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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

デザイン演説2021

Mark Rosewater
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2021年8月16日

 

 2003年、私が首席デザイナーになったとき、私は毎年8月(マジックの「1年」の終わり)に、マジックのデザインの現状について語る記事を書こうと決めた。これはアメリカの大統領が毎年、合衆国の状況をまとめることになぞらえたものだ。最初にその記事を書いたのは2005年、私が監督した「マジックの1年」全体のセットが世に出た年である。

 過去の16本の記事は以下の通り。

 馴染みのない諸君のために説明すると、これらの記事の書式はこうなっている。まず前年のマジックのデザイン全体について評価し、その年の良かったところと教訓について語る。その後、(新しい内容の)各ブースター製品についても順番に、それぞれ良かったところと教訓について語る。ここで断っておきたいのは、私は個別のカードの実装についてよりも大局的なデザインについて語る、ということである。

 いつもの通り、今回も同じ質問から初める。「昨年のマジックのデザインはどうだったか」だ。

 私は、とても良かったと考えている。どのセットにも、その舞台となっている世界を反映した濃いメカニズム的特徴があった。ユーザーは、新しいメカニズムにも、我々が選んで再登場させた古いメカニズムにも満足しているようである。この年に登場したさまざまなカードは、さまざまなフォーマットでプレイされた。ゲームに関連した問題について多くの反響があったが、全体として、ゲーム・デザインにはおおよそ満足しているようだった。

マジックのデザイン全体

良かったところ

マジックは大量に売れ、プレイされた。

 今日は語るべきことが多いが、まず最初にマジック全体についての重要なことから始めたい。2020年春、すぐに収束しそうな気配を見せない全世界的パンデミックの渦中にあることを踏まえて、我々は2020年の金銭的予測を立てなければならなくなった。我々は、プレイと売上が下降することを予想した。結局、マジックのプレイの多くは直接のものなのだ。嬉しい喜びだったのは、昨年のマジックが記録を樹立したことである。マジックは過去28年の歴史の中で最もプレイされ、売れた。それはデジタルだけの話ではなく、物理的カードでもそうだったのだ。この1年は世界にとって苦しい年だったが、マジックは人々がそれを耐え抜く助けになったのだ。

デザイン上の芳醇さにおいて強固な年だったと私は考えている。

 この年のことについて私が最も誇らしく思っていることは、舞台にした世界の芳醇さをメカニズム的にうまく再現することに成功していたことである。冒険世界、北欧神話世界、魔法学校世界、フォーゴトン・レルム――各セットがその世界をゲームプレイ上に具体化する、メカニズムやテーマの重要なところを捉えていたのだ。私はデザイン・チームがこの難しい仕事をうまくやりとげたことを誇りに思う。

セット・ブースターは成功だった。

 我々がセット・ブースターを導入したのもこの年で、大成功を収めた。これは、マジックの歴史上ずっとしてきたことであっても見直してユーザーが選んだ形でマジックを体験できる新しい方法を見つけられたならそうするという証である。

 この良かったことに、1点、教訓を添えておこう。ブースター・パックの種類が増えると、ユーザーの需要を正しく予想しなければならなくなる。このため(そしてCOVID関連の生産問題もあって)『ストリクスヘイヴン』のドラフト・ブースターは発売初期に品切れになった。我々はそのようなことを二度と起こさないように改善に取り組んでいる。

教訓

メカニズム的テーマをもっとうまくセット間に広げられるようにする必要がある。

 1年間に訪れる世界の数が増えたことでマジックが退屈なものになることは防げるが、その逆の問題に直面することになった。プレイヤーはセット1つ1つのメカニズム的テーマに心躍らせるが、その後、他の舞台で新しいことを始めるときに、そのテーマが放棄されたように感じるのだ。我々は、各世界がそれぞれ自身で輝けるようにしたままで、組み合わせてより大きなものを作る方法をうまく見つける必要がある。

