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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

オラクル・ヘルム(レガシー)

岩SHOW

 フュージョンとかクロスオーバーとか、2つ以上のものの良いとこ取りでまとめたものってのは、時に素晴らしいものに化けるもんだ。

 マジックのデッキ構築においては「ハイブリッド」と表現することが多い。2つ以上のデッキを、色やそのパーツといった共通点があるのを良いことに1つに融合してしまおうという試みである。特に多く見られるのはコンボデッキ。パーツが被っているコンボを共存させたり、コントロールやアグロといった別の戦術を用いるデッキにコンボを仕込んでみたり。

 ただし、当然ではあるがそれは簡単なことではない。僕も実際にいろいろとトライしたことはあるが、往々にして「共存させる必要、ないなコレ」という結論に達するものである。まあ作っている時は楽しいから良いんだけれども、たまには極上に逸品を生み出してみたいものである。一から新しいコンボを考えるよりは、既存のものを掛け合わせる方がまだ可能性があるってのも主たる理由だな(笑)。時折、完成度の高いハイブリッドデッキを拝むと、「よし自分も」って気持ちが湧き上がってくるものだ。

 そんなわけで今回は、最近見かけたものの中でも特に美しいなと唸らされたハイブリッド・デッキを紹介だ。フォーマットはコンボと言えばのレガシー!

TheWholePeter - 「オラクル・ヘルム」
Magic Online Legacy League 5勝0敗 / レガシー (2020年4月3日)[MO] [ARENA]
5 《冠雪の島
1 《冠雪の平地
1 《冠雪の森
1 《Tundra
1 《Tropical Island
4 《溢れかえる岸辺
2 《霧深い雨林
3 《虹色の眺望
2 《古えの墳墓
-土地(20)-

4 《タッサの神託者
-クリーチャー(4)-
4 《水蓮の花びら
4 《渦まく知識
4 《思案
2 《夏の帳
4 《安らかなる眠り
4 《パラダイム・シフト
4 《エネルギー・フィールド
1 《森の知恵
1 《否定の力
2 《Helm of Obedience
4 《意志の力
2 《時を解す者、テフェリー
-呪文(36)-
3 《僧院の導師
4 《剣を鍬に
2 《夏の帳
2 《精神壊しの罠
2 《覆いを割く者、ナーセット
2 《王冠泥棒、オーコ
-サイドボード(15)-
 

 2020年初頭を騒がせたコンボパーツ界の新エース《タッサの神託者》。通称はオラクル(神託者の英名より)。

 自身のライブラリーを墓地に落としたりドローしつくしたりして0枚にしてからこれを出し、その能力を解決するとその場で勝利。他のコンボと違い、決まれば何点ダメージとかではなくそのまま勝利というのが強みであり、さまざまなフォーマットで活躍している1枚だ。

 以前にこのコラムでも紹介したレガシーのオラクル・デッキは《パラダイム・シフト》を使うもの。

 このカードは自身のライブラリーを追放し、墓地をそこに置き換えるというもの。墓地の枚数が少ない状況で使用すれば一気に勝利へと近づける。もちろん0枚なら即座にオラクルで勝利と相成るわけだが、墓地が0枚というのは簡単そうでこれが結構難しい条件である。

 そこでこのデッキでは、あるカードの助けを借りることで《パラダイム・シフト》を勝利への特急券へと昇華させる。《安らかなる眠り》である。

 すべての墓地のカードを追放し、また墓地に置かれるカードもすべて追放へと置き換える。このエンチャントの助けによって、一気にライブラリーを0枚にしてオラクルWINを狙えるってわけだ。3枚コンボにはなるが、いずれもコストが軽いため早いターンに決めにいくことが可能である。

 白を足すことで《時を解す者、テフェリー》やサイドボードの選択肢も増えて良いことばかり。

 で、《安らかなる眠り》を使うのであればついでにその相方たちも入れれば良いじゃないかと採用されているのが《エネルギー・フィールド》と《Helm of Obedience》だ。

 《エネルギー・フィールド》はダメージを一切受けなくなるが、自身の墓地にカードが置かれると生け贄に捧げられてしまう。この弱点を《安らかなる眠り》で帳消しにし、ただ置いているだけで無敵になれるという、ダメージで勝つデッキへの最強のアンチテーゼとして用いようというわけである。

 これで防御は完璧、後はコンボを決めるだけ。《Helm of Obedience》の能力を相手に向けて起動しよう。本来ならばライブラリーからクリーチャーカードが、あるいは起動に際し支払われたマナに等しい枚数かが墓地に置かれればこの能力はストップするのだが、《安らかなる眠り》のおかげで相手の墓地にはカードが1枚も置かれることはない。置かれるまでという条件を満たせないので、ライブラリーのすべてのカードが追放されてしまい、カードを引けなくなった相手は敗北するのだ。

 レガシーではもう登場から長い年月が経った、マニア御用達の《安らかなる眠り》と《Helm of Obedience》の通称「ヘルムRIPコンボ」と、《タッサの神託者》×《パラダイム・シフト》の「オラクルコンボ」がハイブリッドに。相手のライブラリーを0枚にするコンボと、自分のライブラリーを0枚にするコンボ。対極の存在が《安らかなる眠り》のおかげで綺麗に1つにまとまっている。これはウットリするほど美しいね。

 多角的な勝ち方ができるデッキは、相手の読みや対策の裏をかいて勝利をもぎ取れるという点で優秀だ。オラクルを《外科的摘出》されて勝ち手段がなくなった、という敗北を経験したプレイヤーにはこういうアプローチもあるぞとオススメしたいね。

 今後も新コンボが登場するたびに、ハイブリッドの可能性も同時に探ってみよう!

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