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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

授業開始 その2

Mark Rosewater
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2026年4月14日

 

 先週『ストリクスヘイヴンの秘密』の先行デザイン・チームと展望デザイン・チームを紹介し、新カードを2枚プレビューし、このセットがどのように生まれたのかという話を始めた。本日は、『ストリクスヘイヴンの秘密』のセット・デザイン・チームと統率者デザイン・チームを紹介し、セット・デザインを通じて『ストリクスヘイヴンの秘密』がどのように変化していったかを見ていこう。


教職員紹介

 話に入る前に、セット・デザイン・チームと統率者デザイン・チームを紹介したい。彼らの人物紹介は、各チームのリード・デザイナーが書いたものである。

クリックして『ストリクスヘイヴンの秘密』デザイン・チームを表示

ストリクスヘイヴンの秘密を明かす

 先週の記事の終わりに、展望デザインは『ストリクスヘイヴンの秘密』をセット・デザインへ引き継いだ。引き継いだ内容は以下の通りである。

  • ストリクスヘイヴンの5つの学部を基にした、5つの対抗色の陣営
  • 「インスタントとソーサリーが重要」テーマ
  • 新たなマスコット・トークン
  • 魔技
    • 「あなたがインスタント呪文かソーサリー呪文を唱えるかコピーするたび」
  • 準備呪文
  • 加点課題
    • 「これがこのターンにあなたが最初に唱えた呪文でないなら」
  • クラス

 セット・デザインが最初に取り組んだのは、おそらくストリクスヘイヴン再訪における最大の課題、すなわちセットの構造が「インスタントとソーサリーが重要」テーマを支えられるようにすることであった。先週説明した通り、ある性質を参照するテーマは、開封比(平均的なブースターにその要素がどれくらい現れるか)が、メカニズム上意味を持たせられるほど十分に高くなければならない。

 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』では、いくつかの手段を使っていた。そのひとつが、トークンを生成する呪文をより多く作ることであった。これらはプレイヤーのデッキ内でクリーチャー枠に入れつつ、インスタントやソーサリーの開封比を高める助けにもなった。展望デザインはこれを復活させたが、クリーチャー・トークンの内容は変更した。セット・デザインはこれを維持しつつ、クリーチャー・トークンが何であるかにはさらに変更を加えることになった。これについては後で詳しく話す。

 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のもうひとつの手段が、講義と履修であった。履修はゲームの外部から講義を持って来られるため、インスタントやソーサリーの密度を高められる。展望デザインは履修メカニズムについて話し合い、これを再登場させない判断をした。「加点課題」メカニズムは、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』との後方互換性のため、講義サブタイプを持つインスタントやソーサリーに載せられていた。

 代わりに、展望デザインはセットに準備カードと準備呪文を入れた。これらは、インスタントやソーサリーが付属したパーマネント呪文を使えるようにするという点で、よく似ている性質を備えていた。セット・デザインは準備呪文を気に入った。核となる機能は変えなかったが、個々のカードを数多くデザインし、ついには神話レアのサイクルまで作った。先週、私はそのうち1枚をプレビューした。

 課題は、準備呪文がどうプレイされるのを望んでいるのかを見極めることであった。準備カードはどの程度の頻度で準備済みの状態で戦場に出るべきか。準備呪文を得るために、どの程度の頻度で一手間を要求すべきか。呪文はどの程度繰り返し使えるべきか。どの場面で古典的なマジックの呪文を使うべきか。1つの準備呪文にはどれだけの文字数を載せられるか。フレームはどうあるべきか。準備呪文は新しい領域であったため、検討すべきことは数多くあったが、それがセット構造の中でどう収まるかという本質は、展望デザインの構造から外れることはなかった。

 このセットにおける最大の変化は、セット・デザインがインスタントとソーサリーの数を増やす別の方法を探したことから生まれた。それまでの戦略の多くは、カードをインスタントやソーサリーに変える方法を見つけるか、追加のインスタントやソーサリーが付属する呪文を作るかであった。だが、別の方法もあった。マジックには、呪文を複数回唱えられるようにするメカニズムがあり、その中で最も有名なのがフラッシュバックである。これはインスタントとソーサリーにしか載らず、呪文を2回唱えられるようにする。これは非常に有用なツールであったため、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の展望デザイン・チームは自分たちのセットにフラッシュバックを入れていた。