モードを持つ両面カード(MDFC)は、私が望んだような一体感をこの1年間にもたらすことはできなかった。

 メカニズム的テーマをセット間で広げようというこの年の試みの1つが、1つのメカニズム(MDFC)を、他の知財を用いていない(つまりD&Dセットを除く)すべての本流のセットに導入するというものだった。MDFCはメカニズムとしてはおおよそ好評だったが、「1年」にまとまりを感じさせる上で良い働きをしたとは言えなかった。おそらく最大の問題は、MDFCが非常に部品的であり、1枚入れたからといって複数枚入れたくなるようなものではなかったことから、連続したセットに入っていてもメカニズム的一体感がほぼなかったことであろう。また、各セットでそれぞれの使い方が違っていたことで、フレイバー的にも一体感はなかった。

『エルドレインの王権』が非常に強く、他のセットは目立たなかった。

 これは私が監督している分野でもなければ問題の原因がこの年のデザインにあるものでもないので、この教訓をここに並べるべきかどうかはわからないが、この年のデザインに関して一番多かった批判がこれだった。『エルドレインの王権』のパワー・レベルのせいで、この年の楽しいメカニズム的テーマは平均的な年よりもプレイされなかったのだ。ユーザーはこの年のメカニズムやテーマを楽しんだが、それに加えて、スタンダードのイベントでもっとプレイすることを望んでいたのだ。

『ゼンディカーの夜明け』

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良かったところ

第2面が土地のMDFCは大好評だった。

 モードを持つ両面カードは比較的好評だったが、中でも第2面が土地のものは特に好評だった。その汎用性、そして両方の面を簡単に管理できることから、これらは『ゼンディカーの夜明け』でも最高評価を受けるメカニズムとなった。

プレイヤーは上陸の再登場を楽しんだ。

 上陸は、全期間を通しても好評なメカニズムの1つである。ゼンディカーとの繋がりと、上陸カードのコスト付けを積極的にしたことから、好評だった上陸の再登場はほとんどのユーザーに大好評だった。我々が加えた新しいひねりについても、多くの高評価が届いている。

即用装備品はは好評だった。

 もう1つ、多くの高評価を受けた『ゼンディカーの夜明け』のメカニズム的テーマが即用装備品だった。もっと頻繁に作ってほしいという声がいくつも届いている。

パーティーの全体的デザイン空間が楽しまれ、リミテッドでは好評だった。

 パーティーがこれまでと全く違う形で部族テーマを扱っていることに、多くの高評価が届いている。また、パーティーの4部族それぞれに濃いメカニズム的特徴を持たせたことで、単一部族かパーティーのどちらかをプレイすることができるようになっており、その両立も可能であったことも、プレイヤーが楽しんだ様子であった。全体として、リミテッドやカジュアルな構築でのパーティーは好評だった。しかし……

教訓

パーティーは構築戦でその潜在能力を示せなかった。

 パーティーは、構築環境、特にスタンダードに入れたときに大問題があった。ユーザーは、『ゼンディカーの夜明け』の前あるいは後にその4種類のクリーチャー・タイプがもっと登場すること、このテーマを構築で成立させられるようにするカードを出すことを期待していた。その反応は、次に部族テーマを大きく取り上げる時に考慮されることだろう。

このセットは、再登場を求められていたものを再登場させなかった。

 これはゼンディカーへの3回目の訪問(そして6つ目のセット)であり、このセットにとある要素が入っていなかったという悲しみの声が多かった。最大の不満は、同盟者の不存在だった。同盟者は最初と2回目の訪問では大きな役割を果たしており、フレイバー的にはパーティーが同じような意味を持っていたとはいえ、同盟者の不存在は失望を生んだのだ。さまざまなメカニズム的要素についてそういった不満は受けている。その中でも多かったのは、罠、探索、クリーチャー・土地だった。もう1つ存在しなかったものとして大きく捉えているユーザーがいたものは、2回目の訪問で大きな役割を果たしていたエルドラージである。それらの不存在にも増して、多くのコメントで語られていたのは、このセットがエルドラージが世界に与えた影響についてもっと見せてもらいたかったということだった。これは、3回目以降の訪問となる世界を訪れる時に考慮すべき問題である。他の解決法としては、全体のメカニズムやテーマに関わらない1枚だけの連想させるカードを作るというものがあり得るだろう。

