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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

職人による新環境の赤単(スタンダード)

岩SHOW

 ○○職人って、良い響きだよなぁ。手に職ついてるって感じがね。

 野球で守備職人やバント職人と呼ばれているプレイヤーなんか、たまらなくカッコよく見えたもんだ。理想の味を追い求めるラーメン職人とかもさ。

 マジックでもそういうカッコイイ職人、皆の周りにもいるんじゃないかな? 同系統のデッキのみを使い続け、そのデッキのことが知りたかったらこの人に聞くのが一番!というプレイヤー、大体どのコミュニティにもいるもんだ。

 世界的に活躍しているプレイヤーの中にも、特定のデッキのみを探求し続ける、求道者的な職人プレイヤーの姿を見ることができる。

 最も有名なのは「sandydogmtg」だろう。Magic Onlineで活躍し、競技シーンへと進出。グランプリ優勝経験もある彼の愛するデッキは赤。赤単、またはそれに近い前のめりなクリーチャーとダメージ呪文を主体としたデッキをこよなく愛し使用し続けている。彼についてはこちらに詳しく書かれているので、知らない人は目を通してみてほしい。

 赤単職人の彼が赤単以外のデッキを使用してMOの優秀デッキリストに掲載されている時などは、一部界隈がざわつくくらいには赤いアグレッシブなデッキのイメージが定着している。

 赤単アグロ職人のsandydogmtg、彼がこの『ストリクスヘイヴン:魔法学院』環境で使用しているデッキももちろん……

sandydogmtg - 「赤単アグロ」
スタンダード (『エルドレインの王権』~『ストリクスヘイヴン:魔法学院』)[MO] [ARENA]
19 《冠雪の山
4 《不詳の安息地
2 《エンバレス城

-土地(25)-

4 《熱烈な勇者
3 《火刃の突撃者
3 《講堂の監視者
4 《義賊
2 《陰謀の理論家
4 《鍛冶で鍛えられしアナックス
4 《砕骨の巨人
3 《朱地洞の族長、トーブラン

-クリーチャー(27)-
4 《霜噛み
4 《エンバレスの宝剣

-呪文(8)-
2 《灰のフェニックス
2 《アゴナスの雄牛
2 《レッドキャップの乱闘
1 《猛火の斉射
2 《乱動する渦
2 《焦熱の竜火
2 《魂焦がし
2 《アクロス戦争

-サイドボード(15)-
sandydog氏のTwitter より引用)

 

 赤単~ッ! この安心感。2色をフォーカスしたセットではあるが、単色のカードだって勿論含まれており、かつ多色デッキでなくとも活躍できるデザインのものが多数ある。

 このリストで試されているのは《講堂の監視者》と《陰謀の理論家》。これらのクリーチャーがどのような変化をもたらすかを考える前に、まずは「赤単アグロ」のおさらいから。

 現スタンダードで赤単を支える、主力である1枚は《エンバレスの宝剣》。

 この装備品は攻撃しているクリーチャーの数だけコストが軽減されるので、もちろんのことクリーチャーを大量に展開して攻めるデッキで真価を発揮する。赤には1~2マナの軽量クリーチャーに優秀なものが多く、宝剣のためにそれらを展開することは、《鍛冶で鍛えられしアナックス》のための信心を稼ぐ、《朱地洞の族長、トーブラン》や《エンバレス城》でダメージを増量させる、などの別の勝ち手段にも繋がってくる。そのため、最近の赤単は30枚近い大量のクリーチャーで構成される傾向にある。

 また『カルドハイム』で得たものも大きかった。軽くて扱いやすい単体除去《霜噛み》と、土地でありながらパワー4と高い打点を誇るクリーチャーとなる《不詳の安息地》。

 これらを用いるために土地は《冠雪の山》をたっぷりと。氷雪赤単とも呼べる形が最有力だ。安息地はすべてのクリーチャー・タイプを持てるので、《義賊》や《熱烈な勇者》といった赤単のレギュラー戦力とシナジーを形成するという点も地味ながら見逃せない。

 で、ここに加わった新カード2枚。まずは《講堂の監視者》。

 1マナ1/1速攻とスペックは合格点。1ターン目からクリーチャーを出していきたい&各ターン1マナでも余らせずに盤面に還元したい赤単にはおあつらえ向きだ。

 ただこれだけだとカードとして少々寂しいのも事実。監視者はここに、対戦相手のクリーチャーがブロックに参加できなくなる制限をかける能力を持ち合わせている。最序盤は速攻を活かして攻撃し、サイズで突破できない状況では相手の防壁を無効化させて他のクリーチャーの攻撃をねじ込む。実に器用、かゆい所に手が届く1マナ圏として定着しそうだ。4枚採用しちゃっても良いんじゃないかな。

 もう1枚の《陰謀の理論家》は実験的なチョイス。

 手札を捨ててカードを引く、赤によくある手札入れ替え能力は土地を引きすぎてしまった時などには便利。

 ただこの理論家は、土地以外のカードを捨てることを推奨している。捨てたカードを追放し、それをターン終了時まで唱えられる。1マナのカードが多い赤単であれば、こうして捨てたカードを唱えつつ手札を補充していくのは難しいことではない。

 ただ、理論家以外に能動的に手札を捨てるカードはなく、また理論家で捨てるには攻撃する必要があり、1マナも支払わなければならない。どれだけの活躍が見込めるかは未知数な部分もあるので2枚に抑えられているのだろう。機能すれば手札が減らない赤単という化け物を生み出す可能性はあり、研究する価値はある。

 このリストを体感するために久しぶりに職人の赤単を使ってみたが、やはりやることがシンプルでかつ爽快感のあるデッキは良いね。前にのめりながらも、どこまで攻めるか、いったん止まるか、そのあたりの判断を行いながら対戦相手のライフを詰めていくのは赤単ならではの面白さ。

 また、《出現の根本原理》に効果てきめんでライフ回復デッキや各種コントロール相手にも活躍することで前環境より引き続き使われているサイドボードの《乱動する渦》。これを一番強く使えるのは赤単かなと再確認したね。

 《朱地洞の族長、トーブラン》がいれば毎ターン3点ダメージ! トーブランはこちらに飛んでくるダメージは増量させないので、一方的にゴリゴリとライフを削ることができて実に愉快爽快。

 いつも新環境のスタートダッシュにはもってこいの赤単。対策されるとトーンダウンするデッキではあるが、sandydogmtgをはじめとする職人たちがどのようなアンサーを繰り出してくるのか、非常に楽しみだ。その道をずっと突き進んでいる人の考え方というのは、どんなものであれ参考になることは間違いないぞ!

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