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戦略記事

週刊デッキ構築劇場

第33回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・《スカーブの殲滅者》

読み物

週刊デッキ構築劇場

2011.10.10

第33回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・《スカーブの殲滅者

演者紹介:鍛冶 友浩

 『世界のKJ』。世界的な認知度の高いデッキビルダー。主な戦績は、プロツアー・チャールストン06優勝・世界選手権05トップ4を含むプロツアートップ8入賞3回、グランプリ・北九州05優勝など。
 現在はトーナメントシーンの一線を退いてはいるが、現役時は多くの練習と、レベルの高い理論により、多くのプレイヤーから信頼されていた。特に、齋藤 友晴や森 勝洋との交流は有名であり、当時の彼らの成績に一役買っていた。
 スクラップ&ビルドを繰り返し、練習時に欠点を洗い出した上で、独創的な方法で克服した練度の高いデッキを構築することから、『欠点の破壊者(クラックスミス)』の二つ名がある。
 代表作は、Rage against the Machine・セプターチャント(北九州の形はモリカツ型と呼ばれるが、メインの構築者は鍛冶)・ストラクチャー&フォース他多数。
 現在、mtg-jp.comにて火曜日に『鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」』を週刊連載中。


イニストラード

 イニストラードにもセット特有のメカニズムがある。

 プレリリース直前に「イニストラード」案内でも紹介したのだが、具体的には「格闘」、「呪い」、「陰鬱」、「フラッシュバック」に、「両面カード:変身」なんかがそうだろう。

 せっかく新セットが発売されたのだから、これらの中からコンセプトを拾ってデッキの構築を紹介しようかと考えていた。

 先週の伊藤が「フラッシュバック」とファイレクシア・マナのライフでの支払いに注目した構築、清水は「両面カード:変身」と《出産の殻》で呪文を唱えない構築と、それぞれが新環境ならではのデッキを披露してくれた。
 枚数の少ない「格闘」「陰鬱」は現状では難しいので、ここでは、また違ったコンセプトのデッキを紹介したい。

 なんとなく墓地を主軸にしたものが面白そうだけど、とリストを眺めていると、それなら俺だろとアピールするカードが1枚見つかった。《スカーブの殲滅者》だ。

 マナコストに対してとても大きなサイズ、さらなるメリットとして墓地からも唱えることができる一方、追加コストに墓地からクリーチャー・カードを3枚取り除く必要がある、というクセのある感じは、
 どこかゼンディカーブロックの面白デメリット持ち高スペック・クリーチャーの《深淵の迫害者》に似ているが、それに比べて扱い方はとてもシンプルに見える。

 他のクリーチャーの体から縫合されて作られたまさにゾンビな彼を活かすには、つまるところ、パーツで墓地をいっぱいにすることができればいい。


☆では、墓地をいっぱいにするメリットってなんだろう?

 まず、デッキを構築するにあたって考えなければならないのはここだ。

 墓地にあるクリーチャー・カードを消費することで、コストパフォーマンスの良いクリーチャーたちを呼ぶこともできるが、それ以外に活用する方法をまずは広く考えてみよう。
 4枚のカードのためにライブラリーを掘るのは悪いことではないけれど、もっと他に理由が見つけられるのならば、構築の幅はその分広がる。

 ここで、僕が注目したのが《溶鉄の尾のマスティコア》と、《瀬戸際からの帰還》。

 具体的に、コンセプトと噛み合うメリットを見つけ出しておけば、実際に使わなくても問題ないし、ただ漠然と浮かべておくだけで方向を決めやすくなる。


☆次に、カードを墓地へ送る手段

 基本セット2012の登場時に、《記憶の熟達者、ジェイス》は相手のライブラリーを攻撃する手段として使われると考えられていただろう。

 しかし、この《スカーブの殲滅者》を代表とする墓地とのシナジーのあるカードたちを見てしまえば、自ずと視点は変わってくる。

 カードリストに目を通せば、M12リミテッドでは狂喜でゲームスピードが早かったせいか、見かける割にお世話にならなかった《ジェイスの消去》、《マーフォークの催眠術師》があり、

 新しく加わった《血まみれの書の呪い》という呪いも、実は全て自分のライブラリーを直接墓地へと送る手段としても使えることに気がつく。
 これらを使えば簡単に墓地が肥える!