3回目の訪問で新しいものが追加されていないように感じられた。

 もう1つ多かった不満は、今回の訪問では新しいものがあまり見られなかったというものだった。どこかの世界を再訪する場合、我々はそれまで見られなかった新しい側面を追加することが多いが、『ゼンディカーの夜明け』ではそうなっていないと感じたユーザーがいた。振り返ってみると、過去の一面を取り上げ、それに世界の変化を表すような新しいひねりを加えることで、この2つの問題を解決することができただろう。興味深いことに、デザインは罠の新しいカタチを思いついていたが、最終的には枠の都合でボツにしていたのだ。

『統率者レジェンズ』

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良かったところ

プレイヤーは新しいリミテッドのフォーマットを楽しんだ。

 統率者戦はこれまで構築フォーマットだったので、多くのプレイヤーは我々がリミテッドにする方法を見つけたことを気に入った。統率者戦をドラフトに適応させたことについて、特にドラフトを成立させるための多色のアンコモンや単色の共闘持ち伝説のクリーチャーの利用について、多くの肯定的コメントが届いている。

プレイヤーは過去のマジックの話への遡行が大好きだった。

 このセットには、ドラフトを成立させるために(そして統率者製品なので)多くの伝説のクリーチャーが必要だった。我々がその枠の多くを使ってマジックの昔のキャラクターに光を当てたことに興奮したという、プレイヤーからの多くの反響があった。

プレイヤーはクールな統率者のデザインを楽しんだ。

 フレイバーに加えて、多くの伝説のクリーチャーのデザインが独特で楽しいものだったというコメントが多く届いている。この製品が斬新な統率者戦デッキのひらめきを生んだという投稿やメールも、無数に届いている。

プレイヤーは今回の再登場を喜んだ。

 このセットに入れたさまざまな再登場についても肯定的反響が多く届いている。

教訓

ドラフト・フォーマットの改善について多くの提案があった。

 多くのプレイヤーは我々が統率者戦をドラフトでできるようにする方法を見つけたことに心を躍らせていたが、その実装方法については多くのコメントがあった。再びこの製品を作るとしたら何を変えられるかについて、統率者戦ドラフトを通常の構築統率者戦と切り分けるというものからもっと近づけるというものまで、多くの議論があった。再びこの製品を作るとしたら、我々がそれらさまざまな提案すべてに目を通すのは間違いない。このコメントに関してもう1つ言えば、リミテッド・フォーマットをぐだぐだにしないようにするため、このセットには高いレアリティにもっとゲームを決めるような爆弾が欲しいと感じたプレイヤーがいた。

構築の統率者戦を捻じ曲げるカードがあった。

 このセットには革新的で楽しいデザインが多くあったが、構築の統率者戦にとって良くないとプレイヤーに感じさせるものも少数あった。今後、伝説のクリーチャーを作るにあたって、どんな種類のカードを作るべきでどんな種類のカードを作るべきでないのかという大量の反響が届いている。統率者製品を手掛けるデザイン・チームはこの反響すべてを調査しているので、新しい統率者のデザインに活かすことができるだろう。

一部のカードは白にできた。

 統率者に関して現在開発部が取り組んでいる問題の1つが、フォーマット内のカラー・ホイールのバランスである。最大の問題を抱えている色は白であり、コミュニティの多くのメンバーが白のカードとして印刷されることを願っていたカードが何枚もあった。色の協議会はこの問題に時間をかけて取り組んでいるので、今後の1年でこの問題がいくらか緩和されることを願っている。

『カルドハイム』

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良かったところ

プレイヤーは今回のメカニズムを大体楽しんだ。

 このセットのすべてのメカニズムの中で、もっとも肯定的な反響が多かったのは予顕であった。新しく新鮮に感じられ、この世界のフレイバーにあっていて、プレイ感も素晴らしかった。プレイヤーは多色の英雄譚の登場や氷雪の再登場を喜んだ。(とはいえ、後述の通り、そこには教訓もあった。)

プレイヤーは神々のMDFCを気に入った。

 我々は各セットにそれぞれのMDFCの使い方があるようにしようと考え、神々は好評だった。(ただし土地ほどではなかった。)プレイヤーは伝説であることの不利益を軽減する助けになった(1枚出していても、もう一方の面でプレイできる)ことを楽しみ、奇妙な新しい統率者を統率者戦に投入したのだ。

