)何でも使えるフォーマットですが、ある程度デッキに使われるカードが型にはまってしまいがちです。ほら、緑なら必ず《森の知恵》を入れるとか、白なら《神の怒り》を入れるとか。

 これは、デッキが安定して戦える一方、いつも同じカードを入れているとマンネリになりやすいですよね。実は使えるカードは過去の大会記録の他にもたくさんあります。例えば、今までエキスパンションと一緒に発売された「プレインズウォーカーデッキ」にしかないカードもあります。たいていの場合、このカードはそのプレインズウォーカーと関連性が高く、スタンダードで使うにはマナ・コストが高すぎますが、ゲームの進展が比較的に遅い統率者戦なら充分戦力になってくれます。

 例えば、《創造の魔道士、ニッサ》。最初のプラス能力はマナが複数出る土地がよく使われる統率者戦ではとても強いですが、クリーチャーをアンタップするメリットもあります。戦闘後に使えば攻撃したクリーチャーをアンタップして事実上警戒持ちにできるし、コストとしてタップまたはアンタップするクリーチャーがあるとその効果がまた使えます。

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 自分は『ラヴニカのギルド』が出たときから、《協約の魂、イマーラ》が統率者であるデッキを使っています。イマーラや《神に寵愛された将軍》の能力と《生存者の野営地》のようなカードとの相互効果を利用してトークンをたくさん出し、《制圧の輝き》を使って相手のブロックできるクリーチャーをタップして殴り倒すのがデッキの基本的な戦略ですが、創造ニッサの能力でこの手順を加速することができます。奥義もハンパじゃない。戦場に出るときの忠誠度が高いためすぐに奥義が使えるようになるし、《森の知恵》や《師範の占い独楽》などライブラリーの一番上のカードが操作できる効果があれば必ず当たります。かなりお勧めです。

 他にも自分がよく使うプレインズウォーカーデッキのカードがあります。《死の使い手、リリアナ》と《毒物の侍臣、ハパチラ》の相性は抜群です。《墓起こし》は墓地を利用するデッキの強い味方です。《謎かけ達人スフィンクス》は青デッキでテンポアドバンテージを取るのに優れています。

 他にあまり使われていないリソースとして、エネルギーがあります。今のところ『カラデシュ』と『霊気紛争』にしか登場していないこのメカニズムは、貯まるのが遅く、結局その2つのセットのカードをたくさん取り入れていないとうまく使えません。そこで、エネルギー・カウンターは戦場に出る際に生産されるので、「戦場に出る」効果を倍にする《冒涜されたもの、ヤロク》と組み合わせてみたらどうかな、と思いました。

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 このデッキに、エネルギーだけではなくアドバンテージを出してくれる『アモンケット』のカルトーシュと試練サイクルも入れています。エネルギーをいっぱい溜めて《獣性を築く者》の能力でビースト・トークンをたくさん出して相手に殴り込むのがよく使う技です。効果がいろいろあって楽しいデッキですが、誘発型能力が多くて処理するのが面倒くさいです(笑)。自分で組んでみたいと思う方、デッキリストを下に載せますのでどうぞやってみてください。

ロン・フォスター - 「ヤロク・デッキ」
統率者:冒涜されたもの、ヤロク / 統率者戦 (2019年11月)[MO]
1 《冒涜されたもの、ヤロク

-統率者(1)-

6 《
7 《
7 《
1 《Bayou
1 《草むした墓
1 《森林の墓地
1 《黄昏のぬかるみ
1 《育成泥炭地
1 《汚れた森
1 《Underground Sea
1 《湿った墓
1 《水没した地下墓地
1 《Tropical Island
1 《繁殖池
1 《内陸の湾港
1 《神秘の神殿
1 《冠水樹林帯
1 《華やかな宮殿
1 《霊気拠点
1 《聖遺の塔
1 《アカデミーの廃墟

-土地(38)-

1 《亢進する亀
1 《霊気急襲者
1 《悪意の大梟
1 《とぐろ巻きの巫女
1 《迷い子、フブルスプ
1 《獣性を築く者
1 《大物狙い
1 《クルフィックスの狩猟者
1 《崇高な飛行士
1 《進化の賢者
1 《彼方地のエルフ
1 《発現する浅瀬
1 《ならず者の精製屋
1 《野生の心、セルヴァラ
1 《亢進するサイ
1 《育殻組のヴォレル
1 《ウッド・エルフ
1 《逆毛ハイドラ
1 《忘れられた古霊
1 《ムル・ダヤの巫女
1 《ピーマの霊気予見者
1 《真面目な身代わり
1 《熟考漂い
1 《混種の頂点、ロアレスク
1 《水底のドルイド、タトヨヴァ
1 《霊気海嘯の鯨
1 《陰謀の悪魔
1 《冥界生まれの密集軍
1 《害悪の機械巨人
1 《首席議長ゼガーナ
1 《霊気烈風の古きもの
1 《霊気風浴び
1 《真実の解体者、コジレック
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ
1 《無限に廻るもの、ウラモグ