 当時、フラッシュバックはまだ落葉樹メカニズムではなかったが、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』にフラッシュバックを入れるのは考えるまでもないことに思えたため、我々はこのセットにメカニズムを加えた。このセットのコードネームは「フェンシング」であった。次の非基本セットである「ゴルフ」は『イニストラード:真夜中の狩り』であった。元祖イニストラードは、フラッシュバックを持つことで非常に有名であった。『イニストラードを覆う影』で再訪した際、我々はフラッシュバックを使わない選択をしたが、開発部は振り返ってみて、これは誤りだったと判断していた。3度目に再訪したとき、我々はフラッシュバックを戻す必要があると判断し、『イニストラード:真夜中の狩り』に入れる計画を立てていた。

 私は『ストリクスヘイヴン:魔法学院』と『イニストラード:真夜中の狩り』の両方がフラッシュバックを持つことは問題ないと思っていた。フラッシュバックは格好いいメカニズムであり、デザイン空間も広く、2つのセットはメカニズム面でもクリエイティブ面でも、かなり異なる形でフラッシュバックを使うはずだと信じていた。しかし私の意見は少数派だったため、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』からフラッシュバックを外すことになった。確かによく噛み合う要素ではあったが、我々には目標を達成するための材料がすでに十分にあった。

 『ストリクスヘイヴンの秘密』のセット・デザイン・チームは、5年前に我々がしたのと同じ発見をした。フラッシュバックはストリクスヘイヴンにぴったりであり、とりわけロアホールドにおいてそうである。ここで別の話に移ろう。

 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』をデザインする際の目標の一つは、『ラヴニカ:ギルドの都』とは異なる2色の陣営セットを作れることを示すことであった。そのために、我々はセットの構造を変えた。各陣営に固有のメカニズムを与えるのではなく、5つの陣営すべてにまたがるメカニズムを作ったのである。そして、それぞれがそれを異なる形で使うことで対比を示した。さらに各学部は、ラヴニカにおける同じ色の組み合わせとは異なるアーキタイプになるようにした。

 ボロス(赤白)は攻撃的であることと結び付けられているため、我々はこのペアの別の側面を見せることに興味があった。ロアホールドは歴史の学部であったため、我々はこの陣営に墓地を気にするようにさせたかった。白は墓地にある程度のメカニズム的つながりを持っている(黒と緑に次ぐ3番手である)。赤は墓地とのつながりがごく薄い。赤白に墓地を気にさせるのは難題であった。最終的に我々は、墓地から何かが離れることを気にする方向へと焦点を絞った。フラッシュバックが非常に魅力的だった理由のひとつがそこにある。

 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』が発売されたとき、赤白がこれほど異なるプレイ・パターンを持っていたことは、プレイヤーに大いに受けた。赤白アグロはおそらく我々が最もよく採用する2色アーキタイプであるため、この変化球は好評だったのである。

 『ストリクスヘイヴンの秘密』発売にあたって、ロアホールドには、ふだんの赤白では難しいことをやってくれるという高い期待が寄せられていた。「インスタントとソーサリーが重要」テーマへの支援を本当に必要としているセットにおいて、フラッシュバックがロアホールドに完璧だと気づいたことで、セット・デザインは『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の展望デザイン・チームが到達したのとまったく同じ地点へたどり着いた。ただし今回は、フラッシュバックは落葉樹メカニズムとなっており、他のセットで使われることを誰も心配していなかった。

 当初、フラッシュバックは5色すべてに入れ、赤と白にだけ少し多めに与えていた。だが時間が経つにつれ、これが最もうまく機能するのは赤白だけの要素にした場合だと気づいた。そこから、メカニズムを陣営ごとに分けないという考え方そのものが疑問視されるようになった。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』は、ラヴニカ版の色ペアと区別するために、各陣営に固有のメカニズムを与えなかった。しかしストリクスヘイヴンは人気の高い世界であり(発売当時、多元宇宙内の本流のセットとして史上最高の売上であった)、レジーのチームはラヴニカとの比較を気にしていなかった。ならば、フラッシュバックをロアホールド専用のものにし、各陣営にそれぞれ固有のメカニズムを与えたらどうだろうか?