プレイヤーはこの世界のフレイバーを大いに気に入った。

 『カルドハイム』に関して最も多かった賛辞は、この世界がどれほど刺激的か、それぞれの領界がどのような独自の要素を持っているのかだった。特に、部族要素はプレイヤーのお気に入りとしてよく扱われる。とはいえ、これには1つの大きな欠点が……

教訓

このセットは詰め込み過ぎで、2つのセットにすべきだった。

 『カルドハイム』に関して最も多かった感想は、やりすぎ、というものだった。10個の領界を1つのセットに詰め込んで息をする余裕もなく、その結果としてプレイヤーはこの世界のクールなものの多くを逃したと感じたのだ。全体として、2つのセットにすべきだったという意見が多かった。これは心すべきことである。我々は、世界が1つのセットには大きすぎるかどうかを判断できるようになるべきである。

氷雪対策のカードがもっとあるべきだった。

 プレイヤーは氷雪の再登場に心を躍らせたが、氷雪基本土地でなく通常の基本土地を使う動機があまりないことには不満だった。このセットにはもっと多くの氷雪対策カードが必要だった。『モダンホライゾン2』がこれをいくらか緩和したが、『カルドハイム』に必要だった。セットのメカニズムやテーマへの対策カードをそのセットに入れることを上手くすることに我々は取り組んでいる。

北欧神話にこだわりすぎた。

 もう1つ多かった感想が、元ネタの素材に近づけることに少しばかりこだわりすぎているというものだった。たとえば、ほとんどの神々は既存の北欧神話の神々と1対1対応していた。元ネタの素材からのトップダウン・カードを作ってもプレイヤーは問題視しないが、その素材から離れることも楽しむのだ。現実世界の元ネタに触発されたものにひねりを加えることをもっと意識的にすべきだということがわかった。(これはクリエイティブ・チームでもよく話されていることである。)

『ストリクスヘイヴン:魔法学院』

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良かったところ

プレイヤーはミスティカルアーカイブを大いに気に入った。

 このボーナスシートは、あらゆる方向で成功だった。プレイヤーは再録カードを手にできることを喜んだ。また、ドラフトへの影響、状況を変動させることを喜んだ。さまざまなブースター・ファンのカードを喜んだ。ボーナス・シートはもっと使う必要がある強力な道具だということがわかったのだ。

プレイヤーは「呪文関連」セットを楽しんだ。

 「呪文関連」は、プレイヤーが何年も求めていたテーマだった。実行が非常に難しかったため、してこなかったが、『ストリクスヘイヴン』はその方法を見つけ出し、そしてプレイヤーは楽しんだのだ。このセットで得た教訓を活かし、このテーマを量は少なくとも他のセットで使う方法があるかどうか検討できる。

プレイヤーはこの明るい雰囲気やトップダウン・デザインが気に入った。

 マジックの強みの1つが、セットごとに雰囲気を変えられることである。『ストリクスヘイヴン』では、通常よりも明るい雰囲気を実験しており、多くのプレイヤーがそれを気に入った。これによって、もっと頻繁に雰囲気を広げることができるということ、そして時折風変わりなセットをしても大丈夫だということがわかったのだ。

プレイヤーは我々が陣営セットでいつもと違うことを試したことを高く評価した。

 陣営セットはいつも人気で、今回は陣営セットを少し違う形で試していた。まず、今回各陣営に独自のメカニズムを持たせず、各陣営ごとにフレイバー付できる広いメカニズムを選んだ。加えて、過去の2色の組み合わせと違う雰囲気の2色陣営を作ろうとした。ほとんどについては成功した。ロアホールドは通常の赤白のアーキタイプと違っていたことで多くの肯定的感想を受けたが……

教訓

学校と対応するギルドにもっと差をつけてほしいと思ったプレイヤーがいた。

 クアンドリクスはそのフレイバーに関して肯定的反響が多かった(多くのプレイヤーは、数学の陣営がいることを気に入った)が、メカニズム的にはシミックに似すぎていることが批判された。熱烈なプレイヤーから多かった要求は、すべての学校をロアホールドぐらい刷新してほしかったというものだった。それが、それほど熱心でないプレイヤーにも成立するものかどうか多少疑念はあるが、次に陣営を扱うときにはもっと進めることができるということはわかった。

