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プロツアー『イクサラン』

観戦記事

準々決勝:Mike Sigrist(アメリカ) vs. Samuel Ihlenfeldt(アメリカ)

川添 啓一
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Frank Karsten / Tr. Keiichi Kawazoe

2017年11月5日


マイク・シグリスト/Mike Sigrist(4色エネルギー) vs. サミュエル・イレンフェルト/Samuel Ihlenfeldt(マルドゥ機体)

 彼にとって初めてのプロツアーとなるこの週末、サミュエル・イレンフェルトは金曜朝に第1回戦の席に着いたとき、当然のことながら緊張を覚えていた。「大会に来る前、ずっと皆に『勝てる気がしない』って言ってたんだ。ここに集まったプレイヤーは皆強い人だからね。でも1つ勝てて、またその後もう1つ勝てたんだ。」 そしてスイスラウンド16回戦を終えてみると、彼はトップ8に入っていたのだ。これは、大会前に彼が予想したどんな結果よりも良いもので、彼自身非常に喜んでいた。そして、「Tower Games」のチームメイトもまた、喜びを分かち合っていた。

 トップ8の場に至って、彼の緊張はまだ解けていなかった。彼のライフメモには、大きな字で「勝つぞ」と書かれた姿を見ればそれは明らかだった。そして、彼は大きく一呼吸して、この重要なマッチに挑もうとしていた。

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歴戦のプロツアーの勇士、マイク・シグリスト(左)とルーキー、サミュエル・イレンフェルトがプロツアー『イクサラン』準々決勝の場で相対する

 彼はローテーションで《スレイベンの検査官》を失って弱体化したと思われていた「マルドゥ機体」でトップ8に登ってきた。抜けた穴は《ボーマットの急使》と《歩行バリスタ》がうまく埋め、低マナ域に寄せたデッキが《熱烈の神ハゾレト》と、《模範的な造り手》からの《キランの真意号》という素晴らしい動きをサポートし、スタンダードにおける「マルドゥ機体」がまだ戦えるものであることを示している。

 また、イレンフェルトのサイドボードには、レイ・ファン/Ray Huangによる秘密兵器が仕込まれている。《黄昏 // 払暁》だ。これにより、《牙長獣の仔》、《逆毛ハイドラ》や《栄光をもたらすもの》といったクリーチャーを一掃できるのだ。

 一方、イレンフェルトの対戦相手マイク・シグリストは2014-15シーズンのプレイヤー・オブ・ザ・イヤーであり、そしてプロツアーのトップ8は3度目を数えている。そしてチーム「ChannelFireball」の中で最後に残った殿堂顕彰を待つ身であり、今回は「4色エネルギー」デッキを使っている。そしてスイスラウンドを12勝1敗という成績で駆け抜け、首位でトップ8に到達した。

「エネルギーはとても強力なデッキだし、《秘宝探究者、ヴラスカ》は不利なマッチアップもなんとかしてくれるんだ」とシグリストはデッキ選択について話す。しかし、彼はこの週末《キランの真意号》とのマッチアップが多いとは想定していなかったので、メインデッキには《削剥》が1枚しか取られていない。この飛行を持つ機体はシグリストのヴラスカを掻い潜り、イレンフェルトに素早い勝利をもたらすだろう。しかし、イレンフェルトの引きが少しでも鈍れば、戦いはシグリストにとって有利に転ぶ。そしてついに、この注目すべき一戦は幕を開けようとしていた。

 シャッフルをしながら、イレンフェルトはシグリストに「プレッシャーを感じるのは好きですか?」と尋ねた。

「決して好きじゃないけど、嫌いでもないね。ゲームをプレイするのがとにかく好きだし、結果にはあまりこだわってないんだ」とシグリストは答える。

「カメラに映るのは苦手なんですけど、それでもこの場に来られたことは幸せです。2月のスペインにも行けることになりましたしね!」と返す。(訳注:2月にスペイン、ビルバオで開催されるプロツアー『イクサランの相克』のこと)

ゲーム展開

 第1ゲーム、シグリストは実に3体もの《つむじ風の巨匠》で盤面を膠着させた。この2/3は《発明者の見習い》や《ボーマットの急使》、そして《ピア・ナラー》に対する素晴らしいブロッカーとして素晴らしいものだった。「つむじ風3枚はさすがに怖かったです」とイレンフェルトはゲーム後に語った。

