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戦略記事

週刊デッキ構築劇場

第18回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・《新鮮な肉》

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週刊デッキ構築劇場

2011.06.23

第18回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・《新鮮な肉

演者紹介:鍛冶 友浩

 『世界のKJ』。世界的な認知度の高いデッキビルダー。主な戦績は、プロツアー・チャールストン06優勝・世界選手権05トップ4を含むプロツアートップ8入賞3回、グランプリ・北九州05優勝など。
 現在はトーナメントシーンの一線を退いてはいるが、現役時は多くの練習と、レベルの高い理論により、多くのプレイヤーから信頼されていた。特に、齋藤 友晴や森 勝洋との交流は有名であり、当時の彼らの成績に一役買っていた。
 スクラップ&ビルドを繰り返し、練習時に欠点を洗い出した上で、独創的な方法で克服した練度の高いデッキを構築することから、『欠点の破壊者(クラックスミス)』の二つ名がある。
 代表作は、Rage against the Machine・セプターチャント(北九州の形はモリカツ型と呼ばれるが、メインの構築者は鍛冶)・ストラクチャー&フォース他多数。
 現在、mtg-jp.comにて火曜日に『鍛冶友浩の「今週のリプレイ!」』を週刊連載中。


 今からおよそ10年前、トークンを上手く活用したコンボデッキが存在した。

 それらは、パタリバ、レクターグール、エンジェルヘイトといった名前で呼ばれていた。
 クリーチャーを生け贄に捧げることでサイズを強化する《ファイレクシアの食屍鬼》や《堕天使》《ナントゥーコの鞘虫》と、

 墓地に置かれる際にエンチャントを探す《アカデミーの学長》経由で《はじける子嚢》に繋いだり、クリーチャーを探し出す《再誕のパターン》で《共生のワーム》を見つけ出し、

 そこから生まれるトークンを貪り食う黒いクリーチャーが一撃で相手を葬るというコンセプトで、このデッキは当時のスタンダードで一世を風靡した。


 そんなトークンコンボ、実は同じアプローチが現代のスタンダードでも再現できることをみなさんご存知だろうか?

 ヒントは、赤黒や黒単色のヴァンパイアなどで見かけることもある《血の座の吸血鬼》と《ウラモグの手先》。

 2枚のシナジーの先に、どんなカードを当てはめればいいのだろうか?


 そのカードは、こちら。

 《新鮮な肉》だ。

 この《新鮮な肉》は、ターン中に墓地に置かれたクリーチャー1体につき、緑の3/3のトークンを生み出すのだが、「トークンが墓地に落ちても」1体とカウントされる。
 つまり、《ウラモグの手先》の落とし子・トークンでも墓地に落ちれば数に含まれるので、《血の座の吸血鬼》での一撃必殺を狙える。


 もちろん、これは全て都合の良くドローできたらの話だ。

 では、コンボパーツのサーチエンジンとして何を?

 ここでは最近の気になる1枚、《出産の殻》を採用してみようではないか。

 《出産の殻》+《新鮮な肉》コンボのハイブリッド・デッキがこちら。

Hate 2.0[MO] [ARENA]
9 《
7 《
4 《新緑の地下墓地
4 《進化する未開地

-土地(24)-

4 《極楽鳥
4 《血の座の吸血鬼
4 《ウラモグの手先
4 《肉食いインプ
2 《恐血鬼
1 《巡礼者の目
1 《シルヴォクの模造品
1 《ヴィリジアンの堕落者
1 《納墓の総督
1 《ファイレクシアの変形者
4 《分裂するスライム
1 《墓所のタイタン

-クリーチャー(28)-
4 《出産の殻
4 《新鮮な肉

-呪文(8)-
2 《ヴィリジアンの密使
2 《ヴィリジアンの堕落者
3 《強情なベイロス
1 《皮裂き
1 《納墓の総督
1 《ワームとぐろエンジン
1 《囁く者、シェオルドレッド
4 《強迫