学部を仕上げる

 ロアホールドがフラッシュバックを持つなら、残りの各学部にはどんなメカニズムを与えられるだろうか? セット・デザインが最初にしたことは、各学部が魔技をどのように扱っているか、そのさまざまな形を見直すことであった。シルバークイルには、クリーチャーを対象とするインスタントやソーサリーを唱えることを気にするカードがいくつかあった。プリズマリには、あなたのインスタントやソーサリーのマナ総量が5以上ならボーナスを与える呪文があった。では、チームが魔技をセットから外し、これらの下位テーマをそれぞれ独立したメカニズムにしたらどうだろうか? シルバークイルのカードは即妙メカニズムとなり、プリズマリのカードは演目となった。

 ウィザーブルームについては、セット・デザインは『ストリクスヘイヴン:魔法学院』における黒緑アーキタイプを見直した。ウィザーブルームは生物学に焦点を当てていたため、我々はライフを気にするカードに寄せていた。緑はライフを得るのが得意であり、黒はそれを支払うのが得意である。そして、それらを組み合わせることは黒緑の新たな方向性に感じられた。ライフを気にすること自体は正しい方向に思えたが、チームはそれを軸にできるメカニズムがあるかどうかを探っていた。いくつかの実験の後、チームは注入という能力語に落ち着いた。これは、このターンにあなたがライフを得ていたかどうかを参照する。複数のターンで誘発する注入カードもあれば、呪文や効果を強化するものもある。

 クアンドリクスは、キーワードを見つけるうえで最も難しい学部であることが判明した。最終的に彼らが落ち着いたのは 増分という能力語であり、これは『ギルド門侵犯』の進化メカニズム(第2回グレート・デザイナー・サーチのためにイーサン・フライシャー/Ethan Fleischerがデザインしたもの)をアレンジしたものである。進化を持つクリーチャーは、より大きなクリーチャーが戦場に出るたびに+1/+1カウンターを得た。では、これと同じことを、より大きな呪文が唱えられることを参照する形でやったらどうだろうか? これは呪文中心であり、数学とも噛み合っていた。

 セット・デザインは、「加点課題」を学部メカニズムにするかどうかも検討した。最終的に、彼らはこれをセットから外した。また、クラスも削除することにした(ただし2枚は統率者デッキに入ることになった)。

 次に、セット・デザインはマスコット・トークンを見直した。以下が『ストリクスヘイヴン:魔法学院』でのマスコットである。

 
 

 以下が展望デザインが提出した内容である。我々の目標は、各学部に新しいトークンを作ることであった。

  • シルバークイル:白黒の2/2の墨獣・クリーチャー・トークン
  • プリズマリ:飛行を持つ青赤の3/3のエレメンタル・クリーチャー・トークン
  • ウィザーブルーム:「これが攻撃するたび、あなたは1点のライフを得る。」を持つ黒緑の1/1の邪魔者・クリーチャー・トークン
  • ロアホールド:「これが攻撃するたび、墓地にある対象のカード1枚を追放する。」を持つ赤白の2/3のスピリット・アーティファクト・クリーチャー・トークン
  • クアンドリクス:緑青の0/0のフラクタル・クリーチャー・トークン

 トークンの他の特徴は変更したが、名前はそのままにした。これらの変更の大半は小さな調整であった。墨獣は2/1から2/2になり、飛行を失った。エレメンタルは4/4から3/3になり、飛行を得た。邪魔者は、死亡時にライフを得る能力から、攻撃時にライフを得る能力へと変更された。スピリットは3/2から2/3になり、アーティファクト・クリーチャーとなり、さらに墓地からカードを追放する攻撃誘発を得た(これは、あなたの墓地からカードが離れることに報酬を与えるロアホールドのテーマに合わせたものである)。フラクタルはそのままであった。

 以下が、実際にセットで印刷されたものである。

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 エレメンタル、邪魔者、フラクタルは提出時のままであった。墨獣は飛行を取り戻したが、1/1へと下がった。スピリットは、2/3のアーティファクト・クリーチャーから2/2のアーティファクトでないクリーチャーになり、攻撃誘発も失った。

