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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

雷電エンド(モダン)

岩SHOW

 「マナ・コストを支払うことなく唱えてもよい」 甘美な響きである。いつの世もマジックプレイヤーはそれを夢見ている。これのコストがゼロになったら、あれを色に関わらず使えたら……時としてそれは危険な事態を引き起こすので、そうやすやすと許されることではない。

 だが時折、「楽しく使ってくれよな!」と言わんばかりに、プレイヤーのその欲求を満たす可能性を持ったカードが世に送り出される。それらは無茶苦茶強い、とまではいかなくても、使っていて楽しいマジック体験ができるものだ。

 『ラヴニカの献身』ではマナ踏み倒し呪文として新しいカードが名乗りを上げた。《雷電支配》だ。

 マナを踏み倒す、と言っても実際に支払ったXマナ以下の呪文がコストなしで唱えられるようになるので、完全に無料で!というわけではない。ただX点ダメージを与えながら同時にクリーチャーなどを展開できるので、かなりお得なカードだ。X=4ぐらいで唱えられれば十分な仕事をしてくれるだろう。

 ……というのはスタンダードの話。モダンであれば、このカードはコスト踏み倒しという役目を立派に果たしてくれる。踏み倒すコストは何マナ? 答えは「無」である。

 どういうこと? こういうことだ。

Hayseed - 「雷電エンド」
Magic Online Competitive Modern Constructed League 5勝0敗 / モダン (2019年2月5日)[MO] [ARENA]
4 《
2 《
3 《蒸気孔
4 《沸騰する小湖
4 《尖塔断の運河
3 《トレイリア西部
-土地(20)-

2 《ヴェンディリオン三人衆
4 《秘法の管理者
4 《砂漠セロドン
4 《縞カワヘビ
-クリーチャー(14)-
4 《祖先の幻視
4 《死せる生
4 《差し戻し
3 《イゼットの魔除け
4 《予言により
3 《謎めいた命令
4 《雷電支配
-呪文(26)-
4 《フェアリーの忌み者
3 《鋳塊かじり
1 《否認
3 《血染めの月
4 《虚空の杯
-サイドボード(15)-
 

 マナ・コストが存在しない呪文は唱えることができない。ただ、点数で見たマナ・コストが0の呪文ではある。これを利用して《祖先の幻視》《死せる生》を手札から唱えるのが《予言により》デッキだ。

 設置してすぐに能力を用いて0マナでそれらの呪文を唱える。本来はマナ・コストがないため唱えられず、待機能力を用いてタイムラグを経て使える呪文である。そのため、これらはカードを3枚引けたり、盤面のクリーチャーを全滅させ墓地のクリーチャーを蘇らせるといった、とんでもない威力に設定されている。それを《予言により》でお手軽にやっちゃおうというデッキは、モダンのファンデッキの1つとして人気であった。

 そこに加わるのが《雷電支配》。《予言により》と違ってこれ1枚では一度しかコストの踏み倒しはできないが、リターンが大きいのでそれで十分。X=0の2マナで使えることや、インスタントなので相手のターンに唱えられて隙が無いなどの利点もある。何より、踏み倒しエンジンが計8枚になって現実味がグッと増した。というわけで《死せる生》デッキの新たなバリエーションがこれだ。

 基本的には構えながら動くデッキである。《差し戻し》《謎めいた命令》で相手の動きを打ち消しつつゲームを進める。他にやることがないタイミングでクリーチャーたちをサイクリングして墓地に貯めておき、頃合いを見計らって《予言により》か《雷電支配》から《死せる生》を唱えて盤面をリセット、同時にこちらの戦場に4/4飛行・6/4・5/5呪禁が並んで一気に攻勢に出る。それらでさっさと殴り勝つ、というのが理想的な動きだ。

 《祖先の幻視》により手札を補充することが容易な点が強み。この戦略に《雷電支配》が加わることでコスト踏み倒し役が増えたことも大きいが、クリーチャーの一度の攻撃ではライフを削り切れなくても本体に火力として撃ち込む、という勝ちパターンができたのも無視できない収穫だ。相手のターンエンドにおもむろに本体に向けてフルパワーで唱えてとりあえず様子を見る、という動きはなかなかにいやらしい。やってる方はとても楽しいはず!

 今後も《雷電支配》のようなカードは定期的に姿を見せるだろう。また、サイクリングも一定の周期で登場するキーワード能力である。将来的にはここよりさらに進化した姿になるのだろうか。

 将来性もあって楽しみで、現状もデッキとして十分に機能している雷電式「リビングエンド」。モダン界で一定の地位を築くのか、注目していきたいね。

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