EVENT COVERAGE

プロツアー『ドミナリア』

戦略記事

注目のカード:ケルドの炎

Tobi Henke
henke_author.jpg

2018年6月1日

 

 プロツアー『ドミナリア』で最も多く使用されている英雄譚は《ベナリア史》。メインとサイド合わせて最も広く採用されている英雄譚は《最古再誕》。この2枚が活躍しているのは驚くことではないだろう。しかしメタゲーム分析のためにデッキを選り分けていると、《ケルドの炎》を4枚フル投入した小さなグループに出会った。

 そのデッキは「青赤ウィザード」の精神を受け継いだものだった。より洗練された結果、おそらく環境最速のデッキに仕上がっていた。これは詳しく知らねばと思った私は、燃え盛る炎をたたえた参加者を探し歩いた。

 最初のひとりは、リード・アレクサンダー/Reed Alexander。彼のもとへ向かうとちょうどドラフト・ラウンドの試合中で、私はその様子を見守った。誰がアレクサンダーなのかは確認するまでもなかった。ありがたいことに、彼はドラフトでも《ギトゥの溶岩走り》で攻撃し、《ケルドの炎》を唱えていたのだ。

Reed Alexander - 「ドラフトデッキ・青赤」
プロツアー『ドミナリア』 1stドラフト / 『ドミナリア』ブースタードラフト (2018年6月1日)[MO]
9 《
7 《
-土地(16)-

4 《ギトゥの溶岩走り
1 《ヴォーデイリアの秘儀術師
2 《ギトゥの修士魔道士
1 《アカデミーのドレイク
1 《燃えがらの風、エイデリズ
1 《スキジック
1 《喊声のフェニックス
2 《アカデミーの修士魔道士
-クリーチャー(13)-
2 《選択
1 《シヴの火
1 《大将軍の憤怒
2 《猛り狂い
1 《ケルドの炎
1 《火による戦い
1 《氷河期
1 《中略
1 《小剣
-呪文(11)-

「ええ、基本的にはドラフトでもスタンダードで使っている赤青を使います」

 試合後に話しかけると、アレクサンダーは含み笑いを見せた。ドラフトにおける赤青の戦略がスタンダードのデッキ選択に影響を与えたのだろうか? それとも別の経緯で生まれたのか? 興味は尽きない。

「スタンダードのデッキが先です。Magic Onlineのリーグで見つけて、早速組んでみたんです」

Akerlund - 「赤単ケルドの炎」
Magic Online Competitive Standard Constructed League 5勝0敗 / スタンダード (2018年5月)[MO]
20 《
-土地(20)-

4 《ボーマットの急使
4 《ギトゥの溶岩走り
4 《損魂魔道士
4 《ゴブリンの鎖回し
-クリーチャー(16)-
4 《ショック
2 《撃砕確約
2 《大将軍の憤怒
4 《削剥
4 《稲妻の一撃
4 《ケルドの炎
4 《魔術師の稲妻
-呪文(24)-
3 《熱烈の神ハゾレト
4 《マグマのしぶき
2 《チャンドラの敗北
3 《火による戦い
1 《反逆の先導者、チャンドラ
2 《
-サイドボード(15)-

「このリストから《削剥》の枚数を減らすことを決めて、その後《飲み込む炎》という完璧な1枚を見つけました。これで対戦相手にダメージを与えられない呪文はひとつだけになりましたよ。もちろん《飲み込む炎》は《ケルドの炎》や《ゴブリンの鎖回し》との相性も抜群です」

 彼のプレイテスト・チームの多くがこのデッキに魅力を感じたものの、最終的にこのデッキを選択したのはアレクサンダーひとりだった。「このデッキはモダンの『バーン』デッキみたいな動きができます。それから、圧倒的に有利なマッチアップもあります。白青コントロールとの第1ゲームは、80%くらいの確率で圧勝できますよ」

keld_alexander.jpg
今大会のスタンダード部門で《ケルドの炎》を持ち込んだプレイヤーのひとり、リード・アレクサンダー。その爆発力には目を引かれずにはいられない。

 ドラフトで《ケルドの炎》を用いる戦略については、彼自身はもちろんチームメイトも攻撃的な赤デッキをドラフトすることで数多くの成功を収めてきたという。ともに使う色は青が多く、黒と合わせることもあった。

「この戦略を強く提唱したのはダン・ウォード/Dan Wardです。スタンダードでテストをしたところ、リミテッドでも試してみるべきじゃないかという結論に至りました! そして実際に試すと、感触良好!《ケルドの炎》はもっと多くの赤いデッキに採用されるはずです。すべてのとまでは言いませんが、今より多く見ることになると思います」

 マルク・トビアシュ/Marc Tobiaschもまた、スタンダードで《ケルドの炎》を使う者のひとりだ。プロツアー『アモンケット』にてトップ8入賞を経験したトビアシュは、長年にわたって「興味深いデッキを生み出す」という評判を築き上げてきた。アレクサンダーとはまったく別の場所で調整を行っていたトビアシュだが、多くの点で同じ結論に至っていた。

 例えば、トビアシュも《削剥》に魅力を感じていない。「このデッキでは可能な限り攻撃的に動きたいから、《削剥》の出番はないんだ。あるゲームで、こちらが1ターン目に《損魂魔道士》を繰り出すと、相手は土地をタップ・インしてきた。2ターン目に2枚目の《損魂魔道士》を展開し、相手は《キランの真意号》だったか《屑鉄場のたかり屋》だったか、こちらの攻撃を止められないカードを繰り出した。そして3ターン目、3枚目の《》を置いたら《魔術師の稲妻》を3連発してさらに攻撃。実質3ターン・キルだ。《削剥》では、この速さが出せない」

「この考えが正しいと思う理由は、赤黒系のデッキはミッドレンジの方が多いからだ」とトビアシュは続ける。「ミッドレンジ対策はより重い構成にするのが一般的だから、多くのプレイヤーがそうするだろうと予想した。みんなが上を乗り越えようと互いに意識し合えば、足元、つまり軽量カードへの防御が下がる。それが理想だね」

「《ケルドの炎》は《熱烈の神ハゾレト》に似て、攻撃の手を回復させてくれる。アグレッシブなデッキが負ける理由で多いのが、土地の引きすぎだ。このデッキも例外じゃない。プレイテスト中、僕らは『《》は毒カウンターだ』ってジョークで盛り上がったよ。10枚集めると負けるんだ」

 詳しく話を聞くと、トビアシュは《ケルドの炎》で実現できる素晴らしい動きの数々を挙げてくれた。《ゴブリンの鎖回し》との相性から始まった話は、自然と《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》の魅力に移っていった。

「《ケルドの炎》のⅢ章能力が誘発したら、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》単体の攻撃で一挙7点だ。とはいえ一番重要なのは《魔術師の稲妻》かな。赤いデッキはもう、火力呪文の欠乏に悩まされることはないよ」

 《ケルドの炎》が、スタンダードとドラフトの両方でさらなる注目を集めることは間違いない。英雄譚は続いていく!

(Tr. Tetsuya Yabuki)

  • この記事をシェアする