-クリーチャー(35)-
1 《ゴンティの策謀
1 《知識のカルトーシュ
1 《伝染病の留め金
1 《抽出機構
1 《成長の季節
1 《野望の試練
1 《サーボの網
1 《織木師の組細工
1 《野望のカルトーシュ
1 《活力のカルトーシュ
1 《製造機構
1 《木霊の手の内
1 《放埒
1 《活力の試練
1 《霊気池の驚異
1 《複製の儀式
1 《知識の試練
1 《伝染病エンジン
1 《ゴンティの霊気心臓
1 《イシュ・サーの背骨
1 《ゼンディカーの復興者
1 《ガラクの目覚め
1 《闇の領域の隆盛
1 《真理と正義の剣
1 《月の賢者タミヨウ
1 《精霊龍、ウギン

-呪文(26)-

意外な統率者と出会う

 これは、今回一番印象に残ったデッキです。統率者は、新しく発売された『エルドレインの王権』に入っている《朱地洞の族長、トーブラン》でした。同じ赤単デッキを使っている者として、すぐに注目しました。デッキに入っているカードは一部しか見えなかったのですが、《災火のドラゴン》のように、統率者の能力に合わせて戦場に出ているクリーチャーやすべてのプレイヤーにダメージを与えるカードが結構ありました。一番驚いたのは、オールド・スクール以外のフォーマットではめったに見かけない《魔力のとげ》でした。私みたいな古参プレイヤーにとって、懐かしさレベルMAXです。このデッキに《上天の閃光》があったらクリーチャーデッキはほとんど止まってしまいますよね。

試合に負けてもゲームに勝つ

 最後に、名古屋で一番の思い出となったことをお話ししたいと思います。日曜日、会場でカジュアルプレイをしていたら、何といきなり目の前にジェイスが現れ、「統率者戦、やりませんか?」と聞かれました。空いている席を指したら、外套を大きく払いながら腰掛けてデッキをテーブルに置きました。見ると、デッキは『マジック・オリジン』で発売されたジェイス模様のスリーブに入っています。統率者は同じセットの《ヴリンの神童、ジェイス》です。そして試合が始まると、何とデッキに使われている基本土地カードはすべて『イクサラン』の「漂流ジェイス」シリーズの島でした。これは徹底的にジェイスだ。

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 この方は、神奈川県からイベントにやってきた柴田敬夫(しばたたかお)さんです。お話を聞いてみると、マジックのストーリーの中で一番好きなキャラクターはやはりジェイスで、カードを買ったりトレードしたりして時間をかけて使っているデッキを完成させたそうです。デッキの中に入っているすべてのカードには「ジェイス」が入っています。『Signature Spellbook: Jace』のカードはもちろん、《ジェイスの文書管理人》や《ジェイスの聖域》など名前に「ジェイス」があるカードばかりです。コスチュームも自作だそうです。

 本人いわく「デッキはあまり強くありません(笑)。ジェイスがないと使いたくないので、使えるカードが限られてしまいます。ジェイスが入っている打ち消し呪文などが少ないですし、青の定番カードがほとんど入れられない。でも、楽しいです。自分が決めた好きなキャラを使っているテーマですから。」とのことでした。

 柴田さんは、マジック、特に統率者というゲームを本当に楽しんでらっしゃると感服しました。対戦型ゲームですのでもちろん勝ちたいですが、勝ち負けにかかわらずゲームを楽しむのがもっとも重要なことだと私は思います。マジック:ザ・ギャザリングの中で一番大事なのは、「ギャザリング」(集まること)です。同じ趣味がある人と集まって、時間を楽しく過ごして、新しい出会いを経験する。だから25年間もマジックは人々を魅了し続けてきたのだと思います。知的な刺激を与えてくれることも大きいけれど、マジックがなかったらおそらく行こうと思わなかった国にも行けたし、アメリカや日本国内をあちこち見てきたし、世界中の国の人と接することができました。これから先の25年間、マジックは一体どんな体験に導いてくれるのでしょうね。


 さて、名古屋の話もまだまだありますが、だいぶ長くなってしまいましたので今回はこの辺で締め括りたいと思います。次回お話しするまで、皆さんもマジックを通して新しい体験ができますように!

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