MDFCはやりすぎだった。

 土地MDFCと神々MDFCは好評だったが、『ストリクスヘイヴン』ではこのメカニズムを少しばかり推し進めすぎた。最大の問題点は、文章量が多すぎたことである。また、過去の2セットにあったようなテーマ的一貫性にも欠けていた。(それぞれ、すべて土地だったりすべて神だったりした。)私は、いつかMDFCは再登場すると信じているが、カードの第2面にどの程度の文章を入れるべきかについては意識しなければならないと考えている。それらのカードが何をするのか、第1面を見るだけでわかるようにすべきなのだ。

このセットはアメリカの学校を標準としすぎていた。

 もう1つ興味深い感想が、アメリカ以外の多くのプレイヤーから届いていた。今回の設定が現実世界の芳醇さを扱っていたので、国によって学校には大きな違いがあるという事実が目立ったのだ。興味深いことに、魔法学院はその元になっているのがイギリスの学校なので、我々が使ったものの中にはアメリカの学校ではなくイギリスの学校を元にしたものがあった。とはいえ、ここで重要な教訓は、我々が全世界的なブランドであり、現実世界の元ネタを扱う際にはそれがどれほど民族中心的になっているのかに注意しなければならないということである。

『モダンホライゾン2』

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良かったところ

プレイヤーはフレイバーやメカニズム的な振り返りを大いに気に入った。

 『モダンホライゾン2』は基本的に、フレイバー的にもメカニズム的にも、大量の振り返りを含んだマジックへのラブレターである。主に熱烈なプレイヤーであるこのセットのユーザーは、それを大いに愛し、そしてそれらの振り返りの質や量に感銘を受けた。

プレイヤーは過去のメカニズムが新しいカードになったことを喜んだ。

 マジックは長年の間に多くのメカニズムを作ってきたが、その中で本流のセットに再登場しているものは少ない。『モダンホライゾン2』では、メカニズムを少数のカードだけで再登場させる機会が生まれて、これによって多くのプレイヤーが満足した。サプリメント・セットでメカニズムを少数だけ体験できるようにすることは、間違いなく、将来もっと多く使っていきたい道具である。

プレイヤーは明るい雰囲気を楽しんだ。

 これは基本的に『ストリクスヘイヴン:魔法学院』と同じ教訓だが、1年の間に同じ教訓を2回得たことは重要である。特に、ドラフト可能なテーマとしてのリスの再登場は大いに愛された。

プレイヤーが高い複雑さを持つことを評価した。

 『モダンホライゾン』セットでは、他の製品では使えないようなレベルの複雑さに手を付けることができる。この高いレベルの複雑さを楽しむユーザーは、この製品が高い複雑さをもたらすことに大いに満足した。首席デザイナーとして、『モダンホライゾン』セットに関して私が最も愛していることは、他のどこでも使えないようなカードをデザインできるということである。

教訓

やりすぎだった。

 高い複雑さと多くの振り返りを楽しんだ人が多かったが、私は、このセットはやりすぎだという感想を多く受け取っている。これには、ブースター・ファンとして採用した多くの仕様も含まれていた。最高の複雑さのセットであることと、親しみやすく把握できることとの間の適正なバランスは、我々が考えなければならない重要なものである。将来の『モダンホライゾン』セットはもっと複雑になっていくだろうが、混乱を招くような不必要な要素を避けることはできるだろう。

モダン・フォーマットへの影響を憂慮するプレイヤーがいた。

 その性質から、モダンは通常スタンダードを経たカードだけが存在している。直接モダン・フォーマットにカードを追加できるという性質を楽しんだプレイヤーは多いが、それによって不安になったプレイヤーもいた。我々が『モダンホライゾン2』のプレイデザイン・チームに投入したリソースは、今後の『モダンホライゾン』セットのデザインにも投入しなければならないだろう。