 しかしながら、この《つむじ風の巨匠》はありつつも、シグリストは他の有効な呪文を引き込むことができなかった。手札には《秘宝探究者、ヴラスカ》や《スカラベの神》、《反逆の先導者、チャンドラ》があったが、唱えるための色マナが確保できなかったのだ。これがまさに4色デッキを使うことのリスクである。

 一方でイレンフェルトは《霊気圏の収集艇》や《屑鉄場のたかり屋》などの脅威を順調に追加し続ける。数ターンの後、そのままイレンフェルトが勝利を収めたが、この時点でもなおシグリストの手札には唱えられないカードの山が残されていた。

 ゲーム終了後、(《ボーマットの急使》の起動を含む非常に長い)あるターンにイレンフェルトが2枚の土地をプレイしていたことが発覚したが、ジャッジはそれを単なるミスであると判断した。

 第2ゲームのためのシャッフルを終え、放送の準備が整うまで待つように言われたあとも、彼らは緊張を紛らわせるべくフレンドリーな会話を続けていた。それは、このような大きなものを懸けた場であっても、誰もが楽しむために集まっているのだということを思い出させるものであった。

 待機が続く間、念のためイレンフェルトは自身の血糖値を確かめていた。そして「血糖値は大丈夫そうだから、この震えはただの緊張ですね」と言った。

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サミュエル・イレンフェルトはスポットライトの下でベストを尽くすべく集中していた

 第2ゲーム、イレンフェルトは《模範的な造り手》から《キランの真意号》という理想的な立ち上がりを見せたが、対戦相手のシグリストも同様にマナカーブに沿って2ターン目に《牙長獣の仔》、3ターン目に《ならず者の精製屋》、4ターン目に《逆毛ハイドラ》と続けた。

 しかし、いくらかのエネルギーを得たにもかかわらず、シグリストは彼の緑のクリーチャーの能力を起動することはなかった。その行動の理由は、彼がその後《つむじ風の巨匠》を唱えると明らかになる。すなわち、《キランの真意号》に対してチャンプ・ブロックするためのクリーチャーを4体も生成することができたのだ。「その状況は見たくありませんでしたね」とイレンフェルトは言う。結局《キランの真意号》に対して回答を用意できたシグリストは、そのまま緑の怪物で勝負を決めた。

 第3ゲーム、イレンフェルトはダブルマリガンを強いられたが、《発明者の見習い》、《屑鉄場のたかり屋》、そして《霊気圏の収集艇》というプランBで立ち上がった。こちらも非常に強力なクロックとなるところだったが、シグリストは《蓄霊稲妻》を立て続けに撃ち、最後は《秘宝探究者、ヴラスカ》によって完璧な回答とした。

 《歩行バリスタ》は最終的にプレインズウォーカーを処理したが、しかしイレンフェルトはそのためにリソースを使いすぎており、一方のシグリストには大量のエネルギーと《牙長獣の仔》が残されていた。すでに7/7にまで成長しうる脅威となっており、この時点で《キランの真意号》でのチャンプ・ブロックを強いられるまでになっていた。これはマルドゥ使いにとってはもはや詰みと同義であり、案の定すぐ後にゲームは決着した。

 第4ゲーム、イレンフェルトは第2ターンに《キランの真意号》を唱えた。シグリストは3ターン目に3マナを出せる状態でターンを返すと、イレンフェルトは返しに真意号に搭乗しうる《模範的な造り手》を引き込んだが、《蓄霊稲妻》を警戒してこのターンの搭乗を見送った。しかしながら、シグリストは実際には《人工物への興味》を持っており、結局その機体は破壊されてしまった。

 イレンフェルトの続く《歩行バリスタ》と《経験豊富な操縦者》という脅威は《牙長獣の仔》、《つむじ風の巨匠》とエネルギー10個という状況に阻まれるかのように見えた。たとえ《熱烈の神ハゾレト》でさえ、《牙長獣の仔》が6/6になれる以上乗り越えられないように思えた。

 しかしながら、《無許可の分解》によって《牙長獣の仔》が除去されると、《熱烈の神ハゾレト》がついに動き出し、シグリストは回答を見つけられなかった。もはやできることは飛行機械・トークンでチャンプ・ブロックしながらダメージレースを挑むことだけだったが、結局それはうまく行かず、神がイレンフェルトに勝利をもたらした。

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マイク・シグリストはフィーチャー・マッチのスポットライトには慣れ親しんでいる

