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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:アグロなゴブリン、ベテランアーティストの帰還(パイオニア)

岩SHOW

 マジックのカードやデッキのクールさを語る「今週のCool Deck」。今回は勿論、正式発売日を迎えた『霊気走破』を取り上げよう。とはいってもこれを書いているタイミングはまだプレリリースよりも前なので、実際に『霊気走破』のカードを採用したデッキを取り上げることは難しい。しかしながらカードリストを見ていれば、それだけで今回のセットのクールさが伝わってくるというものだ。さてリストを眺めると……今回は久しぶりにゴブリンが沢山いるね、ゴブリンもクールでポップ、ファニーなやつらだからなぁ……って。

 

 おいおいおい!Pete Venters先生がゴブリン描いてるじゃない!相変わらずゴブリンがイキイキしてて良いなぁ……《捨て身のダイナマイト持ち》なんてらしさ全開じゃないか。ダイナマイト両手に持ってるくせに機体に搭乗するって一体どういうことだよと。昔からこの人が描くゴブリンは最高なんだよなぁ。かなり久しぶりになるスタンダード経由セットへの参加、嬉しくってしょうがないぜ。

 

 緑の肌で頭身低めのボディ、尖った耳と鼻。基本的にちょっとおバカで、とんでもない大バカもいる。瞬間的な楽しさのためには危険性を顧みない集団……そんなイメージが定着しているゴブリンだが、実はマジック黎明期ではその雰囲気は異なる。最古のゴブリンの一つである《モンスのゴブリン略奪隊》に見られるように、今よりも少しシリアスな雰囲気のカードが多く見られた。そんなゴブリンはセットを重ねるたびに親しみやすい、ポップなものへとなっていく。

 そしてPete Venters氏がこの種族のアートを担当するようになると、一気に現在に繋がるキャラクター性が確立され、粗暴で危険、だけどもユーモラスでどこか憎めない……そんなゴブリンたちが多元宇宙で気ままに躍進するようになった。同じモンスでもこれだけ空気感が違うというのは、とてもクールなことだ。のちのゴブリンに多大な影響を与えたアーティストが再びゴブリンのアートを手掛けることで、新カードだがどこか懐かしさを覚えるような雰囲気が古参ファンには嬉しいところだ。

 さて、ゴブリンのクールなニューフェイスをチェックする前に、まずは現行のゴブリンデッキから確認しておこう。パイオニアの赤単色なゴブリンデッキだ!

Koshimoto Haruki - 「赤単ゴブリン」
第13期関西帝王戦パイオニア トップ8 / パイオニア (2025年1月26日)[MO] [ARENA]
3 《ラムナプの遺跡
1 《反逆のるつぼ、霜剣山
4 《バグベアの居住地
4 《変わり谷
11 《
-土地(23)-

4 《スカークの探鉱者
4 《騒音の悪獣
2 《火刃の突撃者
3 《軍勢の忠節者
4 《ゴブリンの扇動者
4 《雄叫ぶゴブリン
4 《ランドヴェルトの大群率い
4 《無謀な奇襲隊
-クリーチャー(29)-
4 《裏の裏まで
4 《画家の仕事場 // 汚された画廊
-呪文(8)-
4 《塔の点火
2 《チャンドラの敗北
2 《引き裂く流弾
3 《ゴブリンの首謀者
2 《アガサの魂の大釜
2 《墓掘りの檻
-サイドボード(15)-
晴れる屋 より引用)

 

 

 パイオニアでゴブリンとなると、その数は膨大だ。同じ6御マイデッキを組むにあたってもゴブリンの顔ぶれでデッキの雰囲気はガラリと変わる。《人目を引く詮索者》でアドバンテージを稼ぎ、《ゴブリンの鎖回し》に接死をつけて盤面を一掃……様々な戦術が取れるがこちらのリストはアグレッシブさを優先した形だ。1マナゴブリンが実に13枚!《ゴブリンの扇動者》なども用いてとにかく早いターンにゴブリンを並べて、《ランドヴェルトの大群率い》や《雄叫ぶゴブリン》で強化し、《軍勢の忠節者》も合わせて強引にライフを削る!クールなスピードレーサーだ。中でも《無謀な奇襲隊》はそっこぅとパワーの上昇をもたらし、対戦相手の計算を狂わせて一気に詰めるフィニッシュブロー。せっかちなゴブリンらしく、群がって全力突撃!シンプル故にハマった時の爆発力はたまらない。

 

 ゴブリンデッキは昔から土地も重要視している。《スカークの探鉱者》でマナ加速が出来ると言えど、《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》のように安定して継続的にマナを供給できるわけではない。なので土地の枚数を削ってしまうと、せっかくの展開力が損なわれてしまうので、ケチってあまり削りすぎないように心掛けたい。このリストも総数は23枚で、パイオニアの他のアグレッシブなデッキに比べても多めに感じることだろう。これだけの枚数を確保しつつ、土地ばかり引きすぎてしまって負けるという事態は防ぐような構成になっているのは、単色デッキ、そしてゴブリンの強みでもある。

 《ラムナプの遺跡》《反逆のるつぼ、霜剣山》と赤いデッキの嗜みに加えて、《変わり谷》と《バグベアの居住地》をそれぞれ4枚積み!全力の姿勢だ。何せこれらの土地はクリーチャーになるという点だけでも素晴らしいのに、それぞれゴブリンになるのがクールすぎる。バグベアにいたってはゴブリン・トークンも生成するので頭数も増えるという、至高の1枚である。クールであるがゆえに3ターン目以降だと扱いにくい弱点を持ったバグベアだが、そんなことを恐れてどうすると堂々のフル投入だ。2枚までは初手に来ても大丈夫、タップインになってもそれはそれで手札のゴブリン次第では許容できたりもする。デッキの種族とマッチしたカードは、多少都合の悪いテキストには目をつぶって運用するという開き直りもまたクールな作法というもんだ。

 

 そして最近ゴブリンデッキにおけるトレンドとなっているのが、《画家の仕事場》と《汚された画廊》の部屋カードだ。意外なチョイスではある。が、各部屋の能力を確認すれば納得の1枚だ。どちらかといえばメインは《汚された画廊》。この部屋は攻撃クリーチャーのパワーを1上昇させる。《ゴブリンの扇動者》などに見られるように、横並べのデッキにとっては2マナで3点以上のダメージ上昇を狙えて、《ランドヴェルトの大群率い》の追加枠的に運用できる。

 そしてもう一つの《画家の仕事場》はドアを開放すれば能力が誘発、ライブラリーの上2枚を追放する。このカードを次の自分のターンの終わりまでプレイ可能という、期限付きのアドバンテージをもたらしてくれる。ドア解放のコストは3と重めではあるが、次のターンにもプレイできるのが嬉しい。画廊でダメージへの貢献をメインとしつつ、グダグダの長期戦に陥った時に仕事場のドアを開けて最後のラッシュに繋げる……地味ではあるが堅実、良い仕事をするエンチャントだ。仕事場から《無謀な奇襲隊》までつながればオイシイね。

 

 パイオニアのゴブリンデッキに『霊気走破』の新戦力がどのようなクールさをもたらすかも楽しみだ。アグロ型なら《焼き切る非行士》で最高速度の二段攻撃!アドバンテージを取りながら盤面を作っていくのであれば《咆吼部隊の重量級》がマナをもたらして展開力を高めてくれるだろう。Pete Venters氏のアートも加わったことでらしさ全開なゴブリン達、我が道を行くクールな大爆走を見せてくれることに期待だ。

 それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Goblins running through‼

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