 最後の2つのメカニズムはいずれもセット・デザインで追加されたもので、過去の製品からインスピレーションを得ていた。ひとつはそのままの再登場であり、もうひとつは調整版である。

 どのセットにも敵役は必要である。『ストリクスヘイヴンの秘密』におけるそれがアルカイックであった。アルカイックは、異質で不可解な巨大な無色クリーチャーである。クリエイティブ・チームは何度も同じ反応を受けた。「つまりエルドラージみたいなもの?」と。いや、アルカイックはエルドラージとは異なるのだが、彼らのためのカードを作ろうとすると、どうしてもエルドラージと同じ道を進んでいるように感じられた。

 クリエイティブ・チームの誰かが、アルカイックはさまざまな色のマナを欠いているのではなく、むしろそれらに引き寄せられるべきだと提案した。もしアルカイックが、あなたに多くの異なる色でプレイすることを求めたらどうだろうか? それによって、彼らはエルドラージの対極に感じられるようになった。我々は『戦乱のゼンディカー』のメカニズムを使った。これはエルドラージには現れなかったが、彼らと戦ったゼンディカーの住人側には採用されたものである。収斂は、その呪文を唱えるのに何色の異なるマナを使ったかを参照した。

 セット・デザインは、アルカイックと、アルカイックを参照するカード群に収斂を加えた。これにより、このセットの敵役にフレイバー面とメカニズム面での一貫性を与える、よい一本筋が加わった。

 もう一つのメカニズムは、セット・デザインが神話レアのソーサリー・サイクルを作ろうとしていたことから生まれた。これは「インスタントとソーサリーが重要」なセットである。では、超派手で、神話レアにふさわしいと感じられる呪文を作る方法はあるだろうか? そうしたアイデアを探る中で、彼らは『神河救済』のレア・ソーサリーのサイクルに行き当たった。

 
 

 歴伝メカニズムは、ブライアン・ティンスマン/Brian Tinsmanがデザインしたものである。彼も『ストリクスヘイヴンの秘密』セット・デザイン・チームと同じことをしようとしていた。つまり、高レアリティで派手なソーサリーを作ろうとしていたのである。『神河救済』のこの5枚にしか現れない歴伝メカニズムは、その後のゲームの残りの間、毎ターンその呪文を唱えさせてくれる。かなりすごそうに聞こえる。問題は歴伝には、その後のゲームの残りの間、他の呪文を一切プレイできなくなるという欠点が付いていることだ。ブライアンは非常に興奮する能力を作ったが、それにまったく興奮しない欠点をくっつけてしまった。

 セット・デザインはこの歴伝呪文を見て、デメリットなしで同じことをする案を検討した。こうして歴伝は範例になった。これらの呪文へのもうひとつの追加は、かなり後になって加えられた。展望デザインとセット・デザインの両方の段階で、我々はセット内に講義サブタイプを入れたいかどうかでもめていた。履修をやらないことは分かっていたが、セット内に講義があれば、それらのカードは『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の履修カードと互換性を持てる。また、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』の「講義が重要」カード群とも、うまく噛み合うことになる。

 展望デザインの提出時点では、「加点課題」を持つ呪文が講義であった。そのメカニズムが外された後、セット・デザインは講義サブタイプを別の呪文群に載せてみた。最終的に、彼らが作った新たな講義は範例呪文だけであった。


授業終了

 これが、『ストリクスヘイヴンの秘密』がどのように生まれたかの物語である。楽しんでもらえたなら幸いだ。いつものように、本日の記事についてでも、今日取り上げたメカニズムのどれについてでも、『ストリクスヘイヴンの秘密』全体についてでも、どんなフィードバックでもぜひ聞かせてほしい。メールやソーシャル・メディア(XTumblrInstagramBlueskyTikTok)を通じて(英語で)送ってもらえると幸いだ。

 来週は、『ストリクスヘイヴンの秘密』の展望デザイン提出文書を共有する。

 それまで、あなたが『ストリクスヘイヴンの秘密』のすべてを学ぶことを楽しめんことを。


(Tr. Ryuki Matsushita)

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