 ・・・と喜べるのは最初だけで、よくよく考えると、ここに挙げたカードはほとんどがクリーチャーではないのだった。
 いくらライブラリーのカードを墓地へ送っても、そこへクリーチャーが貯まらなければただの自分のライブラリーの掘り損で、今回のコンセプトにはあまり適していない。

 つまり、「墓地へクリーチャー・カードを送る手段」だけに着目するのではなく、「ライブラリーのクリーチャー・カードの枚数」も一定以上に保つことを考えなければならない。


☆では、カードを墓地へ送る「クリーチャー」は?

 とはいえ、同じスカーブ仲間の《甲冑のスカーブ》は、地上のブロッカーになるので飛行5/6との相性はそこそことも言えるのだが、さすがに3マナで1/4という構築には向かないスペックのカードをデッキに入れるわけにもいかない。

 では、中途半端なサイズのバニラクリーチャーではなく、《精神叫び》と《錯乱した助手》はどうだろうか。

 前者はマナさえあれば自身のサイズを増強させ、さらに墓地を肥やすことができるし、後者もマナを伸ばしつつ墓地を肥やすことができる。
 これらはお互いに能力を補完しあっているし、自分が対戦相手ならば、すぐにでも除去したいクリーチャーといえるだろう。
 そうなれば、最低1枚のクリーチャー・カードが墓地に行くということだし、逆に生き残れば、彼らに暇なタイミングなんか全くないはずだ。

 さらに、「カードを墓地へ」で思い出すのは青の特性であるドロー&ディスカードだろう。

 《マーフォークの物あさり》を代表とするシステムクリーチャーが強力なのは、今までの構築の歴史でも明らかだ。

 《スカーブの殲滅者》自身は手札からでも墓地からでも唱えるには同じコストなので、引いてしまった場合は是非とも墓地へ送りたいし、この時に損をするのは非常に嫌なので、さらに《ジェイスの文書管理人》も加えて8枚体制にしてみたい。

 ここで、《彼方の映像》キャストに対応で《ジェイスの文書管理人》起動、というシナジーも本当は盛り込みたいのだが、墓地を消費する前提で進めているので、条件の20枚が満たせなくなることを考慮し、仕方なく今回は諦めることにした。


☆そして、仕上げ!

 そして最後の仕上げとして、珍しく青単なカード選択になっていることから、《大建築家》を使ってみるのはどうだろうか?

 これで最初に挙げた《溶鉄の尾のマスティコア》の4点ダメージに必要なマナも安定するだろうし、なにより青いクリーチャーには困らない。

 さらに、《饗宴と飢餓の剣》もテンポ良く使えるとなるならば、デッキのポテンシャルは飛躍的に高くなるだろう。

 スパイスに、高いマナコストに非常にわかりにくいテキストで見向きされないカードなのかもしれないが、実は可能性を持っている《鏡狂の幻》と、

 自然に黒マナを出せるようにして《禁忌の錬金術》、そして《瀬戸際からの帰還》を加えてデッキ完成!

スカーブの殲滅者》デッキ[MO] [ARENA]
13 《
1 《
4 《水没した地下墓地
4 《闇滑りの岸
2 《幽霊街

-土地(24)-

4 《精神叫び
4 《錯乱した助手
4 《マーフォークの物あさり
4 《ジェイスの文書管理人
4 《スカーブの殲滅者
4 《溶鉄の尾のマスティコア
4 《大建築家
1 《鏡狂の幻

-クリーチャー(29)-
3 《禁忌の錬金術
1 《瀬戸際からの帰還
3 《饗宴と飢餓の剣

-呪文(7)-
4 《幻影の像
3 《蒼穹の魔道士
1 《宝物の魔道士
2 《ワームとぐろエンジン
4 《瞬間凍結
1 《精神隷属器

-サイドボード(15)-


 サイドボードには、まず定番のカウンター呪文《瞬間凍結》。

 それに、クリーチャー系のコントロールに効く《幻影の像》を多めに取り、《大建築家》のマナを意識した《宝物の魔道士》も少し加えてみた。

 シナジーベースの構築なので、メインは非常に怪しいカード選択になってしまったが、これなら《スカーブの殲滅者》も活躍できるはず!?


 それではまた、週刊連載で!


イニストラード

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