-サイドボード(15)-


 このデッキの核であり心臓部が、各4枚採用されている《血の座の吸血鬼》《ウラモグの手先》《新鮮な肉》だ。

 これは前述のとおり一撃必殺のコンボになっていて、

血の座の吸血鬼》でクリーチャーカードを1枚生け贄に捧げる
→《ウラモグの手先》が落とし子・トークンを生み出す
→そして落とし子・トークンを生け贄に捧げれば、《新鮮な肉》でビースト・トークン2体へと連鎖する

 つまり、カード1枚が+8/+8修正になるので、用済みになった《ウラモグの手先》自身も生け贄に捧げれば、あっという間にダメージは20点超えだろう。
 もちろん、瞬間最大ダメージを優先しなければ、3/3トークンが戦場に複数残ることになるので、長期的なプランも十分ありえる。

 また、追加のコンボパーツとしての《肉食いインプ》は、《血の座の吸血鬼》が回避能力を持たないために搭載したオプションだ。

 《分裂するスライム》も同様に、単体で7体分の生け贄要員にもなり、《ウラモグの手先》や《新鮮な肉》が用意できなかった時に役立つだろう。


 そして潤滑油的な役割が、《出産の殻》、そして《極楽鳥》と《恐血鬼》。

 《出産の殻》は、ライブラリーから直接サーチ→戦場へと出す、マナの概念を壊す強力なカードだ。

 ちょうど、《出産の殻》をフィーチャーした記事が津村の週刊連載の第59回「新たなる時代の幕開け・《出産の殻》デッキ特集」にあるのだが、この記事上にあるデッキはどれも大量にクリーチャーの1枚採用がされており、それはつまり、サーチ条件から来るマナ域制限が構築に強く関わっていることを表している。
 ただ、この記事にあるデッキはクリーチャーでのコントロールを意識しているため、今回紹介したデッキとはクリーチャーの採用目的が異なっている。

 次に、《極楽鳥》は、おなじみのマナサポートカード。
 このデッキは特に色マナの拘束が厳しい。その為に、最序盤は好きなマナを生む能力はとても重宝され、中盤以降は生け贄にもできる優秀なカードだ。

 続く、《恐血鬼》もコンボを促進するカードで、手札にある土地がクリーチャーとしてカウントできるようになる。
 しかも、《新緑の地下墓地》や《進化する未開地》といったフェッチランドがあれば、その効用も2倍に膨れ、《出産の殻》や《血の座の吸血鬼》の生け贄が楽になるだろう。


 そして残るは《出産の殻》のサーチ先だ。

 《巡礼者の目》《シルヴォクの模造品》《ヴィリジアンの堕落者》の3種は、《恐血鬼》からでも探せる大切な3マナ域。
 どれも、補助的な役割のカードでしかないが、1枚入れておくだけでエンチャントやアーティファクト、そして不足している土地にアクセスできるようになる。
 不要だった場合でも、続く4マナ域への足がかりになってくれる。

 次の4マナ圏は、手札を確認できる《グレイブディガー》こと《納墓の総督》と、アーティファクトをコピーできる《クローン》こと《ファイレクシアの変形者》だ。
 それぞれ汎用性の広さによる採用だが、足りないコンボパーツの代用になったり、攻めるきっかけになる優秀なカードといえるだろう。

 そして最後のサーチ用6マナ域《墓所のタイタン》は、単体でのカードパワーが高く、ゲームに勝ちきれないというシチュエーションを打開する為に採用した。
 一般的な《出産の殻》では、《ワームとぐろエンジン》や、7マナの《囁く者、シェオルドレッド》などが使われているようだが、より攻撃的であることと、《分裂するスライム》を複数とることとの兼ね合いもあり、6マナまでに留めることにした。


 そういった意味もあり、サイドボードでは本来の《出産の殻》用のカードを多数とり、コンボの決めにくいクリーチャーデッキ相手にボードコントロールを目指す構成へと変形することができるようになっている。



 これで鍛冶友浩のデッキ構築劇場はおしまい。

 激変したスタンダード、みなさんはどんなデッキ構築をしますか?
 これから基本セット2012、そして日本選手権と待っています。
 スタンダードのカードプールが最大になるこの時、構築の腕のみせどころですね!

 それではまた、週刊で!


2011年日本選手権予選

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