統率者戦向けのものが多すぎ、そして統率者戦には不充分だった。

 興味深いことに、この点で矛盾した感想が届いている。このセットにはモダンの名前がついているのだからモダンにもっと集中すべきだと感じたプレイヤーがいた。統率者戦がもっともプレイされているフォーマットなので、すべてのセットは統率者戦に与えることができるものをもっと意識すべきだというプレイヤーがいた。この製品の正解は、その中間にあるのだろう。

『ダンジョンズ&ドラゴンズ:フォーゴトン・レルム探訪』

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良かったところ

プレイヤーは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」をマジックのカードにした実装を楽しんだ。

 このセットに関してもっとも多かった賛辞は、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の雰囲気を全体感とトップダウンの個別カードの実装の両方で、うまく再現していたというものだった。特にD&Dをプレイしているプレイヤーからは、これは今までで最もフレイバーに富んだセットだという意見があった。

プレイヤーはフレイバー語の使用を気に入った。

 このセットでは、新しく、ルール文の前に別書体で書いた文章を使ってフレイバーを加えることを試した。これを通常のマジックに追加してほしいという多くの声が届いている。これはマジックの多元宇宙の中のセットで使えないものではないが、これはカード名では簡単に表せない特定のフレイバーを再現する有効な方法であり、マジック向けに作られたのでない知財にこそ必要なものなので、我々はこれを他の知財のセット(『ユニバースビヨンド』)向けの道具として使うことを計画している。

クールなものを白に追加した。

 色の協議会で現在進行中のプロジェクトの1つが、統率者戦での助けにするためにカラー・パイの白の範囲を広げるというものである。いくつかの新しいものが『フォーゴトン・レルム探訪』で初登場し、プレイヤーはそれに大いに興奮しているようだった。今後も続くことを約束しよう。

教訓

このセットはかなり賛否両論だった。

 すべての良かった点(白が新しいものを得たという話は除く)は、不満の源でもあった。マジックのカード・セットを別の知財で作ることを嫌うプレイヤーもいる。我々がカード化するものとして選んだことや選ばなかったことに不満なプレイヤーもいた。この分野でもっとも多かった不満は、「エルミンスターはどこ?」だった。我々がカード化した手法が気に入らないプレイヤーもいた。この分野でもっとも多かった不満は、タラスクがその本質を再現していないと感じたというものだった。フレイバー語の使用が気に入らないプレイヤーもいた。包括的にD&Dを参照していること(「道を選べ」系カードなど)を嫌うプレイヤーもいた。黒枠でサイコロを振ることを嫌うプレイヤーもいた。(ただしそれを大好きなプレイヤーもいた。)このセットは多くのプレイヤーに強く愛されたが、ほとんどのセットに比べて賛否両論でもあったのだ。

フレイバーに富んだ再録メカニズムを求めていたプレイヤーがいた。

 もう1つ多かった不満は、既存のマジックのフレイバーをふさわしいフレイバーで見たかったプレイヤーからのものだった。特に多かったのがパーティーだったが、他にもLvアップや出来事といったさまざまなメカニズムに言及されていた。我々は主に新しいデザイン空間を使ってD&Dの雰囲気を再現しようとした、ふさわしいフレイバーがあれば過去のメカニズムを使うことを検討すべきだといういい兆しになった。

フレイバー語と能力語を混ぜることは混乱を招いた。

 プレイヤーがフレイバー語を楽しんだかどうかに関わらず、共通した不満は、フレイバー語と能力語を混ぜるのは混乱したというものだった。これはいい指摘であり、これについては将来もっと気をつけることになるだろう。

振り返り

 これをもって、この1年の振り返りは終了となる。多くのクールな新しいことを試し、そのほとんどは成功したが、プレイヤーからの思慮に富んだ感想がなければできなかった。マジックの将来を作る上で、考えるべきことは多くある。

 いつもの通り、各セットについての諸君からの感想を楽しみにしている。また、セットに関する諸君の考えに関する私の考えに関する諸君の考えも聞かせてほしい。今年のデザイン演説記事について、そしてよかったところや教訓についての私の捉え方について、どう思うだろうか。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、元祖『イニストラード』のデザイン提出文書を公開する日にお会いしよう。

 その日まで、あなたが自分を改善できるような感想を受け取れますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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