「良い5本目にしましょう」 試合を決める最後の1ゲームに臨んで、イレンフェルトは言う。

「幸運を祈るよ」 シグリストも返す。

 第5ゲームは《キランの真意号》を焦点として動き出した。シグリストは《蓄霊稲妻》で対処したが、イレンフェルトは2枚目を送り込み圧力をかけ続けた。ゲームの状況はまたもダメージレースの様相を呈しており、焦点はシグリストがどれだけのチャンプ・ブロッカーを《つむじ風の巨匠》から用意しながら、地上の《牙長獣の仔》と《スカラベの神》でダメージを与えられるかという状況だった。

 しかし、ここでイレンフェルトが放った《黄昏》が一気にゲームの状況を変えた。

 だが、《スカラベの神》は戻ってきて、ライフもまだ10という安全圏である。シグリストはさらに《つむじ風の巨匠》を追加して2体の飛行機械を生成した。これは《キランの真意号》に対する恒久的な対策ではないものの、かなりの時間を稼がせるものだった。

 両者は戦闘に入り、慎重にステップを進めつつ戦場の状況を構築し、《ピア・ナラー》の能力起動や《スカラベの神》の誘発をも考慮した上でダメージやブロックの効率が最高になるように努めた。トップ8の戦いの中で最も複雑ともいえるものであったが、画面のアドバンテージ・バーはシグリストの側に傾きつつあるように見えた。

 しかし、イレンフェルトはここでさらなる飛行戦力の機体《霊気圏の収集艇》を追加した。シグリストはそれに対して《ピア・ナラー》を墓地から戦場に出そうとした。イレンフェルトはここで手に入れたエネルギーで《霊気拠点》から黒マナを出せるようになっていた。そして《屑鉄場のたかり屋》の能力を起動することで、その《ピア・ナラー》を追放した。

 イレンフェルトが追加した飛行戦力をシグリストはブロックしきることができなかった。返しのシグリストのターン、彼は自分の《牙長獣の仔》が召喚酔いしていると誤解しており、その結果攻撃によってイレンフェルトのライフを1まで追い込むも、一歩及ばなかった! そして、その返しの攻撃に対して無力を晒してしまったのだ!

 シグリストは、焦りによって最後のゲームを失ったことを自覚すると、敗北を認めて手を差し出したのだった。

サミュエル・イレンフェルトがマイク・シグリストを3勝2敗で下し、準決勝に進出!

Mike Sigrist - 「4色エネルギー」
プロツアー『イクサラン』 / スタンダード (2017年11月3~5日)[MO] [ARENA]
3 《
1 《
2 《
1 《
4 《植物の聖域
3 《根縛りの岩山
1 《隠れた茂み
3 《尖塔断の運河
4 《霊気拠点

-土地(22)-

4 《牙長獣の仔
4 《導路の召使い
4 《ならず者の精製屋
4 《つむじ風の巨匠
2 《逆毛ハイドラ
2 《栄光をもたらすもの
2 《スカラベの神

-クリーチャー(22)-
4 《霊気との調和
2 《マグマのしぶき
4 《蓄霊稲妻
1 《削剥
3 《反逆の先導者、チャンドラ
2 《秘宝探究者、ヴラスカ

-呪文(16)-
1 《多面相の侍臣
2 《チャンドラの敗北
1 《マグマのしぶき
1 《呪文貫き
3 《否認
1 《削剥
2 《人工物への興味
2 《慮外な押収
2 《自然に仕える者、ニッサ

-サイドボード(15)-
Samuel Ihlenfeldt - 「マルドゥ機体」
プロツアー『イクサラン』 / スタンダード (2017年11月3~5日)[MO] [ARENA]
3 《
3 《平地
4 《感動的な眺望所
2 《泥濘の峡谷
4 《秘密の中庭
4 《産業の塔
2 《霊気拠点
1 《ラムナプの遺跡

-土地(23)-

4 《発明者の見習い
4 《模範的な造り手
2 《ボーマットの急使
4 《屑鉄場のたかり屋
3 《経験豊富な操縦者
2 《ピア・ナラー
3 《熱烈の神ハゾレト
2 《歩行バリスタ

-クリーチャー(24)-
3 《致命的な一押し
4 《無許可の分解
4 《キランの真意号
2 《霊気圏の収集艇

-呪文(13)-
1 《ピア・ナラー
3 《暴れ回るフェロキドン
2 《強迫
2 《マグマのしぶき
2 《削剥
3 《黄昏 // 払暁
1 《反逆の先導者、チャンドラ
1 《平地

-サイドボード(15)-
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RESULTS

対戦結果 順位
最終
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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